葉室麟のレビュー一覧

  • 風かおる

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    将来を嘱望された藩士たちの出世争いが絡む話かと思っていたら、男女間の嫉妬が起点となった何とも姑息な所業による禍いによるものだったとは。おまけに身勝手な友情もどきの隠蔽を本人たちは正当化しているところが醜い。
    物語の中心となっている若者たちが真っ直ぐなだけに、対比によって少し後味が悪い作品で、葉室氏らしくないかも。

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    2022年09月24日
  • 実朝の首

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    文庫が出た時あたりに読んでみたが、人物関係がよくわからず、途中で断念。
    大河ドラマで大体分かったところで読んでみたら、全員とはいえないが大体わかった。
    今の時代も女性が政治をした方が戦争は起こらないんじゃないかと思う。

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    2022年09月18日
  • 洛中洛外をゆく

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    京都に居を構えた著者が、自身の小説の主人公たちについて語り、関連する洛中洛外の寺社等を解説する。
    第1章『乾山晚愁』の尾形光琳・乾山、第2章『墨龍賦』の海北友松、第3章『孤峰のひと』の小堀遠州。
    それに著者の人生論等を述べたエッセイと、澤田瞳子ほかとの対談を併録。
    葉室麟ファンには、一読の価値あり。

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    2022年09月01日
  • 嵯峨野花譜

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    言葉の美しい本でした。僧であり活け花で人の生き方や人生を表す胤舜の感性が伝わるような作品でした。活け花の深さを知る作品と同時にこの時代の人の心のありようが分かるような気がした。また、母である萩野と父である水野忠邦と難しい時代の家族のあり方のように思うと現代はどれほど自由な時代かを感じた。

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    2022年08月11日
  • 暁天の星

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    2017年に逝去された作者による、陸奥宗光が主人公の「未完の大作」。妻・亮子さんの出番も多く、薩長や欧米諸国の圧力に屈せず明治の世を闘う夫婦の物語、という見方もできます。
    まさに「俺たちの闘いはこれからだ!」のような場面で終わっているので読者としても寂しい限りです。ですが「刊行に寄せて」にもある通り、タイトルの意味&本作が目指したテーマに触れた一文を最後に書き残されています。
    個人的に、怜悧さが際立つイメージのためか、陸奥は小説の主人公としては好まれにくかったように思います。
    だからこそその生涯をどう描き切って、司馬史観の先を提示しようとしたのか気になります。

    自分なりの大局観のためにあえて

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    2023年04月12日
  • 雨と詩人と落花と

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    和歌を作品に巧みに取り入れる著者が、今回主人公に据えるのは詩人の広瀬旭荘。
    題名は、旭荘が妻のために吟じる詩の一部から来ている。
    今で言うDVも仕掛ける旭荘が、二度目に迎えた妻の理解により、次第に夫婦愛に目覚めてゆく様が格調高く描かれている。
    旭荘の詩が次々と登場し、読み下し文とともにその解釈も綴られ、漢詩の意味を門外漢にも理解することが出来る。

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    2022年07月05日
  • 神剣 人斬り彦斎

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    著者の作品の主人公はいずれも、己の信じる道を真っすぐに進み、その生き方に清々しさを感じ共感を覚える。
    しかし、本書の主人公だけにはその思いを持つことにためらいが。
    人斬り彦齋は、神の託言によって人を斬るという。
    それはすべて攘夷のためで、国を思い大義に殉じるというが、現代の目から見れば神がかり的で、どうにも納得できないのは、読書子だけだろうか。
    井伊大老を倒した桜田門外の変には、確かに歴史を転換し前に進める意義があったと思うが、彦齋の佐久間象山暗殺はただのテロとしか思えないが。

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    2022年07月02日
  • 刀伊入寇 藤原隆家の闘い

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    平安時代に海を渡って戦いを挑んで来た刀伊(とい)に、藤原隆家(道長の親戚)が太宰府で待ち受け、激しい闘いがあったなんて知らなかった〜。
    実際にあった話を、小説だから隆家の性格とか戦い好きの貴族として面白く描いています。
    終盤に起こる事件の刀伊入寇までが長くて、若い頃の隆家、伊周、道長、花山院の因縁など説明的だけどわかりやすい。
    平安時代の、清少納言、紫式部、安倍晴明などオールスターキャストがちょっと盛り上げてくれる。

    船での戦いとかちょっと好き。

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    2022年06月27日
  • 古都再見(新潮文庫)

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    好きな京都について好きな葉室麟のエッセイを初めて読んだ。歴史小説家なのだから当たり前だが、とても歴史に造詣が深く、単なる京都本よりも歴史について思想を飛躍させている印象。何度か京都を訪れた人も、読むと新たな発見があるかも知れない。

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    2022年06月26日
  • 約束

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    ネタバレ

    ロシアは、いずれ朝鮮に手を伸ばし日本を脅かすだろう。それをさせないためには日本と清国、朝鮮が三国同盟を結んでロシアを防がなくちゃなられちゃならない
    常々、葉室さんは「明治維新を総括する必要がある」と口にしていた。そうすることで「欧米化の波や、太平洋戦争の敗戦でひていされた日本の歴史を取り戻すこと。現代の日本が失っているものは何か、を書くこと」を目指していた

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    2022年06月22日
  • 蒼天見ゆ

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    ほぼフィクションに実在の人物を登場させて描いたものなのかと思っていたら、「日本最後の仇討ち」は実話だそう。

    それにしても、六郎の父、臼井亘理が惨殺されたのが、大政奉還の翌年、鳥羽伏見の戦いの年だと言うことが、何とも言えず残念でならない。もう、国の進む道は決まっていたと言うのに。

    亘理が惨殺される前のある夜、中島衝平と語り合っている場面がある。
    「世間は鸚鵡(おうむ)の集まりでござる。声の大なる者が言ったことをおのれも繰り返して唱えれば、いっぱしの見識があるようにひとが見てくれると思い、そのような自分に酔うのでござる」「なるほど、時勢に酔っている者は多いかもしれませんな」
    何だか今の世の中も

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    2022年06月17日
  • 散り椿

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    映画はドラマチックに作られていたが
    原作は静かで、なのに腹の底に覚悟があるような、
    そんな作品だった。

    それぞれが懸命に生きていて
    (もちろん悪役もいるけど)
    自分もまっすぐに生きることをがんばろうと思えるような
    読後感。

    扇野藩シリーズも読もうっと。

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    2022年07月09日
  • 乾山晩愁

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    有名な絵師が連続して登場する短編集。
    絵のことよりも、業界での勢力争いや人間関係のもつれに着目した作品は非常に珍しいと思いますが、どこまでが作者の創作なんだろうか。
    よく似た名前が多すぎるせいなのか、読みにくい作品でもあった。

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    2022年06月12日
  • 潮鳴り

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    蜩ノ記から読んで感動して、乾山晩秋というデビュー作を含む短編集を読んだ時は、淡々とした抑制の効いた文章で驚きました。その短編集でも、後半に向かって、少しポップな感じ?になって行くのですが、作風にそういう濃淡があるような気がします。そういう意味では、本作はかなりポップよりな、時代小説ではあっても2010年代に書かれただけあるなという感じ。えっ、そんなことになってしまうの?と悲しくて泣けましたし、いい話だったけど、最後にまさかそんな水戸黄門の印籠みたいなまとめになるとは思いませんでした。

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    2022年06月07日
  • 山月庵茶会記

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    予想外に推理小説でした!しかも、why done itかと思ったら、who done itでした。途中、月が綺麗ですねって、I love youですよねって思うところがあったけど、そういう流れじゃなかったです。

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    2022年06月04日
  • 潮騒はるか

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    江戸時代も幕末になると女性の医師が医師現れて、藩を出て長崎に行けるようになっていたのか。
    いねさんの描かれ方は興味深かったものの、物語全体は葉室作品にしては平坦な印象でした。
    風かおるの続編だと知らずに先に読んでしまったので、順番が違えば印象も変わったかも。

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    2022年05月21日
  • 月神

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    主人公の出身は九州、ストーリーは大きく二つに別れており最初は明治維新前の尊皇派の生きざま、後半は北海道に収監所構築とその運営に携わる主人公の半生になっている。引き込まれる内容ではなかったが
    アイヌの文化や考え方など興味深い内容だった。

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    2022年05月18日
  • 孤篷のひと

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    千利休以降、純粋な茶人というより、武士であり茶人という人物が増えた事で、茶という文化が独特の重みを持つ様になったんだと感じた。

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    2022年05月09日
  • おもかげ橋

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    故郷を罠に嵌って追い出された二人が、原因ともなった藩の重臣の娘の警護をすることに。この警護も罠だった事が後で明かされる。この二人は娘に憧れていて、人妻となっても想いは増すばかり。
    また、この娘が思わせぶりでどちらにも好きな素振りを見せる最低な女性。敵味方ともみんな悪い人達の中にあって、新たにお見合いで知り合った女性や、商人となって婿入りした先の妻など揺るがない愛情を持って接する女性達がいることでバランスが保たれている。

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    2022年05月06日
  • 津軽双花

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    224頁の表題作と他に3編あり、全て関ヶ原の戦い前後の話し。表題作はちょっと長いとは言え、物足りない感じ。石田三成の娘(辰姫)が津軽に輿入れ。それに対し、福島家を子連れで離縁された家康の姪(満天姫)を家康の養女として津軽に輿入れ。本来は辰姫が側室となるべきだが、プライド高い満天姫が夫が心から望まないと正室にならないと同衾も拒む。二人の面会もあり緊縛した雰囲気が作品に漂うが、二人の姫の抑制された言動で穏やかに進む。激しいお家騒動で満天姫の前夫との息子も巻き込まれ自害に追いやられるなど暗い話しが続く。
    他の短編も石田三成、淀君·秀頼や明智光秀に関わる権謀術数などあり、スッキリ感があまり無い。

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    2022年04月20日