葉室麟のレビュー一覧
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「蛍草」のようなハッピーエンドものもないではないと思うが、葉室麟の時代小説は切ない。
羽根藩新参の多門隼人は、御勝手方総元締として苛烈な改革を行っている。農民からは鬼隼人として恐れられ嫌われ、藩の同僚、上役からも足を引っ張られても、藩財政を立て直し藩主を名君と成すために突き進んでいる。そんな中、藩として過去に失敗し断念している黒菱沼干拓の命が下る。
隼人を助け支え、開拓に協力する人物が現れる一方、藩内では隼人追い落としのため百姓一揆まで策謀される。そして佳境へ。隼人の真の思いは、運命は、、、
欅屋敷の謎の女性や隼人のもの周りの世話をする出入りの商人の女房おりうも隼人を案じ慕う。この二人の女性の -
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「月形家の者は夜明けとともに昇る陽を扇動する月神でなければならん」と唱える月形洗蔵を主人公とする「月の章」と、従兄弟の潔を主人公とする「神の章」からなる歴史小説。
司馬遼太郎著『竜馬がゆく』により、薩長同盟は竜馬の手柄と広く流布されている。確かに、最終場面での引き合わせは竜馬によるが、この策は彼以前にも幾多もの人物が画策していた。
歴史の闇に埋もれた様々な史実を小説に仕立てる著者は、本書では洗蔵ら筑前尊攘派が身を挺して長州斡旋を行ったと記す。
その筑前尊攘派は薩長和解を成し遂げながら歴史の表舞台に出ることなく、賢君ではあるが志を異にする藩主により壊滅させられる。
歴史にifは禁物だが、この福岡 -
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面白かった
忠臣蔵サイドストーリ?
もののふの矜持とそれを支える女子の恋愛小説+生き様の物語
下巻です。
勘解由と苦難を共にする覚悟を決めた紗英。二人は祝言を上げることに。
そして、吉良の討ち入りを準備する大石内蔵助
結果、勘解由の立場が追い詰められることになります。
浅野の最後の言葉も明らかになり、いよいよ討ち入りです。
吉良を討ち、散っていった赤穂四十七士に対して、生きる道を選んだ勘解由は江戸に向かいます。
しかし、国を超えることができるのか?迫る追手。
勘解由はどうなる?
っと、後半はアクションものです。
生きるということ。そして、生きるための戦い
そのうちに秘める守るべきもの
熱 -
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面白かった
忠臣蔵サイドストーリ?
もののふの矜持とそれを支える女子の恋愛小説+生き様の物語
上巻では
江戸城内で、浅野内匠頭が吉良上野介を斬りつける刃傷事件が発生し、浅野内匠頭は即日切腹に。
永井勘解由は浅野の切腹の直前、最後の言葉を聞きます。
しかし、その行いが将軍綱吉の怒りに触れ、勘解由は扇野藩に流されます。
その勘解由を接待役兼監視役を命じられた後家の紗英。
次第に心を交わしていく紗英。
そして、勘解由のもとに訪れる大石内蔵助や旧赤穂藩士。
しかし、この関係は非常に危険
旧赤穂藩士が吉良を討った場合、それに勘解由が協力したとみなされ、監視役の扇野藩は処罰される可能性。
なので、刺客 -
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江戸の絵師ー尾形乾山、狩野永徳、長谷川等伯、狩野雪信、英一蝶ーをそれぞれ主人公とした短編5篇。
著者には、『いのちなりけり』3部作や『はだれ雪』など忠臣蔵異聞ともいえる作品があるが、本書でも赤穂浪士討入りの裏話が綴られる。
表題作の「乾山晚愁」では、赤穂浪士討入りの装束も尾形光琳好みで、光琳の匂いがすると語られる。光琳絡みで討入りの資金が出ているとの解釈も。
「一蝶幻景」では、赤穂浪士は大奥の争いの代理だったと。背景にあるのは、大奥を舞台としての幕府と禁裏の争いが。
絵師たちの生き様とともに忠臣蔵異聞も描かれる、小説家の想像力の豊穣を味わえる短編集で、忠臣蔵ファンにも見逃せない一冊。 -
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親友の罪を証言し、その親友の切腹に立ち会い首を落とした主人公の桐谷主水。その事もあり、「氷柱の主水」と呼ばれて下士から執政に昇り詰める。親友の娘を娶るが、その弟が真犯人が居るとして主水を父の仇と藩に敵討ちを求める。元々、周囲は主水に批判的で失脚した方が良いという雰囲気。監視が付き、これが非常に嫌な奴。ここまで読むと非常に重く陰鬱で、読む気が失せてくる。
真犯人探しが始まると急転してゆく。ミステリの要素が増えてくる。元対立派閥のトップに面談したことにより、原因と犯人が分かる。他の執政達は知っていて隠蔽していた。敢然と闘おうとする主水。
秘策を以って敵討ちに臨む。最後は意外な人物が手助けする。ただ -
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自作品に和歌を効果的に取り入れる著者は、この小説でもその手法を用い主人公たちの心情を表出する。
子供が出来ず離縁され実家に戻った志桜里が主人公。
隣家に越してきた半五郎と、辛夷の花を介し、互いの心が通うようになる。
時しあればこぶしの花もひらきけり
君がにぎれる手のかかれかし
志桜里に婚家への出戻りの話が起き、半五郎との間で思いが揺れ動く。現代では陳腐ともいえる彼女の躊躇は、その家を守るという嫁の役割を第一とする、今とは違う結婚観ゆえだろう。
自分の気持ちを二の次で、嫁としてなすべきことを重視する彼女に、婚家の姑鈴代が教え諭す。
「わたしは生きていくうえでの苦難は、ともに生きていくひ -
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ネタバレ(わしは新兵衛のこと羨んでいるのでだろうか)
きっとそうなんだろう。戻ってきた新兵衛には、貧しい生活を送ろうとも心のうちに豊かさを抱き続けた者の確かさが感じられる。
それに比べて自分はどういきてきたか。
切れ者と人に畏れられるようになりはしたが、親しく言葉をかけてくれる者はいない。ただ遠くから畏敬の視線を送ってくるだけだ。
皆それぞれに生きてきた澱を身にまとい、複雑なものを抱えた中年の男になってしまった。もはやむかしのように素直に心中を明かすことなどできないはしないだろう。
篠とはついに再び会うことができなかった。新兵衛とともにどのような思いで生きてきたのか篠から直に聞きたかった。
それも