葉室麟のレビュー一覧

  • 玄鳥さりて(新潮文庫)

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     武士社会のお話はあまり好んで読まないのだけど、読み始めたらすぐに引き込まれていった。血生臭い場面も多いのになぜか美しい。人の命をなんとも思っていない藩主や奉行たちが不気味だ。圭吾もそうなりつつあったのに、友と妻が救い出していく。
     美津は世間知らずのお嬢様な雰囲気だったが、良い奥方になっていき、六郎兵衛のことも理解していき良かった。
     あれほど多くの人を切ってしまった六郎兵衛には惨めな死に方しか用意されないのだろうかと諦めの気持ちで読んだが、どうやらその場面は見なくて済んだ。病で長くはないかもしれないが、どうか静かに過ごせていたらと願う。

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    2023年05月09日
  • 大獄 西郷青嵐賦

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    奄美時代までの西郷さんの伝記。葉室さんの本は初めて。
    一橋派と尊攘派の連携の様子など、分かりづらい部分も説得的に書かれている。西郷さんの海外観、運動の進め方などで、大久保と徐々に意識がずれていくのが、その後の展開を思わせる。
    総じてフラットな書きぶりで、西田さんや鹿賀さんの顔しか出てこない自分には読みやすい本だった。

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    2023年05月06日
  • 河のほとりで

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    『柚は九年で』に続く、急逝直前まで新聞や雑誌に記された随筆集第2弾。
    「書物の樹海へ」は、他の作家の時代小説の文庫に、著者が書いた解説を集めたもの。
    早乙女貢著「奇兵隊の叛乱」、山本兼一著「おれは清麿」、青山文平著「伊賀の残光」安部龍太郎著「レオン氏郷」などなど。
    どれも未読であり、是非にと読んでみたい気持ちを起こさせてくれる。
    「日々雑感」の「健康への出発」で、健康に自分で責任を持ち自分の年齢をもっと自覚しようと、記していた著者が、その半年後に急逝したとは・・・。

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    2023年05月04日
  • あおなり道場始末

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    しばらく読み進めて、葉室麟にしてはキリッとしないなと思いながら、作品に入り込めずにいたが、中盤以降はサスペンスもどきの目まぐるしい展開で、気がつけば読み終えていた。
    「あおなり」を弱々しいイメージで当たり前に受け入れていたが、青瓢箪とうらなりの造語であった。
    道場主であった父の死に不信を抱く三兄弟(兄、妹、弟)が、同業の道場破りをしながら、真相に迫っていく。何やかんや揉めながらも兄弟の絆がさらに深まっていく。ほんわかした読後感。

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    2023年04月30日
  • あおなり道場始末

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    葉室さんの時代小説は、心の琴線に触れるものばかりを読んできたので、少しのユーモアがとってもコミカルに感じてしまう。主人公のキャラが立っていて楽しく読ませていただいた。個人的に新しい葉室さんて出会えて笑みがこぼれちゃった。こんな時代小説も好きだな〜・・・。(o^^o)

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    2023年04月29日
  • 潮鳴り

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    著者は、出版社によって作品を書き分けているそうで、舞台とする藩についても、角川版には架空の扇野藩を、この祥伝社では、やはり架空の羽根藩を用いている。
    羽根藩シリーズと銘打たれるが、羽根藩が舞台というだけで、一部を除きそれぞれの作品に関連性はなく、登場人物にもつながりはない。
    第一弾の直木賞受賞作『蜩ノ記』は、死を意識した所から始まる「生の美学」であるのに対し、第二弾の本書は、「落ちた花は再び咲かすことはできるのか」をテーマにした再生の物語となっている。
    役目を失敗して、お役御免となった伊吹櫂蔵が主人公。
    彼が弟の切腹をきっかけに、それまでの無頼な暮らしを改め、弟の無念を晴らすべく、真相究明に立ち上がる。
    彼の再生を手助けするのが、大店の元手代で、今は俳諧師の咲庵と、さらに櫂蔵が死を意識したとき、彼を抱いて引き留めた居酒屋の女将お芳。
    彼らの助力により、宿願を果たした櫂蔵は、「ひとはおのれの思いのみに生きるのではなく、人の思いを生きる」のであり、「落ちた花はおのれをいとしんでくれたひとの胸に咲くのだと存じます」と、述懐する。
    題名の「潮鳴り」は、咲庵が吐露する言葉から。
    「潮鳴りが聞こえるでしょう。わたしにはあの響きが、死んだ女房の泣き声に聞こえるのです」
    しかし、宿願を果たした櫂蔵は、潮鳴りはいとしい者の囁きだったかもしれぬ、と考え、いまもお芳が静かに囁き、励ましてくれているのだから、一生潮鳴りを聞いてゆくだろうと、心に誓う。

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    2023年04月23日
  • 暁天の星

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    不平等条約の改正に挑んだ陸奥宗光を描いた未完の遺作。
    紆余曲折を経て、外務大臣に就任し、講和条約に入るというまさにクライマックス的なところで未完となり、その先が読めないのは本当に残念の極み。
    併録の『乙女がゆく』は、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』へのオマージュだろうか。
    姉の乙女が竜馬を訪ね、男装で京都の寺田屋まで行き、竜馬の危機を救い、さらに竜馬のフリをして桂や西郷に面会するという、なんとも愉快な短編。
    著者の長女涼子氏のエッセイも収録されており、葉室ファンには見逃せない一冊。

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    2023年04月12日
  • 読書の森で寝転んで

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    ネタバレ

    中年以降に小説を書く仕事についた人間には、時間に対する特別な思いがある。作品を書くため、自分に許されている時間は一体どのくらい残されているのだろう、と考えてしまうからだ
    自分が生きていく意味と言うのは、自分たちの親や、その親、さらに何代も前の先祖たちが生きてきた歴史の中にあるはずだ。そこにどうたどり着いていくのかと言うことを、考えなければいけない

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    2023年04月09日
  • 蝶のゆくへ

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    若松賤子の小説を読んだ後、ここにも描かれていると知って読み始めた、初めての葉室麟さん。
    どうやら、これまでの作風とは異なっているらしいけれど、私はすっかり魅了された。
    若松賤子は「我にたためる翼あり」に登場していた。当時の女流作家が何人か出てくるけれど、一番鮮やかに浮かび上がるのは、樋口一葉。ここまで樋口一葉を描いた小説を知らないが、これぞと思わせるリアリティがあった。作者の明治文学への深い洞察が描かせたものに違いない。この時代の明治のインテリたちの動向がよくわかる。
    それぞれの短編には島崎藤村、北村透谷、有島武郎など、明治の文学者が現れるが、いわゆるスキャンダルを扱っていて、男たちには魅力を感じない。勝海舟の晩年くらいか。その勝にしても、若い頃はあちこちに女を作っている。明治の男は、裏ではみんなこんなものか。まともに描かれているのは樋口一葉を支えた斎藤緑雨くらい。
    解説によれば、作者はこの時代をもっと描きたかったのだという。志なかばでとても残念に思う。
    まるで違う筆致で描かれているのかどうか、テーマも違う、他の作品も読んでみたくなった。

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    2023年04月07日
  • 散り椿

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    ネタバレ

    中江有里解説 散り椿の意味するもの
    目には見えない、手の届かない世界は確かにあるのだと思うだけで、生きる力が湧いてくる。散り椿はそんな小説だ
    本書の登場人物は、誠実であろうとするゆえに生きづらさを抱え込む人が多い。誠実でありたい、と思っても世の中を渡るには、その誠実さが邪魔になることもある

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    2023年03月19日
  • 蝶のゆくへ

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    ネタバレ

    主人公りょうの人生がまさか中村屋へ、その看板メニューインドカレーへと繋がっているとは思いもよらなかった
    錚々たる小説家芸術家の名前が出てくるのでりょうもその世界で大成するのかと思った。意外だったけれど最後まで自分を自分として愛した気持ちのいい女性だった
    相馬黒光さん

    それにしても途中から葉室麟さんの作品を読んでいるということを忘れていた

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    2023年03月13日
  • 嵯峨野花譜

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    活花の名手と評される大覚寺の少年僧胤舜が、華道の修業を通じて成長していく時代小説。
    10篇からなり、それぞれに様々な花が生けられる。
    白椿、蝋梅、山桜、山梔、萩、朝顔、酔芙蓉等々。
    しかし、請われて活花を行ったがその人の命を救えず、師の広甫に「生きることに、たんと苦しめ。苦しんだことが心の滋養となって、心の花が咲く。自らの心に花を咲かせずして、ひとの心を打つ花は活けられぬ」と、未熟さを諭され、さらに精進する。
    静かに活花の話が続くと思いきや、彼が老中水野忠邦の隠し子であることから、一転不穏な動きが蠢き始める。
    史実とフィクションが融合されたこの小説は、著者が京都に居を移したその時期に書かれたとのことで、随所に京の四季折々の風景が挿入され、風雅な小説となっている。

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    2023年02月09日
  • あおなり道場始末

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    解説によれば、葉室氏は出版社にとって小説の内容や傾向を書き分けているとのこと。
    確かに「新潮」「角川」では、歴史上の人物を主に彼らの清涼な生き方を格調高く描いているし、「文藝春秋」「講談社」「徳間」では、歴史とフィクションを巧みに織り交ぜて、和歌や漢詩を取り入れ豊穣な作品となっている。
    一方、この双葉社(文庫)は、『川あかり』しかり、『蛍草』しかり、架空の人物を主人公に娯楽性の高い愉快な作品となっている。
    本書もその例にもれず、架空の藩の剣術道場の三兄弟の絆を謳い心温まる時代小説となっている。
    両親を喪ったこの三兄弟、昼行灯のような性格で頼りない兄権平に対し、妹千草は剣術の腕前は兄に勝る美貌の持ち主、弟勘六は神童の誉が高い秀才と、典型的な愚兄賢弟との設定になっている。しかし、兄の権平は見かけによらず、いざというときには父親から伝授された「神妙活殺」という凄技で相手を次々と負かせてしまうというエンタメ色に溢れている。
    この仲の良い三兄弟がお家騒動に巻き込まれながら、協力して親の仇を捜し求めるミステリー仕立てとなっていて、読者サービス満点の時代小説。

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    2023年02月01日
  • 読書の森で寝転んで

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    2017年に逝去した著者の、最後のエッセイ集。
    第1章は、新聞に連載した書評集。司馬遼太郎の『韃靼疾風録』から小林秀雄の『本居宣長』まで、29篇。
    第2章は、「歴史随想ほか」で、新聞や雑誌に掲載されたエッセイでなっている。この中で、著者が最近に出版不況について、「近頃、本が売れないのは、人生に挑む気概が欠けているからではないかと思う」と論じる。そして「人生という戦場に出て行くからには、読書という武装が欠かせないと信じていたが、いまは違うのだろうか」と、懸念を示している。同感するブログ子も多いことだろう。
    第3章は、小説講座の講師としての対談からなる講義録。ここで、葉室氏は「残り時間を考えるので、やれる仕事はやる、と決めていますから。生き急いでいると言われればそれまでですが」と、早逝を予感するようなことを述べていることに、哀しい思いが生じる。
    第4章は、絶筆『我に一片のこころあり 西郷回天賦』が掲載されている。『大獄 西郷青嵐賦』の第2部とのこと。完成した作品を読みたかったとの思いが募る。
    さらに、司馬遼太郎の『坂の上の雲』の葉室版も構想していたそうで、早逝が惜しまれる気持ちがさらに増す。

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    2023年01月08日
  • 散り椿

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    とても美しい物語だった。
    最初亡き妻の真意が分からず好きじゃなかったんだけれど、読み進めていくと段々と様々な事の裏側が見えてくる。
    彼女の、そして彼らの一途な愛が痛いほど伝わってくる。
    過去の事件の真相が徐々に分かってくるにつれて、彼らへの心情が二転三転していく。
    誰が敵かと疑心暗鬼になったり、卑劣な手段に出る相手方にハラハラの展開もあって、始終面白く読めた。

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    2022年12月29日
  • 緋の天空

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    春の奈良旅以来続く、光明子ブームの一環。
    長屋王の長男・膳夫(かしわで)との、ほのかな想いがポイントとなっている。
    二人に加え、聖武天皇、あの道鏡まで同年だった・・・
    それを知ったときの作者の小躍りする姿が見えるよう。

    一番、読んでいて印象深かったのは、
    彼らの少年時代の冒険の一コマ・
    たぶん、作者は、ここから物語の発想が膨らませたのではないかと
    勝手に思っているほど、心惹かれている。
    大河ドラマ「女城主直虎」で主人公らが井戸を囲んだ幼い日々と重ねてしまった。
    どちらもとても好きな場面。
    後に道を違えることになったとしても、幼い日、共に過ごした記憶は
    きっと心に残っているはずだから。

    小説のこのあとは、正直ね、普通の光明子の物語。
    膳夫は、里中満智子版の長屋王のよう。
    とにかく魅力的な爽やかな男。
    対して、本作の長屋王は・・・ちょっと残念なお父さん。
    でも、私利私欲に走るわけではなく、皇族として臣下・藤原氏の台頭を
    案じ、心砕いた末のこと。

    長屋王事件のあとは、小説もあっけない。
    なんだかな、物足りないな・・・
    けれど、あの少年の日の冒険があるから、私には満足。

    あまりに心惹かれ、
    膳夫と姫の出会いとなった、平城京をちょこっと歩いてしまったほどw

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    2022年12月31日
  • 実朝の首

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    建保七年(1219年)正月二十七日
    源実朝の右大臣拝賀の儀
    雪の降り積もる鶴岡八幡宮の石段と傍らの大銀杏

    実朝暗殺の場面から物語は始まる
    甥の公暁によって殺された実朝の首を巡る騒動


    公暁から首を預かった弥源太。
    (弥源太は公暁の乳母子で美少年♪)
    弥源太は三浦館へ向かうはずだったが、そのまま持ち逃げする。
    そこから三浦義村の家臣、武常晴と出会い、連れて行かれた先には和田合戦の生き残りたち和田党がいた。

    この作品、成り行きで和田党の一員となった弥源太の成長物語…
    という側面もあるのかな。
    もちろん見どころは朝廷と鎌倉幕府、そして和田党の腹の探り合いですが。

    自分的に面白くて印象的なのは、北条義時と三浦義村の小物っぷりです。
    政子にバカにされ、底が浅いと思われ、臆病で。
    そういう描写が出てくる度に、思わずクスッと笑ってしまう。


    先日最終回を迎えた「13人の鎌倉殿」を毎週楽しみにしている中、
    くるたんさん、TOMさんのレビューで本書を知り、読みたい!と思っていました。
    実朝暗殺もう一つのストーリーとして空想が広がり、とても楽しい読書時間でした。

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    2022年12月22日
  • 無双の花

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    寡聞にして本書を読むまで立花宗茂という人を知らなかったのですが、葉室氏が題材にしたことが頷ける真っ直ぐな人でした。
    多くの武将たちが生き残りをかけて時に権謀術数を巡らす戦乱の世の中で、決して裏切らないことを信条に生き抜いたことは驚嘆に値する。また、彼を支える忠臣や女性も皆、この男と共に生きるに相応しい人たちでした。
    オマケに家康まで心の底では平安の世を実現するために敢えて卑怯な手も辞さない男として描かれていたけれど、これには少し疑問もある。真田も伊達も格好良すぎだしね。

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    2022年12月22日
  • 青嵐の坂

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    藩の財政再建に没頭しながら、御用商人の企みで切腹させられた檜弥八郎の無念を、息子の慶之助が妹の婿の矢吹主馬と果たす壮大な物語だが、武士の心意気が随所に見られ非常に楽しめた.どの世界にも蔓延っている無能な取り巻き連中や悪徳商人をうまく対処して成果を上げるための方策と陣容を、いかに整えるか.この難題を解決する手法が示されていると感じた.慶之助が最後に取った手段は、自分自身を弁えた渾身の策だろうが、命を差し出す勇気は素晴らしいと思う.

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    2022年11月22日
  • 読書の森で寝転んで

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    ネタバレ

    目次
    ・読書の森で寝ころんで
    ・歴史随想ほか
    ・小説講座で語る
    ・芦刈
    ・我に一片の心あり 西郷回天賦
    ・葉室麟 最後の言葉

    読もう読もうと思いながら、まだその作品を読んだことのない葉室麟のこの作品を買ったのは、もちろんタイトルに惹かれたから。
    『読書の森で寝ころんで』
    こんな至福はあるまい。

    時代小説を書く人だ、という認識しかなかったので、その書評にコナン・ドイルやカートヴォネガット・ジュニアがあるのに驚いた。
    もちろん時代小説・歴史小説について書かれたものが多いのだけれど、それは想定内。
    まさか彼から、コナン・ドイルが晩年スピリチュアルな世界へ傾倒していった理由を知ることになるとは。

    それから、奈良時代を舞台に描いた作品が多いということを知り、これはもうアンテナを高くしないとならんな、と思う。
    奈良時代や飛鳥時代はなかなか小説にされにくく、作家が書こうとしても「売れませんよ」と編集に停められてしまうのだとか。
    この本のなかにも藤原不比等についての考察があり、ちょっと前にNHKの番組で不比等についてみたばかりだったので、俄然興味が沸くというか沸騰する。

    初めて読む葉室麟の作品は、だから『芦刈』ということになる。
    能の「芦刈」をモチーフに書かれた作品は、多分愛し合っていたと思われる夫婦であれ、10年別の生活を送ったことによる溝の、小さくても越えられない断絶を、冷徹なまでにくっきりと示す。
    10ページの作品だったけど、ずしんと来る面白さだった。

    西郷隆盛についても、いくつかふれているのだけど、ずっと私が知りたいと思っている、無血開城の後なぜ執拗に幕府をあおって戊辰戦争に持って行ったのか、は、やっぱりわからなかった。
    私の中ではこれだけが、西郷どんらしくない行為に思えてしまうので、絶筆の『我に一片の心あり 西郷回天賦』の完成を読みたかった。

    50歳を過ぎてからの作家デビューで、残り時間にどれだけ書けるのかをいつも考えていらした著者の病床での最期の言葉に「西郷のあとは、坂の上の雲。がんばらないと。」とあって、その早すぎる死を残念に思う。

    葉室麟の麟は、勝麟太郎から取ったとあって、思わずにやり。
    絶対趣味合いそうだなあ。

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    2022年11月20日