葉室麟のレビュー一覧
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実力派の歴史短篇です。
やや説明にくどさを感じますが、しっかりした構成と人物造形で読ませます。絵師の物語とはいえ、絵がそのものより、権力抗争や恋が主題に描かれています。
葉室さんは「乾山晩愁」がデビュー作だそうですが、後に行くほど硬さが取れた感じで読みやすくなっていきます。
読みながら、何となく作品の感じが似てるなと、白石一郎さんを思い出しました。。白石さんは古川薫氏、滝口康彦氏と九州三人衆と呼ばれ、中央文壇に巻き込まれず、九州の地から歴史・時代小説を発表し続けた人(白石一文・白石文郎さんの父親)。葉室さんも九州だそうで、どこかに繋がりが有るのかもしれません。 -
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豊後日田で私塾咸宜園を主催する広瀬淡窓。
家業を継いだ弟久兵衛。
粛々と画期的な教育方針を打ち出す淡窓、次男でありながらも家業を継ぎ商人として邁進する久兵衛。
その二人へ重箱の隅をつつくような嫌がらせをする郡代。
そんな最中、天保の大飢饉や大塩平八郎の乱が起き、様々な権力闘争の弊害が生じる。
時代のうなりの中でも、慎ましくも着実に清貧に堅実に生きてゆく。美徳な一冊でした。
しかし、どの時代でも圧政者がいて、民が苦しむ、一揆が起きる、革命が起きる、歴史は何度となく同じことを繰り返すのだが。
SNS時代で成功した革命はジャスミン革命くらいだったろうか。令和の世にもそのような日が来るのだ -
Posted by ブクログ
『金槐和歌集』のネーミングってそういう由来だったのか……。高校の頃、日本史で妙に印象に残って名前だけずっと覚えてたけど、今更知る事もけっこうある。
鎌倉幕府三代将軍源実朝の暗殺から物語は幕を開ける。実行犯である公暁は討たれるが、実朝の首の行方が分からなくなってしまう。
軈て実朝の首を巡って北条、三浦、源氏、和田の残党、果ては京の後鳥羽上皇らの利害が複雑に絡み合い、鎌倉は血で血を洗う陰謀の府と化す。
自分が気に入っているのは、実朝のキャラクター像である。開幕早々に死亡する実朝だが、読み進めるにつれ理世撫民を旨とした優しき将軍の姿が鮮明になっていく。単なる舞台装置ではなく、死して