あらすじ
少年時代に梶与五郎の薫陶を受けた筒井恭平は、与五郎が隣藩で殺害された事実を知り、真実を突き止めるため鵜ノ島藩に潜入するが――。人を愛すること、人が成長するということなど、人間にとって大事なものを教えてくれる感動の長編時代小説。
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Posted by ブクログ
内容紹介
少年時代に梶与五郎の薫陶を受けた筒井恭平は、与五郎が隣藩で殺害された事実を知り、真実を突き止めるため鵜ノ島藩に潜入するが――。人を愛すること、人が成長するということなど、人間にとって大事なものを教えてくれる感動の長編時代小説。
平成31年2月24日~26日
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エエ話です。
主人公はじめ重要なキャラクターすべてに人間臭さ、つまりどこかしら欠けてるところや弱いところや突っ込みどころがあって、それでも彼らがみんな今を一生懸命生きて生きて、その生き方を積み重ねていくことで信念というものが生まれ育まれ育てられ…
桃栗三年、柿八年、柚子は九年で花が咲く
自分を嫌うことは自分を大切に思ってくれる人の心を大事にしないことになる
例え身についた泥があったとしても、自らの心で洗い流すことはできるはず
だから一生懸命、丁寧に生きていきましょうよ。とこの作品は訴えてくれている
命を失う登場人物がやや多いように思えた部分もあるにせよ、そういう時代だったのだろうなぁと思って減点対象にはせず。
Posted by ブクログ
初読、葉室麟。『桃栗三年柿八年、柚子は九年で花が咲く』郷学教授梶与五郎が一太刀で斬られ発見される処から、物語は始まる。かって青葉堂村塾の教え子達が、死んだ恩師の悪評・噂に驚き、謎の死と汚名を晴らすため捜索するが、同じ切り口で友人が果てる。領地争い・同時の身分の違いによる婚姻・親子関係を絡めたミステリー時代推理小説を、教え子の主人公恭平視線で描かれる。頼りなく他人を頼る恭平だが、優しくまっすぐに生きる恭平に対する幼馴染おようの本心に気づき、恭平は成長しながら解決する。師を慕う子ども達に感動した。
『わたしたちは先生が丹精込めて育ててくださった柚子の花でございます。』
桃栗3年柿8年、梅はすいすい13年、柚子は大馬鹿18年、
林檎ニコニコ25年、女房の不作は60年、亭主の不作は
これまた一生。
「桃栗3年柿8年、柚子の大馬鹿18年、銀杏の気違い30年」
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あざとさを感じさせず、清々しさすら感じさせる展開。師の不慮の死の汚名を晴らすべく奮闘する過程で成長していく主人公。ブレのない筆致で、必ずや悪い結末にはならないと安心して読み進められた。よかったなぁ。
Posted by ブクログ
子供時代に教わった”まっすぐに生きる事”。
いつか大人になった時、その事がうまくいかない事がある。
それをひとは”現実”と呼び、幼き日に習ったことは”夢”でしかないと語る。
しかし、それは単に”まっすぐに生きる事”を放棄しただけなのかもしれない。
”夢”に向かって努力することを捨てただけなのかもしれない。
”まっすぐに生きる”事の強さと同時に、そのつらさや悲しみを伝えてくれる、この本はそういう本です。
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いいお話だった。恩師が何者かに殺された。その真相を探りに行った友もまた。そして主人公の恭平がその真相を探るため、隣の藩に潜入する。
師弟、友情、愛情、親子関係等の要素がちりばめられていて、時代小説ではあるけれど、現代にも通じることが描かれている。
ラスト、青葉堂村塾の子ども達の姿が本当に純粋で健気で、「約束を守る」ということを体現している姿に感動。子ども達がそのような行動をとれたのも、恩師の与五郎の教えの賜物。
与五郎の父は恭平の隣藩の家老で大きな力を持つ。その父親のまつりごとに対する姿勢に異を唱えることもあった与五郎は、一度素行が悪くなり勘当される。でも、再出発をするため、恭平の住む藩にやって来た。
そんな彼だからこそ、「たとえ身についた泥があったとしても、自らの心で洗い流すことはできるはずです」ということができたのだろう。
また、「自分を嫌うことは、自分を大切に思ってくれる人の心を大事にしないことになる」との言葉にも、彼の生き様が現れているのではないかと思う。
与五郎と同じくらいにいい人だなと思ったのは儀平。もうあっぱれとしか言いようがない。
まつりごとに携わる者の醜さも描かれている。この醜さはいつの時代も変わらないのか。自分の藩の為ならば、悪事には目をつぶる。いや時にはそれを手助けさえする。自分の「役に立つか立たないか」で選り分ける。その人が苦しもうがどうしようがかまいはしない。いや、苦しむのは「覚悟が足らぬ故だ」と突き放す。そんな人物に成り果てるのは、権力の故か、もともとの生まれ持ったものの故か。
Posted by ブクログ
少年時代に梶与五郎の薫陶を受けた筒井恭平は、与五郎が隣藩で殺害された事実を知り、真実を突き止めるため鵜ノ島藩に潜入するが――。人を愛すること、人が成長するということなど、人間にとって大事なものを教えてくれる感動の長編時代小説。柚子は9年で花が咲く。人生において、大切なものとは何なのか。嵌った。
Posted by ブクログ
柚子の花の香りの如くなんとも爽やかな時代小説。
あまり巧いという感じはしないのだが読後感が清々しい。
師と徒、男と女、友と友、親と子・・・いろいろなかたちのひとがひとを想うこと、が描かれる。
そしてまた、良き教育者とは-を再び考える。
自らも苦悩を抱え、ぱっとしないが、たいせつに思ってくれる、成功の暁には全身で喜んでくれる、それだけでいいのだ。
Posted by ブクログ
葉室麟さんの作品をしばらく読み進めている。
この作品は、武士の刀を用いた斬り合いなどの戦いのようなものは少なく、人情的な要素を濃く描いており、武士の心情だけでなく、その周囲の人物なども描いている。
「武士の生き様」(といっても、その定義のようなものはわからないが)が、すんなり入ってき、また、人それぞれに抱える複雑な想いが、話の筋とともに絡まっていると思う。
まだまだ読んだ本は少ないが、葉室麟さんの作品の中で、好きな部類に入る。
Posted by ブクログ
初めての葉室作品。時代小説だから言ったら元も子もない女性の立場の弱さや身分の上下関係に、歯噛みしながらの読書。ミステリー色が強いストーリー自体よりも、むしろ一つ一つの言葉が自分の心に降り積もっていくような感じがしました。「たとえ身についた泥があったとしても、自らの心で洗い流すことはできるはずです」「自分を嫌うことは、自分を大切に思ってくれる人の心を大事にしないことになる」などなど。村塾での子どもたちが出てくるラストシーンは、胸が熱くなりました。人を大切にできるのは、人なんだな。
Posted by 読むコレ
このところ作品を良く目にする機会が多く
気になっていた作家さん。初読です。
もっと号泣するくらいに泣けるのかと思っていた
んですがそれは叶わず。でも、大袈裟な表現では
ないながらも、しっかりと、そして誠実な文章で
読み易く、分かり易く、時代小説が苦手な方でも
すんなり入っていける作風。
友とは、師弟とは、教えるという事、学ぶという事、
そして愛するという事...当たり前に大切な事が
当たり前に書かれています。単純な行動原理に
基づいて考え、動く主人公の「恭平」は決して
派手な存在ではなく、我々と同じ等身大の人間と
して描かれているところが、何かを与えてくれる。
もしかしたらまた一人好きな時代小説作家さんが
出来たかもしれない。
Posted by ブクログ
それぞれが誰かを想っていて、けれど現実には叶わない。
晴れない気持ちを抱えた登場人物たちが、最後にはそれぞれの形で想いに決着をつけていくのが心に残った。
この著者の書く、抑えめでいて爽やかな男女の恋の描写が好き。
Posted by ブクログ
主人公恭平の真っ直ぐな生き方、苦難にめげず目的のために身を捨ててまで真相を究明する姿に感動しました。師を思う心に私も涙が出ました。
女性の人物像も丁寧に書かれていて好感が持てます。
作者の本を4.5冊読んでいて上の方にいきますね。
Posted by ブクログ
「柚子は九年で花が咲く」その意味が少しずつ明らかになる。
少年時代に薫陶を受けた師・梶与五郎の殺害の真実を突き止めるため隣藩に潜入する。時代ミステリー的な中で愛することや成長するということを教えてくれる作品。
大人たちに背き、子供たちが梶の死後も村塾に籠り、守り続ける理由が明らかになる。人をのびのびじっくりと、そして点取り知識ばかりで大事なことを教えない現代教育を指摘しているのかもしれない。
Posted by ブクログ
ひさしぶりに一気に読んでしまった本です。
謎を解く要素はライトかなと思います。
人が人を思ういろいろな気持ちの様子が後半に近づくにつれて入り込む事ができました。
ちょっと最後の親の気持ちがわからんかったかな…
結局妾腹の息子に負い目があって、気持ちも態度もそういう扱いしかできんかったのか…
全員善人の話はないのだろうけれど、ちょっと親と兄に救いがなさ過ぎる。
Posted by ブクログ
初めて読む方でしたが、良かったです。人の想いが形になって現れるまでには、長い年月が必要なのかもしれません。人それぞれ何を大切に思って生きていくのかで生き様が違ってくるのでしょう。青葉堂村塾の子供達、師の思いを受け継いで立派に成長している。人を育てているのは、師の生きていく姿勢だったんですね。悪人でもその心の内を聞くと哀しさを思わせるところに、作者の気持ちを感じます。
Posted by ブクログ
時代小説です。
江戸時代、藩には藩校という学校があった。
とはいえ、予算の関係などで、数は少ない。
村塾で15歳までは学ぶ。
「桃栗三年、柿八年、柚は九年で花が咲く、梨の大馬鹿十八年」というのが口癖だった恩師。
日坂藩の青葉堂村塾で、子供の頃に、筒井恭平は、梶与五郎という先生に習っていた。
ふだんは川で一緒に釣りをしたり、よく遊べといわんばかりのお気楽な先生だったが、藩校へ上がる段になって、みっちり仕込んでくれて、春の試験で8番となる。
群方となった恭平は、恩師の予想外の死を知らされる。
人妻を伴っていたため、その夫に女敵討ちになったというのだ。
折しも、洪水で川の流れが変わり、隣の藩との境界を巡って争いが起きていて、与五郎はその根拠となる書類を持って訴え出ようとしていたという。
同じ村塾の出の穴見孫六は、藩校に行くときに4番だった仲間。
自分の知っていることからもこれは怪しいと睨み、探りに行って何者かに切られてしまう。
恭平は鵜ノ島藩の事情を探る命を受けるが、かなり危険な任務。
鵜ノ島藩の家老・永井兵部は与五郎の実父だという。
与五郎こと永井清助は若い頃には放蕩者だったため、勘当されたというのだが。かっての婚約者を連れ出したのか?
恭平は学問よりは腕に自信があり、竹を割ったような性格。
大百姓の娘で村塾でも出来が良かったおように、ほのかな想いを抱いていましたが、身分違いでかなうわけがないと思っていました。
仕事中に再会して、おようの夫から思いがけないことを言われます。
任務は危険でスリルいっぱいだが、幼なじみや村塾の子供らなどの存在が効いています。
いきいきと描けていて、一気に読めました。
Posted by ブクログ
郷学
岡山藩を範として郷学を開校した日坂藩と鵜ノ島藩が舞台。
日坂藩の郷学、青葉堂村塾教授・梶与五郎(鵜ノ島藩家老・長井兵部の三男・長井清助の変名)
主人公は日坂藩郡方(70石)・筒井恭平
学友で殺される勘定方(90石)・穴見孫六
学友の青葉村庄屋・儀平、
学友で儀平の妻・およう
Posted by ブクログ
少年時代に梶与五郎の薫陶を受けた筒井恭平は、与五郎が隣藩で殺害された事実を知り、真実を突き止めるため鵜ノ島藩に潜入するが――。
人を愛すること、人が成長するということなど、人間にとって大事なものを教えてくれる感動の長編時代小説。
主人公である恭平、その師である与五郎もさほど魅力のある人物とは言えませんが、なんとも惹きつけられた作品でした。
Posted by ブクログ
時代小説は苦手だと思っていたのに、読み始めてすぐに引き込まれてしまった。善悪の差はあれど、誰もが自分の信じる道を進んでいた時代が描かれる。悩み苦しみながら、懸命に生きる人達の姿は凛として清々しい。揺るぎない信念を持ち得た人間を、とても優しく温かく表現している。思わず涙…。
Posted by ブクログ
本当のその人の値打ち、そういうものが後から立ち現れてくる。葉室さんの物語はそういう清々しい人物が理不尽なことになる。まあ今回もそうなんだけど、、恭平の粘りで良かった良かった。
Posted by ブクログ
2021.09.27
「桃栗三年柿八年」と教わってきたけど、更に「柚子は九年で花が咲く、梨の大馬鹿十八年」がやけに心に残った。次世代の若者を育てて行くことの大切さを改めて感じた。
Posted by ブクログ
恩師と友を続けて殺害され、その真相を探る主人公の恭平。
師の意外な過去や背景が明らかになると共に、そこに藩の思惑が絡んできて・・・。
ラストの青葉堂村塾の子供達が、健気で心打たれます。
かけがえのない思い出と仲間ができる、素敵な村塾だと思いました。
Posted by ブクログ
自我妄執にとらわれた男たちの悪行が禍を呼び終盤にかけて正体を現す、、。"ひとはひとを大切にせねばならぬ"…青葉堂村塾の師の教えは脈々と受け継がれる。丹精込めて育てられた幼き花弁、淑やかな花弁をはじめ、一斉に開く真面目に働く柚子の花々の咲き様が飾るラストには、思わずホロッとさせられてしまった。
Posted by ブクログ
葉室麟さんの時代小説は、時代風景がわかりやすく
すんなりと、その時代に入って物語を経験する気がする
そして、人のやさしさや孤独なさびしさなど
胸が痛くなるような、深とした気持ちで読んでしまう
ちょっと悲しいさびしい小説でした
Posted by ブクログ
村塾の恩師が殺された。
死にまつわる悪い噂を信じられない恭平は
死の謎を追って、藩の抗争に巻き込まれていく。
登場人物にすごい魅力を感じるわけではないのに
一気に読めるのは何故だろう。。。
人を想う気持ちとか、自分勝手な振る舞い、
思うようにはならない事情とかが惹きつけるんだろうな。
「桃栗三年、柿八年、柚子は九年で花が咲く」
武士ものならではの心温まる感じが良かった。
Posted by ブクログ
主人公である恭平は、ちょっと流され易いところがあるのかな、と思いました。
いや、要所要所では事件を解決(というのも違いますが)しようという奮闘の気配はありますが、結構いろんなことをいろんな人に助けて貰っていますよね……。
せめて恋愛くらいは自分で奪い取るくらいの気概があってもよかったのではなかろうか!
周囲がお膳立てしてくれてなければ、絶対に一生独身か、あるいは宛がわれた女性と結婚していたのだろうなあ、というのが伺えました。
何にせよ、主人公にスポットをあてている感じがして、もうすこし他の人の人柄だとか死にいたるまでの経緯とかがあったら面白かったのだろうになあ、と思いました。
時代モノミステリ?という感じで見ると面白い かなー。
Posted by ブクログ
瀬戸内海に面した小藩の郷学(藩設立の農民の子まで学習できる塾)の教授をしていた梶与五郎が隣藩で殺害される。死後与五郎の悪評がたち、これに不信を抱いた元塾生の孫六と恭平が真相解明に乗り出す。まず孫六が隣藩迄出向いて少し解っていくが孫六は殺害されてしまう。恭平はそのあとを引継ぎ、命を狙われながら度々隣藩を訪れて事件を解明していく。解明後与五郎の後を引継ぎ塾で少年少女を教える立場になる。
恭平にスポットを当てているせいか、与五郎、孫六の最後に至る経緯がサラっとしすぎており物足りなさを感じる。
Posted by ブクログ
主人公に積極性が、もう少し欲しかった。
(何をするにも、恋に関してもお膳立てされてる気がする)
そうしないと遅咲きにならないから、しようがないのかな?
Posted by ブクログ
このところ作品を良く目にする機会が多く
気になっていた作家さん。初読です。
もっと号泣するくらいに泣けるのかと思っていた
んですがそれは叶わず。でも、大袈裟な表現では
ないながらも、しっかりと、そして誠実な文章で
読み易く、分かり易く、時代小説が苦手な方でも
すんなり入っていける作風。
友とは、師弟とは、教えるという事、学ぶという事、
そして愛するという事...当たり前に大切な事が
当たり前に書かれています。単純な行動原理に
基づいて考え、動く主人公の「恭平」は決して
派手な存在ではなく、我々と同じ等身大の人間と
して描かれているところが、何かを与えてくれる。
もしかしたらまた一人好きな時代小説作家さんが
出来たかもしれない。