あらすじ
「わが主君に謀反の疑いあり」。筑前黒田藩家老・栗山大膳は、自藩が幕府の大名家取り潰しの標的となったことを悟りながら、あえて主君の黒田忠之を幕府に訴え出た。九州の覇権を求める細川家、海外出兵を目指す将軍家光、そして忠之――。様々な思惑のもと、藩主に疎まれながらも鬼となり幕府と戦う大膳を狙い刺客が押し寄せる。本当の忠義とは何かを描く著者会心の歴史小説。司馬遼太郎賞受賞。(解説・島内景二)
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実に面白い作品だった。
沈黙を読んだことがあったから、あっと思った場面も多かったし、宮本武蔵も出てくるし、栗山大膳がthe武士って感じだし、気に入った。
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日本三大騒動の一つ、「黒田騒動」。「わが主君に謀反の疑いあり」筑前黒田藩家老・栗山大膳は、あえて主君の黒田忠之を幕府に訴え出た。その後の顛末は・・・。司馬遼太郎賞受賞歴史作品。
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話題となった時代小説を次々と発表していた小説家、葉室麟。
残念ながら60代の若さで、2017年に亡くなってしまいました。
いくつかの作品は読んだことがあったのですが、他にも未読の小説があるだろうと探したところ、この長編小説に出会いました。
「黒田家に関係する話だろう」という程度の、わずかな事前知識で、読み始めました。
舞台は徳川第三代将軍、家光の時代。
杖術の修行を積んでいた深草卓馬と舞の兄妹は、豊後府内藩主の竹中采女正に召し出され、密命を言い渡されます。
その密命とは、筑前黒田家の重臣、栗山大膳のもとに間者として入り、黒田家の内情を探れというもの。
あわせて、黒田家には二つの問題があることが、兄妹に知らされます。
・藩主である黒田忠之と、家老である栗山大膳とが不仲であること
・黒田忠之が、幕府に対して謀反を起こそうとしているとの情報が、竹中家に入ったこと
大膳のもとへ行った二人は、部下として取り立てられ、間者としての活動を始めます。
しかしこの大膳という人物は、得体の知れないところがあって・・・という始まり。
大膳が何をしようとしているのか、それは黒田家にとってどのような結果を招くのか。
徳川の治世が始まって30年あまりの、まだ不安定な部分が残る江戸初期の九州の情勢が、描かれていきます。
上記の黒田家の問題以外にも、以下のようなことが、物語の大きな要素になっています。
・黒田家、加藤家、細川家、竹中家など、力を持ちながら弱みも持つ家々が、自家の存続をかけて他家の領地を狙っていること
・江戸幕府が、勲功ありとして取り立てた九州の諸大名についても、取り潰したり改易しようと考えていること
・九州にはかつてキリシタン大名だった家が残っており、かつ、幕府がこの時期、キリスト教の弾圧を強めていること
家同士の関係が複雑で、また登場人物も多いので、「この人は何家の関係者だっただろう」「誰が仲間で、誰が敵だったのだろう」と、読んでいて混乱する部分がありました。
とはいえ、随所にアクションシーンが挟まれ、宮本武蔵や天草四郎など”有名人”も登場するなど、エンターテイメント性も高い作品になっています。
黒田家の騒動、黒田家を含めた九州の争乱ともども二転三転あり、その行く末を追っていくのが、この作品の読みどころかと思います。
それとあわせて、徳川家と大名(特に外様大名)との関係や、幕府のキリスト教施策など、江戸初期の様子を興味深く読ませていただきました。
葉室麟についてはこれ以外にもまだ、未読の作品があるので、楽しみながら読んでいきたいと思います。
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Posted by ブクログ
歴史小説を描く多くの作家が重複して歴史的事実を角度を変えて描いている
この作品の黒田藩の騒動も森鴎外が描いていると解説を読んで知った
人生どのように生きるべきか
蒼天見ゆでも考えさせられたが、この作品でも作者に課題を出されたような気がする
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忠義とは、誠とは何かが描かれている。
「わが主君に謀反の疑いあり」と、黒田藩家老の栗山大膳は主君の黒田忠之を幕府に訴える。それは幕府が黒田家の大名家取り潰しを画策していることを悟った栗山大膳が敢えて訴え出たもの。黒田家を守るために。
逆臣と思われ、命さえ狙われることになっても、見た目には裏切りに見えても、その忠義を貫き通す。
栗山大膳の生き方が本当に天晴れ。
天草四郎が出てくるのも面白い。イエス・キリストへの言及もあり、イエスの生き方と、栗山大膳の生き方を共に「宿命と戦って」生きている、と登場人物に語らせているのもまた印象的だった。
やはり葉室麟さんはいいです!
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宮本武蔵、天草四郎、柳生十兵衛など、歴史のヒーローを脇役として散りばめながら、黒田家の重臣栗山大膳を主人公に裏の裏をかきながら、歴史上の重鎮をあしらっていく様は爽快である。
葉室作品の小説としての面白さは随一であると考える。
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有名な福岡藩のお家騒動を、稀代の忠義の人として知られる栗山大膳を中心に描いた作品。
葉室氏は福岡出身なだけに大膳贔屓のトーンであるが、戦国から江戸初期にかけての生き残りを賭けた騙し合いの延長にあるこの話はあまり共感できない。
清い生き様を貫く無名の志士の武士道がテーマになっていることが多い葉室作品において、ある意味では特殊な内容という印象。
とはいうものの、読み応えは充分だったので星4つ。
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面白かった!
第二十回司馬遼太郎賞受賞作品
途中、ぐっと来ました
三大お家騒動と呼ばれる黒田騒動をベースとした物語。
主君である藩主を謀反の疑いありとして幕府に訴えた栗山大膳。幕府の大名家取り潰しの標的となっていることを知りながらも、主君を訴えます。
その目的は?
細田家や将軍家光の目論見が錯綜する中、藩主に疎まれながらも、藩の行く末を思い、鬼となり幕府と戦っていきます。
そして、その大膳を支える卓馬と舞、権之助
ぐっと来たシーンは翌日を出陣の日として、決起・別れの場面。
卓馬と舞の想い、大膳とは二度と会えない可能性のある別れ。
大膳の戦いの結末は?
「もののふ」としての矜持を感じられる物語。心打たれる物語でした。
お勧め
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それぞれの登場人物がそれぞれに個性があり、また、一筋縄ではいかない人物として描かれているため、先の展開が常に興味が惹かれ、一気に読み進められた。
Posted by ブクログ
「三大お家騒動」のひとつ黒田騒動を描いた歴史長編。
藩主に疎まれながらも自らを叛臣に装い、幕府による藩取り潰しの企みを阻止するのが栗山大膳。
さしずめ伊達騒動における原田甲斐というところか。
本書は、歴史事件に、柳生但馬守、柳生十兵衛、宮本武蔵らを絡ませ(彼らは黒田騒動に関わったという史実は?)、一大歴史エンターテイメントとなっている。
「武門は太平の世であっても常に戦をしておるのだ。武士が生きるとはそういうことだ」と言い切る栗山大膳。
彼と藩主あるいは幕府との知恵比べは、ミステリータッチな展開を示し、読者さえ翻弄する。大膳の眼のさきには、藩を越えて幕府の政策への諌止も。
黒田藩を守る秘策は、神君家康公から受けた関ヶ原感謝状。関ヶ原の折に、家康が発布したというこの種の秘匿文書は、作家の想像力を刺激するのか、種々の作品が生まれている。
その一つに安部龍太郎の『関ヶ原連判状』があり、隆慶一郎の伝奇小説『吉原御免状』も類する作品と言っていいだろう。
それにしても、著者の古典芸能に対する素養の豊かさには改めて畏敬の念を覚える。
『銀漢の賦』や『秋月記』などでは、漢詩を。
『いのちなりけり』『花や散るらん』『影ぞ恋しき』の三部作では、和歌を。
そして本書では、能を。
それぞれが小説の中で重要なコンテンツとして見事に融合し、その作品の魅力を高めることに貢献している。