葉室麟のレビュー一覧
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ネタバレ落ちた花は二度と咲かないとひとは言う。だが、もう一度、花を咲かせようと櫂蔵は思う。そして、咲いたとすれば、わが胸の奥深くに咲くお芳の花でございます。わたしが生きてる限りは、お芳の花は枯れずに咲き続けることでありましょう。
そのために生きるのです。ひとはおのれの思いのみ生きるのではなく、ひとの思いも生きるのだと。それゆえ、落ちた花はおのれをいとおしんでくれたひとの胸の中に咲くのだと存じます。
お芳と弟の新五郎を想い、仇を取るために紛争する櫂蔵。最後は、潮鳴りが、いとおしい者の囁きがきこえる。
人を想い生きる事は、どんな事があらうが、生き抜かねばならない。そんなふうに感じた小説でした。 -
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葉室版忠臣蔵外伝。
主人公は、旗本 永井勘解由と扇野藩の寡婦で勘解由の接待、監視役を命ぜられた紗英。勘解由は、浅野内匠頭の切腹に異を唱え、許しなく内匠頭の最後の言葉を聞きとったことが将軍綱吉の怒りに触れ、幕府目付を罷免され扇野藩へお預けとなった。
扇野藩では、勘解由の扱いに苦慮し、厳しい監視体制を敷くが、勘解由は静かに謹慎の時を過ごしていく。紗英も最初は戸惑うものの勘解由に心惹かれていく。
そんな中、内匠頭の最後の言葉を知ろうと大石内蔵助が勘解由を訪れ、お互いの胸の内を理解し合う。討ち入り切腹へと進む過程で、幕府の顔色を窺う扇野藩の重臣たちによる暗い計略もあり、ハラハラする展開が続く。
勘解由 -
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葉室麟の女性を主人公に描いた傑作の一つだと思う。面白い。
離縁された志桜里が迷い惑いながらも自分の信じる道を歩んでいく姿が本流にあるのだが、物語の展開は昭和の時代劇ドラマのよう。悪家老たちに追い詰められる殿様、殿様の命を受け悪家老たちの過去の不正を探る勘定奉行の志桜里の父 澤井庄兵衛、澤井家の隣に越してきて志桜里と澤井家を助ける「抜かずの半五郎」と呼ばれる剣の達人、などなど善も悪も多彩な人物が登場して息をつかせぬ展開が続く。
志桜里と半五郎の煮え切らない関係もヤキモキさせる。
解説に、「清廉な男と凛とした女、葉室麟が描き続けた理想の人々がここにいる」とあったが、まさにそんな作品だと思う。 -
Posted by ブクログ
黒島藩を舞台の三作目であるが、それぞれ別個の作品でシリーズ性はない。作品の紹介を見る限り、茶室を舞台にした心理戦のような流れかと思ったが、さにあらず、葉室麟らしいダイナミックな展開が待っていた。
元二大派閥の一方の領袖であった柏木靭負は政争に敗れ藩を去った後、茶人として名をなして国に戻ってきた。目的は、不義の噂を立てられ靱負に問い詰められて何の言い訳もせずに自刃した妻、藤尾の真実を知るためであった。
家督を譲った養子の妻、千佳が、靱負の世話を焼きながら、ありし日の藤尾の真の姿を明らかにしていく助けとなる。千佳の視点で描かれた作品と言ってもいい。
やがて明らかになる驚愕の真実とは。実に面白かった