葉室麟のレビュー一覧
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戦乱の時代の中、女性が主人公の武士の妻の覚悟を感じられる7作の短編物語
「汐の恋文」
朝鮮出兵で半島にわたった夫へに届かなかった恋文。それが結果的に秀吉の手に。秀吉からの呼び出しに応じた菊子は秀吉に対峙します。秀吉は、菊子の身代わりとして夫の帰国を命じる。夫は帰ってくるのか?
とても強い夫婦の絆を感じる物語。
「氷雨降る」
キリシタンの大名の晴信は大八に騙され、結果家康に言上するも、晴信も処罰されることに。
その最後に立ちあった妻と埋葬の日に起きた出来事
「花の陰」
関ヶ原の戦いの前後で、屋敷に火をかけられたときに、逃げずにその場で果てた細川忠興の正室ガラシャ。一方で、ガラシャを置いて逃れた息子嫁の千世。汚名を着せられた千世の生活、そして、その日ガラシャと千世の間に託された言葉とはってな感じ
また、忠興の息子忠隆と千世は大名をすて、二人で共に生きることに、しかし、生まれた娘の将来を思い、結果離縁する二人。
これもいい話
ほか、
「ぎんぎんじょ」
家のため耐える女性像
ぎんぎんじょとは穏やかで慎み深くあれということ
「くのないように」
父親が徳川家に殺されたと思っている八十姫の生き様
「牡丹咲くころ」
身分の違う家同士の婚姻の中を生きた女性の話
「天草の賦」
天草四郎を逃がそうとした女性の話
といった物語。
短編ですが、お勧め -
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不平等条約の改正に取り組んだ『剃刀外相』こと陸奥宗光の半生を描いた葉室さんの絶筆。
未完と知らずに読んでしまったので、結末をどう描かれるのか分からないままなのは残念。勿論、一番残念なのは作家さんご本人だろうが。
陸奥宗光というと、先に書いたように外相として不平等条約改正に取り組んだことと、奥様の亮子夫人が大変な美人で『鹿鳴館の華』の一人として活躍したことくらいしか知らなかったので、それまでの彼の人生は興味深く読んだ。
特に坂本龍馬との関わりがこれほどあったとは全く知らず、この作品では坂本龍馬ならどう世界と渡り合うのか、坂本龍馬のように欧米に臆することなく交渉するためにはどうするのかということを念頭に動くので、坂本龍馬との関わりが陸奥宗光の原点だったのだと思え、すでにこの世にいない坂本龍馬が様々な人に影響を与えたのだと感じる。
勿論それは葉室さんなりの坂本龍馬像であり陸奥宗光像なのだけど。
葉室さんらしく文体はサラリとして読みやすい。
ここで描かれる伊藤博文の色好みもまた政治の一つの要素になっている。官邸でのかの醜聞もこんな真相があったとすれば少し伊藤を見直す。
そして陸奥宗光の不平等条約改正のためには軍事力で世界と渡り合わねばという、現代の感覚からは違和感を覚える考えも当時としては仕方ないものかも知れない。
何と言っても欧米は圧倒的な軍事力で日本を震え上がらせ不平等条約を結ばせたのだから。そして当時の欧米はそれが常套手段だったのだから、日本がそれを覆すために欧米と同等の軍事力を持ちそれを示すために戦争をせねば、というのも分からないではない。
ただここでもまた坂本龍馬なら…という迷いも出てくる。
さて、坂本龍馬ならどう交渉しただろうか。
短編の「乙女がゆく」は、坂本龍馬の姉・乙女が龍馬に頼まれ、薩長同盟締結前の薩摩藩邸に乗り込む話。
かなりのファンタジー設定ではあるが、豪快でいながら繊細な乙女の魅力が描かれていた。
娘さんによるあとがきを読むと、葉室さんはこの作品を完成させたら、明治維新についての様々な物語の構想があったという。
それが読めないのは残念だが、最後まで葉室さんの作家としての意欲は衰えていなかったということが嬉しくもあり、それが叶わず切なくもある。 -
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時代もテーマも雰囲気も異なる短編5篇、共通するのはいずれも絵師が主人公であり、絵画と政治は深く繋がっていて、その関係が絵師の人生を翻弄するという点。「絵師とはな、命がけで気ままをするものだ。」(探幽)
好きな作品は『雪信花匂』。狩野家の政争に巻き込まれた雪の人生。愛を選び、誰かを想い絵を描く。想いと葛藤に苛まれながらも強い意思と共に名を轟かせていく一人の女流絵師の美しい叙情的作品。中でも兄の彦五郎のキャラクターが深みを出している。放蕩息子でありながら妹と親友のために動くことができる。その後の事件を経て、次の『一蝶幻景』に登場した時は胸熱だった。悲劇ではあるものの結果的に恋は成就している本作、読みながら心の何処かにもっと大きな悲劇であってほしい自分がいたのは事実… -
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面白かった
ハッピーエンドで終わる勧善懲悪の鉄板ストーリ
ストーリとしては、
九州豊前の小竹藩の勘定奉行澤井家の長女志桜里と隣家に引っ越してきた「抜かずの半五郎」との物語。
志桜里は嫁ぐも子供ができず、実家に戻されたある日、隣家に半五郎が引っ越してきます。二人の心は惹かれあいながらも微妙な距離感。そんな中、藩主頼近と家老三家の間で主導権争いが激化していきます。
三家に対抗する頼近と澤井庄兵衛、半五郎は表から、裏から澤井家を助けていくことになります。
そして、いよいよ上意討ちとして、澤井家に三家が押し入ってきます。
澤井家はどうなるのか?
抜かずの半五郎は太刀を抜きます。
それぞれが信じるもののため、守るために闘います。
そして、そこに至るまでの、当時の女子としての覚悟。
半五郎と志桜里の関係はどうなる?
澤井家での戦闘シーンは熱くなります。
清廉な男、凛とした女といういつものパターンですが、武家での女の覚悟が伝わってきます。
とても格好いい!
ということでとてもお勧め! -
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小倉藩の白黒騒動を下敷きにした物語。
主人公印南新六の想いに胸打たれます。
小倉藩勘定方の印南新六が生涯をかけて守ると誓った女性・吉乃。
しかしながら、ある事件を契機に、吉乃は他家に嫁いでしまいます。
その後、「白黒騒動」と呼ばれる御家騒動が起こる中、新六や吉乃の夫源太郎も派閥の争いに巻き込まれていきます。
吉乃とその家族を守るため、新六は刺客となって命を懸けることに。
見返りも求めず、全身全霊で吉乃を守るという新六の想いには胸打たれます。
そこまで、思うことができるのか?
そのように生きることができるのか?
そして、最後、吉乃がようやく気付いた新六の想い。そしてそれに応えた言葉。
二人の想いが重なります。
気持ち良い読後感
お勧め! -
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本能寺を主題に沿えた、7作家によるアンソロジー。
実行者は明智光秀であるが、その動機あるいは黒幕については、いまだに諸説紛々。
本作では、葉室麟著『鷹、翔ける』は、明智光秀の家臣斎藤内蔵助こそ、変を起こした随一の者としている。
木下昌輝著『幽斎の悪采』では、細川藤孝の謀を示唆する。
天野純希著『宗室の器』は、宗室の独白で信長への思惑が語られる。
裁判などで分かるように、事実の裏にある真実や当事者の心理などを正確に明らかにすることは、現代の事件においてさえ困難を極める。まして、過去の歴史上の事件など。
だからこそ、あれやこれやと、作家の想像力を刺激するのだろう。読者にとっても、歴史小説を読む楽しみとなる。 -
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「淡白なんだけど不思議な魅力の本」
葉室麟氏の作品群、一言でいうとわたしはこう思っている。
直木賞受賞作の『蜩の記』から初めて読み始めて11作品、
以来ずっと感じているところだ。
はっきり言って、淡々とした文章運び、メリハリが薄いストーリーのよう。
いくらライトノベル全盛と言っても、江戸時代をこういう風に描くのはどーかなあ。
歴史的時代背景に現代風な心根を持って書きすぎてるような。
じゃあ、なぜ読み継ぐのか、というと
友人がこのこの作家を好きで貸してくれるからなんて、
しまりのないことである。
でもこの作品は、めずらしく後半一気に読めた。
いわゆるアメリカ映画の結末を望むようにね。 -
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面白かった
実在の人物、立花宗茂の半生を下敷きとした物語。
ストーリとしては、
秀吉によって筑後柳川十三万石の大名に取り立てられながらも、関ヶ原の戦いで西軍に加担したことにより、家臣とともに浪人の身に。
そこから、さまざまな苦労・苦難を乗り越え、ついに十数年後、領地に返り咲くという展開です。
Wikiによると関ヶ原の戦いで改易後、旧領を回復した武将は宗茂ただ一人とのこと。
本作のテーマは、自らの「義」を貫き通す姿。
立花の義は「決して裏切らない」ということ。
戦国から江戸の初期で、逆境に耐えながらもその義を貫き通す姿に引き込まれます。
また、それを支える家臣たち。
そして、本作では様々な「義」が出てきます。
真田の義は「生き抜くこと」
徳川の義は「泰平の世を作るためには、手を汚すを恐れぬ」こと
それぞれの武将の想いが伝わってきます。
さらに、本作では、正室の誾千代との関係が睦ましい。
こういった時代小説だと、そもそもの逸話を知らないので、どこまでが史実でどこからが創作なのかがわかりません(汗)
とはいえ、とても楽しめました。
お勧め