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Posted by ブクログ
葉室麟にはまって、はや何冊目だろうか。読者評価の比較的高い順に、そしてシリーズ物はまとめて読んできたが、質が落ちることがない。遅くに作家デビューし早逝されてしまったが、短い期間によくもこんなにたくさんの作品を残すことだできたのだろう。
葉室麟といえば武士道を貫いた男を題材にしたものが多いが、女性を主人公にしたものも多い。本作も想いを寄せる男がいながら、朴念仁のような男に嫁ぎ一男一女を儲けてもなお昔の男に未練を残す女性が主人公である。ただ、この朴念仁がただものではない。郡方という役目のなかでは民人たちのことを考え、妻子に対しても深い慈愛がある。ただ妻である主人公は長年連れ添ってもそれに気づかない。昔の男の窮地に、後先考えずぬに助けようとして自ら窮地にはまってしまう。そんな妻を助ける朴念仁がすごい。そして実に懐が深い。映画もそうだが主役はもちろんのこと助演者が充実しているととてもいい作品になる。そういった意味では朴念仁に加え昔の男もいい役どころをこなしている。
Posted by ブクログ
「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」につきる作品だと思えた。
武士の生きざまと夫婦愛、人間愛に対する著者のブレのなさは、いのちの3部作、雨宮蔵人の生き方、人となり、夫婦関係と同様。
主人公である澪は幼なじみの笙平に想いを残しながらも寡黙で実直な蔵太に嫁し穏やかな生活を送る中、夫の素朴な暖かさは感じる反面、武士としての美しさにかけると思ってしまい笙平と比べてしいる自分の気持ちに後ろめたさを感じている。
が、夫婦と笙平に襲いかかる危機に立ち向かう夫に真の男、人間としての魅力を見出す。
古い考えかもしれないが、恋愛結婚した夫婦と見合い結婚した夫婦の結婚後の人間関係の展開に似ているところはないだろうか。
多くの恋愛結婚は二人の関係性が頂点に近いところから始まり、見合い結婚のそれはゼロに近いところからスタートし日々の生活をこなして行く過程で相手を理解して行く。そこで伴侶に光る魅力を見出すならばそこから愛情は二人で豊に育まれて行きそう。恋愛結婚の行手が右肩下がり一方と言うわけではないのですが。
Posted by ブクログ
これまでの人生の岐路で選択に後悔していたり、選んだ道を疑問に思っている人。それは、恋愛や結婚の場合や、あるいは就職の際もあるだろう。
そういう人に、是非読んでもらいたい作品である。
実直な夫と暮らす人妻が、昔一度契りをかわした男が現れることで、男と夫との狭間で心が揺れ動く。
通俗的な恋愛ドラマかのような設定だが、著者は夫に強靭な心を持ち度量の大きな武士を据えることで、清新清冽な作品に仕立て上げている。
妻の危難に鮮やかに登場し、いささかも意志のブレを感じさせない夫に、妻もようやく心の在りところを見出す。
著者は、この夫を読者にもまた惚れ惚れとさせるような漢(おとこ)に造型し、憎いばかりである。
武士の矜持を持つ夫の言葉に、書き留めておきたい文言がいくつもある。
「剣法に<一息の抜き>という教えがござる。何事も追いつめてはならぬ。一息だけ、隙間を空けておいた方がよいとの諭しでござろうか」
「なに、ひとは皆、不心得者だ。自らにいたらぬところがあるとわかっておりながら懸命に努めるところに、ひとの生き様の清々しさがあるとわたしは思っている」
「知恵を働かせようとすれば、迷いは深まるばかりだ。しかし、おのれにとってもっとも大切だと思うものを心は寸分違わず知っている、とわたしは信じている」
取りも直さず、著者葉室麟氏の思いでもあるだろう。
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