葉室麟のレビュー一覧

  • 蒼天見ゆ

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    まるきりフィクションかと思って手に取ったが、実話をもとにして、作家の想像力を膨らませた歴史小説だそうだ。
    日本最後の仇討をしたという臼井六郎が主人公。
    しかし、著者は書中で、山岡鉄舟にこう言わせる。
    「わしらが目にしているのは、最後の仇討ではない。最後の武士の生き様だ」
    年下の者が年上の者の仇を討つという、かつては当たり前だった生き方が維新後数十年で失われてしまい、人を殺すことが禁じられた明治初期。
    それでも、親の仇を果たさんとする六郎に、鉄舟は諭す。
    「私怨ではなく天に代わって邪を討つのだ」と。
    そして、艱難辛苦の果て、遂に思いを果たす六郎。
    著者はさらに、幕末から明治初期にかけての事件を描いて、物語に膨らみを持たせている。
    山岡鉄舟、勝海舟等を主人公に絡ませ、星亨や大隈重信らも顔をだし、森鴎外の実話も綴られる。
    歴史好きには見逃せない作品と言っていい。

    人としていかに生きるかを問い続け、感動と静謐に満ちた数々の作品を描き続けた葉室麟氏の冥福を祈ります。

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    2018年06月10日
  • 冬姫

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    ネタバレ

    織田信長の次女「冬姫」の生涯(半生)を描く長編。連作短編の体となっており、冬姫幼少、伴侶となる蒲生氏郷との出会いから徳川政権時代までの数奇な物語を時系列に並べる。

    怪奇小説や剣劇エンターテイメントの要素も見せつつ、葉室解釈による(といってもあくまでノンフィクションとしてである)信長秀吉家康時代の史実小説の要素もあって、俺のように日本史にそれほど通じてなくても楽しく読める工夫が凝らされていて読み心地は良い。司馬遼太郎と山田風太郎のテイストを見せつつ、根底に流れる倫理観はやっぱ葉室燐らしく清楚で凛とさせている。

    女の戦いは心の刃を研いで行うもの…。これが女の戦いなら、やはり戦いなぞというものはせん方が絶対いい。男の戦いもどうでもいい。戦国大名の表面の生き方を中途になぞらえて自己啓発本にしている書物の罪なところは、政治を戦争という最低の方法で成そうとするものを持ち上げているところにある、と思う俺は、葉室燐小説の底に流れる「武士の生き方」に対する畏敬だけでない皮肉が心地よいのだが、この本にも、わずかにそれが感じられてよかった。

    争いは避けえれなくとも、戦争を是とする思想が蔓延すれば滅びを招く。なんやかんや言うてもやっぱり平和が一番。平和ボケでエエやないか。このボケた状態を長く広く広げていくことが、性別を超えた立派な戦いだろうと思うのだが。

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    2018年05月03日
  • 決戦!関ヶ原

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    歴史小説は好きでこれは面白いと思って読んだが期待通りであった。7人の上手い書き手による人物ごとの短編である。それぞれが書き込まれているので、短編集にありがちな薄さ物足らなさはなかった。
    書き手の取り上げ方によって史実の見方を変えている所も興味深い。一番は「怪僧恵瓊」だった。
    このシリーズは追っかけたい。

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    2018年05月03日
  • 決戦!関ヶ原

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    関ヶ原の戦いを7人の武将の視点から、7人の小説家が描いたオムニバス短編。一つの事件でも、異なる立場から見たら別々の物語になる。ということを感じさせてくれる。

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    2018年03月11日
  • 墨龍賦

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    海北友松の絵が好きで手に取った本。
    信長、秀吉と歴史的に面白い時代に生きていた人物なので、時代背景だけでも楽しめます。

    葉室麟の作品は初めて読みましたが、かなり良かったと思います。

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    2018年03月08日
  • 恋しぐれ

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    蕪村の俳句などを題材にした、全編恋の短編集。
    華やかさはないが、心に沁みる情愛にあふれています。
    たぶん年を重ねた人には響く物語なのかもしれません。恋の儚さに思いを馳せるでしょう。
    ゆっくり味わって読むことをお勧めします。

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    2018年03月01日
  • はだれ雪 上

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    流罪となった元幕府目付の永井勘解由と若くして扇野藩の後家になった接待役の紗英とが、お互いに凛とした生き方に惹かれ合う。しかし、勘解由は、吉良上野介に刃傷沙汰を犯した浅野家の旧臣に会ったことから勘解由と紗英の両名に扇野藩から口封じの影が忍んでくる。そこに扇野藩重役からの指示により勘解由の監視役まとめを務める佐治弥九郎が自藩と勘解由・紗英の間に立って微妙な立場がアクセントになり面白みを出している。この結末は如何に、下巻が楽しみ。

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    2026年01月17日
  • 紫匂う

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    萩蔵太の妻澪は、過去に契りを交わした笙平に未練があり、浅慮な行動をする人だと思いながら読み進むと、政争に巻き込まれるにつれ蔵太との夫婦愛が段々に強くなっていく。これまでの政争ものの葉室作品と異なり、夫婦・家族愛に溢れる作品であった。

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    2026年01月17日
  • はだれ雪 下

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    浅野内匠頭の最期の言葉は、家臣や領民のことではなく妻の身の上の心配だったのは、武士の対面ではなく人を愛おしむ心の方が優ることを作者は言いたかったのであろう。
    消え残るはだれ雪のように、美しくはないが泥まみれでも生を全うする勘解由とその妻紗英の二人を称賛したい。

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    2026年01月17日
  • 鬼神の如く―黒田叛臣伝―(新潮文庫)

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    生まれて20年福岡にいながら、同著の「月神」で維新の歴史に福岡藩士が登場しない理由を知り、今回は三大お家騒動のひとつである黒田騒動を知る。藩主忠之に疎まれた大膳が命を賭して幕府と戦わなかったら、お家お取り潰しになって黒田の52万石も無くなっていたのだと分かった。
    しかし、宮本武蔵と夢想権之助との剣術対決もあり、ワクワクしながら読むことができた。
    ところで、神君家康より賜った関ヶ原感状は実在するのであろうか、一度拝見してみたい。

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    2026年01月17日
  • 散り椿

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    亡き妻・篠が残した言葉に従い帰藩する新兵衛。藩主代替わりを切っ掛けとする藩内政争で周りの要人や友が亡くなっていき、新兵衛もその抗争に巻き込まれていく。
    篠の意図や亡くなった方々が何故死に至ったのかが、読み進む従い明らかになっていき、表題の散り椿とは「残る椿があると思えるから散り椿は見事に散っていける」という作者の思いが強く分かる作品であった。
    ところで、花首から落ちて散るのが椿だと思っていたが、山茶花のように花弁ごとバラバラに散る散り椿があると知ったので京の地蔵院に観覧しに行ってみたいものだ。

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    2026年01月17日
  • 風花帖

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    読み終えて、しばらく余韻に浸れる久々の物語。剣の奥義とひたむきな純愛は…清冽さの中に秘めた凄烈さ、そして潔白な清廉さが結ぶ。

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    2018年01月27日
  • 墨龍賦

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    2018.1.7.雲龍図で有名な絵師、海北友松を主人公に描かれた物語。海北友松の息子に春日局が語るという設定。昨年、春、海北友松展が開かれ、改めてみた雲龍図に驚き、是非読みたいと思ってようやくかなった。
    絵師の物語とはいうものの、浅井長政の家臣、海北善右衛門綱親の三男として生まれ当時の習い(戦で明日の命も分からぬ武門では一族の中からひとりを仏門に入れることがしばしば行われた)から東福寺に預けられた友松は還俗して武士になるという夢を持っており、物語の大半は当時の武士との交流が描かれていた。展覧会で説明されていたように明智光秀の家臣であった斎藤内蔵助との交流が詳しく描かれており、雲龍図のモデルは明智光秀と斎藤内蔵助との説にあの図がまた生き生きおもいだされた。また、安国寺恵瓊とは腐れ縁という感じだったが、建仁寺に友松が数々の襖絵を描いた所以もなるほどと思え、興味深かった。絵師の一生というより戦国武将を描いた歴史物という風情だったが面白く読めた。
    とても好きだった作者の葉室麟さんが亡くなられ、喪失感でいっぱいである。

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    2018年01月07日
  • 蒼天見ゆ

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    ネタバレ

    最後の仇討ちを行った人の話。
    仇討ち本懐、恩赦で罷免された後、世捨て人の様な生活の中でも晴れない心、「家族の所に生きて帰る奴が一番偉い、家族を泣きの涙で暮らさせちゃあ、男じゃない。どんなに手柄を挙げても人を殺すのは鬼。鬼のまま死ぬより、せめて人で生きて戻ってきたほうがいい。」

    父の教えである蒼天を追い求めた主人公がようやく見つけたのは故郷の空の青さだった。

    さすが!大好きな作家、泣けました。
    葉室麟さんの冥福を祈ります。

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    2018年01月05日
  • 銀漢の賦

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    心に染入る良い物語だった。
    藤沢周平原作の時代劇映画をを見ている様な清々しさを感じた。
    (藤沢周平さんの時代小説を読んでいないもので・・・)
    三人の男たちの友情にまつわる物語。
    名家老と呼ばれるまでの地位に上り詰めた小弥太こと松浦将監。
    郡方の日下部源五、そして数十年前に処刑された農民の十蔵。
    50才を過ぎ人生の終盤に差し掛かった彼らが、藩内で密かに進行している大きな事件に命を懸けて立ち向かう。
    人物の描写が秀逸で登場人物たちのそれぞれぞれ想いが切ないくらいに伝わってくる。
    幼少時代から語られるエピソードは詩情豊かで、人間というものの根本のところは幼少期に体験したことにより形作られると感じさせる。
    ただ美しいだけでなく、時代小説と呼ばれるにふさわしく手に汗握る激しいチャンバラのシーンもある。
    葉室さんは藤沢周平の正統な後継者と呼べるだろう。

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    2017年12月20日
  • 冬姫

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    ネタバレ

    評価は4.

    内容(BOOKデーターベース)
    織田信長の二女、冬。その器量の良さ故に、父親に格別に遇され、周囲の女たちの嫉妬に翻弄される。戦国の世では、男は戦を行い、熾烈に覇権を争い、女は武器を持たずに、心の刃を研ぎすまし、苛烈な“女いくさ”を仕掛けあう。その渦中にあって、冬は父への敬慕の念と、名将の夫・蒲生氏郷へのひたむきな愛情を胸に、乱世を生き抜いてゆく。自ら運命を切り開いた女性の数奇な生涯を辿る歴史長編。

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    2017年12月08日
  • 春雷

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    内容(「BOOK」データベースより)

    “鬼隼人”許すまじ―怨嗟渦巻く豊後・羽根藩。新参の多聞隼人が“覚悟”を秘し、藩主・三浦兼清を名君と成すため、苛烈な改革を断行していた。そんな中、一揆を招きかねない黒菱沼干拓の命を、家老就任を条件に隼人は受諾。大庄屋の“人食い”七右衛門、学者の“大蛇”臥雲を招集、難工事に着手する。だが城中では、反隼人派の策謀が…。著者畢生の羽根藩シリーズ第三弾!

    平成29年12月1日~6日

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    2017年12月06日
  • 決戦!関ヶ原

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    先に「決戦!関ケ原2」を読んでしまったので、こちらも。
    今回は徳川家康(伊東潤)、可児才蔵(吉川永青)、織田有楽斎(天野純希)、宇喜多秀家(上田秀人)、島津義弘(矢野隆)、小早川秀秋(沖方丁)、石田三成(葉室麟)。

    2を読んだ時も感じたが、この戦いほど様々な思惑が交錯した戦いもないように思える。裏切りや傍観や致したかなく、という気持ちで参戦する者、戦いが終わった途端に保身や論功行賞に走る者、純粋に戦うことを突き詰める者、自分自身でなく自分の国をどう守るかに徹する者…。

    この戦いでの勝者と敗者ははっきりとあるものの、その後の人生や評価、あるいは自分自身が顧みての勝者と敗者はそれぞれで、何が勝ちで何が負けかは分からない。
    それらを七人の作家人が七様に描いてくれたのでどれも面白かった。
    個人的には安国寺恵瓊も面白そうな人物で、その後に別の人物像で描いてもらえないだろうかとも思った。

    この中では織田有楽斎や宇喜多秀家、小早川秀秋は面白かった。

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    2017年12月05日
  • 墨龍賦

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    海北友松の話。海北家の次男に産まれたため、寺に出されて、武士になりたい、でも絵も好きだということで明智家の斎藤内蔵助との関わりのことがずらずらと友松の一生として、春日局が語ると言うことで物語が流れる。狩野元徳との関わりが濃厚で、その才能が認められ、下絵画家としても関わるが、自分の生きる道は水墨画と言うことで表紙にもあるような龍、風景を墨の濃淡だけで描き、それを現代まで残す。今京都の国宝展に来ているような、雪舟の様な水墨画を残したその力強さを表すような、一生。画家シリーズをここ1年ぐらい読んだが、やはり一番は等伯。先日の宗達とはどっこいどっこい。やはりあまり画家の一生についての文献が内ので、筆者の想像力によるが、あまりにも飛躍しすぎ、作り物過ぎも宜しくないけど、これはまあまあ。

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    2017年10月20日
  • 決戦!関ヶ原

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    ありえないとも言い切れない設定、前提が面白い連作だった。冲方丁目当てで読んだが、どれも読み応え十分だった。

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    2017年09月19日