葉室麟のレビュー一覧
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上意討ちにあった一門衆筆頭の別宅に、密命を帯びて送り込まれた女医師の伊都子が主人公。
そこでは、奥方や嫁たちとその子供、女中たちが暮らしている。互いに何やら剣呑な雰囲気があり、やがて、この屋敷に来た男が次々と死んでゆく。
誰の仕業なのか、その裏に何があるのか。密室ミステリー仕立てにしながら、著者は武家ゆえの運命に抗う女性たちの哀しみを描く。
「世間では武門の者はいついかなるときでも死を決しているべきだと申しますが、わたくしは、それは殿方に限ったことだと思っています。女子は子を守り、家を守って生き抜くのが務めです。殿方は死んでしまえば努めは終わりますが、女子はいかなる艱難にも負けずに生き抜かねば -
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福岡出身の私にとって秋月は小さい頃何度か行った思い出の土地である。覚えている記憶は、紅葉と葛餅。最近では台風や水害で話題になっているが、本作は私の知っている秋月をふんだんに詰め込んだ作品だった。
話自体は歴史物でよくある巨悪と対峙する青春一代記物。怖がりの小四郎が同年代の仲間とともに乗っ取りを狙う福岡藩と戦い、自藩を守っていく。戦いの場面や友情の話などそれぞれの要素で高揚するものがあったが、それがどれも秋月の美しい風景に根付いているのが素晴らしい。
史実に根付いているからか、最後の悪に徹しても自藩を守ったというのが少し納得はいかなかったが、「織部崩し」の青春期から守るものが増えた「成年期」 -
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「よい風」
「風がかおるように生きなければ」
印象的な言葉だった。
人は人生の中で色々な感情を抱く。
時には醜い感情に支配されてしまいそうになることもあるだろう。
そんな時に「よい風」となってくれる人が傍に居てくれたら、または自分が誰かのそうなれたら、清々しい人生が送れるのかもしれない。 -
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これまでの人生の岐路で選択に後悔していたり、選んだ道を疑問に思っている人。それは、恋愛や結婚の場合や、あるいは就職の際もあるだろう。
そういう人に、是非読んでもらいたい作品である。
実直な夫と暮らす人妻が、昔一度契りをかわした男が現れることで、男と夫との狭間で心が揺れ動く。
通俗的な恋愛ドラマかのような設定だが、著者は夫に強靭な心を持ち度量の大きな武士を据えることで、清新清冽な作品に仕立て上げている。
妻の危難に鮮やかに登場し、いささかも意志のブレを感じさせない夫に、妻もようやく心の在りところを見出す。
著者は、この夫を読者にもまた惚れ惚れとさせるような漢(おとこ)に造型し、憎いばかりである。 -
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幕府を慮り、藩内抗争も絡み、勘解由を生かしておけぬと暗殺を企てる扇野藩の重臣たち。
さらに討ち入りが欠航された後、勘解由の措置をどうするかと決めかねる幕府=柳沢吉保。
勘解由の運命は?そして紗英は?と頁を捲らざるを得ない。
主君に忠義を尽くし武士として命がけで戦う大石内蔵助に対し、彼の志を認めながらも、「ひとは自らの心願だけで生きられるものではない。生きていることを願ってくれるひとの想いに支えられて生かされているのだ」と、生きる道を選ぶ勘解由。
武士の意地をかけて主君の仇を討たんとする赤穂藩の旧家臣を対照的に描くことによって、和歌「はだれ雪」に託し、愛する者のために生き抜くと誓った高潔な志は、 -
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傍流的に忠臣蔵を扱った作品として、著者には『花や散るらん』があるが、本書は忠臣蔵そのものが題材となっている。
浅野内匠頭の切腹直前に最期の言葉を聞いたとされる永井勘解由が扇野藩に配流される。
その接待役に命じられたのが、紗英。
勘解由に赤穂浪士が訪ねてくることを監視する役目を負うが、浅野家旧家臣に賛同し命を捨ててもいいという彼の挙措や武士としての覚悟を見るうちに、いつしか心を寄せるようになる。
そういった意味で、紗英と勘解由との恋愛小説ともいえる。
が、やはり本筋は内匠頭の最期の言葉は何かというミステリー性を縦糸に、勘解由と赤穂浪士とを対照的に、武士として人としての生き方を問う歴史小説ではない -
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面白かった
時代小説ながらもミステリー
ミステリーとして読むと、ちょっといまいちなところはありますが、最後のどんでん返しもあって、楽しめました。
ストーリとしては
下士あがりで執政に昇り詰めた桐谷主水が主人公。
初登城では四面楚歌。親友を見捨てて出世した卑怯者として、周りから疎まれます。
10年前、主水の親友綱四郎が前藩主を中傷する落書を書いたとして疑われ、主水はその筆跡が綱四郎と証言。結果、綱四郎は切腹、介錯は主水が行うことに。
出世のために親友を見捨てたとみなされます。
そして、その娘を妻に迎えて暮らしてしますが、綱四郎の息子が10年前の事件の犯人が綱四郎ではないという証拠をもって、仇討