あらすじ
かつて政争に敗れた柏木靫負(ゆきえ)が、千利休の流れを汲む高名な茶人となって国に帰ってきた。孤狼の心を胸に秘めた男は、家督を養子に譲り、山裾の庵で隠遁生活を送る。今日も山月庵に客を招く。派閥抗争の最中に喪った、妻の死の真実を知るために。これぞ直木賞作家の真骨頂! 静かなる闘争の記。
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日本語が美しい。季節を感じる季節風景描写。息子嫁が主人公の亡き妻に感情移入しすぎて霊まで見えるのは...と思ったけど、当時ならさもありなんとも思う。
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葉室麟にハズレなし。今回は茶室が舞台ということで触手が伸びなかったが、とても面白かった。ミステリー感は数ある葉室麟の本の中でも相当高い。謎解きの面白さがある。いつも思うのだが、葉室麟の話はハッピーエンドなのがとても良い。安心して没頭できる感じだ。オススメ。
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黒島藩を舞台の三作目であるが、それぞれ別個の作品でシリーズ性はない。作品の紹介を見る限り、茶室を舞台にした心理戦のような流れかと思ったが、さにあらず、葉室麟らしいダイナミックな展開が待っていた。
元二大派閥の一方の領袖であった柏木靭負は政争に敗れ藩を去った後、茶人として名をなして国に戻ってきた。目的は、不義の噂を立てられ靱負に問い詰められて何の言い訳もせずに自刃した妻、藤尾の真実を知るためであった。
家督を譲った養子の妻、千佳が、靱負の世話を焼きながら、ありし日の藤尾の真の姿を明らかにしていく助けとなる。千佳の視点で描かれた作品と言ってもいい。
やがて明らかになる驚愕の真実とは。実に面白かった。
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華道、茶道、なんと奥が深いものでしょう。こんな言葉すら浅薄なものに感じてしまう
目に映る姿の向こうにあるものを見ること。それは自らの内面と対峙すること。凡人には全く分からないけれど物語の人物たちはそれぞれそうすることで今のお互いの心や状況を理解している
又兵衛さんだけがお煎餅に添えられた番茶のようにホッとする存在でした
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主人公 柏木靱負
フリガナが振ってある
かしわぎゆきえ
何故「ゆきえ」なのだろう
最初は実話に基づき作者が物語を描いたのかと思ったが
茶の湯を通じて人の心を含め多くのことを学ばせてもらった
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黒島藩シリーズの3作目とのことだが、既刊の『陽炎の門』『紫匂う』の2作品とは人物・時代とも関連性はない。
著者には他にも扇野藩シリーズや羽根藩シリーズもあるが、何れも同様な構成になっている。
藩の政争に敗れ黒島藩を去った元勘定奉行が、妻の死の真相を知るために、茶人となって帰ってくる。様々な波紋が沸き起こり虚々実々の戦いが繰り広げられる。
最後、容疑者を集め「犯人はお前だ」とのクライマックスがあり、本格ミステリーを彷彿させる。
様々な作品で、漢詩や和歌の深く豊かな素養を開陳する著者が、本書では茶席の描写や茶の心をストーリーに融合させ、物語の世界を豊饒にしている。
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面白かった
時代小説ながらもミステリー
この中に犯人がいる!のようなクライマックスがまさにベタなミステリ展開ですが、それに加えて、チャンバラあり、夫婦の想いありと極上なエンターテイメントとなっています。
ストーリとしては、
政争に敗れた柏木靫負(ゆきえ)は、高名な茶人となり、16年ぶりに国に戻ってきます。
その理由は、妻の藤尾の死の真相を知るため。
山裾の庵で「山月庵」として茶室を設え、客を招きます。そこで、当時の関係者から、様々な話を聞き、死の真相、さらには、当時起きていたことを明らかにしていきます。
当時、藤尾に不義密通の噂の真相は?
それを問い詰めたときに、何も釈明しなかった理由は?
関係者を一堂に集めた茶会でその真実が明かされます
ミステリそのもの(笑)
しかし、そんな中にも、武士としての想い、潔さを感じさせるところがミソ
お勧めです
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予想外に推理小説でした!しかも、why done itかと思ったら、who done itでした。途中、月が綺麗ですねって、I love youですよねって思うところがあったけど、そういう流れじゃなかったです。
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第165回直木賞受賞作家の口から、「葉室麟」という名前が出てきました。
ーー澤田瞳子は明治から昭和を生きた女性画家河鍋暁翠(きょうすい)を追った時代小説「星落ちて、なお」で直木賞を射止めた。5度目の候補での受賞に「まだぽかんとしております」としながら、親交が深かった先輩作家、故葉室麟さんも同じ5度の挑戦で受賞したことに触れ、「うれしく、ご報告できるかな」と喜んだ。ーー
解説では、本書はシリーズものの3作目だということです。とはいえ、黒島藩という舞台が同じでも時代も人物も異なっているにもかかわらず、「過去に過ちを犯した人物」が主人公だという点でシリーズものとなっているようです。
本書では、茶の湯の神髄を織り交ぜながら、真摯に過去と向き合ってはじめて乗り越えることができる過ちを感動的に描き切っています。筆者の筆力に改めて感服。
以下、PR文:
静謐で、熱い心が滾っている。また、人生を信じたくなる。
―朝井まかて(作家)
茶室という戦場では、すべての真実が見抜かれる。
刀を用いぬ”茶人の戦”が、静かに、熱く、冴え渡る!
『陽炎の門』『紫匂う』につづく、大好評「黒島藩シリーズ」第3弾!
かつて政争に敗れた柏木靫負(ゆきえ)が、千利休の流れを汲む高名な茶人となって国に帰ってきた。
孤狼の心を胸に秘めた男は、家督を養子に譲り、山裾の庵で隠遁生活を送る。
今日も山月庵に客を招く。派閥抗争の最中に喪った、妻の死の真実を知るために。これぞ直木賞作家の真骨頂! 静かなる闘争の記。