葉室麟のレビュー一覧
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著者には、『散り椿』『はだれ雪』『青嵐の坂』等、扇野藩を舞台とした小説が何作かあり(それぞれに直接的な関連性はないが)、この小説もその一遍。
藩重臣の有川家の長女伊也が主人公。
弓を介し、藩随一の弓の名手樋口清四郎に思いを寄せるが、彼は妹の初音の婚約者となる。有川家に寄寓する謎の武士も介在し、恋愛小説の様相もある。
しかし、著者は扇野藩の派閥抗争も絡め、武の心の有り様を問う時代小説となっている。
「武の心とは、ひとを想い、相手のために危うい目にあおうとも悔いぬ心持ちをいう」と。
題名に絡めた和歌「石ばしる垂水の上のさわらびの萌えいづる春になりにけるかも」が、要所で謳いあげられる。和歌に合った小説を紡ぎ出すのか、小説に合った和歌を選び出すのか、どちらにしても著者の和歌に対する造詣の深さを改めて思う。 -
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小倉藩で享和から文化年間にかけて実際に起こった「白黒騒動」を題材にした時代小説。
であるとともに、感動の恋愛小説ともいえる。
かつて、彼女の危機を救った時、「わたしが吉乃様をお守りいたしますから、このことは生涯かけて変わりませんぞ」と、印南新六は誓う。
吉乃は、いまでは他人の妻となっているが、その言葉通り、新六は命をかけて彼女を守り通す。その行動について彼は「ひととしての思いでござる」と言い切る。
現代小説なら噴飯物に思えるこれらの言動も、時代小説の世界を借りると、登場人物の凜とした佇まいに清冽さが胸に迫る。
新六の最期の場面を小説の冒頭に据えた手法は?
彼の一貫性を強調する意味合いであろうか。 -
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面白かった
時代小説ながらもミステリー
この中に犯人がいる!のようなクライマックスがまさにベタなミステリ展開ですが、それに加えて、チャンバラあり、夫婦の想いありと極上なエンターテイメントとなっています。
ストーリとしては、
政争に敗れた柏木靫負(ゆきえ)は、高名な茶人となり、16年ぶりに国に戻ってきます。
その理由は、妻の藤尾の死の真相を知るため。
山裾の庵で「山月庵」として茶室を設え、客を招きます。そこで、当時の関係者から、様々な話を聞き、死の真相、さらには、当時起きていたことを明らかにしていきます。
当時、藤尾に不義密通の噂の真相は?
それを問い詰めたときに、何も釈明しなかった理由は?
関係者を一堂に集めた茶会でその真実が明かされます
ミステリそのもの(笑)
しかし、そんな中にも、武士としての想い、潔さを感じさせるところがミソ
お勧めです -
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面白かった
時代小説ながらもミステリー
最後に明かされる真実と本当の想いに切なさがこみ上げます。
ストーリとしては、
上意討ちにあった筆頭の佐野了禅。男たちはそこで果てるも、女たちは白鷺屋敷に逃れ、暮らすことに。
そこには了禅の妻のきぬを筆頭に、長男の妻の芳江と娘の結、次男の妻の初、女中の春、その、ゆりの7人が暮らしています。
そこに目付方の密命をもって送り込まれた女医師の伊都子。
そんな中、この屋敷で、相次ぐ不審な死。
誰が犯人なのか?
疑われるある人物。しかし、その女は本当に犯人なのか?
といった展開です。
この時代の中の女としての生き様が心打ちます。
そして、明らかになる真相
そこにあった想い
切ない...
お勧めです -
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凶作が続き破綻寸前となっている藩の藩政改革を巡る時代小説。架空の扇野藩を舞台にしたシリーズ4冊目。
藩の立て直しを命じられた中老檜弥八郎は、あらぬ疑いを賭けられて切腹してしまう。
その娘那美は、親戚の矢吹主馬のもとへ。主馬は、弥八郎から託された使命を果たそうとする。
彼の前に、自分こそが父の存念を果たすのだと、弥八郎の息子慶之助が立ちはだかる。
弥八郎が死の直前に思い浮かべた後継者「あの者」とは誰なのか、という謎とともに、藩政改革はどうなるのか、さらに御用商人も加わり、予断を許さぬ展開となる。
本書でも、著者の理想を託した「武家は利では動かぬ。義で動くものだ」という主人公の活躍に、時代小説の醍醐味を満喫する。
書中、主馬が「政を行うということは、いつでも腹を切る覚悟ができているということだ。そうでなければ何もできぬ」と、語る。
折から自民党総裁選が行われている現代に照らして、ここまでの覚悟を持った政治家は果たしてこの日本にいるだろうかと、愚考してしまう。
主馬の妻となった那美の言葉も、心に留めておきたい。
「ひとの真は、たとえいま目の前に見えなくともどこかにあって、そのひとを支えているのだと思います。たとえ、どのように違った道を歩んでもいつの間にか戻ってきてしまうのが、ひとの真ではないでしょうか。いつも自分の心の中のどこかにあるものを信じればよいのだと思います」 -
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蜩ノ記の続編
蜩ノ記の16年後を描く羽根藩の物語
戸田秋谷の息子順右衛門は藩の要職についています。
そこに、新藩主となった吉通、しかし、それを良しとしない御一門衆の三浦左近達は、お家騒動の陰謀を目論みます。
吉通の幼馴染である主人公の颯太と、その陰謀に立ち向かっていきます。
しかし、颯太って頼りない(笑)
いつもの勧善懲悪なストーリ展開なわけですが、そこに至るまでのそれぞれの想いが凛として清々しい
登場人物の中で一之進が印象的!
敵方とおもいきや、最後の最後でよい味出しました。
戸田秋谷が残したもの
薫の言葉
「父が自らの死によってひとびとの過ちや罪業を背負ったのは、ひとを生かす道だったからではないかと思います。この世のひとは皆、おのれの罪業に苦悶しております。そんなひとびとの中のひとりとして、罪を背負う生き方もあったのではないでしょうか」
ひとを生かす道
いいですね。
蜩ノ記を読みなおしたくなりました。
とってもお勧め -
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面白かった
重厚骨太の物語ではなく、漫画ライクなエンターテイメントストーリ(笑)!
しかし、その奥底には、家族の絆が描かれています。
父親の死によって、青鳴道場をついだ長男の権平は昼行燈。その性格から、門人は一人もいなくなり、結果、明日食べる米もなくなってしまいます。
妹の千草や弟の勘六の尻に敷かれる生活の中、お金を得るために始めたのが、道場破り。
父親の不審死の真相を明らかにして、仇討ちを果たすため、道場破りを続けていくことで、徐々に明らかになる真相。
といった展開です。
チャンバラ、勧善懲悪と鉄板ストーリに加え、家族の絆のメッセージが伝わってきます。
スッキリしたストーリ展開で、ライトな会話、掛け合いも楽しめます。
お勧め!