葉室麟のレビュー一覧
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まるきりフィクションかと思って手に取ったが、実話をもとにして、作家の想像力を膨らませた歴史小説だそうだ。
日本最後の仇討をしたという臼井六郎が主人公。
しかし、著者は書中で、山岡鉄舟にこう言わせる。
「わしらが目にしているのは、最後の仇討ではない。最後の武士の生き様だ」
年下の者が年上の者の仇を討つという、かつては当たり前だった生き方が維新後数十年で失われてしまい、人を殺すことが禁じられた明治初期。
それでも、親の仇を果たさんとする六郎に、鉄舟は諭す。
「私怨ではなく天に代わって邪を討つのだ」と。
そして、艱難辛苦の果て、遂に思いを果たす六郎。
著者はさらに、幕末から明治初期にかけての事件を描いて、物語に膨らみを持たせている。
山岡鉄舟、勝海舟等を主人公に絡ませ、星亨や大隈重信らも顔をだし、森鴎外の実話も綴られる。
歴史好きには見逃せない作品と言っていい。
人としていかに生きるかを問い続け、感動と静謐に満ちた数々の作品を描き続けた葉室麟氏の冥福を祈ります。 -
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ネタバレ織田信長の次女「冬姫」の生涯(半生)を描く長編。連作短編の体となっており、冬姫幼少、伴侶となる蒲生氏郷との出会いから徳川政権時代までの数奇な物語を時系列に並べる。
怪奇小説や剣劇エンターテイメントの要素も見せつつ、葉室解釈による(といってもあくまでノンフィクションとしてである)信長秀吉家康時代の史実小説の要素もあって、俺のように日本史にそれほど通じてなくても楽しく読める工夫が凝らされていて読み心地は良い。司馬遼太郎と山田風太郎のテイストを見せつつ、根底に流れる倫理観はやっぱ葉室燐らしく清楚で凛とさせている。
女の戦いは心の刃を研いで行うもの…。これが女の戦いなら、やはり戦いなぞというものはせん方が絶対いい。男の戦いもどうでもいい。戦国大名の表面の生き方を中途になぞらえて自己啓発本にしている書物の罪なところは、政治を戦争という最低の方法で成そうとするものを持ち上げているところにある、と思う俺は、葉室燐小説の底に流れる「武士の生き方」に対する畏敬だけでない皮肉が心地よいのだが、この本にも、わずかにそれが感じられてよかった。
争いは避けえれなくとも、戦争を是とする思想が蔓延すれば滅びを招く。なんやかんや言うてもやっぱり平和が一番。平和ボケでエエやないか。このボケた状態を長く広く広げていくことが、性別を超えた立派な戦いだろうと思うのだが。 -
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2018.1.7.雲龍図で有名な絵師、海北友松を主人公に描かれた物語。海北友松の息子に春日局が語るという設定。昨年、春、海北友松展が開かれ、改めてみた雲龍図に驚き、是非読みたいと思ってようやくかなった。
絵師の物語とはいうものの、浅井長政の家臣、海北善右衛門綱親の三男として生まれ当時の習い(戦で明日の命も分からぬ武門では一族の中からひとりを仏門に入れることがしばしば行われた)から東福寺に預けられた友松は還俗して武士になるという夢を持っており、物語の大半は当時の武士との交流が描かれていた。展覧会で説明されていたように明智光秀の家臣であった斎藤内蔵助との交流が詳しく描かれており、雲龍図のモデルは明智光秀と斎藤内蔵助との説にあの図がまた生き生きおもいだされた。また、安国寺恵瓊とは腐れ縁という感じだったが、建仁寺に友松が数々の襖絵を描いた所以もなるほどと思え、興味深かった。絵師の一生というより戦国武将を描いた歴史物という風情だったが面白く読めた。
とても好きだった作者の葉室麟さんが亡くなられ、喪失感でいっぱいである。 -
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心に染入る良い物語だった。
藤沢周平原作の時代劇映画をを見ている様な清々しさを感じた。
(藤沢周平さんの時代小説を読んでいないもので・・・)
三人の男たちの友情にまつわる物語。
名家老と呼ばれるまでの地位に上り詰めた小弥太こと松浦将監。
郡方の日下部源五、そして数十年前に処刑された農民の十蔵。
50才を過ぎ人生の終盤に差し掛かった彼らが、藩内で密かに進行している大きな事件に命を懸けて立ち向かう。
人物の描写が秀逸で登場人物たちのそれぞれぞれ想いが切ないくらいに伝わってくる。
幼少時代から語られるエピソードは詩情豊かで、人間というものの根本のところは幼少期に体験したことにより形作られると感じさせる。
ただ美しいだけでなく、時代小説と呼ばれるにふさわしく手に汗握る激しいチャンバラのシーンもある。
葉室さんは藤沢周平の正統な後継者と呼べるだろう。 -
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先に「決戦!関ケ原2」を読んでしまったので、こちらも。
今回は徳川家康(伊東潤)、可児才蔵(吉川永青)、織田有楽斎(天野純希)、宇喜多秀家(上田秀人)、島津義弘(矢野隆)、小早川秀秋(沖方丁)、石田三成(葉室麟)。
2を読んだ時も感じたが、この戦いほど様々な思惑が交錯した戦いもないように思える。裏切りや傍観や致したかなく、という気持ちで参戦する者、戦いが終わった途端に保身や論功行賞に走る者、純粋に戦うことを突き詰める者、自分自身でなく自分の国をどう守るかに徹する者…。
この戦いでの勝者と敗者ははっきりとあるものの、その後の人生や評価、あるいは自分自身が顧みての勝者と敗者はそれぞれで、何が勝ちで何が負けかは分からない。
それらを七人の作家人が七様に描いてくれたのでどれも面白かった。
個人的には安国寺恵瓊も面白そうな人物で、その後に別の人物像で描いてもらえないだろうかとも思った。
この中では織田有楽斎や宇喜多秀家、小早川秀秋は面白かった。 -
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海北友松の話。海北家の次男に産まれたため、寺に出されて、武士になりたい、でも絵も好きだということで明智家の斎藤内蔵助との関わりのことがずらずらと友松の一生として、春日局が語ると言うことで物語が流れる。狩野元徳との関わりが濃厚で、その才能が認められ、下絵画家としても関わるが、自分の生きる道は水墨画と言うことで表紙にもあるような龍、風景を墨の濃淡だけで描き、それを現代まで残す。今京都の国宝展に来ているような、雪舟の様な水墨画を残したその力強さを表すような、一生。画家シリーズをここ1年ぐらい読んだが、やはり一番は等伯。先日の宗達とはどっこいどっこい。やはりあまり画家の一生についての文献が内ので、筆者の想像力によるが、あまりにも飛躍しすぎ、作り物過ぎも宜しくないけど、これはまあまあ。