葉室麟のレビュー一覧

  • 秋霜

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    とても面白かった。前作から続きになっており、前作が少し物足りない感じというか、葉室麟の話としては違和感があるという感想は、この本で払拭された。前作と併せて大団円に至る感じで、前作もよくできていたことが分かってスッキリした。しかし、元々前作は本作を想定して書かれたないのではないだろうか。私はそこは分からないが、本作で前作をうまく活かしたのだと思う。とにかく葉室麟は弱者に対する考えが温かい。

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    2020年11月23日
  • 無双の花

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    戦国武将の生涯を描いた小説ながら、躍動感はあまりない。でもそれは決してマイナスではなく、淡々とストレスなく読み進められ、自然に主人公に寄り添いながら物語が追えるということ。むしろ、謹厳実直な西国無双に相応しい文体。

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    2020年11月23日
  • 風のかたみ

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    上意討ちにあった一門衆筆頭の別宅に、密命を帯びて送り込まれた女医師の伊都子が主人公。
    そこでは、奥方や嫁たちとその子供、女中たちが暮らしている。互いに何やら剣呑な雰囲気があり、やがて、この屋敷に来た男が次々と死んでゆく。
    誰の仕業なのか、その裏に何があるのか。密室ミステリー仕立てにしながら、著者は武家ゆえの運命に抗う女性たちの哀しみを描く。
    「世間では武門の者はいついかなるときでも死を決しているべきだと申しますが、わたくしは、それは殿方に限ったことだと思っています。女子は子を守り、家を守って生き抜くのが務めです。殿方は死んでしまえば努めは終わりますが、女子はいかなる艱難にも負けずに生き抜かねば

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    2020年11月23日
  • 春雷

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    3.5ぐらいの感じ。羽根藩シリーズの中では少し毛色が違う。いつもは理不尽さの中で個人が葛藤したり、がんばったりという話だが、その理不尽さが後にならないと分からない構成になっているので、何となく1人の武士の活躍の話なのかなと思えた。もちろん葉室麟の書く話なので、とても面白いし、全体としてのテーストも変わらないので面白かった。特に主人公に協力する個性的な面々は面白い。水滸伝的な雰囲気があって、個人的には楽しめた。

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    2020年11月21日
  • 秋月記

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    福岡出身の私にとって秋月は小さい頃何度か行った思い出の土地である。覚えている記憶は、紅葉と葛餅。最近では台風や水害で話題になっているが、本作は私の知っている秋月をふんだんに詰め込んだ作品だった。

    話自体は歴史物でよくある巨悪と対峙する青春一代記物。怖がりの小四郎が同年代の仲間とともに乗っ取りを狙う福岡藩と戦い、自藩を守っていく。戦いの場面や友情の話などそれぞれの要素で高揚するものがあったが、それがどれも秋月の美しい風景に根付いているのが素晴らしい。

    史実に根付いているからか、最後の悪に徹しても自藩を守ったというのが少し納得はいかなかったが、「織部崩し」の青春期から守るものが増えた「成年期」

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    2020年11月14日
  • 潮鳴り

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    羽根藩シリーズ二作目。本当に良かった。藤沢周平の本を読んでいる時の幸福感に浸れる。もっと早く読んでおけば良かったとも思うが、残りのシリーズを読めるという楽しみもある。心が洗われるような話とはこのことか。

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    2020年11月08日
  • 乾山晩愁

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    ネタバレ

    光輝くものだけが、この世に存在するわけではない。光があれば必ず、影がある。影だけではない。光の周りに、柔らかな色彩で温かみと膨らみのある存在があって、光を支えているのではないだろうか
    表題作の乾山晩愁はじめ、いずれも絵師に関わる物語だ

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    2020年11月08日
  • 風かおる

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    「よい風」

    「風がかおるように生きなければ」
    印象的な言葉だった。
    人は人生の中で色々な感情を抱く。
    時には醜い感情に支配されてしまいそうになることもあるだろう。
    そんな時に「よい風」となってくれる人が傍に居てくれたら、または自分が誰かのそうなれたら、清々しい人生が送れるのかもしれない。

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    2020年11月04日
  • 風のかたみ

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    話はミステリーのごとく進行し、すべてが明かされたところで切なさがこみ上げてくる。葉室麟はやはり手練れだと思う

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    2020年10月11日
  • 秋霜

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    憎しみ苦しみを他者にぶつけるのではなく
    自分の中で丁寧に向き合い育て消化させていく
    喜びも悲しみもすべてが自分である
    人間の尊さを教えてもらいました

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    2020年10月08日
  • 草笛物語

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    とても面白かった。この前日譚である蜩の記をまた読みたくなった。爽やかに少年が成長する話は時代小説では珍しいのではないか。それでいて、全く違和感なく読めて楽しめた。オススメ。

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    2020年10月01日
  • 紫匂う

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    これまでの人生の岐路で選択に後悔していたり、選んだ道を疑問に思っている人。それは、恋愛や結婚の場合や、あるいは就職の際もあるだろう。
    そういう人に、是非読んでもらいたい作品である。
    実直な夫と暮らす人妻が、昔一度契りをかわした男が現れることで、男と夫との狭間で心が揺れ動く。
    通俗的な恋愛ドラマかのような設定だが、著者は夫に強靭な心を持ち度量の大きな武士を据えることで、清新清冽な作品に仕立て上げている。
    妻の危難に鮮やかに登場し、いささかも意志のブレを感じさせない夫に、妻もようやく心の在りところを見出す。
    著者は、この夫を読者にもまた惚れ惚れとさせるような漢(おとこ)に造型し、憎いばかりである。

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    2020年09月15日
  • はだれ雪 下

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    幕府を慮り、藩内抗争も絡み、勘解由を生かしておけぬと暗殺を企てる扇野藩の重臣たち。
    さらに討ち入りが欠航された後、勘解由の措置をどうするかと決めかねる幕府=柳沢吉保。
    勘解由の運命は?そして紗英は?と頁を捲らざるを得ない。
    主君に忠義を尽くし武士として命がけで戦う大石内蔵助に対し、彼の志を認めながらも、「ひとは自らの心願だけで生きられるものではない。生きていることを願ってくれるひとの想いに支えられて生かされているのだ」と、生きる道を選ぶ勘解由。
    武士の意地をかけて主君の仇を討たんとする赤穂藩の旧家臣を対照的に描くことによって、和歌「はだれ雪」に託し、愛する者のために生き抜くと誓った高潔な志は、

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    2020年08月31日
  • はだれ雪 上

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    傍流的に忠臣蔵を扱った作品として、著者には『花や散るらん』があるが、本書は忠臣蔵そのものが題材となっている。
    浅野内匠頭の切腹直前に最期の言葉を聞いたとされる永井勘解由が扇野藩に配流される。
    その接待役に命じられたのが、紗英。
    勘解由に赤穂浪士が訪ねてくることを監視する役目を負うが、浅野家旧家臣に賛同し命を捨ててもいいという彼の挙措や武士としての覚悟を見るうちに、いつしか心を寄せるようになる。
    そういった意味で、紗英と勘解由との恋愛小説ともいえる。
    が、やはり本筋は内匠頭の最期の言葉は何かというミステリー性を縦糸に、勘解由と赤穂浪士とを対照的に、武士として人としての生き方を問う歴史小説ではない

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    2020年08月31日
  • 墨龍賦

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    ネタバレ

    斎藤道三の家は法華宗なのです。その法華宗を安土論争にて裏切った信長様を、斎藤道三の血は許さないでしょう。道三の血は受けずとも、魂を受け継いだものはおります。そのものが上様を討つことになりましょう
    信長の非道に苦しむ民を救うため、明智様は龍神となられるのだ。信長の誅殺は光秀の私怨ではなく、天のさばきだと、友松は思った
    絵に魂を込めるなら、力あるものが滅びた後も魂は生き続けます。たとえ、どのような大きな力でも変えることができなかった魂を、後の世のひとは見る事になりましょう

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    2020年08月01日
  • 緋の天空

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    ネタバレ

    人は、己の欲のために争いを好むようだ。その事は誰にも押さえられないのかもしれない
    律と令の定めだけでは、人の心の憎しみや妬み、猜疑の心をなくすことはできない。仏法の慈悲の心を国の心としてこそ、人々は己の生涯を全うできるのだ
    誰しもが悪しきことをしようと思って、この世に生を受けるわけではない。良きことをなさんと思いつつ、運命に翻弄されて、互いに憎み合い、戦うことにもなるのだ

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    2020年07月27日
  • あおなり道場始末

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    単純に面白かった。三兄弟の関係性がとても好き。特に、長男の家族に対するぶれない言動によって安心して物語を楽しむことができた。結末はそんな感じでいいの?とも思ったが、後日談を色々と想像すると面白いのでこれはこれで良いと思う。

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    2020年07月26日
  • 嵯峨野花譜

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    活け花を通して少年僧が成長してゆく物語です。
    日本独自の文化である活け花は多分、四季折々の自然の表情が外国に比べ繊細で豊かだから生まれたものなんだろうななんて考えてしまいました。それにしても新しい葉室作品が読めないことが残念でなりません。

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    2020年07月16日
  • 陽炎の門

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    面白かった
    時代小説ながらもミステリー
    ミステリーとして読むと、ちょっといまいちなところはありますが、最後のどんでん返しもあって、楽しめました。

    ストーリとしては
    下士あがりで執政に昇り詰めた桐谷主水が主人公。
    初登城では四面楚歌。親友を見捨てて出世した卑怯者として、周りから疎まれます。
    10年前、主水の親友綱四郎が前藩主を中傷する落書を書いたとして疑われ、主水はその筆跡が綱四郎と証言。結果、綱四郎は切腹、介錯は主水が行うことに。
    出世のために親友を見捨てたとみなされます。
    そして、その娘を妻に迎えて暮らしてしますが、綱四郎の息子が10年前の事件の犯人が綱四郎ではないという証拠をもって、仇討

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    2020年07月05日
  • 墨龍賦

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    この本が上梓されてから10ヶ月後に亡くなられた葉室さん。
    端正な語り口が好きです。
    本作では明智光秀が好人物として描かれています。
    2020年の大河ドラマがコロナウイルス対策の為中断しているなかで複数の視点から明智光秀と主人公、海北友松を考えるのも良いかも知れません。

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    2020年07月04日