葉室麟のレビュー一覧

  • 無双の花

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    寡聞にして本書を読むまで立花宗茂という人を知らなかったのですが、葉室氏が題材にしたことが頷ける真っ直ぐな人でした。
    多くの武将たちが生き残りをかけて時に権謀術数を巡らす戦乱の世の中で、決して裏切らないことを信条に生き抜いたことは驚嘆に値する。また、彼を支える忠臣や女性も皆、この男と共に生きるに相応しい人たちでした。
    オマケに家康まで心の底では平安の世を実現するために敢えて卑怯な手も辞さない男として描かれていたけれど、これには少し疑問もある。真田も伊達も格好良すぎだしね。

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    2022年12月22日
  • 天の光

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    理想とする仏像を彫ろうと、京へ修業に行った仏師清三郎。
    彼の留守に、賊に襲われ凌辱され行方不明となった妻を探し、離れてしまったと思える彼女の心を取り戻したいと旅に出る。
    仏師としての求道小説であるとともに、妻のために命を賭ける恋愛小説とも言える。
    和歌や漢詩に造詣の深い著者は、小説に巧みに取り入れ格調高い作品となっている。本作では、仏像や仏教知識を遺憾なく発揮し、作品の肝としている。
    妻への思いとともに、清三郎が次々と彫る仏像についての話が淡々と進むのかと思いきや、捕縛された妻を取り戻さんと流刑島へ渡ったあたりから、一気に冒険活劇的となる。
    島抜けを図る悪党どもとの手に汗握る攻防は、エンターテ

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    2022年12月01日
  • 青嵐の坂

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    藩の財政再建に没頭しながら、御用商人の企みで切腹させられた檜弥八郎の無念を、息子の慶之助が妹の婿の矢吹主馬と果たす壮大な物語だが、武士の心意気が随所に見られ非常に楽しめた.どの世界にも蔓延っている無能な取り巻き連中や悪徳商人をうまく対処して成果を上げるための方策と陣容を、いかに整えるか.この難題を解決する手法が示されていると感じた.慶之助が最後に取った手段は、自分自身を弁えた渾身の策だろうが、命を差し出す勇気は素晴らしいと思う.

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    2022年11月22日
  • 読書の森で寝転んで

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    ネタバレ

    目次
    ・読書の森で寝ころんで
    ・歴史随想ほか
    ・小説講座で語る
    ・芦刈
    ・我に一片の心あり 西郷回天賦
    ・葉室麟 最後の言葉

    読もう読もうと思いながら、まだその作品を読んだことのない葉室麟のこの作品を買ったのは、もちろんタイトルに惹かれたから。
    『読書の森で寝ころんで』
    こんな至福はあるまい。

    時代小説を書く人だ、という認識しかなかったので、その書評にコナン・ドイルやカートヴォネガット・ジュニアがあるのに驚いた。
    もちろん時代小説・歴史小説について書かれたものが多いのだけれど、それは想定内。
    まさか彼から、コナン・ドイルが晩年スピリチュアルな世界へ傾倒していった理由を知ることになるとは。

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    2022年11月20日
  • 実朝の首

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    実朝暗殺から承久の乱までのわずか2年間を
    鎌倉幕府と朝廷、さらに和田合戦での生き残り達との三つ巴を見事に描き切った作品です。

    こういった清らかでありながら何処か冷酷さも感じられるような読後感が葉室麟作品ならではの楽しみ方なのかもしれません。

    大河ドラマでどう描かれるのか楽しみになりました。

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    2022年11月02日
  • 散り椿

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    Netflixで映画を見て、葉室麟作品を始めて読んだ。映画も良かったけどやはりこの原作の方がより深い味わいで良かった。葉室麟作品をこれから読んでいくことになるんだろうなという予感。

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    2022年10月23日
  • 津軽双花

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    四編からなる中・短編の物語
    表題作「津軽双花」はやはり圧巻。帯にある通り女たちの関ヶ原とありますが、その中身は凛とした女性像が語られています。

    ■津軽双花
    石田三成の娘・辰姫は津軽家に嫁ぎ、藩主信枚と仲睦まじく日々を送りますが、その三年後、家康の養女・満天姫が正室として、信枚のもとへ。正室いるのに、幕府の策略で、満天姫を正室にって、そんなことあるの?ってまずは驚き。

    そして、この二人のどろどろっとした戦いかと思いきや、その嫉妬心や競争心も持ちながらも、この時代の凛とした女性像が語られます。
    互いを信じる心
    二人の戦いは、天下の泰平、さらに、津軽家を守るための戦い
    満天姫の台詞に熱いものがこ

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    2022年10月08日
  • 玄鳥さりて(新潮文庫)

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    葉室麟の遺作
    何を守るために刀を振るうのか
    男たちの友情・愛情の物語

    本作の主人公は六郎兵衛と圭吾
    石高も年齢も違う二人は道場で稽古を積み、六郎兵衛は圭吾を「友」と呼びます。

    そして、圭吾は富商の娘と結婚し、藩の有力派閥の後継者となり出世をとげていきます。一方、その圭吾を遠島になってまで守った六郎兵衛。
    なぜ、そこまで献身的に支えることができるのか?

    その後、派閥争いに巻き込まれる圭吾を陰ながら献身的に支える六郎兵衛。
    しかし、藩主の策略から二人は敵同士として剣を交えることになります。
    二人はどうなるのか?
    そして、何を守るために刀を振るうのか?

    心に染みる物語でした。
    お勧め

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    2022年10月01日
  • 春雷

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    ネタバレ

    『潮鳴り』に続き、葉室作品三作目。羽根藩シリーズ。前作よりも主題は難しい。藩主を自分(隼人)の眼で見定める——。悪いことは悪いと謝ることが出来ないなら、まあ人間として駄目だわな…兼清さんよw どんなに短い一生でも何かしら意味があったと思いたい——不器用な生き方しか出来なかった"鬼隼人"に黙祷を…。星四つ。

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    2022年10月01日
  • 蝶のゆくへ

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    葉室麟の異色作。
    明治時代を生きた個性的な女性たちを熱っぽく描きます。

    星りょうは仙台藩士の三女として生まれ、その利発さから「アンビシャスガール」と呼ばれた。
    明治28年に、東京の明治女学校へ入学します。
    女子教育向上を掲げる校長の巌本善治は「蝶として飛び立つあなた方を見守るのがわたしの役目」と、りょうに語りかけたのでした。

    明治女学校の教師・北村透谷と女生徒との間に生まれた恋のいきさつ。
    国木田独歩と結婚したが逃げた、りょうの従妹・佐々城信子は…
    英語教師のクララ・ホイットニーは義父に当たる勝海舟との間に深い信頼関係を築く。
    若松賤子は校長・巌本の妻で、翻訳家・作家として活躍した。その賤

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    2022年09月19日
  • 春雷

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    羽根藩シリーズの第3弾。
    シリーズといっても舞台になる藩が同じなだけで、それぞれの巻に話の繋がりは(たぶん)全くなく、時系列的な関係も分からない。シリーズとして唯一の共通点は主人公が気高いこと。気高さの表し方はそれぞれ異なるものの、根底にある印象が同じだという他に類を見ない構成です。今回は真の目的を果たすためには憎まれ役も厭わない男たちの話でした。
    真似はできないけど格好いい。

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    2022年08月31日
  • 潮鳴り

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    落ちるところまで落ちた櫂蔵が、弟の自害を契機に、這い上がって行く。
    身寄りなく、客をとって身を立てていたお芳との心の共鳴は、孤独と絶望を感じた者の間でしかわからない世界が広がっていた。
    深みある読み応えのある作品だった。

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    2022年08月28日
  • 潮鳴り

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    一度失敗を犯した者が再び花開くことが可能なのか、という命題がテーマになった作品。
    無駄なプライドを捨てて、自分に正直に、かつ自分のことをきちんと見てくれる人の想いに報いるべく生きることの価値を一貫して綴られています。
    やもすれば青臭い理想論になってしまうところですが、葉室氏の巧みな人物描写とストーリー構成で、力強い感動的な読後感を味わうことができました。

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    2022年08月04日
  • さわらびの譜

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    冒頭からの「弓矢での立会い」についての疑問から、中盤まで少し引いて読んでいたけれど、段々と引き込まれていくのは著者の力量か。
    終盤は見事だった。
    著者の作品のなかには、主人公の鮮烈な生き様に脇役の悪者が改心していく様が描かれているものも見受けられるが、本作もそのひとつ。

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    2022年07月30日
  • いのちなりけり

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    読み応えのある作品だった。
    人ではなく天地に仕えるという言葉は、この時代の武士としてはすごく斬新なものだと思う。
    蔵人と咲弥の関係も、長く離れているからこその美学を感じました。
    黄門様のイメージと異なる水戸光圀像は、どちらが本来の姿に近かったのだろうか?

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    2022年07月29日
  • 嵯峨野花譜

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    恥ずかしながら葉室麟さんの著作は今作が初めて。
    どこかの書評がよかったので読んでみた。
    史実とフィクションの裂け目が見えないうまさ。
    活け花の奥深さを教えられた感じがした。
    もう少し母子関係と父子関係を踏み込んで描かれていれば親切だったろう。
    葉室さんの他の本も読んでみたくなった。

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    2022年07月27日
  • 決戦!関ヶ原

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    関ヶ原の合戦をさまざまな人物の視点から描いたアンソロジー。それぞれの物語が最後に繋がるのかと思っていたけれど、結局は完全に独立したままだったのが少し残念ですが、短編程度の文章量で立場を変えて見ることができるのは興味深い。

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    2022年07月26日
  • 古都再見(新潮文庫)

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    葉室さんの溢れる知識の波に圧倒された
    私自身の少ない知識の壺から持っているモノと照らし合わせて「その話聞いたことある」「その説は知らなかった」「初耳だ」と揉まれながら読んだ
    彼と共に市内各所を巡りながらそこに纏わる色んなお話を聞いているようで面白かった
    何回でも読みたい
    歴史に関する知識はもちろんのこと、社会に対する目と考えが深く鋭くて尊敬する
    京都での第二の青春を心ゆくまで楽しめていたならいい

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    2022年07月25日
  • 冬姫

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    織田信長の娘として産まれた冬姫の物語
    久しぶりに葉室麟らしい本を読んだ。
    この時代の家や家族を守る女性の強さと怖さが伝わって来た。安土城、蒲生など近くに住んでいた事もあったが初めて知る事ばかりだった。沢山の登場人物が描かれていたが
    それぞれが光輝くように感じた、個人的にはもずに魅力を感じた。

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    2022年06月19日
  • 風の軍師 黒田官兵衛

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    キリシタンを前面に出した作品で最後の短編は切ない。
    もしキリスト教が広まっていたらまた違う日本になっていて、神に対する概念も違っていたと思うと徳川が頑張って日本を守ったともいえる。
    キリシタン側にたった小説は初なので面白く読めた。

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    2022年06月15日