葉室麟のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
もしかしたら歴史小説を初めて読んだのは忠臣蔵だったかもしれない。
何作か読んだと思うけど、久しぶりのこの忠臣蔵はアンソロジーで、様々な視点で7人の歴史小説家が書いています。
葉室麟『鬼の影』
朝井まかて『妻の一分』
夢枕獏『首無し幽霊』
長浦京『冥土の契り』
梶よう子『雪の橋』
諸田玲子『与五郎の妻』
山本一刀『笹の雪』
どれも視点が新鮮で面白く読めました。
お気に入りは朝井まかてさんの『妻の一分』。
江戸っ子の語り口調が噺家さんみたいだなぁと楽しく読み進めると、この語り手の正体がわかった時に笑っちゃって!
それと神崎与五郎の元妻の話も、ドラマで見たような話だったけど、うるうるしちゃった -
Posted by ブクログ
ネタバレ葉室麟らしい清々しい登場人物が出てくる小説。
しかし、その清々しい人物は主人公ではなく、その妻が主人公。
結婚前に一度だけ契りあった、かつての男笙平が江戸を追われて国元に逃げ帰ってくる。笙平をかくまう主人公の澪。若き日の思いを清算しきれずにいる澪と笙平に敵の追手が迫りくるとき、澪の夫蔵太が現れる。武士の矜持と夫としての優しさを体現する蔵太を目の前にして、澪の心が次第におだやかになっていく。
蔵太が理想、修正を行える澪もまた理想。しかし、笙平や彼を追う悪役のようなダークな部分を持って生きているのが現実。であるからこそ、蔵太のほれぼれする生き様を読んで、少しでも彼のように生きていこうと思うので -
Posted by ブクログ
明治期に外務大臣を務めた陸奥宗光を主要視点人物に据えた時代モノの小説である。
作者は2017年に他界されているが、その少し前の時期、少し体調も好くなかった中で雑誌連載をしていたという作品で、雑誌に掲載された部分までが本に収められている。故に「未完」ではあるのだが、余り「未完」を意識せずに読むことが出来た。そして読後にその「未完」の経過を知り、非常に惜しい作家が他界してしまったと、改めて御悔み申し上げたくなる。
明治期の様々な事柄や、それに携わったという人物に題材求める小説は多く在るように思う。そういう中で「陸奥宗光」の題材を求めるという、そのこと自体に「近代史を見詰める作者の“主張”」のような -
Posted by ブクログ
二人の武士の純な心を弄ぶかのような人妻になった初恋の人の思わせぶりな態度。
あれ、これは誰の作品だっけと思わせるような葉室麟らしからぬ恋心や嫉妬心がちりばめられた作品。でも底流には男の友情が流れている。
藩一の剣の使い手である草場弥一と頭脳明晰な小池喜平次は幼馴染で、上司である勘定奉行にそそのかされ、藩政を壟断しお家乗っ取りをたくらむ重臣を襲い顔に瑕を負わせる。重臣は失脚するが二人も藩を致仕することに。それから16年、弥一はは江戸で町道場もどきを開いているが閑古鳥がなき旗本の剣術指南で糊口をしのいでいる。一方喜平次は、飛脚問屋の主人に見込まれて婿入りし商人に。そんな中、失脚した重臣が復帰し、勘 -
Posted by ブクログ
各々に実在した近世の芸術家をモデルとする主要視点人物が据えられている5篇が収められている。
以下、何れも少し難しい漢字の題を冠した5篇の名と、各篇の主要視点人物のモデルとなった芸術家の名、伝えられる生没年を挙げる。尚、これ位の時代の人は自称、他称で色々な呼び名が在る場合、何かの契機で改名する、青年期と壮年期や老境というように人生の中で名乗りを変えるという例も多い。そこで「多分、最も広く知られているであろう」と見受けられる、百科事典的なモノで調べると直ぐに出て来る名を挙げておいた。
『乾山晩愁』(けんざんばんしゅう):尾形乾山(1663-1743)
『永徳翔天』(えいとくしょうてん):狩野永 -
Posted by ブクログ
興味深い内容を色々と詰め合わせたような一冊になっていると思う。
何か、雑誌等に掲載されているような感の内容を集めて文庫本にしたというような感じである。
葉室麟は、京都で活動した芸術家を題材に、或いは主要視点人物とする物語を幾つも綴っている。そうした作品を取上げ、人物や所縁の場所の話題を展開するという内容が最初に在る。
葉室麟は仕事場を京都に構えて住むようになって行くのだが、そういう関係で京都新聞にコラムを寄稿した経過が在るようで、それらが収められている。
更に色々な型との対談が纏められているというモノが在り、それらがこの文庫に収められている。
こういう多彩な内容だ。
作者自身が加わる小説の解説