葉室麟のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
親友の罪を証言し、その親友の切腹に立ち会い首を落とした主人公の桐谷主水。その事もあり、「氷柱の主水」と呼ばれて下士から執政に昇り詰める。親友の娘を娶るが、その弟が真犯人が居るとして主水を父の仇と藩に敵討ちを求める。元々、周囲は主水に批判的で失脚した方が良いという雰囲気。監視が付き、これが非常に嫌な奴。ここまで読むと非常に重く陰鬱で、読む気が失せてくる。
真犯人探しが始まると急転してゆく。ミステリの要素が増えてくる。元対立派閥のトップに面談したことにより、原因と犯人が分かる。他の執政達は知っていて隠蔽していた。敢然と闘おうとする主水。
秘策を以って敵討ちに臨む。最後は意外な人物が手助けする。ただ -
Posted by ブクログ
自作品に和歌を効果的に取り入れる著者は、この小説でもその手法を用い主人公たちの心情を表出する。
子供が出来ず離縁され実家に戻った志桜里が主人公。
隣家に越してきた半五郎と、辛夷の花を介し、互いの心が通うようになる。
時しあればこぶしの花もひらきけり
君がにぎれる手のかかれかし
志桜里に婚家への出戻りの話が起き、半五郎との間で思いが揺れ動く。現代では陳腐ともいえる彼女の躊躇は、その家を守るという嫁の役割を第一とする、今とは違う結婚観ゆえだろう。
自分の気持ちを二の次で、嫁としてなすべきことを重視する彼女に、婚家の姑鈴代が教え諭す。
「わたしは生きていくうえでの苦難は、ともに生きていくひ -
Posted by ブクログ
ネタバレ(わしは新兵衛のこと羨んでいるのでだろうか)
きっとそうなんだろう。戻ってきた新兵衛には、貧しい生活を送ろうとも心のうちに豊かさを抱き続けた者の確かさが感じられる。
それに比べて自分はどういきてきたか。
切れ者と人に畏れられるようになりはしたが、親しく言葉をかけてくれる者はいない。ただ遠くから畏敬の視線を送ってくるだけだ。
皆それぞれに生きてきた澱を身にまとい、複雑なものを抱えた中年の男になってしまった。もはやむかしのように素直に心中を明かすことなどできないはしないだろう。
篠とはついに再び会うことができなかった。新兵衛とともにどのような思いで生きてきたのか篠から直に聞きたかった。
それも -
Posted by ブクログ
豊前 小竹藩、勘定奉行・澤井庄兵衛の長女・志桜里は、近習・船曳栄之進に嫁したが、三年経っても子ができないとの理由で離縁され、実家に戻っていた。
そんな折、隣屋敷に、小暮半五郎という藩士が、越してきた。
彼は「抜かずの半五郎」と仇名されていた。
太刀の鍔と栗形を浅黄色の紐で固く結んでいるからだ。
ある朝、志桜里は、庭に出て辛夷の蕾を見ていると、半五郎が声をかけてきた。
第一印象は、最悪だったが、次第に、半五郎の事が気になり始めた。
藩主以上に力を持つ、重臣三家の使徒不明金を明らかにするため、庄兵衛は、勘定奉行に据えられた。
庄兵衛一家の危機に、大切な人を守るため、半五郎は、抜かずの太刀を抜 -
Posted by ブクログ
時代小説の衣を纏った恋愛小説。というより、時代小説でしか表現し得ない恋愛小説といえよう。現代小説でこのような関係を描いたら、全く陳腐な現実感のない話になってしまうだろう。
九州の架空の五代藩が舞台。
主人公は。此君堂で和歌を教える栞。彼女が心を寄せるのが、一度は藩主忠継のお声掛かりで重職の娘を妻に迎え、その後死別した楠瀬讓。
さらに、彼に想いを寄せる五十鈴がおり、現代小説ならドロドロの三角関係になりかねない。しかし、曲折を経て、栞と讓は夫婦となり、五十鈴は藩主の寵愛を得て正妻に。
自由奔放に「変節御免」と、自らの意志を貫き、後には危機にある栞と讓を助ける五十鈴の生き方が爽やか。
登場人物の中で -
Posted by ブクログ
著者には、『散り椿』『はだれ雪』『青嵐の坂』等、扇野藩を舞台とした小説が何作かあり(それぞれに直接的な関連性はないが)、この小説もその一遍。
藩重臣の有川家の長女伊也が主人公。
弓を介し、藩随一の弓の名手樋口清四郎に思いを寄せるが、彼は妹の初音の婚約者となる。有川家に寄寓する謎の武士も介在し、恋愛小説の様相もある。
しかし、著者は扇野藩の派閥抗争も絡め、武の心の有り様を問う時代小説となっている。
「武の心とは、ひとを想い、相手のために危うい目にあおうとも悔いぬ心持ちをいう」と。
題名に絡めた和歌「石ばしる垂水の上のさわらびの萌えいづる春になりにけるかも」が、要所で謳いあげられる。和歌に合った小 -
Posted by ブクログ
小倉藩で享和から文化年間にかけて実際に起こった「白黒騒動」を題材にした時代小説。
であるとともに、感動の恋愛小説ともいえる。
かつて、彼女の危機を救った時、「わたしが吉乃様をお守りいたしますから、このことは生涯かけて変わりませんぞ」と、印南新六は誓う。
吉乃は、いまでは他人の妻となっているが、その言葉通り、新六は命をかけて彼女を守り通す。その行動について彼は「ひととしての思いでござる」と言い切る。
現代小説なら噴飯物に思えるこれらの言動も、時代小説の世界を借りると、登場人物の凜とした佇まいに清冽さが胸に迫る。
新六の最期の場面を小説の冒頭に据えた手法は?
彼の一貫性を強調する意味合いであろうか -
Posted by ブクログ
面白かった
時代小説ながらもミステリー
この中に犯人がいる!のようなクライマックスがまさにベタなミステリ展開ですが、それに加えて、チャンバラあり、夫婦の想いありと極上なエンターテイメントとなっています。
ストーリとしては、
政争に敗れた柏木靫負(ゆきえ)は、高名な茶人となり、16年ぶりに国に戻ってきます。
その理由は、妻の藤尾の死の真相を知るため。
山裾の庵で「山月庵」として茶室を設え、客を招きます。そこで、当時の関係者から、様々な話を聞き、死の真相、さらには、当時起きていたことを明らかにしていきます。
当時、藤尾に不義密通の噂の真相は?
それを問い詰めたときに、何も釈明しなかった理由は?