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心極流の達人ながら、凡庸な勤めに留まる蔵太。二人の子供とともに穏やかに暮らす、その妻・澪。すれちがいの暮らしを送る澪の前に、一度だけ契りをかわした男・笙平があらわれる。側用人にまで出世したかつての想い人との再会に、澪の心は揺れる。今、ここで、心のままに生きられたなら――。直木賞作家が描く、人妻の恋。日本人の心が紡ぐ、美しく、哀しき恋。全国17紙に掲載された大人気連載!
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Posted by ブクログ
葉室麟にはまって、はや何冊目だろうか。読者評価の比較的高い順に、そしてシリーズ物はまとめて読んできたが、質が落ちることがない。遅くに作家デビューし早逝されてしまったが、短い期間によくもこんなにたくさんの作品を残すことだできたのだろう。 葉室麟といえば武士道を貫いた男を題材にしたものが多いが、女性を主...続きを読む人公にしたものも多い。本作も想いを寄せる男がいながら、朴念仁のような男に嫁ぎ一男一女を儲けてもなお昔の男に未練を残す女性が主人公である。ただ、この朴念仁がただものではない。郡方という役目のなかでは民人たちのことを考え、妻子に対しても深い慈愛がある。ただ妻である主人公は長年連れ添ってもそれに気づかない。昔の男の窮地に、後先考えずぬに助けようとして自ら窮地にはまってしまう。そんな妻を助ける朴念仁がすごい。そして実に懐が深い。映画もそうだが主役はもちろんのこと助演者が充実しているととてもいい作品になる。そういった意味では朴念仁に加え昔の男もいい役どころをこなしている。
ネタバレを嫌うので装丁から時代モノとわかるような本は手に取らなかったのだが、とりあえず読み始めた。身持ち軽そうな澪がむかし結婚に至らなかった男に思いを寄せる出だしなのだが、なんとなく藤沢周平っぽいようないい感じで、さらに夫の萩蔵太というのがなかなかの好男子で、全般的に読みやすい時代小説というところ。...続きを読む他の作品も読んでみたい。
「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」につきる作品だと思えた。 武士の生きざまと夫婦愛、人間愛に対する著者のブレのなさは、いのちの3部作、雨宮蔵人の生き方、人となり、夫婦関係と同様。 主人公である澪は幼なじみの笙平に想いを残しながらも寡黙で実直な蔵太に嫁し穏やかな生活を送る中、夫の素朴な暖かさは感...続きを読むじる反面、武士としての美しさにかけると思ってしまい笙平と比べてしいる自分の気持ちに後ろめたさを感じている。 が、夫婦と笙平に襲いかかる危機に立ち向かう夫に真の男、人間としての魅力を見出す。 古い考えかもしれないが、恋愛結婚した夫婦と見合い結婚した夫婦の結婚後の人間関係の展開に似ているところはないだろうか。 多くの恋愛結婚は二人の関係性が頂点に近いところから始まり、見合い結婚のそれはゼロに近いところからスタートし日々の生活をこなして行く過程で相手を理解して行く。そこで伴侶に光る魅力を見出すならばそこから愛情は二人で豊に育まれて行きそう。恋愛結婚の行手が右肩下がり一方と言うわけではないのですが。
内容(「BOOK」データベースより) 寡黙で実直な夫・蔵太と共に平穏に暮らす澪の前に、一度だけ契りをかわした幼馴染みの笙平が現れた。藩内抗争に巻き込まれ咎を受け逃亡した笙平を匿う澪に、朴念仁であるはずの夫は意外な優しさを見せる。武士の妻が持つべき義と交錯する想いに、二人の男の狭間でもがく澪。日本人の...続きを読む心性を問う傑作時代小説。 令和元年7月23日~25日
初めから息詰まるような緊張感が続く。寝る前にはとても読めなかった。 葉室麟さんの小説の常で、必ず成功するとわかっていても何度も窮地に陥りながらの長い長い道のりだった。 夫婦とは、子育ての芯とは、家族のありようとは、女性の生きざまとは…など、感じることのとても多い作品だった。 心から信じる相手がい...続きを読むることの強みを目の当たりにして、自分もそうありたいと思った。
すがすがしい読後感。 おのれにとって最も大切だと思うものを心は寸分違わず知っている。わからぬこと、迷ったことは、わが心に問えばいい。 澪の心の中にいたのは蔵太だった。ともに紫草を見ることができて本当によかった。日々の暮らしにある幸せを大事にしたいと思えた。
葉室麟の時代物はとても良い。素直に登場人物に感情移入できて、物語を堪能できる。女性が主人公なのでどうかと思ったが、全くの杞憂だった。面白い本、心が洗われるような読書をしたい時は葉室麟に限る(ちょっと前なら藤沢周平)。オススメ。
人生は長く豊かな時間を許されています 男性の本当の優しさや大きさ寛容さを 一組の夫婦がゆっくり教えてくれます
これまでの人生の岐路で選択に後悔していたり、選んだ道を疑問に思っている人。それは、恋愛や結婚の場合や、あるいは就職の際もあるだろう。 そういう人に、是非読んでもらいたい作品である。 実直な夫と暮らす人妻が、昔一度契りをかわした男が現れることで、男と夫との狭間で心が揺れ動く。 通俗的な恋愛ドラマかのよ...続きを読むうな設定だが、著者は夫に強靭な心を持ち度量の大きな武士を据えることで、清新清冽な作品に仕立て上げている。 妻の危難に鮮やかに登場し、いささかも意志のブレを感じさせない夫に、妻もようやく心の在りところを見出す。 著者は、この夫を読者にもまた惚れ惚れとさせるような漢(おとこ)に造型し、憎いばかりである。 武士の矜持を持つ夫の言葉に、書き留めておきたい文言がいくつもある。 「剣法に<一息の抜き>という教えがござる。何事も追いつめてはならぬ。一息だけ、隙間を空けておいた方がよいとの諭しでござろうか」 「なに、ひとは皆、不心得者だ。自らにいたらぬところがあるとわかっておりながら懸命に努めるところに、ひとの生き様の清々しさがあるとわたしは思っている」 「知恵を働かせようとすれば、迷いは深まるばかりだ。しかし、おのれにとってもっとも大切だと思うものを心は寸分違わず知っている、とわたしは信じている」 取りも直さず、著者葉室麟氏の思いでもあるだろう。
天の目に見守られたジェットコースターロマンスも無事着地、、。紫草の花の性根…蔵太、小一郎、由喜が白過ぎる♪。
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