【感想・ネタバレ】潮鳴りのレビュー

あらすじ

生きることが、それがしの覚悟でござる――。俊英と謳われた豊後・羽根藩(うねはん)の伊吹櫂蔵(いぶきかいぞう)は、狷介さゆえに役目をしくじりお役御免、今や〈襤褸蔵〉(ぼろぞう)と呼ばれる無頼暮らし。ある日、家督を譲った弟が切腹。遺書から借銀を巡る藩の裏切りが原因と知る。前日、何事かを伝えにきた弟を無下に追い返していた櫂蔵は、死の際まで己を苛む。直後、なぜか藩から弟と同じ新田開発奉行並として出仕を促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がる決意を固める……。落ちた花を再び咲かすことはできるのか? 『蜩ノ記』(ひぐらしのき)の感動から二年。〈再起〉を描く、羽根藩シリーズ第2弾!

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Posted by ブクログ

葉室作品、いつも色々な事を考えさせられる
自分の人生はどうすべきか
これで良いのか
振り返るのでは無く、これから先をどう生きるべきか
中々簡単ではない
この作品は一つの道標と思う

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2025年08月31日

Posted by ブクログ

「人」という字を書く時、人は支えあって生きるものだと知る。

羽根藩シリーズの2冊目。

「蜩の記」より、私はこの作品を推す。

かつては俊英とうたわれた伊吹櫂蔵は人生をこぎそこね、「ぼろぞう」と言われるまでに落ちこぼれる。

しかし、芳の愛情によって目覚め、罠によって切腹させられた弟の志を果たす為に生きる。

人生の修羅場をくぐり抜けた人は強い。
恥を乗り越えた人も強い。

人の強さは、視野の広さにあると思う。

動物も自分の子供や集団で子供を守ろうとするが、視座の高さや視野の広さは人間特有のものだと思う。目先のことだけに囚われず、大義に生きることができるのが人なのだ。

心が黄泉の国に吸い込まれそうになっても、自分を心から信じてくれる人がいれば、踏みとどまることができるのではないか。

櫂蔵にとってそれが芳だったのだろう。芳にとっても、櫂蔵は命をかけても守りたい人だった。

ラストの読後感は爽やかだ。

「落ちた花は咲かない。」というフレーズが何度か出てくる。自分が自分で決めるのだ。落ちた花かどうかを。

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2024年10月06日

Posted by ブクログ

めちゃくちゃ良かった。葉室麟は人の心のふれあう様をどうしてこんなに鮮やかに描けるのかな。時代小説って舞台設定が無駄を削ぎ落として心情や情念を浮かび上がらせるのかな。そんな気もする。言ってしまえば再生の物語なんだけど、読んでて何度も心を揺さぶられて泣かされた。後半の悲劇は避けて欲しかったんだけど、それが殺されるための人物として登場させられたように全く思わないのは人物がくっきりと描かれているからだろう。見事。

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2024年06月18日

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ネタバレ

落ちた花は二度と咲かないとひとは言う。だが、もう一度、花を咲かせようと櫂蔵は思う。そして、咲いたとすれば、わが胸の奥深くに咲くお芳の花でございます。わたしが生きてる限りは、お芳の花は枯れずに咲き続けることでありましょう。
そのために生きるのです。ひとはおのれの思いのみ生きるのではなく、ひとの思いも生きるのだと。それゆえ、落ちた花はおのれをいとおしんでくれたひとの胸の中に咲くのだと存じます。
お芳と弟の新五郎を想い、仇を取るために紛争する櫂蔵。最後は、潮鳴りが、いとおしい者の囁きがきこえる。
人を想い生きる事は、どんな事があらうが、生き抜かねばならない。そんなふうに感じた小説でした。

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2024年03月13日

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仕事な人生で挫折を経験し、やさぐれた生活をした人が再起を図る勇気をもらえる本。周りの人の信頼、支えのありがたさを改めて感じるきっかけになる。

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2023年08月27日

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やはり私は葉室さんの作品に触れると心が熱くなり、涙も出てしまいます。とんでもない悪党がいる一方、主人公とその周りの人たち、その人達が強くもあり弱くもあって人間らしい一方、お互い感化されていく。哀しい話には違いありませんが、希望、明るい希望のある最高の読後感でした。特に、お芳、染子といった女性がまた素晴らしいです。優しくて、そして芯から強くて。。。

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2023年07月29日

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先が読みやすい勧善懲悪のストーリーながら、人を思いやる気持ちの大切さに改めて気付かされる小説である。ともすれば自分本位となりがちな現代において、人を慈しむ慈愛の心こそが人の共感を呼び、連帯感を強くすることを再認識させられた。読後感も爽やかである。

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2022年06月07日

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再起をはかる人々の物語。
地べたから始まっていることを考えれば、何事も諦観をもって前を向いて取り組める。

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2021年06月20日

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「ひとはおのれの思いにのみ生きるのではなく、 ひとの思いをも生きる。」
 という最終章の一行が心に強く残ります。なにかを成すには命を捨てる覚悟が
ないと相手を動かすことはできない、自分も廻りも引き摺り廻して中吊に苦しめて
しまう。「覚悟」とはなにかを考えさせてくれる本。

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2021年02月02日

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ネタバレ

「落ちた花を再び咲かせる」、まさに俺の一番好きなテーマ、人生再生の物語である。

襤褸蔵と漁師にバカにされるまで落ちた武士、櫂蔵
男に裏切られ、絶望の末娼婦となった、お芳
三井越後屋の大番頭から放浪の俳人となった咲庵
借金漬けでどうしようもなく経済破綻している羽根藩

登場人物も舞台も堕してしまったところからの再生を志し、あがいていくのである。その様をみて「他人ごとではない、俺だってあがいてみせるさ」と読者を勇気づける、そういう小説が楽しくないわけがない。

実は、この小説で一番魅力的だったのは、家は堕ちても、心根は堕ちず孤高を保った主人公の継母「染子」ではないだろうか。武家の妻としての矜持を抱え込むように持ち、その生きざまを貫き通す。駄目なものは駄目、しかし良いと思ったものや、見直すべき価値感があれば、自分の中で修正し認め受け入れ育んでいく。その凛とした生き様は、一服の清涼剤のごとく読んでいて気持ちよかった。

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2020年01月26日

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内容(「BOOK」データベースより)

俊英と謳われた豊後羽根藩の伊吹櫂蔵は、役目をしくじりお役御免、いまや“襤褸蔵”と呼ばれる無頼暮らし。ある日、家督を譲った弟が切腹。遺書から借銀を巡る藩の裏切りが原因と知る。弟を救えなかった櫂蔵は、死の際まで己を苛む。直後、なぜか藩から出仕を促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がるが…。“再起”を描く、『蜩ノ記』に続く羽根藩シリーズ第二弾!

平成29年11月27日~12月1日

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2017年12月01日

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蛇足のような出来事もしっかり繋がって上手く回収されるのが流石です。後半畳み掛けるのも気持ちがいいですが、もう少し細かく描いてくれてもよかった。
一喜一憂、読んで気持ちが晴れました

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2025年12月09日

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「蜩ノ記」に続く羽根藩シリーズだが話が繋がっている訳ではなかった…たぶん。かつて酒席での失敗で海辺の小屋暮らしにまで落ちぶれた伊吹櫂蔵が弟、新五郎の無念を晴らしていく。新五郎が借銀の責を負い切腹した裏には明礬商いを独占する豪商播磨屋の思惑を守らんが為の闇が潜んでいた。櫂蔵は新五郎と同じく新田開発奉行並としてこの闇を晴らしていく。しかし全てがハッピーエンドという事ではない。新五郎の死を知り、一度は命を絶とうとした櫂蔵を助け、彼を支え続けたお芳は櫂蔵と櫂蔵の継母の染子の名誉を守る為に自ら死んでしまう。お芳を死に追いつめ新五郎を切腹に追いやった黒幕、井形清左衛門は、切腹ではなく蟄居となる。こういうところ(そんなに単純で甘くはない)が葉室麟さんらしいのだろうと思う。

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2025年07月20日

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 蜩の記に続き、羽根藩シリーズ第2弾であるが、全くの別物。しかし、蜩の記の後に読むと、気持ちが高揚する箇所も多かった。

蜩の記よりエンターテイメント色が強く、小説として楽しんだ。

底まで堕ちた人々が、もう一度花を咲かせようと、人を想いながら信念を貫き、生きる姿が美しかった。

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2025年05月17日

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襤褸増(ぼろぞう)などと揶揄されるほどどん底まで堕ちた伊吹櫂蔵が、人生をやり直す。
落ちた花は二度と咲かないと言われた櫂蔵が弟の無念を晴らすため、藩の不正を暴く。
葉室麟の作品らしい、気持ちの良い内容だった。

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2024年09月18日

Posted by ブクログ

自らの性格や生き方で地に落ちた男が、弟の生き様に触れて再生をする男の物語である。勧善懲悪をベースに進むストーリーは、喜怒哀楽を散りばめられ読み応えのある作品である。

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2024年05月13日

Posted by ブクログ

一旦は落ちるところまで落ちた主人公が弟のために決意する。
藩で奔走する主人公らの傍ら、家で一生懸命働く女性たち。
弟の無念や村娘の行く末など、哀しく悔しい話もありながら周囲に認められ支えられて目的を成していく。
絶望しながらも生き抜く覚悟をもってあがく泥臭い主人公が格好いい。

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2023年07月05日

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著者は、出版社によって作品を書き分けているそうで、舞台とする藩についても、角川版には架空の扇野藩を、この祥伝社では、やはり架空の羽根藩を用いている。
羽根藩シリーズと銘打たれるが、羽根藩が舞台というだけで、一部を除きそれぞれの作品に関連性はなく、登場人物にもつながりはない。
第一弾の直木賞受賞作『蜩ノ記』は、死を意識した所から始まる「生の美学」であるのに対し、第二弾の本書は、「落ちた花は再び咲かすことはできるのか」をテーマにした再生の物語となっている。
役目を失敗して、お役御免となった伊吹櫂蔵が主人公。
彼が弟の切腹をきっかけに、それまでの無頼な暮らしを改め、弟の無念を晴らすべく、真相究明に立ち上がる。
彼の再生を手助けするのが、大店の元手代で、今は俳諧師の咲庵と、さらに櫂蔵が死を意識したとき、彼を抱いて引き留めた居酒屋の女将お芳。
彼らの助力により、宿願を果たした櫂蔵は、「ひとはおのれの思いのみに生きるのではなく、人の思いを生きる」のであり、「落ちた花はおのれをいとしんでくれたひとの胸に咲くのだと存じます」と、述懐する。
題名の「潮鳴り」は、咲庵が吐露する言葉から。
「潮鳴りが聞こえるでしょう。わたしにはあの響きが、死んだ女房の泣き声に聞こえるのです」
しかし、宿願を果たした櫂蔵は、潮鳴りはいとしい者の囁きだったかもしれぬ、と考え、いまもお芳が静かに囁き、励ましてくれているのだから、一生潮鳴りを聞いてゆくだろうと、心に誓う。

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2023年04月23日

Posted by ブクログ

落ちるところまで落ちた櫂蔵が、弟の自害を契機に、這い上がって行く。
身寄りなく、客をとって身を立てていたお芳との心の共鳴は、孤独と絶望を感じた者の間でしかわからない世界が広がっていた。
深みある読み応えのある作品だった。

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2022年08月28日

Posted by ブクログ

一度失敗を犯した者が再び花開くことが可能なのか、という命題がテーマになった作品。
無駄なプライドを捨てて、自分に正直に、かつ自分のことをきちんと見てくれる人の想いに報いるべく生きることの価値を一貫して綴られています。
やもすれば青臭い理想論になってしまうところですが、葉室氏の巧みな人物描写とストーリー構成で、力強い感動的な読後感を味わうことができました。

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2022年08月04日

Posted by ブクログ

前作同様、藤沢周平の再来かと思わせるようなストーリー展開、雰囲気で楽しめる。最後は何か、清々しい気持ちになった。

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2021年08月21日

Posted by ブクログ

痛快な復讐劇で大変面白かった。
前作「蜩ノ記」のような心に染みるような感動作ではないが、先の展開を期待しながら清々しい気持ちで読み切れた。シリーズといいながら舞台となる羽根藩が同じだけでどれから読んでもokの続きものでした。

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2021年06月18日

Posted by ブクログ

「蜩ノ記」の羽根藩シリーズ第2作。続編と思いきや、他のレビュアーも書かれているとおり、「蜩ノ記」とは独立した物語です。とても読みやすく、作者の執筆のスピードも早かったのではないでしょうか。

一度落ちた花が、再び花開く話ですが、そこに至るまでに2つの犠牲があります。主人公の身近な人達の死です。主人公もほとんど死に近いところまでいくのですが、戻ってきます。そして、武士としての潔さの延長にある死を選ぶのでなく、生きぬいてことをなす、したたかさに裏打ちされた強さが描かれます。

主人公に影響を与えたはずの父親は描かれませんが、当初は冷たかったものの主人公の成長とともに賢母として顕現する継母が描かれます。賢母と愚息という構図は藩主とその母親にも現れ、悲劇を起こす元となり、終盤では救済をもたらします。悪い男性は描かれるが、悪い女性は描かれないなど、読後には人物像に偏りを感じもしますが、読んでいる最中にはそんなことは気になりません。時間も忘れて読むことになるでしょう。

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2021年05月02日

Posted by ブクログ

一途な女たちと一途でありたい男の物語。読んでいるうちに、頁をめくるスピードがどんどん速くなってくる。

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2020年12月09日

Posted by ブクログ

羽根藩シリーズ二作目。本当に良かった。藤沢周平の本を読んでいる時の幸福感に浸れる。もっと早く読んでおけば良かったとも思うが、残りのシリーズを読めるという楽しみもある。心が洗われるような話とはこのことか。

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2020年11月08日

Posted by ブクログ

面白かった!
「蜩ノ記」に続く羽根藩シリーズ第2弾となっていますが、羽根藩が舞台と言う事以外は関係ありません!
池井戸潤のような企業小説の陰謀系の勧善懲悪ストーリ+時代小説の武士の生き様を加えたような印象(笑)
とはいえ、本質は主人公の再生の物語です。

ストーリとしては、
俊英と謳われた豊後羽根藩の伊吹櫂蔵は、役目をしくじりお役御免。漁師小屋で”襤褸蔵(ぼろぞう)”と呼ばれる無頼暮らしをしている中、家督を譲った弟が切腹。遺書から借銀を巡る藩の裏切りが原因と知ることになります。直後、なぜか藩から出仕を促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がることに。
弟の遺志をつごうとしますが、そこには様々な苦難が..
さらには、藩内にうごめく謀略・陰謀。どう立ち向かっていくか..
といった展開。
そして、櫂蔵を支える女お芳。そのお芳に厳しくあたる義母の染子のストーリも素晴らしい!

「ひとはおのれの思いにのみ生きるのではなく、ひとの思いをも生きるのだと」
「わが命は、自分をいとおしんでくらたひとのものでもあるのですね」

ぐっと胸が熱くなる言葉です。

とってもお勧め!!

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2019年07月07日

Posted by ブクログ

『蜩の記』に続き、葉室作品二作目。羽根藩シリーズ、第二弾。時代もので初めてのシリーズ読み。去年の読書で一番の収穫は時代小説の面白さを知れたことでした^^ その一端を担ったのが葉室さんだした!前作も面白かったんですが、こちらも負けず劣らず…でした。男性キャラたちも勿論良いのですが、女性キャラ、特にお芳さん。一本筋が通っていて素敵な方でした…。次作『春雷』もストックしておりますw 第四弾『秋霜』もそろそろ文庫化しそうだし、楽しみだなぁ。星四つ。

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2019年03月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どん底から這い上がり悪を成敗する。わかりやすく読みやすかった。とんとん拍子に味方が増えていくのが出来すぎてると感じだけど逆に安心感があり、多くの口コミで見る通りエンタメとして楽しめた。
作中何度もでてくる「落ちてしまった花をもう一度咲かせることができるのか」の問いを通して主人公伊吹櫂蔵の再生までが描かれているが、解説にある通り
「誰かのために生き直そうすることが自らの再生になる」。人は人によって生かされてる。

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2025年08月02日

Posted by ブクログ

やっぱり葉室麟はいいなぁってなった
蜩ノ記の刺さり方とはまた少し違う方面で刺さった
落ちた花がもう一度咲くことへの希望とか、それを皆が望むところとか、自分一人では生きていけないところが結局私たちは人間なんだと思わせてくれる

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2024年06月26日

Posted by ブクログ

蜩ノ記から読んで感動して、乾山晩秋というデビュー作を含む短編集を読んだ時は、淡々とした抑制の効いた文章で驚きました。その短編集でも、後半に向かって、少しポップな感じ?になって行くのですが、作風にそういう濃淡があるような気がします。そういう意味では、本作はかなりポップよりな、時代小説ではあっても2010年代に書かれただけあるなという感じ。えっ、そんなことになってしまうの?と悲しくて泣けましたし、いい話だったけど、最後にまさかそんな水戸黄門の印籠みたいなまとめになるとは思いませんでした。

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2022年06月07日

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