あらすじ
京に暮らし、二世夜半亭として世間に認められている与謝蕪村。よき友人や弟子たちに囲まれ、悠々自適に過ごす晩年の彼に小さな変化が……。祇園の妓女に惚れてしまったのだ。蕪村の一途な想いに友人の円山応挙や上田秋成、弟子たちは驚き呆れるばかり。天明の京を舞台に繰り広げられる人間模様を淡やかに描いた、傑作連作短編集。著者の特徴である「人を想う気持ち」が通奏低音の如く流れ、読む人の気持ちを暖める。新たな蕪村像を描いた意欲作!
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与謝蕪村の恋のはなし。
だけではない。
蕪村に関わるたくさんの人たちの
想いがある。
皆、懸命に生きて、
あるひとは芸術に、
あるひとは恋に、
それぞれに生きていく時間の中で
関わる人を大切に想い
その姿が美しく、悲しい。
中でも、ある登場人物の言葉
「叶うはよし、叶いたがるは悪しき」
は、ずっと心に残る。
折々に入る蕪村の歌も
より一層、ものがたりへの
感動を深めてくれる。
しみじみと美しく、
懐かしく、恋しい作品だった。
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京を舞台にした与謝蕪村の老いらくの恋と、蕪村の娘や弟子達の無器用なまでの恋模様をしっとりと描いた連作短編。
相手を一途に愛おしく想う様が妖しく美しく描かれてあり、読んでいるこちらも心がザワザワしてくる。
そしてそれをそっと見守る蕪村の温かな眼差しに泣ける。
短編に添えられる蕪村の俳句や絵が内容にピタリと合っていて、これまた泣ける。
蕪村の周りの恋は切ないのに粋に思えるから不思議だ。
円山応挙が恋する気持ちを「せつのうて哀しいのやけど、なにやらあたりが生き生きと見えましてなあ」と言っていた。
恋とは正にこれである!
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時代を代表する芸術家与謝蕪村。 自身の最後の恋も含めた、周囲の人々の様々な恋の形を描ききった、珠玉の短編連作もの。特に、 蕪村の弟子月渓が絵師として大成し、呉春と名乗るまでを描いた「月渓の恋」。恋する人が、家族を救うために 女衒に売り飛ばされる。面影を胸に秘めながらようやく添い遂げられ至福の時を過ごす。が、突然訪れた彼女の死。蕪村の哀歓を感じる言葉に馳せ、月渓のとった行動とは。。読みどころは、友人でもある文化人 円山応挙、上田秋成等の日々の触れあいを俳句を通して想像力逞しく繊細に描く事で、遠い存在である彼らを読者に身近な存在として浮き彫りにした事であろうか。 そして、辞世の句” 白梅にあくる夜ばかりとなりにけり ”を紐解くために書かれた作品かもしれないな~。静謐なる文体にて最後の最後までじっくり堪能。 心静かなる時を過ごす事ができますよ~。最近読んだ中でもダントツキラキラの5☆。
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蕪村は主人公というより、語り手だったのだろうか。
情熱的な恋であっても、どこか雨の中に佇んでいるような、わびしさや寂しさが滲んでいるようだった。
いくつもの恋の、人の心の、ままならなさが、最初から最後まで蕪村の恋を表していたような気がする。
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内容(「BOOK」データベースより)
京に暮らし、二世夜半亭として世間に認められている与謝蕪村。弟子たちに囲まれて平穏に過ごす晩年の彼に小さな変化が…。祇園の妓女に惚れてしまったのだ。蕪村の一途な想いに友人の応挙や秋成、弟子たちは驚き呆れるばかり。天明の京を舞台に繰り広げられる人間模様を淡やかに描いた傑作連作短編集。
令和3年1月1日~3日
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久しぶりの葉室麟
66歳という若さで逝ってしまわれた
これは与謝蕪村を核に周りの人たちの恋を描く
心の奥に降るしぐれのような
散りばめられた俳句がピリッとしめる
切なくて愛おしい
≪ 淡やかに 時雨のごとく 恋のいろ ≫
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与謝蕪村を含めその周囲の人々の恋模様を語った連作短編集。
俳句が散りばめられた構成で、それぞれの恋のわびしさ、切なさが感じられます。
全部で7編
「夜半亭有情」
蕪村が恋する「小糸」。
蕪村の家をたびたび訪ねる与八。
与八と小糸の関係は?
与八の正体は?
そこには、蕪村の若い時の恋の思いがありました。
「春しぐれ」
蕪村の娘「くの」の物語。
くのが離縁された経緯が語れています。
そこには哀しい物語がありました。
「隠れ鬼」
蕪村の弟子「大魯」の物語。
文左衛門として蔵奉行を務めていましたが、遊女の小萩と駆け落ちを企て失敗。藩を追放されます。その後、蕪村の弟子となり大魯と名乗りますが、あることから、自分の駆け落ちが仕組まれたこと知ります。
そこで、再び出会った小萩。小萩との会話から自分の生きざまを振り返ります。
「月渓の恋」
蕪村の弟子「月渓」の物語。
恋した「おはる」は女衒に売り飛ばされてしまいます。
太夫にまでなっていた「おはる」ですが、周りの力をかりて、身請けできることに。ようやく、二人は夫婦となりますが、そこには哀しい結末が。
「雛灯り」
蕪村の女中「おもと」の物語。
源太騒動にまつわる「おもと」の哀しい過去。
その騒動の真相と、おもとの思いが語られています。
「牡丹散る」
蕪村の弟子「応挙」の元に訪れた夫婦、七重の物語。
応挙の元に通う七重に恋するようになった応挙。
そんな中、国許に帰る必要がある七重の夫、新五郎。
国許から離縁を迫れれる七重。応挙と七重のいく末は?
「梅の影」
蕪村の弟子で、遊女の「お梅」の物語。
蕪村が亡くなった後、「お梅」と「小糸」が出会う事に。二人の蕪村を思う気持ちが伝わってきます。
ゆっくりと流れる時間の中で、さまざまな思いが伝わってくる物語でした。
じっくり読みたい物語。
お勧め。
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蕪村の俳句などを題材にした、全編恋の短編集。
華やかさはないが、心に沁みる情愛にあふれています。
たぶん年を重ねた人には響く物語なのかもしれません。恋の儚さに思いを馳せるでしょう。
ゆっくり味わって読むことをお勧めします。
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かみしめるぅ。
ゆっくりとしか、読み進めなかったん、ですが。
味わえましてぇ。
そ、して。
コレはいい‼︎今後、何度でも手にとりそうな気配。
散りばめられている俳句。
蕪村、応挙。呉春。
また、見方がかわりまするぅ。
船毎に 蕎麦呼ぶ月の 出汐哉
花守は 野守に劣る けふの月
白梅に あくる夜ばかりと なりにけり
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蕪村が主役のお話。
やっぱりキャラが立っているし、口調もお上品な町人っぽい感じで、何より俳句がたくさんで渋い魅力満載でした。
色んな恋が描かれているけれど決して恋が中心とは言い切れなくて、俳句がいいスパイスになっている。
月渓さんも円山応挙もお梅もいい味だしてる。
葉室さんのおかげで初めて時代小説にこんなにはまっています。
心の機微が本当にすてきに描かれていると思います。
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葉室麟なのでそれなりレベルの作品であろうと期待して読んだとは言え、予想してたよりこれはかなり収穫モンの短編集だった。
まさかの良質な恋愛小説。そういや作者には「いのちなりけり」という傑作があったのを忘れていた。油断したぁ(いや、まぁ構えて読む必要はないにせよ)
下手なヤツが書くとつまらない連続ドラマの小説版にたいになる大人の恋、それが葉室燐の手にかかると儚く侘しくも凛とした綺麗な小説になるんだから、小説ってのは罪作りなものだなぁ
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憎からぬ思いを抱く芸妓を弟子にし、亡き愛妻を彷彿とさせる女に横恋慕する。本書における与謝蕪村先生は何とも人間臭く、他の登場人物も俗物的で親近感を覚える。そんな人々が繰り広げる豊かな人間ドラマが蕪村の句と結びついて味わい深い。
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蕪村の残した句から、こんなにたくさんの奥深い物語を書く葉室さんって凄い人だ…と感動した。
静かに小川が流れるように進むお話しに心が和みました。
西條奈加さんの ごんたくれ は、
蘆雪と箏白目線の物語で、
こちらは月渓の目線で、どちらも同じ時期に読めて良かった。
再読の時も、ごんたくれ→恋しぐれ で読もう。
Posted by ブクログ
与謝蕪村を取り巻く人々の絵や俳句に込めた想いを綴った物語、歳の離れた小糸との恋も
純粋で蕪村の心情が伝わった内容だった。
蕪村の家は京都の仏光寺近くとある。休みの日にでも行ってみたい。
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江戸中期、京都に住む俳人の与謝蕪村を中心とした短編集。
蕪村は芸者の小糸に老いらくの恋をするが、門人に反対され別れさせられるところから、最後はやはり小糸に終わる。
全篇が恋の話で、所々に蕪村の読んだ句が挟まれたつくりになっている。
現代では芸者という職業がどうの不倫がどうのとやかましいのだろうが、それはそれ。
当時の京都の住民の人情話を読んだ、みたいな感覚。
「牡丹散る」で見せた円山応挙の男ぶりがッコイイ。ラストの「梅の影」もよかった。
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久々の葉室作品、恋物語は初読み。蕪村当人と弟子たち・友人を絡め、一人一人の恋情、心模様。侘・寂の美世界に散りばめられる、切なさと楔の俳句。やっぱり渋い♪。
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蕪村とその周辺の人々の大人の恋、というより老いの恋を描く短編集。
特に男の晩年の恋を、俳句や絵に託して作品を描く新しい試みに挑戦している。
文体は藤沢周平を彷彿させ、淡々とした感じで良い作品でした。
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与謝蕪村の周辺の人を主人公としたラブストーリーの短編集。さわやかだったり、ほろ苦かったり、道なき恋で悲しかったり、様々。長編のほうが好きだけど、作者の得意とする文人や絵師の物語なので、まずは短編から葉室作品に入りたいという人にはいいかも。
Posted by ブクログ
全1巻。
与謝蕪村というか、
与謝蕪村周辺の文学サロンの恋模様を
連作短編集のかたちで描いた作品。
歌を効果的に使用する手法を得意とする著者にとって、
俳人・与謝蕪村周辺を描く今作は、
面目躍如な感がある。
が。
これは読む人や、
読むタイミングを選ぶ本だと思った。
特に盛り上がりもなく、
淡々と、淡く静かに描写しているだけなので、
ぐっと引きつける部分もなく、
特に歌の知識がない自分みたいな人間には
ただ上辺をなぞるような読み方しか出来なかった。
与謝蕪村が題材なため、
いつもより、より歌が前面に出てきており、
結果、文学チックな装いだし。
歌に興味が有る人、文学的な恋が好きな人
あとは多分隠居した老人とか以外、
あまりお勧めしない。
小説・与謝蕪村ではない。