全七作からなる歴史小説短編集。
豊臣秀吉による朝鮮征伐の前半・文禄の頃、一通の文箱が博多の津に打ち上げられ、秀吉の許に届けられた。中の手紙は半島に渡った夫を思う妻のものであった。興味を持った秀吉はその女を名護屋に呼び寄せたが……(「汐の恋文」)。
関ヶ原の戦いの前に大坂方の人質になるのを拒み、火を放って果てた細川ガラシャ。その嫁である千代はガラシャと死を共にせず生き残った。細川忠興の嫡男・忠隆は、父の命に背き千代を離縁せずにいたため、遂には廃嫡されてしまう。しかしその後も忠敬は千代と共に暮らし続ける(「花の陰」)。
戦国時代や江戸時代の女性・夫婦の旧来の像に著者独自の新鮮な解釈を投げかける、珠玉の短編集。
Posted by ブクログ 2021年08月01日
戦国の世を生き抜いた武将大名夫婦を主人公にした短編集。巻末解説で澤田瞳子も書いている通り、短編小説としての面白さも去ることながら、葉室小説の核心はその美しさにある。
その美しさも絢爛豪華というものではなく、キレのある素とした美しさ。読んで心が洗われる清涼感のある美しさである。
きちんと生きる、筋...続きを読む
Posted by ブクログ 2020年06月27日
戦乱の時代の中、女性が主人公の武士の妻の覚悟を感じられる7作の短編物語
「汐の恋文」
朝鮮出兵で半島にわたった夫へに届かなかった恋文。それが結果的に秀吉の手に。秀吉からの呼び出しに応じた菊子は秀吉に対峙します。秀吉は、菊子の身代わりとして夫の帰国を命じる。夫は帰ってくるのか?
とても強い夫婦の絆...続きを読む
Posted by ブクログ 2018年03月31日
戦国時代から江戸時代初期にかけての女性、特に「妻」の姿・生き方を描いた短編7作。
仙台藩から柳川藩に嫁いだ鍋姫の目を通して伊達騒動を扱った『牡丹咲くころ』が、特に印象深い。
伊達騒動については、従来悪役とされていた原田甲斐を主人公に、深謀遠慮で仙台藩を守った忠義の人とした山本周五郎の『樅の木は残った...続きを読む