あらすじ
富商の娘を娶り、藩の有力派閥の後継者として出世を遂げる三浦圭吾。その陰には、遠島になってまで彼を守ろうとした剣客・樋口六郎兵衛の献身と犠牲があった。十年後、島から戻った六郎兵衛。だが、二人は敵同士として剣を交えざるを得なくなる……。派閥争いに巻き込まれ、運命に翻弄されていく男たち。彼らは、何を守るために刀を振るうのか。真に大切なものを問う、葉室文学の円熟作。(解説・島内景二)
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男の男に対する情愛の深さを突き詰めたら、ここまでいくのかという作品。主人公の三浦圭吾は、道場一の遣い手である樋口六郎兵衛の稽古の相手をさせられる一方で、危急の時も彼に救われる。そんななか、六郎兵衛は拐われた豪商の娘を助けるのだが、その手柄を圭吾に譲り、やがて圭吾はその娘を娶ることに。時は流れ圭吾は出世していくが、六郎兵衛とは疎遠になり、再びまみえたときには、、、
葉室麟らしいちょっとした救いのあるエンディングではあるが、六郎兵衛の生き様はやるせなく切ない。
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武士社会のお話はあまり好んで読まないのだけど、読み始めたらすぐに引き込まれていった。血生臭い場面も多いのになぜか美しい。人の命をなんとも思っていない藩主や奉行たちが不気味だ。圭吾もそうなりつつあったのに、友と妻が救い出していく。
美津は世間知らずのお嬢様な雰囲気だったが、良い奥方になっていき、六郎兵衛のことも理解していき良かった。
あれほど多くの人を切ってしまった六郎兵衛には惨めな死に方しか用意されないのだろうかと諦めの気持ちで読んだが、どうやらその場面は見なくて済んだ。病で長くはないかもしれないが、どうか静かに過ごせていたらと願う。
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葉室麟の遺作
何を守るために刀を振るうのか
男たちの友情・愛情の物語
本作の主人公は六郎兵衛と圭吾
石高も年齢も違う二人は道場で稽古を積み、六郎兵衛は圭吾を「友」と呼びます。
そして、圭吾は富商の娘と結婚し、藩の有力派閥の後継者となり出世をとげていきます。一方、その圭吾を遠島になってまで守った六郎兵衛。
なぜ、そこまで献身的に支えることができるのか?
その後、派閥争いに巻き込まれる圭吾を陰ながら献身的に支える六郎兵衛。
しかし、藩主の策略から二人は敵同士として剣を交えることになります。
二人はどうなるのか?
そして、何を守るために刀を振るうのか?
心に染みる物語でした。
お勧め
Posted by ブクログ
葉室麟の遺作とのこと。流石に安定の作品。この作者は終わり方が基本的にハッピーエンドなのが良い。時代小説ではこういう爽やかな終わり方は多くないと思う。そこがとても良い。いわゆる愛の話だが、とても自然な展開で、しかも武士の話であることもキチンと確保されている。佳作だと思うが、水準はかなり高い。
Posted by ブクログ
「鬼砕き」という壮絶な技を持つ六郎兵衛は、道場で三浦圭吾をを稽古相手にし、年齢差がありながら彼を”友”と呼ぶ。
一時は派閥の敵同士となるが、圭吾が有力派閥の後継者となり出世を遂げた後も、彼を助ける行為は止まない。
どれほど悲運に落ちようとも、自らの生き方を捨てるようなことをしない六郎兵衛。彼の無償ともいえる献身の奥には何があるのか。
ミステリー的要素を孕みながら、運命に翻弄される彼らを通し、真に大切なものは何かを問う時代小説。
本作でも、和歌が小説の要となる。
「吾が背子と二人し居れば山高み 里には月は照らずともよし」