葉室麟のレビュー一覧

  • 橘花抄(新潮文庫)

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    母を亡くし、今また父を失った卯乃。親戚には引き取り手がなく 立花重根に引き取られた。
    成長していく中で、父の自害の「真相」とやらを知らされ、目が見えなくなってしまう。本当の真相を求める中で自らの出生の秘密を知る。自分を愛おしんでくれる人達を自分も愛おしく思っていくことで前に進むことができるのだろう。
    しなやかにたくましく生きている卯乃は素敵です

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    2013年06月03日
  • いのちなりけり

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    歳月の重みと生きていくことの切なさ、そし て命への慈しみが感じられる和歌とともに 綴った良質な歴史時代小説。史実である大日 本史を巡る光圀と綱吉の確執。その渦に否応 なしに巻き込まれる二人のうら若き夫婦。無 学だが自らの考えと行き方の間に少しも揺ら ぎがない蔵人とぶれない自分らしい生き方を する咲弥。静謐な恋、矜持そして覚悟をしっ とりと描く。 雨の降る日、濃いめの珈琲の お供にお勧めでーす。

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    2013年05月11日
  • 橘花抄(新潮文庫)

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    己の道を信じ、幽閉、最終的には暗殺をも従容と受け入れる重根。そんな人物像を現代小説の中で描くと嘘っぽさばかりが目立つのですが、そうした鮮烈な生き方を描けるのが時代小説の醍醐味です。
    最近どちらかと言えば苦手にしていた葉室さん。どうも女性視点での男女の愛情を中心に描かれることが多く、それが悪いというという訳では無いのですが、私の好みからは外れて行きます。この作品も中心にはヒロイン・卯乃と重根・峯均兄弟の愛情があるのですが、同時に男性の生き様にも多くのページが割かれ、そのあたりが気に入りました。
    もっとも剣鬼・天馬の造形や剣術シーンは少々やり過ぎですが。。

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    2016年06月19日
  • 橘花抄(新潮文庫)

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    全1巻。
    加賀騒動、伊達騒動とならび、
    三大お家騒動と呼ばれる黒田騒動。
    の、次の世代。
    第二の黒田騒動と呼ばれる事件を背景に、
    剣と恋を描いた物語。

    けっこうよかった。
    著者特有の、
    すこしイヤミ臭いくらいの堅苦しさが大分影を潜め、
    往年の時代ものを読んでいるような
    割とベタな雰囲気。
    後書きにも書かれてるけど、
    藤沢周平を彷彿とさせる。
    リアルタイムでこういうの書ける人は貴重だと思う。

    著者が多様する和歌を使った心情表現も
    いい頃合いで邪魔にならず、
    宮本武蔵vs佐々木小次郎な気分の
    クライマックスはすごく迫力がある。

    著者の新作に、
    (個人的には)最近あまり当たりが無かったので、

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    2013年05月02日
  • 柚子の花咲く

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    このところ作品を良く目にする機会が多く
    気になっていた作家さん。初読です。
    もっと号泣するくらいに泣けるのかと思っていた
    んですがそれは叶わず。でも、大袈裟な表現では
    ないながらも、しっかりと、そして誠実な文章で
    読み易く、分かり易く、時代小説が苦手な方でも
    すんなり入っていける作風。

    友とは、師弟とは、教えるという事、学ぶという事、
    そして愛するという事...当たり前に大切な事が
    当たり前に書かれています。単純な行動原理に
    基づいて考え、動く主人公の「恭平」は決して
    派手な存在ではなく、我々と同じ等身大の人間と
    して描かれているところが、何かを与えてくれる。

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    2013年02月27日
  • 柚子の花咲く

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    それぞれが誰かを想っていて、けれど現実には叶わない。
    晴れない気持ちを抱えた登場人物たちが、最後にはそれぞれの形で想いに決着をつけていくのが心に残った。
    この著者の書く、抑えめでいて爽やかな男女の恋の描写が好き。

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    2013年02月23日
  • 花や散るらん

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    「いのちなりけり」の続編。前作で「天地に仕え、命に仕える」侍が、自分の心の歌を探し求め「春ごとに花のさかりはありなめどあひ見むことはいのちなりけり」と16年かかって本当の夫婦になった蔵人と咲弥。
    静かな暮らしが、また幕府と朝廷のせめぎあいに巻き込まれていく。とても真っ直ぐで美しい夫婦。「朝廷と幕府」「雅と武」を対比させながら、赤穂浪士の討ち入りに新たな見方を綴る。
    今回は「いかにせん都の春も惜しけれど馴れし東の花や散るらん」という歌を二つの意味に使う。咲弥が京から大奥へ来た女たちの朝廷を思う気持ちは分かるけれど、危ういことをすれば東国になじんだ女たちが散ることになると大奥に釘を刺す。後では夫・

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    2013年01月26日
  • 秋月記

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    期待通りに心が洗われました。捨て石になるという考え方は絶えて久しい気がしますが、とっても日本的で心を鷲掴みにされます。蜩ノ記といい、涙なし葉室作品を読むことは難しいようです。憧れるけれど侍に生まれなくて良かったと思う卑怯者な私。

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    2013年01月12日
  • 乾山晩愁

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    葉室麟デビュー作。第29回歴史文学賞。
    権力者の傍らに近侍して生き方そのものが修羅である画家達を描く。
    尾形光琳の弟「尾形乾山」「狩野永徳」「長谷川等伯」「狩野探幽の弟子・清原雪信」「英一蝶」の短編連作5編。
    画家の修羅を描きながら、詩・俳句・書画に対するその素養の高さ、文章の確かさと目のつけどころ。しかも、司馬遼太郎ばりの徹底した調査。司馬遼太郎が歴史・人物の史実を丹念に追ったのに対し、葉室麟の視点は背景・文化も繫ぐ。

    葉室麟には「秋月記」で出会い山本周五郎「樅の木は残った」を連想し「川あかり」で大ファンになったが、「刀伊入寇」「星火瞬く」「風渡る」で少しがっかりし、「橘花抄」でその清冽な

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    2012年08月30日
  • いのちなりけり

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    ネタバレ

    これまたすごくよかった〜!「秋月記」に続き、葉室麟の「もののふ」ものを読みましたが、非情に面白かった!今回は、故あって新婚数ヶ月の妻と17年も離ればなれになってしまう武士が、妻に一首の和歌を届けるために、ただひたすらに生きて行くお話。とはいえ、腕がたつ上に、藩の重要な秘密を知ってしまっているから、いろいろと困難に巻き込まれるのだけれども。葉室麟のもののふ系の主人公は皆、忠義もので、剣の腕が立ち、無骨で一本気なのだけれども、この主人公雨宮蔵人もご多分に漏れず。本当に一気に読んでしまった。葉室麟をすべて読んでしまうかも。ハマった。

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    2012年06月23日
  • 柚子の花咲く

    購入済み

    柚子の花咲く

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    2012年06月03日
  • 実朝の首

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    直木賞受賞作品。甥の公暁に鎌倉八幡で斬られた実朝としか認識していなかったけど、和歌の造詣が深く、生きることに絶望していて、斬られるとわかっていて潔く斬られた実朝と、権力のため、源氏を根絶やしにしようとしていた北条政子の陰謀。面白かった。

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    2012年05月28日
  • いのちなりけり

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    全1巻。
    今年の直木賞とってた作家さん。
    後半まで読んで純愛小説だったことに気付く。

    和歌をテーマにしてるけど、
    武士の物語なので、なよなよはしてない。
    「雅」と「武」のバランスが絶妙で、
    ドキドキしながらも美しい。
    べたっとしたチャラい恋愛ものって感じは無く、
    キレイで硬質な純愛物語。
    おっさんがグッとくる。
    「蔵人殿は恋をしてござるゆえ」とか、もうね。

    あいかわらず登場人物の名前とか説明とか
    丁寧すぎて逆に煩雑な感はあるけど、
    この作家さんになれてきたのでそんな気にならず。
    ただ、最後の方少し蛇足な感はある。

    役所広司とかで映画化されそうな感じ。

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    2012年05月09日
  • 柚子の花咲く

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    主人公恭平の真っ直ぐな生き方、苦難にめげず目的のために身を捨ててまで真相を究明する姿に感動しました。師を思う心に私も涙が出ました。
     女性の人物像も丁寧に書かれていて好感が持てます。
    作者の本を4.5冊読んでいて上の方にいきますね。

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    2012年04月18日
  • 実朝の首

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    竹宮恵子さんの吾妻鏡を思い出しつつ読みました。実朝の真意はどこにあったのかいろいろ考えさせられる場面に出会うことが出来ました。

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    2012年03月22日
  • 柚子の花咲く

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    「柚子は九年で花が咲く」その意味が少しずつ明らかになる。
    少年時代に薫陶を受けた師・梶与五郎の殺害の真実を突き止めるため隣藩に潜入する。時代ミステリー的な中で愛することや成長するということを教えてくれる作品。
    大人たちに背き、子供たちが梶の死後も村塾に籠り、守り続ける理由が明らかになる。人をのびのびじっくりと、そして点取り知識ばかりで大事なことを教えない現代教育を指摘しているのかもしれない。

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    2012年05月12日
  • 柚子の花咲く

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    ネタバレ

    ひさしぶりに一気に読んでしまった本です。
    謎を解く要素はライトかなと思います。
    人が人を思ういろいろな気持ちの様子が後半に近づくにつれて入り込む事ができました。
    ちょっと最後の親の気持ちがわからんかったかな…
    結局妾腹の息子に負い目があって、気持ちも態度もそういう扱いしかできんかったのか…
    全員善人の話はないのだろうけれど、ちょっと親と兄に救いがなさ過ぎる。

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    2011年07月26日
  • 乾山晩愁

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    面白かった!!!
    安土桃山~元禄まで、日本画の中心を担った絵師達…とその近くにいた絵師達のお話し。

    鮮やかな才能の迸りあり、
    御用絵師になるためどう時流を読むかの権力闘争あり、
    女絵師の切ない恋の物語あり、
    大奥のドロドロと深い男女の情愛あり、
    最後に読者をにやりとさせるちょっとしたひねり構造ありで、
    かなり満足のできる小説でした。

    最初は久々のキチッとした時代小説形式(と言うか名前の変わり方)にちょっと戸惑いましたが、
    読み出すと硬い中に深さのある心理描写と、
    人間模様の美しさに引き込まれます。
    とくに狩野永徳の絵に関するシンプルなのにありありと目に浮かぶ様な描写は凄かった。
    文章とスト

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    2011年02月04日
  • 柚子の花咲く

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    初めて読む方でしたが、良かったです。人の想いが形になって現れるまでには、長い年月が必要なのかもしれません。人それぞれ何を大切に思って生きていくのかで生き様が違ってくるのでしょう。青葉堂村塾の子供達、師の思いを受け継いで立派に成長している。人を育てているのは、師の生きていく姿勢だったんですね。悪人でもその心の内を聞くと哀しさを思わせるところに、作者の気持ちを感じます。

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    2011年07月17日
  • 柚子の花咲く

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    時代小説です。
    江戸時代、藩には藩校という学校があった。
    とはいえ、予算の関係などで、数は少ない。
    村塾で15歳までは学ぶ。
    「桃栗三年、柿八年、柚は九年で花が咲く、梨の大馬鹿十八年」というのが口癖だった恩師。
    日坂藩の青葉堂村塾で、子供の頃に、筒井恭平は、梶与五郎という先生に習っていた。
    ふだんは川で一緒に釣りをしたり、よく遊べといわんばかりのお気楽な先生だったが、藩校へ上がる段になって、みっちり仕込んでくれて、春の試験で8番となる。
    群方となった恭平は、恩師の予想外の死を知らされる。
    人妻を伴っていたため、その夫に女敵討ちになったというのだ。
    折しも、洪水で川の流れが変わり、隣の藩との境界

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    2010年10月06日