葉室麟のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
葉室麟さんの作品は大好きなのですが、この作品は読みにくかった~!
クリスチャンネームが山ほど出てくるのでそのたびにこの人は誰だったっけなあ、になってページを元に戻る。
信長から家康まで、戦乱の世の中の裏では日本をクリスチャンの世界にするという思いと動きがあったとする考察がこの作品の軸になっている。
いつ果てるかもわからない戦乱の世を、未来永劫平和な国にしたいという純粋な思いが天下人をも挿げ替えようとする膨大な計画に黒田如水はことごとく関わってくるのだ。
戦国時代の策士、名軍師としての黒田官兵衛のクリスチャンからの思いが伝わる。
教科書で習う日本の歴史の裏にはもしかしたらこのような流れがあったのかと思わせるし、この話だけでなく私たちが常識的に「知っている」と思っている事も実はその裏に流れるストーリーが隠れているかもしれないと心しておくべき。 -
Posted by ブクログ
実在の人物を主人公にした、著者の数少ない本格歴史小説。
高杉晋作は通称で、諱(本名)は春風だとは、この著で知った。春疾風(はるはやて)の別名が春風なら、疾風迅雷に時代を駆け抜けた晋作にふさわしい名か。
尊攘派の長州藩を征討しようとする幕府軍に対する回天の戦いは、晋作の人生でのクライマックスである。
その行動に駆り立てた要因は、師吉田松陰の影響とともに、上海での見聞だろう(上海での晋作たちの冒険的活劇は読みどころのひとつ)。
欧米列強の植民地化に抗した太平天国軍が敗れ去ったことに焦燥の念を抱き、日本という国家を守るための軍勢を思案する。そして、封建制度の身分を撤廃して編み出されたのが、彼の代名詞ともいえる奇兵隊。
最前線で長州を、日本を救う活躍をした晋作は、長州藩世子定広ほか様々な人物に敬愛される。
さらに、彼を慕う女性が次々と。
長州一の美人との誉れが高い妻の雅、八雲、うの、望東尼、太平天国の周美玲まで。
世の難事を救うため、天から遣わされた剣鎧護法童子のような晋作。辞世の句「おもしろきこともなき世をおもしろく」の通りの、28年の濃密な生涯だった。
高杉晋作を主人公にした作品には、池宮彰一郎の歴史長編小説『高杉晋作』もあり、読み返してみようか。 -
Posted by ブクログ
「人生は選択の積み重ねである」と解説で述べられてあるが、人生の岐路の立っての判断ともいえるだろう。
些細な日常でも、右か左か正か否か、読者もまた様々な局面で判断を強いられているだろう(コロナウイルス騒動の現在も)。
過去に下した己の判断の正否が、心の重荷になっている主人公。冷酷非情に藩命を遂行し、「氷柱の主水」とも仇名されている。
著者の小説の大概を占める清廉潔白な主人公とは一線を画する人物設定。
事件の鍵となる落書の真相を巡って窮地に陥ると、謀計術策を駆使し、局面転回を図る。
誰が味方で誰が敵か、ミステリアスな展開に、夫婦愛や男の友情も加わり、読者の目をくぎ付けにさせる時代小説。 -
Posted by ブクログ
承久の乱で処刑された公卿はWikiだと一条信能、葉室光親、源有雅、葉室宗行、高倉範茂ら(作家葉室鱗はいかなる思いが交錯したか)
※答え→別に(´・ω・`)
ネタバレ的感想
上皇に唆され源頼茂は実朝暗殺に公暁を使い、首をはねる。
物語を巧みにリードするのが朝比奈三郎義秀という伝説の武人に与する和田朝盛とその仲間たち。公暁が持ち去り見つからぬ首をめぐり、和田合戦のリベンジ目論む一統が弔問使の怪しい伊賀局(上皇の愛人亀菊)交野八郎(上皇が使う元盗人)そして幕府北条義時の三つ巴で派手に展開。
承久の乱ですべての伏線が回収される会館を味わえる作品です。
読むべし -
Posted by ブクログ
ネタバレ弘前藩2代藩主・津軽信枚に嫁した二人の室、徳川家康の養女・満天姫と石田三成の三女・辰姫、時には反発しながら時には友情を育み信枚を支えた二人の物語。
敵対した徳川と石田両家から、津軽氏へ二人の室が嫁していたのを知らなかった。
その二人が反発することはあっても決して敵対するわけではなく、信枚のためになすべきことをなし、お互いそれぞれのことを尊重しているのが素晴らしい。
元々は辰姫が正室で、後から満天姫が正室を奪った形ではあるのだが、お互いそのことは気にせずむしろ二人の正室然と振る舞い、最後は義理立てというわけではないのだろうが、辰姫のお子を後継者にすることを約束した満天姫の心意気もとても清々しく心を打つ。
他にも淀の話メインにした「鳳凰記」、三成の話をメインにした「狐狼なり」、斎藤利三の話をメインにした「鷹、翔ける」の三編の短編もとても面白く、葉室さんなりの歴史if物語を堪能できた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ時代小説を読んでみようと本棚をみると葉室さんがいた。題名が気に入って買ったらしい。無骨ながら歌を愛する蔵人という主人公には似合わない表紙でびっくり。これでもいいのかと思ったら脳内イメージが吹っ飛んだ。
いのちなりけり (上下)
葉室麟さんの小説には(読んだ限りですが)厳しい時代の中にも何か甘い抒情が漂っていてほっとするところがある。読みやすいのでつい何冊か手を出す。
続編「花や散るらん」があるそうでまた休日用に積もうかな。
備前小城藩ゆかりの咲弥は才色兼備の評判の女性だった。藩内の変事の後、佐々木宗淳(通称介三郎・・助さん)の後見で水戸藩江戸屋敷に預けられていた。光圀の側室との願いも断る。咲弥には待っている人がいた。二番目の夫間宮蔵人である。歌を返さなかった夫のことが次第に分かってきていた。
最初の夫がなくなり、蔵人が夫に決まったとき、格下の家柄が問題になった。周囲から蔵人の従兄弟の右近なら申し分ないのだがという声に、父親の行部は彼の人柄を見込んでいた。
だが祝言がすみ、床入りの前になって咲弥が蔵人に尋ねた、「あなたの心を表す好きな歌を一首」
しかし無骨者で素養のない蔵人は答えられず、それ以後寝所に近づくことがなかった。
小城藩の本藩佐賀鍋島藩は、キリシタンの動きを禁じる江戸幕府とともに、原城攻めを開始した。だが信綱の命を無視して不意に夜攻めを行い、先駆けをした。
信綱もそれに続かざるをえなかったが、大きなしこりが残った。
鍋島藩では後の世に伝わるような内々の紛争が続いて、小城藩でも跡を狙う行部の暗躍があった。
蔵人に舅の行部を討てと命が下った。彼は引き受け、多少の迷いがあったものの、討たなくてはならない窮地に追い詰められる。行部は死んだ。藩外に出ることが出来ない決まりを無視し、彼は山越えで出奔した。
そして、彼は「心の歌」を求め続ける。
途中で知り合った牢人に世話になり教えを受ける。
湊川で咲弥と会うことになったが、原城責めの折から遺恨のある果し合いを挑まれ、同行していた右近は腕を落とされた。蔵人は彼を縁のある伏見の円光寺で看病する。傷が癒えた右近は世を捨てて出家する。
円光寺は由緒があり格式の高い寺で、京都の内裏と和歌の道で繋がっていた。右近は祐筆を賜る。 蔵人は、放浪生活で様々な辛酸をなめ、生来の豪放でまっすぐ心をさらに深くしていく、自分の生き方を定め、人にも言い、生きる指針にする。
「歌はつまるところ、雅とはひとの心を慈しむ心ではあるまいか」
「わしは桜も好きだが、ひとは山奥の杉のように人目につかずに、ただまっすぐに伸びておるのがよいと思う」
と右京改め清厳にいう。
「ひとが生きていくということは何かを捨てていくことではなく、拾い集めていくことではないのか」
「わしは祝言の夜、すきな和歌を教えてくれといわれて答えられなかった。それで、たったひとつわかったことがある。それは、わしには咲弥殿に伝えたいことがある、ということだ。わしの生きた証は咲弥殿に何かを伝えることだ」
再び約束の両国橋に向かうと、執拗に遺恨を晴らしたい侍に囲まれる。蔵人は咲弥に向かって命がけで血路を拓いていく。
解説でも「蝉しぐれ」を引き合いに出している。どことなく雰囲気が似ている。
佐賀藩は非常に複雑な内情を抱えている。前半まではその藩制やごたごた、江戸屋敷で光圀の「大日本史」編纂の話など長い。だがあの時代の地方と江戸のつながりは、葉室さんの得意の分野かも知れず、面白い。
一方そんな時代に、制度や窮屈な武士の世界切り拓いて、武芸で生きるおとこがすがすがしく、武術に秀でているために自分を救うがそれで他を傷つけてしまう時代に、人に仕えず天地に仕えるという生き方を通した男と、それを信じた女の純愛物語だった。こういった時代小説の純愛というのは生々しくなくていい。
冒頭にある咲弥に送った、一行だけの西行の歌。
春ごとに花のさかりはありなめどあひ見むことはいのちなりけり