葉室麟のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
扇野藩に、昔、一刀流道場の四天王と謳われた男達がいた。
瓜生新兵衛は、上役の不正を訴え、藩を追われ、愛妻・篠と二人で、故郷を後にした。
榊原采女は、側用人で、「いずれ家老にまで昇り詰めるのは、間違いがない 」とみられている。
父、平蔵は、不正が見つかり、何者かに、惨殺されていた。
坂下源之進は、使途不明金を糾問され、無実を訴えながら、自害。
息子の藤吾は、減石されたお家を元に戻す為、出世だけを目指し、日夜、励んでいる。
篠原三右衛門は、馬廻役で、娘の美鈴と、新兵衛の甥藤吾とは、許嫁の間柄。
瓜生新兵衛は、妻を亡くし、18年後に、ぶらりと、故郷に戻ってきた。
妻が、死際に、「故郷の椿を -
Posted by ブクログ
蜩ノ記の続編
蜩ノ記の16年後を描く羽根藩の物語
戸田秋谷の息子順右衛門は藩の要職についています。
そこに、新藩主となった吉通、しかし、それを良しとしない御一門衆の三浦左近達は、お家騒動の陰謀を目論みます。
吉通の幼馴染である主人公の颯太と、その陰謀に立ち向かっていきます。
しかし、颯太って頼りない(笑)
いつもの勧善懲悪なストーリ展開なわけですが、そこに至るまでのそれぞれの想いが凛として清々しい
登場人物の中で一之進が印象的!
敵方とおもいきや、最後の最後でよい味出しました。
戸田秋谷が残したもの
薫の言葉
「父が自らの死によってひとびとの過ちや罪業を背負ったのは、ひとを生かす道だった -
Posted by ブクログ
面白かった
重厚骨太の物語ではなく、漫画ライクなエンターテイメントストーリ(笑)!
しかし、その奥底には、家族の絆が描かれています。
父親の死によって、青鳴道場をついだ長男の権平は昼行燈。その性格から、門人は一人もいなくなり、結果、明日食べる米もなくなってしまいます。
妹の千草や弟の勘六の尻に敷かれる生活の中、お金を得るために始めたのが、道場破り。
父親の不審死の真相を明らかにして、仇討ちを果たすため、道場破りを続けていくことで、徐々に明らかになる真相。
といった展開です。
チャンバラ、勧善懲悪と鉄板ストーリに加え、家族の絆のメッセージが伝わってきます。
スッキリしたストーリ展開で、ライ -
Posted by ブクログ
面白かった!
第二十回司馬遼太郎賞受賞作品
途中、ぐっと来ました
三大お家騒動と呼ばれる黒田騒動をベースとした物語。
主君である藩主を謀反の疑いありとして幕府に訴えた栗山大膳。幕府の大名家取り潰しの標的となっていることを知りながらも、主君を訴えます。
その目的は?
細田家や将軍家光の目論見が錯綜する中、藩主に疎まれながらも、藩の行く末を思い、鬼となり幕府と戦っていきます。
そして、その大膳を支える卓馬と舞、権之助
ぐっと来たシーンは翌日を出陣の日として、決起・別れの場面。
卓馬と舞の想い、大膳とは二度と会えない可能性のある別れ。
大膳の戦いの結末は?
「もののふ」としての矜持を感じられ -
Posted by ブクログ
「四賢候」の一人として、幕末小説などにたびたび登場するが、主役としては取り上げられてはいない松平春嶽が主人公。
幕末にあって、最も偏りのない人物として評価する著者が、彼を中心に動乱の時代を描いた歴史長編。
『大獄 西郷青嵐賦』が、倒幕側から書かれたのに対し、本作は幕府側から描いた幕末史といえよう。
攘夷鎖国で揺れる時代。橋本佐内と横井小楠を重用し、「大政奉還」を持論に、日本の国の行く末の舵取りを図ろうと懸命に模索する春嶽。
大老に推されながらも固辞する彼を、側近は、人物識見とも大老にふさわしいが、野心と我執が足りないと。
春嶽は、将軍継嗣問題で慶喜を推したが、彼に「小才子」の資質を見抜いており -
Posted by ブクログ
現代ものが続いた後に、時代ものを読むとやはりホッと気持ちが落ち着く。まして手に取るのが葉室麟ならば、なおさらなのは読書人共通の感ではないだろうか。
副題が「西郷青嵐賦」と示す通り西郷隆盛の前半生の行動が焦点ゆえ、本作では吉之助で通している。
藩主斉彬に見いだされ、八面六臂の活躍をしながら、井伊直弼による安政の大獄を逃れ奄美大島に潜居するまでの、ほぼ史実に基づく歴史長編。
架空実在を問わず、己の信念に真摯に向き合い清冽に生きる漢(おとこ)を叙情たっぷりと描く九州出身の著者ゆえ、西郷は書かずにいられない人物だったのだろう。
吉之助のひととなりを彼の発する言葉で表現している。
「涙も出らん男が強うな -
Posted by ブクログ
弟子に「強い」とはどういう事かと尋ねらた峯均(みねひら)は
それは負けぬという事だと答える。
「負けぬということはおのれを見失わぬこと。
勝ってもおのれを見失えば、それはおのれの心に負けたことになる」
弟子と師匠の話として聞けば深い、と思う。
ちょっと違うかもしれないけれど
負けた試合こそ自分が伸びる要素を含んでいる、と誰かが言っていたけれどまさにそうかもしれない。
葉室作品には和歌をそこここに散りばめた作品が多いけれど、本作では和歌よりも香の道に光を当てている。
私には身近ではない香の話だけれど何故か香の道は禅(これも身近ではないけれど)に通じ、それゆえに武士道の心にも通じているような気がし -
Posted by ブクログ
「西国無双」と称えられる立花宗茂の半生を描く歴史小説。
戦国の世を描きつつ、この作者らしく、妻との心のふれあいが程よい加減で書かれているので、宗茂が人として生き生きと感じられる。
立花の義は、決して裏切らぬこと。
この時代に、これほどまでに不器用で気持ちの良い生き方をした武将がいたとは、恥ずかしながら西国に無知な私は、改めて感動してしまった。
そして、この作品で描かれる家康にも、泰平の世を作るためには手を汚すを恐れぬ、という徳川の義がある。
今まで自分が見ていたものとは違った角度で、関ヶ原からの歴史を見られたように思えて、とても満足の一冊でした。 -
Posted by ブクログ
「蜩ノ記」の羽根藩シリーズ第2作。続編と思いきや、他のレビュアーも書かれているとおり、「蜩ノ記」とは独立した物語です。とても読みやすく、作者の執筆のスピードも早かったのではないでしょうか。
一度落ちた花が、再び花開く話ですが、そこに至るまでに2つの犠牲があります。主人公の身近な人達の死です。主人公もほとんど死に近いところまでいくのですが、戻ってきます。そして、武士としての潔さの延長にある死を選ぶのでなく、生きぬいてことをなす、したたかさに裏打ちされた強さが描かれます。
主人公に影響を与えたはずの父親は描かれませんが、当初は冷たかったものの主人公の成長とともに賢母として顕現する継母が描かれま -
Posted by ブクログ
絵師海北友松が主人公の小説だから美術小説かとの予測は、いい意味であっけなく覆った。
兄により仏門に入れさせられた友松が、武門に還俗することを願いながら絵の道を選択する。
その過程で出会う狩野永徳や安国寺恵瓊それに斎藤内蔵助との交流により、時代に深くかかわって行く。
世間から嘲られようと、人として美しくならねばとの思いで生きる友松の生き様を辿る歴史長編。
本能寺の変の黒幕等については古来諸説あるが、本書では、道三が信長に与えたという「美濃譲り状」をひとつの拠り所としている。
その偽書であることを証した、道三の娘で信長の正妻である帰蝶が”黒幕”との説。彼女が、信長を狩ることを、美濃衆の斎藤内蔵助に -
Posted by ブクログ
関ケ原の戦いで西軍に与しながら、旧領に戻れた唯一の大名・立花宗茂の半生。
『その忠義鎮西一、剛勇また鎮西一』と秀吉にも激賞された宗茂が婿養子として入った立花家の義は『裏切らぬということ』。
秀吉に大名として取り立てられた宗茂は秀吉に対する義を通して関ケ原の戦いでは西軍に与するが、その西軍は寝返る者が次々現れ、毛利は宗茂が大坂城での籠城を進言しても決断出来ない煮えきらなさに愕然とし憤って九州へ戻る。
いくら『立花の義』を貫きたくても、その戦いがそもそも『不義の戦』であるのだから何と張り合いのないことだろうか。
ここからが宗茂の長い戦いの始まり。九州においては黒田如水や鍋島直茂に攻められるの