葉室麟のレビュー一覧

  • 陽炎の門

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    親友の罪を証言し、その親友の切腹に立ち会い首を落とした主人公の桐谷主水。その事もあり、「氷柱の主水」と呼ばれて下士から執政に昇り詰める。親友の娘を娶るが、その弟が真犯人が居るとして主水を父の仇と藩に敵討ちを求める。元々、周囲は主水に批判的で失脚した方が良いという雰囲気。監視が付き、これが非常に嫌な奴。ここまで読むと非常に重く陰鬱で、読む気が失せてくる。
    真犯人探しが始まると急転してゆく。ミステリの要素が増えてくる。元対立派閥のトップに面談したことにより、原因と犯人が分かる。他の執政達は知っていて隠蔽していた。敢然と闘おうとする主水。
    秘策を以って敵討ちに臨む。最後は意外な人物が手助けする。ただ

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    2022年04月11日
  • 辛夷の花

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    自作品に和歌を効果的に取り入れる著者は、この小説でもその手法を用い主人公たちの心情を表出する。
    子供が出来ず離縁され実家に戻った志桜里が主人公。
    隣家に越してきた半五郎と、辛夷の花を介し、互いの心が通うようになる。
      時しあればこぶしの花もひらきけり
       君がにぎれる手のかかれかし
    志桜里に婚家への出戻りの話が起き、半五郎との間で思いが揺れ動く。現代では陳腐ともいえる彼女の躊躇は、その家を守るという嫁の役割を第一とする、今とは違う結婚観ゆえだろう。
    自分の気持ちを二の次で、嫁としてなすべきことを重視する彼女に、婚家の姑鈴代が教え諭す。
    「わたしは生きていくうえでの苦難は、ともに生きていくひ

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    2022年03月30日
  • オランダ宿の娘

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    長崎出島から江戸へ来るオランダ人のための宿屋の娘が主人公。怪しげな猿を連れた武士、貴重だが出どころ不明の万能薬などいかにも何か起こりそう。そしてかの有名なシーボルト事件に巻き込まれてゆく。事件についてははっきりわからない部分も多いが、多くの人が影響を受けた事は間違いないだろう。大切な人を守りたい気持ちが強く表れている。

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    2022年03月29日
  • 草笛物語

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    羽根藩シリーズ残念ながら最終作。
    「過ちて改むるに憚ることなかれ」と言う若き藩主の言葉、平凡ながら頷く。

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    2022年03月28日
  • 銀漢の賦

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    解説に「文体が比類なきまでに清冽」とあったが、葉室麟の書く物語そのものが清冽だと思う。有名な「蜩の記」はさらに凄烈で救いがない感じがして、葉室麟を敬遠してかたが、他の方の書評に触発されて本書を手に取った。
    月ヶ瀬藩という小藩に生まれた3人の幼少期の友情が環境や立場の変化と共に移ろいその残渣だけが残っているかにみえたが、再び心が通じ合っていく。
    清冽なれど温かさが残る名作だった。銀漢という言葉と漢詩に込められたそれぞれの思いがやるせない。

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    2022年02月28日
  • 春雷

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    葉室麟さんの著作を読むたびに背筋が伸びる気がします。
    羽根藩シリーズ三作目、主人公は亡くなってしまうけれど、生きた軌跡はずっと引き継がれる。

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    2022年02月26日
  • 潮騒はるか

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    前作『風かおる』は、長崎で蘭学を学んでいる亮のもとへ、妻の菜摘とともに弟の誠之助と彼を慕う千沙が旅立つところで終わったが、その続編。長崎での彼らの活躍が描かれる。
    実在の人物、シーボルトの娘いねや松本良順との交流もあり、勝海舟も登場。
    さらに、千沙の姉佐奈の問題がクローズアップされる。
    尊皇攘夷の波に翻弄されたり、故郷黒田藩も絡んでくるが、そんな中でも己の立場を全うする亮の言葉が、心強い。
    「真実と向かい合わずしてひとは生きていくことができない。そして、真実はひとに生きていく力と希望を与えるものだとわたしは信じている」

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    2022年02月18日
  • 散り椿

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    ネタバレ

    (わしは新兵衛のこと羨んでいるのでだろうか)
    きっとそうなんだろう。戻ってきた新兵衛には、貧しい生活を送ろうとも心のうちに豊かさを抱き続けた者の確かさが感じられる。
    それに比べて自分はどういきてきたか。
    切れ者と人に畏れられるようになりはしたが、親しく言葉をかけてくれる者はいない。ただ遠くから畏敬の視線を送ってくるだけだ。

    皆それぞれに生きてきた澱を身にまとい、複雑なものを抱えた中年の男になってしまった。もはやむかしのように素直に心中を明かすことなどできないはしないだろう。

    篠とはついに再び会うことができなかった。新兵衛とともにどのような思いで生きてきたのか篠から直に聞きたかった。
    それも

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    2022年02月12日
  • 橘花抄(新潮文庫)

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    日本史に疎いため、どこまでが史実で実在の人物なのか、どこからがノンフィクションなのか分からないが、その分素直に楽しめた。
    多彩な人物を配し、江戸の爛熟期、もはや”武”ではなく”政治”の時代に、己の保身をかけるもの、忠義に生きるもの、それぞれの運命が錯綜する。
    特に女性の姿が、昔の時代作家と違って生き生きとしているところが魅力的。
    様々な物語が並行して描かれているが、凛とした生き様には胸を打たれるし、茶道や香道の描きこみが彩を添えて魅力的な作品になっている。

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    2022年02月11日
  • 実朝の首

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    今、『鎌倉殿の13人』をみているので、なんとなく手に取った本。
    公暁に暗殺された実朝の首はなぜ、別のところに葬られているのか。
    読んでいくうちに面白くて、どんどんやめられなくなったが、登場人物が多いので、それが大変かも。
    時々、回想シーンのなかに出てくる実朝が、さびしげでならない

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    2022年02月10日
  • 辛夷の花

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    豊前 小竹藩、勘定奉行・澤井庄兵衛の長女・志桜里は、近習・船曳栄之進に嫁したが、三年経っても子ができないとの理由で離縁され、実家に戻っていた。
    そんな折、隣屋敷に、小暮半五郎という藩士が、越してきた。
    彼は「抜かずの半五郎」と仇名されていた。
    太刀の鍔と栗形を浅黄色の紐で固く結んでいるからだ。

    ある朝、志桜里は、庭に出て辛夷の蕾を見ていると、半五郎が声をかけてきた。
    第一印象は、最悪だったが、次第に、半五郎の事が気になり始めた。

    藩主以上に力を持つ、重臣三家の使徒不明金を明らかにするため、庄兵衛は、勘定奉行に据えられた。

    庄兵衛一家の危機に、大切な人を守るため、半五郎は、抜かずの太刀を抜

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    2022年02月06日
  • この君なくば

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    時代小説の衣を纏った恋愛小説。というより、時代小説でしか表現し得ない恋愛小説といえよう。現代小説でこのような関係を描いたら、全く陳腐な現実感のない話になってしまうだろう。
    九州の架空の五代藩が舞台。
    主人公は。此君堂で和歌を教える栞。彼女が心を寄せるのが、一度は藩主忠継のお声掛かりで重職の娘を妻に迎え、その後死別した楠瀬讓。
    さらに、彼に想いを寄せる五十鈴がおり、現代小説ならドロドロの三角関係になりかねない。しかし、曲折を経て、栞と讓は夫婦となり、五十鈴は藩主の寵愛を得て正妻に。
    自由奔放に「変節御免」と、自らの意志を貫き、後には危機にある栞と讓を助ける五十鈴の生き方が爽やか。
    登場人物の中で

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    2022年01月18日
  • 津軽双花

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    石田三成の娘辰姫と徳川家康の養女満天姫の物語、お互いが憎しみ合いながらも畏敬の気持ちもあり彼女達の生き方に戦国時代の女性の気概に感銘を受けた。自分の中で光秀と三成を混同しており、途中まで混乱しながら読んだ。

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    2022年01月06日
  • 玄鳥さりて(新潮文庫)

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    「鬼砕き」という壮絶な技を持つ六郎兵衛は、道場で三浦圭吾をを稽古相手にし、年齢差がありながら彼を”友”と呼ぶ。
    一時は派閥の敵同士となるが、圭吾が有力派閥の後継者となり出世を遂げた後も、彼を助ける行為は止まない。
    どれほど悲運に落ちようとも、自らの生き方を捨てるようなことをしない六郎兵衛。彼の無償ともいえる献身の奥には何があるのか。
    ミステリー的要素を孕みながら、運命に翻弄される彼らを通し、真に大切なものは何かを問う時代小説。
    本作でも、和歌が小説の要となる。
    「吾が背子と二人し居れば山高み 里には月は照らずともよし」

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    2022年01月05日
  • さわらびの譜

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    著者には、『散り椿』『はだれ雪』『青嵐の坂』等、扇野藩を舞台とした小説が何作かあり(それぞれに直接的な関連性はないが)、この小説もその一遍。
    藩重臣の有川家の長女伊也が主人公。
    弓を介し、藩随一の弓の名手樋口清四郎に思いを寄せるが、彼は妹の初音の婚約者となる。有川家に寄寓する謎の武士も介在し、恋愛小説の様相もある。
    しかし、著者は扇野藩の派閥抗争も絡め、武の心の有り様を問う時代小説となっている。
    「武の心とは、ひとを想い、相手のために危うい目にあおうとも悔いぬ心持ちをいう」と。
    題名に絡めた和歌「石ばしる垂水の上のさわらびの萌えいづる春になりにけるかも」が、要所で謳いあげられる。和歌に合った小

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    2022年01月02日
  • 風渡る

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    一般的に知れ渡っている歴史上のストーリーに対し、武人であることとは別にキリシタンとしての官兵衛の野望、竹中半兵衛との画策を歴史の裏として加えたことなど、この作品のオリジナリティが強く感じられ、司馬遼太郎の播磨灘物語などとも比較しながら興味深く読めた。

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    2021年12月27日
  • 影踏み鬼 新撰組篠原泰之進日録

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    幕末:沢山の若者が命をかけて思想を貫いていった時代、新撰組への見方も変わった。登場人物に中村半次郎が出て来たのには驚いた。時代も変わった最後のシ―ンで泰之進が萩野と松之助と出合って交わす言葉がとても切なく感じた。

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    2021年12月16日
  • 花や散るらん

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    忠臣蔵を表舞台にした構成の物語、雨宮蔵人と咲弥と娘の香也の親子の情景が浮かぶようだった。宿敵である神尾与左衛門も憎めない人柄だった。スピード感も読み応えも十分だったがどこまでが史実でどこがフィクションか分からくなった。12月14日が討ち入りの日、この時期に読んで良かった。

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    2021年12月02日
  • 風花帖

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    小倉藩で享和から文化年間にかけて実際に起こった「白黒騒動」を題材にした時代小説。
    であるとともに、感動の恋愛小説ともいえる。
    かつて、彼女の危機を救った時、「わたしが吉乃様をお守りいたしますから、このことは生涯かけて変わりませんぞ」と、印南新六は誓う。
    吉乃は、いまでは他人の妻となっているが、その言葉通り、新六は命をかけて彼女を守り通す。その行動について彼は「ひととしての思いでござる」と言い切る。
    現代小説なら噴飯物に思えるこれらの言動も、時代小説の世界を借りると、登場人物の凜とした佇まいに清冽さが胸に迫る。
    新六の最期の場面を小説の冒頭に据えた手法は?
    彼の一貫性を強調する意味合いであろうか

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    2021年11月22日
  • 山月庵茶会記

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    面白かった
    時代小説ながらもミステリー
    この中に犯人がいる!のようなクライマックスがまさにベタなミステリ展開ですが、それに加えて、チャンバラあり、夫婦の想いありと極上なエンターテイメントとなっています。

    ストーリとしては、
    政争に敗れた柏木靫負(ゆきえ)は、高名な茶人となり、16年ぶりに国に戻ってきます。
    その理由は、妻の藤尾の死の真相を知るため。
    山裾の庵で「山月庵」として茶室を設え、客を招きます。そこで、当時の関係者から、様々な話を聞き、死の真相、さらには、当時起きていたことを明らかにしていきます。
    当時、藤尾に不義密通の噂の真相は?
    それを問い詰めたときに、何も釈明しなかった理由は?

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    2021年11月13日