あらすじ
鬼隼人、許すまじ――怨嗟渦巻く豊後・羽根藩。新参の多聞隼人が“覚悟”を秘し、藩主・三浦兼清を名君と成すため、苛烈な改革を断行していた。そんな中、一揆を招きかねない黒菱沼干拓の命を、家老就任を条件に隼人は受諾。大庄屋の〈人食い〉七右衛門、学者の〈大蛇〉臥雲を召集、難工事に着手する。だが城中では、反隼人派の策謀が蠢き始めていた……。著者畢生の羽根藩シリーズ第三弾!
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最高に良かった。主君と家臣、武士と農民、親と子、男と女、様々な関係が描かれる中で、悲しい生き方しかできない男の姿が活写されてた。それぞれの人物がとても良く描かれてて大変感情移入をしてしまった。最後の行を読み終わったところでいろんな感情が溢れて大泣きしてしまった。誰もがみんな言葉足らずに思えて、なのにその少ない言葉の中、いやむしろ言葉にされない中に沢山のことが語られてたのかな。それが物語全体に静謐な雰囲気を与えてもいる。面白かった。
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鬼隼人の生き様。人になんと言われようが己の信念を貫く。相手にわかってもらおうとも思わない。非常に潔くて悲しい。後々百姓が隼人に感謝してる描写は出てくるけど生きている間に正当に評価されて欲しかったのが正直なところ。
批判するだけで何も動こうとしないことへの怒りには耳が痛かった。嘆くだけでは現状はよくならず、具体的に行動してこそ意味がある。
最後、名君ではなく暗君にはもっとすかっとしたかった。失脚だけでは生ぬるい
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体裁や人目を気にして生きるのではなく
自分の信念・生き方を変えることなく突き進んでいく
人は変えられずとも、自ら変わることはできるし、その種を蒔くことはできる。
鬼隼人らに、良くも悪くも違和感が拭えぬまま読み進めていた自分も、世で言う善悪、その人の言動のみに目を向けて判断する善悪に惑わされていることを自覚した。
自分はどう生きたいのか
羽根藩シリーズを読むたび、様々な角度から問いかけられている気がする。
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羽根藩シリーズ3作目
1作目の蜩の記の秋谷と同じく、この作品の隼人も逃げることなく死ぬことを選ぶ。最後は同じだけれど秋谷は静の人、隼人は動の人に思える。覚悟をしてからは嫌われ恨まれることも厭わない激しい人生。隼人、大庄屋の七左衛門の己の信じるところを曲げずにむかえる死に様は壮絶です。
隼人の「悪人」と「善人」の考え方からすると、私は善人だ。
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『潮鳴り』に続き、葉室作品三作目。羽根藩シリーズ。前作よりも主題は難しい。藩主を自分(隼人)の眼で見定める——。悪いことは悪いと謝ることが出来ないなら、まあ人間として駄目だわな…兼清さんよw どんなに短い一生でも何かしら意味があったと思いたい——不器用な生き方しか出来なかった"鬼隼人"に黙祷を…。星四つ。
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羽根藩シリーズの第3弾。
シリーズといっても舞台になる藩が同じなだけで、それぞれの巻に話の繋がりは(たぶん)全くなく、時系列的な関係も分からない。シリーズとして唯一の共通点は主人公が気高いこと。気高さの表し方はそれぞれ異なるものの、根底にある印象が同じだという他に類を見ない構成です。今回は真の目的を果たすためには憎まれ役も厭わない男たちの話でした。
真似はできないけど格好いい。
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「蛍草」のようなハッピーエンドものもないではないと思うが、葉室麟の時代小説は切ない。
羽根藩新参の多門隼人は、御勝手方総元締として苛烈な改革を行っている。農民からは鬼隼人として恐れられ嫌われ、藩の同僚、上役からも足を引っ張られても、藩財政を立て直し藩主を名君と成すために突き進んでいる。そんな中、藩として過去に失敗し断念している黒菱沼干拓の命が下る。
隼人を助け支え、開拓に協力する人物が現れる一方、藩内では隼人追い落としのため百姓一揆まで策謀される。そして佳境へ。隼人の真の思いは、運命は、、、
欅屋敷の謎の女性や隼人のもの周りの世話をする出入りの商人の女房おりうも隼人を案じ慕う。この二人の女性の生きざまも切ない。
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3.5ぐらいの感じ。羽根藩シリーズの中では少し毛色が違う。いつもは理不尽さの中で個人が葛藤したり、がんばったりという話だが、その理不尽さが後にならないと分からない構成になっているので、何となく1人の武士の活躍の話なのかなと思えた。もちろん葉室麟の書く話なので、とても面白いし、全体としてのテーストも変わらないので面白かった。特に主人公に協力する個性的な面々は面白い。水滸伝的な雰囲気があって、個人的には楽しめた。
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羽根藩シリーズ第2弾。
続編ともいうべき『秋霜』を先に読んでしまった。
そのため、鬼隼人とも称される主人公の最期がわかったまま読み進めることになった。
それでも、主人公の覚悟を秘した行動に最後まで引き付けられた。
「世のためひとのために尽くした者は、それだけで満足するしかない。この世で、ひとに褒められ栄耀栄華を誇るのは、さようなものを欲してあがいた者だけだ。ひとに褒められるよりも尽くすことを選んだ者には、何も回ってこない・・・」
そんな思いと覚悟を持った者は、現代に果たしているだろうか。違和感なく描けるのが時代小説であり、だからこそ我々は時代小説に惹かれるのだろう。
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面白かった!
羽根藩シリーズ第3弾!
帯にある通り、「鬼」の生きざまを通して「正義」を問う物語。
羽根藩って藩主に恵まれないのね。それが共通点な気がしてきました(笑)
ストーリとしては、
豊後羽根藩の多門隼人は「覚悟」を秘し、藩主を名君となすため、「鬼」となって、苛烈な改革を断行しています。ついたあだ名は鬼隼人。鬼隼人に対する怨嗟渦巻く中、さらに厳しい黒菱沼干拓の命をうけることに。ひと癖もふた癖もある大庄屋の「人食い」七右衛門と学者の「大蛇」臥雲を召集し、その難工事に着手します。一方で、城中では、反隼人派のさまざまな謀略が..
そうした中、使命を果たすための隼人の行動には心打たれます。
本当の「悪人」とは何か?
そして「正義」とは何か?
鬼隼人の生き様だけでなく、七右衛門、臥雲の生き様を通して我々読者に問いてきます。
さらに隼人をそこまで突き動かす「モノ」とは..
秘めた思いとは..
そして覚悟..
とってもお勧め!
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内容(「BOOK」データベースより)
“鬼隼人”許すまじ―怨嗟渦巻く豊後・羽根藩。新参の多聞隼人が“覚悟”を秘し、藩主・三浦兼清を名君と成すため、苛烈な改革を断行していた。そんな中、一揆を招きかねない黒菱沼干拓の命を、家老就任を条件に隼人は受諾。大庄屋の“人食い”七右衛門、学者の“大蛇”臥雲を招集、難工事に着手する。だが城中では、反隼人派の策謀が…。著者畢生の羽根藩シリーズ第三弾!
平成29年12月1日~6日
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武士とはなんだろう。志とはなんだろう。
胸に秘めた譲れないものを最期まで貫き主人公は壮絶な死を選ぶ。
読み終わった後、寂しさが吹き抜けていく。
人は皆、グレーだ。善と悪の融合物だと思う。
ただ視点を何処に置くかで生き方は変わる。
どんなに取り繕うことが上手だったとしても、全ては己の心が知っている。隼人が仕えた主君はお粗末だった。
その場所でなさねばならねことを全力で果たしたのが隼人という武士なのだろう。
仁もある、知もある、武もある。なのに何故か大きな運命に翻弄される。
それが憂いとなり、ダンディズムを感じる。そんな主人公を描くのが、葉室麟さんは得意だと思う。
Posted by ブクログ
豊後の羽根藩では、財政窮乏、藩の借銀が膨大な額となり返済に苦しんでいた。名君との聞こえもある藩主兼清のもとに、備後浪人の多聞隼人が召し抱えられ、鬼隼人と称されて、苛烈な改革を断行していった。
悪とは何か。正義とは。
おのれの正しさを言い立て、他人を謗り、正すのが正義なのか。それは何も作ろうとはしない。何かをなそうとする者の足を引っ張って快とするものだ。この世に何も作りだそうとはしない。
今の政治家に聞かせてあげたい。