葉室麟のレビュー一覧

  • 花や散るらん

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    続編だという事を知らずに読んでしまった本書。

    幕府と朝廷の暗闘に巻き込まれてしまう、主人公・雨宮蔵人とその妻子。果てには、あの赤穂浪士の討ち入りにも関わる事になってくるという、興味深い展開です。
    “この世で最も美しいのは人への想いかもしれない”という、羽倉斎の台詞にもあるように、話の至るところに垣間見える、人の心の切なさが胸を打ちます。
    前作の「いのちなりけり」を、是非読んでみようと思いました。

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    2018年11月04日
  • 柚子の花咲く

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    柚子の花の香りの如くなんとも爽やかな時代小説。
    あまり巧いという感じはしないのだが読後感が清々しい。

    師と徒、男と女、友と友、親と子・・・いろいろなかたちのひとがひとを想うこと、が描かれる。

    そしてまた、良き教育者とは-を再び考える。
    自らも苦悩を抱え、ぱっとしないが、たいせつに思ってくれる、成功の暁には全身で喜んでくれる、それだけでいいのだ。

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    2018年10月18日
  • はだれ雪 下

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    忠臣蔵はあらすじ的な出来事程の知識しかなかったが、フィクションといえど、時代背景や立場を踏まえて、より赤穂浪士の心情に触れられた気がする。なぜこんなに度々映像化されるのかぴんとこなかったけれど、大石内蔵助らの武士としての義の深さを知れば納得。
    そこに相まって、流罪となった勘解由の武人としての矜持が素敵すぎる。紗英の気持ちもわかる。
    武士といえど慕う者への心遣いが出来ねば、民にも心配りができない、、とは今でもそう。身近な人を想えば他人にも優しくなれるというもの。
    葉室さん、まだまだ作品を残してほしかったな。
    未読だけど、映画『散り椿』はどうだろうな。

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    2018年10月07日
  • 散り椿

    Tod

    購入済み

    散り椿

    人生の最終コーナーをどのように生きていくかは普遍的な問題だと思います。それを自分の思いとは違っていても振り返ればあれでよかったと思うようなことができる人生は素敵だと思います。主人公やそれを取り巻く人たちにとって後悔のない人生を送りたいという気持ちが素直に心に響きます。映画化しやすい小説と思いますが、どんな風に映像化されるか興味がわきます。

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    2018年09月13日
  • 散り椿

    購入済み

    読んでいて久しぶりに、
    時代小説の面白さを実感しました。登場人物の相手への思い、武士としての、意地、
    現代人であれば、そんな意地で、友や思い人を失うようなことはしないだろうにな、と思いながら、最後まで一気に読んでしまいました。

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    2018年09月13日
  • 冬姫

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    信長の娘、冬の生涯を描く作品。清廉で優しく、しかし自分を曲げない強さを持つ冬が、周囲の人をなんだかんだで味方につけながら「女いくさ」を続けてゆく。娘(身内)から見た信長というのもなんだか新鮮な感じだし、冬をまもるもずと又蔵も魅力的。
    Wikipediaによると、冬は実在の姫であるのだが、冬について書かれた部分は「冬に嫁いだ姫」という意味であり、出家前の名前はわからないそう。それがなおさら、神秘的さ、魅力さを増している。

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    2018年09月01日
  • 葉室麟 洛中洛外をゆく。

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    ネタバレ

    大好きな作家さん。
    エッセイ、触れられて満足。
    カラー写真も、で。良かった‼︎
    地図や年表や、関係図も。わかりやすかった。

    『乾山晩愁』尾形光琳・乾山
    海北友松は京都に観に行きましたぁ。
    建仁寺の紅しだれ桜は愛でたい‼︎
    『孤篷の人』小堀遠州

    シリーズ物
    とくに、まだまだ読みたかったぁ。

    巻末エッセイで。
    澤田瞳子さんとで。葉室麟の【若冲】あったかも⁉︎に。
    さらに、残念な気持ちで、いっぱいに。

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    2018年08月29日
  • さわらびの譜

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    ネタバレ

    爽やかに。でも、泣く‼︎

    扇野藩シリーズ。弓士のお話。姉妹のお話。

    石ばしる垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも

    この春はたれにか見せむなき人のかたみにつめる峰のさわらび

    和歌の登場も楽しみのひとつ。
    早蕨の歌。

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    2018年08月18日
  • 無双の花

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     立花宗茂を主人公とする歴史小説である。宗茂は大友家家臣としての戦場での活躍を豊臣秀吉に見出され、大名に取り立てられた。文禄の役では日本の撤退戦において味方の窮地を救う大活躍をするなど戦功には華々しいものがあり、何よりも忠義を重んじる武将としての名声が高かったのである。
     ところが秀吉が死ぬとその地位は揺らぎ、関ヶ原でも西軍についたため、命運は尽きようとしていた。小説では正妻〓(門構えに言)千代の献身的な愛情も描かれる、子をなさぬ仲ながら常に宗茂の心に寄り添う存在として支えたのである。また、立花が信義に生きる家であることを確認しあう仲であった。
     牢人となった宗茂は家康に認めてもらうために江戸

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    2018年06月17日
  • 実朝の首

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     鶴岡八幡宮での実朝暗殺の事件は歴史の変節の象徴としてよく語られる。歴史の授業でも扱われてきた。この小説はその事件を発端として始まる。
     実朝の首はその後、公暁により持ち去られ、さらにそれをかつての実朝恩顧の者たちに奪われる。幕府執権側はこの事実を秘密裏に処理し、実朝の葬儀を恙なくおこなうことを目指す。それが鎌倉幕府の安定、北条執権体制の維持に不可欠と考えていたのである。
     この小説では実朝が殺害された後、一時首が見つからなかったという史書の伝にがモチーフになっている。もちろんこれは創作であり、ストーリー展開には多くの創意がみえる。
     小説の終末近くでそれまで遺骸の一部としてしか登場していなか

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    2018年06月17日
  • 蒼天見ゆ

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    まるきりフィクションかと思って手に取ったが、実話をもとにして、作家の想像力を膨らませた歴史小説だそうだ。
    日本最後の仇討をしたという臼井六郎が主人公。
    しかし、著者は書中で、山岡鉄舟にこう言わせる。
    「わしらが目にしているのは、最後の仇討ではない。最後の武士の生き様だ」
    年下の者が年上の者の仇を討つという、かつては当たり前だった生き方が維新後数十年で失われてしまい、人を殺すことが禁じられた明治初期。
    それでも、親の仇を果たさんとする六郎に、鉄舟は諭す。
    「私怨ではなく天に代わって邪を討つのだ」と。
    そして、艱難辛苦の果て、遂に思いを果たす六郎。
    著者はさらに、幕末から明治初期にかけての事件を描

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    2018年06月10日
  • 星火瞬く

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     大河ドラマの影響もあって幕末に注目が集まっているようだが、この小説の中にも攘夷浪人が登場する激動の時代を描いている。
     ただユニークなことに語り訳はかのシーボルトの息子であり、オランダ人の目を通して語られる幕末の風景ということになる。真の主人公は革命家を自認するバクーニンというロシア人である。革命のためには少々の犠牲は仕方ないとする。人間的に嫌悪感を感じたシーボルトはその生きざまに触れるうちに次第に彼の考えを理解するようになっていくという話である。
     ストーリーの中には勝海舟や高杉晋作といった名だたる人物が登場し、バクーニンの振る舞いに大きな影響を受けていく。実在した人物を核にしていることは

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    2018年06月05日
  • 冬姫

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    ネタバレ

    織田信長の次女「冬姫」の生涯(半生)を描く長編。連作短編の体となっており、冬姫幼少、伴侶となる蒲生氏郷との出会いから徳川政権時代までの数奇な物語を時系列に並べる。

    怪奇小説や剣劇エンターテイメントの要素も見せつつ、葉室解釈による(といってもあくまでノンフィクションとしてである)信長秀吉家康時代の史実小説の要素もあって、俺のように日本史にそれほど通じてなくても楽しく読める工夫が凝らされていて読み心地は良い。司馬遼太郎と山田風太郎のテイストを見せつつ、根底に流れる倫理観はやっぱ葉室燐らしく清楚で凛とさせている。

    女の戦いは心の刃を研いで行うもの…。これが女の戦いなら、やはり戦いなぞというものは

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    2018年05月03日
  • 決戦!関ヶ原

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    歴史小説は好きでこれは面白いと思って読んだが期待通りであった。7人の上手い書き手による人物ごとの短編である。それぞれが書き込まれているので、短編集にありがちな薄さ物足らなさはなかった。
    書き手の取り上げ方によって史実の見方を変えている所も興味深い。一番は「怪僧恵瓊」だった。
    このシリーズは追っかけたい。

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    2018年05月03日
  • 決戦!関ヶ原

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    関ヶ原の戦いを7人の武将の視点から、7人の小説家が描いたオムニバス短編。一つの事件でも、異なる立場から見たら別々の物語になる。ということを感じさせてくれる。

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    2018年03月11日
  • 墨龍賦

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    海北友松の絵が好きで手に取った本。
    信長、秀吉と歴史的に面白い時代に生きていた人物なので、時代背景だけでも楽しめます。

    葉室麟の作品は初めて読みましたが、かなり良かったと思います。

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    2018年03月08日
  • 恋しぐれ

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    蕪村の俳句などを題材にした、全編恋の短編集。
    華やかさはないが、心に沁みる情愛にあふれています。
    たぶん年を重ねた人には響く物語なのかもしれません。恋の儚さに思いを馳せるでしょう。
    ゆっくり味わって読むことをお勧めします。

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    2018年03月01日
  • 風花帖

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    読み終えて、しばらく余韻に浸れる久々の物語。剣の奥義とひたむきな純愛は…清冽さの中に秘めた凄烈さ、そして潔白な清廉さが結ぶ。

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    2018年01月27日
  • 墨龍賦

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    2018.1.7.雲龍図で有名な絵師、海北友松を主人公に描かれた物語。海北友松の息子に春日局が語るという設定。昨年、春、海北友松展が開かれ、改めてみた雲龍図に驚き、是非読みたいと思ってようやくかなった。
    絵師の物語とはいうものの、浅井長政の家臣、海北善右衛門綱親の三男として生まれ当時の習い(戦で明日の命も分からぬ武門では一族の中からひとりを仏門に入れることがしばしば行われた)から東福寺に預けられた友松は還俗して武士になるという夢を持っており、物語の大半は当時の武士との交流が描かれていた。展覧会で説明されていたように明智光秀の家臣であった斎藤内蔵助との交流が詳しく描かれており、雲龍図のモデルは明

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    2018年01月07日
  • 蒼天見ゆ

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    ネタバレ

    最後の仇討ちを行った人の話。
    仇討ち本懐、恩赦で罷免された後、世捨て人の様な生活の中でも晴れない心、「家族の所に生きて帰る奴が一番偉い、家族を泣きの涙で暮らさせちゃあ、男じゃない。どんなに手柄を挙げても人を殺すのは鬼。鬼のまま死ぬより、せめて人で生きて戻ってきたほうがいい。」

    父の教えである蒼天を追い求めた主人公がようやく見つけたのは故郷の空の青さだった。

    さすが!大好きな作家、泣けました。
    葉室麟さんの冥福を祈ります。

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    2018年01月05日