葉室麟のレビュー一覧
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緊急事態宣言の中、令和二年のGWに読んだ歴史小説です。何も活動のできなかったGWでしたので、読書だけが楽しみでした。
この本は有名な本能寺の変を題材にしていますが、7人の武将の立場から見た形でストーリーが展開しています。新しい歴史小説の形で楽しいです、事件現場の空から中継を見ている感じです。
以下は気になったポイントです。
・源頼朝の鎌倉幕府も、足利尊氏の室町幕府も、どちらも憎悪と野心をたぎらせた親族と家臣達が互いに憎しみ合いながら敵と戦っていた。だからこそ彼らは幕府を開けた(p67)
・肩衝(かたつき)とは肩の部分が尖った茶入れで、楢柴は初花肩衝、新田肩衝と並び「天下三肩衝」と称され -
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ちょっといまいち
平安時代の刀伊入寇を下敷きにした物語
刀伊入寇という史実は恥ずかしながら初めて聞きました。
元寇よりもずいぶん前にそんな事件があったんですね
大陸の異民族である悪役「刀伊」に対して、主人公「藤原隆家」がどんな戦いを繰り広げるか?
「村上海賊の娘」のような物語かと思いきや、その辺のくだりは後半の最後のほうだけ、それもわりとあっけなく終わってしまいます。
前半は伝奇ふくめた平安の政権争い。
といったところで、ちょっと想定と違いました。
清少納言や紫式部、安倍晴明なども出てきますが、正直とってつけた感じ(笑)
とはいうものの、ページ数が少ないながらも、刀伊の悪役っぷりに対して -
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面白かった
戦国時代での茶の道を主題とした物語
千利休、古田織部と異なり、「泰平の茶」を目指した小堀遠州の物語です。
やはり、どこまでが史実でどこからがフィクションなのかわかりませんが、遠州が目指そうとしていたものが伝わる物語でした。
ストーリとしては
戦後乱世の時代、武人でもあり茶人でもある小堀遠州の生涯を語るもので、茶道具にまつわる章立ての、短編連作となっています。
各章で、遠州のもとに訪れる様々な人との会話から、自らの過去の出来事を振り返る形で、石田三成、伊達政宗、藤堂高虎などとのエピソードを語っていく形です。
茶道具に秘められた想い、一つ一つのエピソードがしっかり語られ、その中で、遠 -
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面白かった
織田信長の二女、冬姫の数奇な生涯を語る物語
どこまでが史実でどこまでが創作なのか、自分の知識不足のため、相変わらずよくわかりませんが(笑)、エンターテイメントとして楽しめました。
ストーリとしては
織田信長の二女の冬姫は蒲生氏郷の妻になり、戦国時代の中
、その覇権を競うため、「おんないくさ」を仕掛けあうというもの。
「武家の女は槍や刀ではなく、心の刃を研いでいくさをせねばならないのです」
と育てられ、さまざまな女たちが闘うことになります
信長の妹お市の方をはじめ、淀君、鍋の方、五徳、ガラシャ、築山などなど
心の刃とは言いますが、実際には諜報戦ともいえます。
冬は「もず」と「又 -
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戦乱の時代の中、女性が主人公の武士の妻の覚悟を感じられる7作の短編物語
「汐の恋文」
朝鮮出兵で半島にわたった夫へに届かなかった恋文。それが結果的に秀吉の手に。秀吉からの呼び出しに応じた菊子は秀吉に対峙します。秀吉は、菊子の身代わりとして夫の帰国を命じる。夫は帰ってくるのか?
とても強い夫婦の絆を感じる物語。
「氷雨降る」
キリシタンの大名の晴信は大八に騙され、結果家康に言上するも、晴信も処罰されることに。
その最後に立ちあった妻と埋葬の日に起きた出来事
「花の陰」
関ヶ原の戦いの前後で、屋敷に火をかけられたときに、逃げずにその場で果てた細川忠興の正室ガラシャ。一方で、ガラシャを置いて -
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不平等条約の改正に取り組んだ『剃刀外相』こと陸奥宗光の半生を描いた葉室さんの絶筆。
未完と知らずに読んでしまったので、結末をどう描かれるのか分からないままなのは残念。勿論、一番残念なのは作家さんご本人だろうが。
陸奥宗光というと、先に書いたように外相として不平等条約改正に取り組んだことと、奥様の亮子夫人が大変な美人で『鹿鳴館の華』の一人として活躍したことくらいしか知らなかったので、それまでの彼の人生は興味深く読んだ。
特に坂本龍馬との関わりがこれほどあったとは全く知らず、この作品では坂本龍馬ならどう世界と渡り合うのか、坂本龍馬のように欧米に臆することなく交渉するためにはどうするのかというこ -
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時代もテーマも雰囲気も異なる短編5篇、共通するのはいずれも絵師が主人公であり、絵画と政治は深く繋がっていて、その関係が絵師の人生を翻弄するという点。「絵師とはな、命がけで気ままをするものだ。」(探幽)
好きな作品は『雪信花匂』。狩野家の政争に巻き込まれた雪の人生。愛を選び、誰かを想い絵を描く。想いと葛藤に苛まれながらも強い意思と共に名を轟かせていく一人の女流絵師の美しい叙情的作品。中でも兄の彦五郎のキャラクターが深みを出している。放蕩息子でありながら妹と親友のために動くことができる。その後の事件を経て、次の『一蝶幻景』に登場した時は胸熱だった。悲劇ではあるものの結果的に恋は成就している本作、