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「自分の残り時間を考えた。十年、二十年あるだろうか。そう思った時から歴史時代小説を書き始めた。老いを前にした焦りかと思ったが、二度とあきらめたくなかった」――50歳で創作活動を始め、第146回直木賞を『蜩ノ記』で受賞した、いま最も中高年に支持されている作家・葉室麟、初めての随筆集。若き日々への回想や出会った人々や書物、直木賞受賞後のあれやこれや。江戸時代の博多を舞台にした短篇小説「夏芝居」も収録。
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Posted by ブクログ
五十でデビューした著者ならではの 人生観が中年に沁みる。 藤沢周平や山本周五郎も 読み返したくなった。
葉室麟の始めての随筆集。 その中の「柚子の花が咲くとき」の中で、 「社会人になって原稿を書く仕事をする傍ら、たまに文學界や群像などの文芸誌が主催する新人賞に応募したこともあった・・・(略)・・・しかし五十歳になった時、『このままでいいのだろうか』とふと思い直した。若い頃に抱いた夢や思いを何ひとつ成し...続きを読む遂げることなく、いたずらに歳月は過ぎ去っていく。自分の残り時間を考えた。十年二十年あるだろうか。そう思った時から歴史時代小説を書き始めた。老いを前にした焦りかとも思ったが二度とあきらめたくはなかった。書き続けるうちに、懸命に過ごせば、移ろい過ぎる時は豊かさを増す事ができるとわかるようになった。時間は長くはなりはしないが豊穣にはなっていくのだ」 少し長い引用だが、この中に作者の全てが詰め込まれているような気がした。 それに引き換えわが身を振り返ってみれば・・・恥ずかしい限りです。
武士の立場を、藤沢周平と近い雰囲気で描いていると思っていたが、この本を読んでそれも納得できた。また、自分の時間の制約を意識することを考えさせられた。
大河ドラマ「龍馬伝」では薩長同盟は龍馬の功績のように書かれているが葉室は龍馬一個人で果たせるものではないとしてます。 郷里の武将 立花宗茂を描いた「無双の花」について。若いときは豊臣秀吉に讃えられていたのが関ヶ原で西軍につき領地家禄も失い浪人になったのが、のち徳川に仕官がかない大名に返り咲いた...続きを読むことをだいざいにしている。葉室は勝者より敗者などに寄り添う視線が読者を惹き付けるのだろう。 直木賞を受賞してからのこころの構えを書いてますが、まだまだ伝えたいことがあったと思うと急逝して残念でならない。
随筆だけで読むのではなく、葉室先生の作品を知ったうえで、読んでほしい一冊。 巻末の『夏芝居』、何となく予想はしていたのに、市助に「やられた…」とうなだれずにはいられなかった。
直木賞受賞以前から注目していた葉室麟の随筆集。 作家としてのデビューが遅く、何度応募すれども賞に該当せず、「柚子は九年で花が咲く」の言葉に例え、10年目にやっと直木賞を受賞できたことを淡々と記している。 著者の人柄がにじみ出るエッセイ集。 巻末の短編小説も、著者の師事する藤沢周平の趣きがある佳作。
葉室麟の随想集。 日経新聞のリレーコラムは読んでいる時も思ったが、小説の清廉なイメージより、少し柔らかい文体でエッセイを書くんやなぁと、この本を読んでも改めて思った。 葉室さん自身も行っているので失礼を承知で書くが、彼の魅力は遅咲きの花であるところ。小説家一筋何十年って人の作品もいいものだが、葉室...続きを読む作品は小説家になる前の経験なり思索なりが積み重なって磨かれたものなんだと、この随想集を読んで分かった気がする。 年齢だけは半世紀を経ようとしている俺、折り返しを過ぎてしまって、残りの人生はこれまでより短いものになるはずだが、その場で出来ることを着実やっていく、そういう生き方を指南されたような気がした。 そうそう、藤沢周平、北重人作品もフォローしておこう。
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