葉室麟のレビュー一覧
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面白かった!
「蜩ノ記」に続く羽根藩シリーズ第2弾となっていますが、羽根藩が舞台と言う事以外は関係ありません!
池井戸潤のような企業小説の陰謀系の勧善懲悪ストーリ+時代小説の武士の生き様を加えたような印象(笑)
とはいえ、本質は主人公の再生の物語です。
ストーリとしては、
俊英と謳われた豊後羽根藩の伊吹櫂蔵は、役目をしくじりお役御免。漁師小屋で”襤褸蔵(ぼろぞう)”と呼ばれる無頼暮らしをしている中、家督を譲った弟が切腹。遺書から借銀を巡る藩の裏切りが原因と知ることになります。直後、なぜか藩から出仕を促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がることに。
弟の遺志をつごうとしますが、そこには様 -
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2017年月刊文庫「文蔵」に6回連載された絶筆。
解説と、龍馬の姉が龍馬に代わって桂と西郷に会い、膠着していた薩長同盟交渉の端緒をひらくという「乙女が行く」を収録。
亡くなってからもたくさん単行本になっていたが、これが最後かな。13年間で60冊出して、これから近代日本をつくってきた人々の姿を本格的に描こうとし、日本の近代化とは何だったのかを問いたかったらしい。それにしても残念。まだまだ読みたかった。
不平等条約改正に心血を注いだ陸奥宗光の苦悩を描いている。
紀州藩の上士が脱藩して海援隊に入り、龍馬に心酔しいつもその自由な生き方を反芻していたのだが、条約改正のために欧米列強から対等と認められ -
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御朱印集めで寺社を巡るようになり、お寺や神社に関連する美術や宗教、歴史に携わった人たちの歴史に興味を持つようになりました。
恥ずかしながら、海北友松という絵師の名前は知りませんでした。
建仁寺の雲龍図を描いたという、その史実に興味を持ち本書を手に取りました。
僕は戦国武将では織田信長が好きですが、立場が違えば織田信長も敵と映る…当然といえば当然のことですが、新鮮な視点でした。
読み終わって思うのは、歴史の流れというマクロな視点と、海北友松の生き様を描くミクロな視点とが、とてもいい具合に絡み合っていて、戦国時代をトレースしながら海北友松の息遣いに触れることができ、ページをめくるにつれて興味 -
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与謝蕪村を含めその周囲の人々の恋模様を語った連作短編集。
俳句が散りばめられた構成で、それぞれの恋のわびしさ、切なさが感じられます。
全部で7編
「夜半亭有情」
蕪村が恋する「小糸」。
蕪村の家をたびたび訪ねる与八。
与八と小糸の関係は?
与八の正体は?
そこには、蕪村の若い時の恋の思いがありました。
「春しぐれ」
蕪村の娘「くの」の物語。
くのが離縁された経緯が語れています。
そこには哀しい物語がありました。
「隠れ鬼」
蕪村の弟子「大魯」の物語。
文左衛門として蔵奉行を務めていましたが、遊女の小萩と駆け落ちを企て失敗。藩を追放されます。その後、蕪村の弟子となり大魯と名乗りますが、ある -
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エンターテインメントだから、と言って進めてくれた人がいました。たしかにそんな風なところもあり、史実にも基づいている平安時代の物語は、よくできていておもしろかったです。
主人公藤原隆家という貴族のことは知りませんでしたが、藤原道長と叔父甥の関係とわかれば、なるほどと思います。平安中期、あの『枕草子』の清少納言や『源氏物語』の紫式部なども登場するのが、なお親しみがわくというものです。
藤原氏というのは権力争いを身内一族でやっていたのですね。その世界は『源氏物語』から『平家物語』までおなじみですね。
しかし、この物語はそれだけではなく異民族の日本襲来という、今日的な課題がもされている点が珍 -
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「いのちなりけり」の続編
今度は忠臣蔵に絡めてのストーリ展開です。
前作よりも知っている登場人物が多いせいか、少しは読みやすかった(笑)
テーマはやはり「いのち」「いきざま」そして「人間の情」
どのようにいのちの花を咲かせ、どの様に生き、散らせるか?
悪人のように思われる吉良上野介や神尾与右衛門も最後は見事に散っていく様がある意味美しい!
ストーリとしては、京の郊外にひっそりと暮らす蔵人と咲弥、そして娘の香也。幕府、朝廷、大奥の暗闘、思惑に巻き込まれていきます。
将軍綱吉の母桂昌院が生きているうちに、従一位を朝廷から授かるよう画策する柳沢保明と吉良上野介。
一方でそれを阻止しようとする大奥 -
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面白かった!
もののふの純愛物語!
けど、読みにくくて、なかなかページが進まない!(笑)
登場人物が多く、入れ替わり立ち替わりで、登場人物の名前が読めず、さらに年とともに名前が変わっていくので、人間関係がつかみにくい。
しかし、その中でも、主人公 雨宮蔵人の生きざまは熱く感じることが出来ました。
ストーリとしては、水戸光圀が藤井紋太夫を殺害するシーンから始まります。
ググってみると、これは史実なんですね。その殺害の真相は不明とのこと。本書では、この事件に絡んで雨宮蔵人と咲弥の純愛の物語が語られていきます。
咲弥に好きな和歌を聞かれて、答えられなかった蔵人。
そこから、二人は夫婦ではありながら -
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時は平安中期。枕草子・源氏物語等、王朝文化華やかな時代に存在した“暴れん坊貴公子”・藤原隆家の物語です。
あの有名な「元寇」よりもっと前に、刀伊(女真族)と呼ばれる異国の民が、九州に襲来していたのですね。それを迎え撃つことになる隆家ですが、物語の前半は京での権力争い(隆家は権力に執着はないので、単に権力者に盾突く感じ)に明け暮れていたのですが、後半太宰府に来た後は「美しいものを守りたい」という心意気がとても清々しく、カッコイイのです。
枕草子に描かれているエピソード(くらげの骨・香炉峰の雪など)が自然に挿入されているのも、趣きがあって雅な気持ちになりました。 -
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清々しい気持ちになれる物語。
第十四回松本清張受賞作。
身分の違う三人の友情の物語です。
月ヶ瀬半の郡方の日下部源五、名家老と謳われ幕閣まで名声が届いている松浦将監、数十年前に処刑された農民の十蔵。
この三人の幼少のころからの付き合い、思い、志が熱く感じられる物語でした。
そして、本書のタイトル「銀漢」は三人の男たちの友情のシンボルとして扱われています。
ちなみに「銀漢」は天の川のことで、本書の表表紙に3人と一緒に描かれていますが、本書の中では、さらに別なメッセージとしても語られています。
ストーリとしては、幼いころから仲良く、支えあっていた3人。
大人になると、十蔵は農民一揆を指導する -
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続編の「花や散るらん 」の方を先に読んだので、蔵人と咲弥がずっと離れ離れで、しかも初めの頃は咲弥は蔵人に、かなり塩対応をしていたのは、意外でした。
藩、幕府、朝廷の思惑等、背景が複雑なので、“政争モノ”の色が強いですが、蔵人の咲弥に対する一途な思いがグッときますし、ラストで咲弥の前に満身創痍で蔵人が現われる場面を読んだときに、“ああ、これはラブストーリーだなぁ”としみじみ思いました。
葉室さんは、時々ハッとするほど美しい描写をされるのですが、本書で個人的に好きだったのは、醍醐寺の桜吹雪の中で、蔵人と清厳(右京)が語り合う場面です。美しい情景が目に浮かぶようでした・・。