葉室麟のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
前回読んだ『風の軍師・黒田官兵衛』とは違い、登場人物たちに血の通いも感じられて、視点の面白さを十分に堪能することができた。
「本能寺の変」や松永久秀の謀反の影にあの人物がいた、というのは、なんというか、言いえて妙だ。
うがった見方なのは重々承知だが、案外、官兵衛やキリシタンたちも、結局彼の掌の上にいたのかもしれない。
黒田官兵衛は天下人から恐れられたほどの人物だけれど、早世でありながら彼と並べられる「今張良」、もう一人の「兵衛」、よほどすごい人物だったのだろう。
しかし、今回の話、黒田官兵衛が主人公のような文句だが、読んだ印象としてはむしろ日本人修道士であるジョアンの方がそう呼ぶにふさわしい気がした。
歴史上ではほとんど語られていない彼にこれほどまでの色彩を与えたストーリーテラーぶり、流石の葉室先生だ。
それにしても、好きな歴史的人物はより好きに、それほどでもない人物は好きに、嫌いな人物さえ愛おしくしてしまうのが葉室先生、という気がしていたのだけれど、今回もまさにその通りだった。 -
Posted by ブクログ
「第二黒田騒動」とも呼ばれる筑前福岡藩の実際のお家騒動に絡めた物語。
まず思ったことは、この方の描く話の登場人物はみな「覚悟」を知っているな、ということです。
「腹を括る」ではなくて「覚悟」。
貫く為に、例え理不尽に謗られ妬まれ疎まれようとも、動じない静寂の力強さ。それは己が定め決めた事の顛末に対して不服を持たない力強さでもある。
主人公の卯乃が失明したときに預けられた家の姑りくは、香を聞くことを教えて、「ひとは匂いです」という。この表現には、権利主義や唯物主義になりがちな世に対して、表層のその奥に大事なものがある、と言われているようで、ぐぐっときました。
あと毎度ですが、美術工芸品の描写がさりげなく詳しい(笑)
香道具の意匠や茶席での茶碗の種類をそっと書いててでもうんちくくさくなくて、その彩りも、わたしがこの方の作品が好きなもう一つの訳。