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本書は故・葉室麟が最期に書きたかった「近代」に挑んだ作品。「これだけは書いておきたい」と願い、病と闘いながら書き続けた物語である。明治新政府で外務大臣として欧米列強と対峙し、不平等条約の改正に尽力した陸奥宗光――。日本の尊厳を賭けて強国に挑んだ陸奥の気概は、どこで育まれたものなのだろう。陸奥が生まれたのは幕末の紀州。坂本龍馬に愛され、海援隊で頭角を現し、明治新政府では県知事などを務めたが、政府転覆を企てたとして投獄されてしまう。そんな不遇の時代を経て、伊藤博文内閣のもとで外交官として、その才能を花開かせる。外務大臣となった陸奥は、日本を欧米に伍する国家にすべく奔走するのだが……。本書は残念ながら未完。しかしながら葉室麟の溢れる想いが感じ取れる貴重な作品でもある。陸奥宗光のその後は、解説の細谷正充氏が、連載中の想いは長女の涼子氏が紹介。坂本龍馬の姉を描いた短篇「乙女がゆく」を特別収録。
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2017年月刊文庫「文蔵」に6回連載された絶筆。
解説と、龍馬の姉が龍馬に代わって桂と西郷に会い、膠着していた薩長同盟交渉の端緒をひらくという「乙女が行く」を収録。
亡くなってからもたくさん単行本になっていたが、これが最後かな。13年間で60冊出して、これから近代日本をつくってきた人々の姿を本格的に描こうとし、日本の近代化とは何だったのかを問いたかったらしい。それにしても残念。まだまだ読みたかった。
不平等条約改正に心血を注いだ陸奥宗光の苦悩を描いている。
紀州藩の上士が脱藩して海援隊に入り、龍馬に心酔しいつもその自由な生き方を反芻していたのだが、条約改正のために欧米列強から対等と認められねばならないため、朝鮮、中国と帝国主義戦争を戦う必要があるという現実の分析と理想の相克に悩につつ、開戦準備をし、戦勝後の講和条約交渉の前で絶筆となった。無念だっただろうな。
Posted by ブクログ
不平等条約の改正に取り組んだ『剃刀外相』こと陸奥宗光の半生を描いた葉室さんの絶筆。
未完と知らずに読んでしまったので、結末をどう描かれるのか分からないままなのは残念。勿論、一番残念なのは作家さんご本人だろうが。
陸奥宗光というと、先に書いたように外相として不平等条約改正に取り組んだことと、奥様の亮子夫人が大変な美人で『鹿鳴館の華』の一人として活躍したことくらいしか知らなかったので、それまでの彼の人生は興味深く読んだ。
特に坂本龍馬との関わりがこれほどあったとは全く知らず、この作品では坂本龍馬ならどう世界と渡り合うのか、坂本龍馬のように欧米に臆することなく交渉するためにはどうするのかということを念頭に動くので、坂本龍馬との関わりが陸奥宗光の原点だったのだと思え、すでにこの世にいない坂本龍馬が様々な人に影響を与えたのだと感じる。
勿論それは葉室さんなりの坂本龍馬像であり陸奥宗光像なのだけど。
葉室さんらしく文体はサラリとして読みやすい。
ここで描かれる伊藤博文の色好みもまた政治の一つの要素になっている。官邸でのかの醜聞もこんな真相があったとすれば少し伊藤を見直す。
そして陸奥宗光の不平等条約改正のためには軍事力で世界と渡り合わねばという、現代の感覚からは違和感を覚える考えも当時としては仕方ないものかも知れない。
何と言っても欧米は圧倒的な軍事力で日本を震え上がらせ不平等条約を結ばせたのだから。そして当時の欧米はそれが常套手段だったのだから、日本がそれを覆すために欧米と同等の軍事力を持ちそれを示すために戦争をせねば、というのも分からないではない。
ただここでもまた坂本龍馬なら…という迷いも出てくる。
さて、坂本龍馬ならどう交渉しただろうか。
短編の「乙女がゆく」は、坂本龍馬の姉・乙女が龍馬に頼まれ、薩長同盟締結前の薩摩藩邸に乗り込む話。
かなりのファンタジー設定ではあるが、豪快でいながら繊細な乙女の魅力が描かれていた。
娘さんによるあとがきを読むと、葉室さんはこの作品を完成させたら、明治維新についての様々な物語の構想があったという。
それが読めないのは残念だが、最後まで葉室さんの作家としての意欲は衰えていなかったということが嬉しくもあり、それが叶わず切なくもある。
Posted by ブクログ
葉室麟の本は江戸時代物が多かったが、初の明治維新後の本で知らなかった外相:陸奥宗光を描いた本。陸奥は坂本龍馬の門下生で龍馬が死しても師と仰ぎ江戸末期に押し寄せた諸外国と結んだ不平等条約の改正に尽力したとの事でその時代はイマイチ把握していなかったので色々と学べた。
当時の政治の表舞台には、渋沢栄一、通信大臣:榎本武揚、内部大臣:山縣有朋、大隈重信を追い落とした初代総理:伊藤博文らが鎮座している。井上馨は当時西洋かぶれで社交場として(鹿銘館)舞踏会を催し要人らは夫婦共々募って参加していた。陸奥も美貌を誇る妻:亮子を伴い参加するも伊藤博文は、岩倉具視の娘人妻極子に熱を上げる。この行為は伊藤自身が裏で公となり、総理:伊藤博文→黒田清隆、外務大臣:井上馨→大隈重信への失策カモフラージュでお札にもなる伊藤は好色男で且つ、戦略家であった様だ。その後、嫌いな大隈重信の下で米国大使とし米国に渡り国内薩長派閥が残る中日本人として条約改正に注力する。
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