葉室麟のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
葉室麟さんの小説には、冬咲く椿の花がよく似合います。 それも真っ白い椿が。寒さに耐えて咲き、潔く散る‥、この話もそんな清しい心持ちにさせてくれるお話です。
藩を追われた剣の達人、瓜生新兵衛。無実の罪で自害した父親を持つ坂下 藤吾。藩からも一目置かれる、かつて剣術道場の四天王と称された榊原采女。その三人が篠という亡き女性を通して繋がっていきます。
複雑なお家事情の政争に巻き込まれ、命を狙われ、良き人々を殺され、汚名を汚され、それでも誠実な生き方を貫こうとする者たちのドラマが、このお話の真髄へと導いてくれます。
藩の不正や賄賂を暴けば、簡単に追放されたり、斬り殺されてしまう時代は、形は違っても今の社会のヒエラルキーの中で動く私達と似ています。
そのどろどろした人間模様を、葉室麟さんは静かに、誠実に紡いでいく。選び抜かれた言葉で遠くを見据えて。それゆえ 読後感が清しいのだと思います。
この小説のなかの登場人物を、俳優さんなら「演じてみたい!」「自分はこの役をやりたい」と思う人も多いのではないでしょうか?
読者の私たちは、好みの俳優さんを想像して読み進めるのもいいかもしれません。 -
Posted by ブクログ
当日の武士(権力)が茶道や庭園に大きな価値を見出してきたことは、歴史を学ぶ上でも興味深い。
武士政権も権威が必要で、公家文化に倣う必要性があり、それが遠州のようなマルチタレント文化人が重用された背景でもあると思う。
そのような思いが重なり、ある意味歴史の裏側で活躍した人物でもある小堀遠州のことを学びたく、本著を手に取る。
史実を並べてみても、遠州が手がけた作庭等から、驚異的な活動量であることを知ることができ、ただ驚くばかり。
相当に実務面でも能力が高かったのだろう。
また、意外な人脈も新たな発見であり勉強になる。
史実はどうかわからないが、当時のメンタリティについても触れられている点、参考になる。
以下引用~
・ひとの心には自分への執着があるから、自分より優れた人に反感を持ったり、初心者を見下してはならないと説いている。
・「居る場所によって人の顔が変わるのは、相手によって変えるからだ。ひとの顔は相手を映す鏡かもしれぬ。相手を傲慢と見るのは、おのれの心に傲慢さを抱いておるゆえであろう」(三成)
・「ひとの心はそのときだけのものだ。過ぎ去ってしまえば、おのれの内に留めおくことはできぬ。だからこそ、われらは茶を一期一会の心で喫し、たったいまの心を留めようと思って筆を運び、あるいは茶碗を焼くのであろう」
・利休の考案したにじり口は、キリシタンの教えにある「狭き門より入れ」という言葉に合わせたものではないか。茶室という狭い空間で、世俗の欲を捨て去って茶を喫するのは、宣教師が行うミサに似ていなくもない。 -
Posted by ブクログ
買った当初に途中まで読み、(著者の小説では滅多にないことだが)馴染めないままツンドクになってしまっていた。
が、今回は一気呵成に読み終えた。
やはり、読む適期というのは、作品あるいは読者それぞれにあるようだ。
現代の高校生が、雷に打たれ、明治維新の直後にタイムスリップしたという、著者には珍しいファンタジー歴史小説。
勝海舟、西郷隆盛、大久保利通、さらに桐野利秋らが、登場。
高校生の4人は彼らと関わり合ううち、西南戦争が迫る。
西郷隆盛の人間性に触れた彼らは、西郷の命を何とか救いたいと画策するが、歴史の壁は厚く・・・
タイムスリップした高校生を狂言回し的に用い、幕末・明治維新の裏面史ともいえる事象を描いた、葉室史観の原点とも言える”幻のデビュー作”。