葉室麟のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2017年に逝去された作者による、陸奥宗光が主人公の「未完の大作」。妻・亮子さんの出番も多く、薩長や欧米諸国の圧力に屈せず明治の世を闘う夫婦の物語、という見方もできます。
まさに「俺たちの闘いはこれからだ!」のような場面で終わっているので読者としても寂しい限りです。ですが「刊行に寄せて」にもある通り、タイトルの意味&本作が目指したテーマに触れた一文を最後に書き残されています。
個人的に、怜悧さが際立つイメージのためか、陸奥は小説の主人公としては好まれにくかったように思います。
だからこそその生涯をどう描き切って、司馬史観の先を提示しようとしたのか気になります。
自分なりの大局観のためにあえて -
Posted by ブクログ
ほぼフィクションに実在の人物を登場させて描いたものなのかと思っていたら、「日本最後の仇討ち」は実話だそう。
それにしても、六郎の父、臼井亘理が惨殺されたのが、大政奉還の翌年、鳥羽伏見の戦いの年だと言うことが、何とも言えず残念でならない。もう、国の進む道は決まっていたと言うのに。
亘理が惨殺される前のある夜、中島衝平と語り合っている場面がある。
「世間は鸚鵡(おうむ)の集まりでござる。声の大なる者が言ったことをおのれも繰り返して唱えれば、いっぱしの見識があるようにひとが見てくれると思い、そのような自分に酔うのでござる」「なるほど、時勢に酔っている者は多いかもしれませんな」
何だか今の世の中も -
Posted by ブクログ
224頁の表題作と他に3編あり、全て関ヶ原の戦い前後の話し。表題作はちょっと長いとは言え、物足りない感じ。石田三成の娘(辰姫)が津軽に輿入れ。それに対し、福島家を子連れで離縁された家康の姪(満天姫)を家康の養女として津軽に輿入れ。本来は辰姫が側室となるべきだが、プライド高い満天姫が夫が心から望まないと正室にならないと同衾も拒む。二人の面会もあり緊縛した雰囲気が作品に漂うが、二人の姫の抑制された言動で穏やかに進む。激しいお家騒動で満天姫の前夫との息子も巻き込まれ自害に追いやられるなど暗い話しが続く。
他の短編も石田三成、淀君·秀頼や明智光秀に関わる権謀術数などあり、スッキリ感があまり無い。