葉室麟のレビュー一覧

  • 春雷

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    葉室麟さんの著作を読むたびに背筋が伸びる気がします。
    羽根藩シリーズ三作目、主人公は亡くなってしまうけれど、生きた軌跡はずっと引き継がれる。

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    2022年02月26日
  • 潮騒はるか

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    前作『風かおる』は、長崎で蘭学を学んでいる亮のもとへ、妻の菜摘とともに弟の誠之助と彼を慕う千沙が旅立つところで終わったが、その続編。長崎での彼らの活躍が描かれる。
    実在の人物、シーボルトの娘いねや松本良順との交流もあり、勝海舟も登場。
    さらに、千沙の姉佐奈の問題がクローズアップされる。
    尊皇攘夷の波に翻弄されたり、故郷黒田藩も絡んでくるが、そんな中でも己の立場を全うする亮の言葉が、心強い。
    「真実と向かい合わずしてひとは生きていくことができない。そして、真実はひとに生きていく力と希望を与えるものだとわたしは信じている」

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    2022年02月18日
  • 散り椿

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    ネタバレ

    (わしは新兵衛のこと羨んでいるのでだろうか)
    きっとそうなんだろう。戻ってきた新兵衛には、貧しい生活を送ろうとも心のうちに豊かさを抱き続けた者の確かさが感じられる。
    それに比べて自分はどういきてきたか。
    切れ者と人に畏れられるようになりはしたが、親しく言葉をかけてくれる者はいない。ただ遠くから畏敬の視線を送ってくるだけだ。

    皆それぞれに生きてきた澱を身にまとい、複雑なものを抱えた中年の男になってしまった。もはやむかしのように素直に心中を明かすことなどできないはしないだろう。

    篠とはついに再び会うことができなかった。新兵衛とともにどのような思いで生きてきたのか篠から直に聞きたかった。
    それも

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    2022年02月12日
  • 橘花抄(新潮文庫)

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    日本史に疎いため、どこまでが史実で実在の人物なのか、どこからがノンフィクションなのか分からないが、その分素直に楽しめた。
    多彩な人物を配し、江戸の爛熟期、もはや”武”ではなく”政治”の時代に、己の保身をかけるもの、忠義に生きるもの、それぞれの運命が錯綜する。
    特に女性の姿が、昔の時代作家と違って生き生きとしているところが魅力的。
    様々な物語が並行して描かれているが、凛とした生き様には胸を打たれるし、茶道や香道の描きこみが彩を添えて魅力的な作品になっている。

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    2022年02月11日
  • 実朝の首

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    今、『鎌倉殿の13人』をみているので、なんとなく手に取った本。
    公暁に暗殺された実朝の首はなぜ、別のところに葬られているのか。
    読んでいくうちに面白くて、どんどんやめられなくなったが、登場人物が多いので、それが大変かも。
    時々、回想シーンのなかに出てくる実朝が、さびしげでならない

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    2022年02月10日
  • 辛夷の花

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    豊前 小竹藩、勘定奉行・澤井庄兵衛の長女・志桜里は、近習・船曳栄之進に嫁したが、三年経っても子ができないとの理由で離縁され、実家に戻っていた。
    そんな折、隣屋敷に、小暮半五郎という藩士が、越してきた。
    彼は「抜かずの半五郎」と仇名されていた。
    太刀の鍔と栗形を浅黄色の紐で固く結んでいるからだ。

    ある朝、志桜里は、庭に出て辛夷の蕾を見ていると、半五郎が声をかけてきた。
    第一印象は、最悪だったが、次第に、半五郎の事が気になり始めた。

    藩主以上に力を持つ、重臣三家の使徒不明金を明らかにするため、庄兵衛は、勘定奉行に据えられた。

    庄兵衛一家の危機に、大切な人を守るため、半五郎は、抜かずの太刀を抜

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    2022年02月06日
  • この君なくば

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    時代小説の衣を纏った恋愛小説。というより、時代小説でしか表現し得ない恋愛小説といえよう。現代小説でこのような関係を描いたら、全く陳腐な現実感のない話になってしまうだろう。
    九州の架空の五代藩が舞台。
    主人公は。此君堂で和歌を教える栞。彼女が心を寄せるのが、一度は藩主忠継のお声掛かりで重職の娘を妻に迎え、その後死別した楠瀬讓。
    さらに、彼に想いを寄せる五十鈴がおり、現代小説ならドロドロの三角関係になりかねない。しかし、曲折を経て、栞と讓は夫婦となり、五十鈴は藩主の寵愛を得て正妻に。
    自由奔放に「変節御免」と、自らの意志を貫き、後には危機にある栞と讓を助ける五十鈴の生き方が爽やか。
    登場人物の中で

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    2022年01月18日
  • 津軽双花

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    石田三成の娘辰姫と徳川家康の養女満天姫の物語、お互いが憎しみ合いながらも畏敬の気持ちもあり彼女達の生き方に戦国時代の女性の気概に感銘を受けた。自分の中で光秀と三成を混同しており、途中まで混乱しながら読んだ。

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    2022年01月06日
  • 玄鳥さりて(新潮文庫)

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    「鬼砕き」という壮絶な技を持つ六郎兵衛は、道場で三浦圭吾をを稽古相手にし、年齢差がありながら彼を”友”と呼ぶ。
    一時は派閥の敵同士となるが、圭吾が有力派閥の後継者となり出世を遂げた後も、彼を助ける行為は止まない。
    どれほど悲運に落ちようとも、自らの生き方を捨てるようなことをしない六郎兵衛。彼の無償ともいえる献身の奥には何があるのか。
    ミステリー的要素を孕みながら、運命に翻弄される彼らを通し、真に大切なものは何かを問う時代小説。
    本作でも、和歌が小説の要となる。
    「吾が背子と二人し居れば山高み 里には月は照らずともよし」

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    2022年01月05日
  • さわらびの譜

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    著者には、『散り椿』『はだれ雪』『青嵐の坂』等、扇野藩を舞台とした小説が何作かあり(それぞれに直接的な関連性はないが)、この小説もその一遍。
    藩重臣の有川家の長女伊也が主人公。
    弓を介し、藩随一の弓の名手樋口清四郎に思いを寄せるが、彼は妹の初音の婚約者となる。有川家に寄寓する謎の武士も介在し、恋愛小説の様相もある。
    しかし、著者は扇野藩の派閥抗争も絡め、武の心の有り様を問う時代小説となっている。
    「武の心とは、ひとを想い、相手のために危うい目にあおうとも悔いぬ心持ちをいう」と。
    題名に絡めた和歌「石ばしる垂水の上のさわらびの萌えいづる春になりにけるかも」が、要所で謳いあげられる。和歌に合った小

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    2022年01月02日
  • 風渡る

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    一般的に知れ渡っている歴史上のストーリーに対し、武人であることとは別にキリシタンとしての官兵衛の野望、竹中半兵衛との画策を歴史の裏として加えたことなど、この作品のオリジナリティが強く感じられ、司馬遼太郎の播磨灘物語などとも比較しながら興味深く読めた。

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    2021年12月27日
  • 影踏み鬼 新撰組篠原泰之進日録

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    幕末:沢山の若者が命をかけて思想を貫いていった時代、新撰組への見方も変わった。登場人物に中村半次郎が出て来たのには驚いた。時代も変わった最後のシ―ンで泰之進が萩野と松之助と出合って交わす言葉がとても切なく感じた。

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    2021年12月16日
  • 花や散るらん

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    忠臣蔵を表舞台にした構成の物語、雨宮蔵人と咲弥と娘の香也の親子の情景が浮かぶようだった。宿敵である神尾与左衛門も憎めない人柄だった。スピード感も読み応えも十分だったがどこまでが史実でどこがフィクションか分からくなった。12月14日が討ち入りの日、この時期に読んで良かった。

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    2021年12月02日
  • 風花帖

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    小倉藩で享和から文化年間にかけて実際に起こった「白黒騒動」を題材にした時代小説。
    であるとともに、感動の恋愛小説ともいえる。
    かつて、彼女の危機を救った時、「わたしが吉乃様をお守りいたしますから、このことは生涯かけて変わりませんぞ」と、印南新六は誓う。
    吉乃は、いまでは他人の妻となっているが、その言葉通り、新六は命をかけて彼女を守り通す。その行動について彼は「ひととしての思いでござる」と言い切る。
    現代小説なら噴飯物に思えるこれらの言動も、時代小説の世界を借りると、登場人物の凜とした佇まいに清冽さが胸に迫る。
    新六の最期の場面を小説の冒頭に据えた手法は?
    彼の一貫性を強調する意味合いであろうか

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    2021年11月22日
  • 山月庵茶会記

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    面白かった
    時代小説ながらもミステリー
    この中に犯人がいる!のようなクライマックスがまさにベタなミステリ展開ですが、それに加えて、チャンバラあり、夫婦の想いありと極上なエンターテイメントとなっています。

    ストーリとしては、
    政争に敗れた柏木靫負(ゆきえ)は、高名な茶人となり、16年ぶりに国に戻ってきます。
    その理由は、妻の藤尾の死の真相を知るため。
    山裾の庵で「山月庵」として茶室を設え、客を招きます。そこで、当時の関係者から、様々な話を聞き、死の真相、さらには、当時起きていたことを明らかにしていきます。
    当時、藤尾に不義密通の噂の真相は?
    それを問い詰めたときに、何も釈明しなかった理由は?

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    2021年11月13日
  • 風のかたみ

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    面白かった
    時代小説ながらもミステリー
    最後に明かされる真実と本当の想いに切なさがこみ上げます。

    ストーリとしては、
    上意討ちにあった筆頭の佐野了禅。男たちはそこで果てるも、女たちは白鷺屋敷に逃れ、暮らすことに。
    そこには了禅の妻のきぬを筆頭に、長男の妻の芳江と娘の結、次男の妻の初、女中の春、その、ゆりの7人が暮らしています。
    そこに目付方の密命をもって送り込まれた女医師の伊都子。
    そんな中、この屋敷で、相次ぐ不審な死。
    誰が犯人なのか?
    疑われるある人物。しかし、その女は本当に犯人なのか?
    といった展開です。

    この時代の中の女としての生き様が心打ちます。

    そして、明らかになる真相
    そこ

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    2021年11月13日
  • 天翔ける

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    尊王攘夷を唱えながら、倒幕すると、いち早く欧米列強に近づく新政府の矛盾。
    今の世にいるのは、主君への忠義心を忘れ、その後ろめたさを隠すために、ことさらに尊王を唱える化け物ばかりだという春嶽の言葉。
    一時は新政府の中枢にいながら、士族らと西南の役を起こし、降伏することなく命果てた西郷の生き方。
    中庸な春嶽の目を通す形で、対比して示してくれた作者の視点に、歴史の流れを見る鋭さを感じた。

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    2021年11月04日
  • 橘花抄(新潮文庫)

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    武士としての生き方とそれを支える女性たちの強さに加え、茶道や和歌の精神を織り交ぜた充実した作品でした。決して有名ではない人達を主人公にして、時代小説の定番である江戸の下町人情や捕物帳とは一線を画した葉室氏の作品はどれを読んでも心に響きます。
    黒田藩に関する小説は始めてでしたが、葉室氏は他にも書いているようなのでそちらも読んでみよう。

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    2021年10月19日
  • 蝶のゆくへ

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    自分らしい生き方を求める。激動の明治を駆け抜けた女性たちの夢と挫折、喜びと苦悩を描いた感動の歴史長篇。葉室麟が遺した今を生きる我々へのラストメッセージ!

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    2021年10月05日
  • 神剣 人斬り彦斎

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    テンポよく史実に基づいて話が進むので、とても読みやすく頭に入りました。しかし、考えていることは現代とさほど変わらないのに、やることは人斬りというのが付いていけません。現代でよかった

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    2021年09月26日