【感想・ネタバレ】墨龍賦のレビュー

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Posted by ブクログ

海北友松の若年時代をメインに描いた作品。彼の名前と代表作の「山水図屏風」は知っていたが、彼が大器晩成型の画家だったこと、表紙の「雲龍図」は知らなかった。
 
澤田瞳子さんの解説にもある通り、本作は武士に戻りたくてたまらない友松が人生の目標に悩み続けた結果、絵に全てをかける思いに至る過程を描いていく叙情的な作品。数々との戦国武将との邂逅もあるが、明智光秀での出会いと別れには読む手に熱がこもった。裏切者として歴史から姿を消した明智だが、友松曰く「雲龍」となり、民を救うために立ちあがったとして出来上がった「雲龍図」を見て空でどう感じているのだろうか。斎藤利三の首を奪取した後は、細かい描写をスキップして第三者視座からその後の友松の活躍を描くという構成も好きだ。この歴史的大事件を経て友松は早くも悟りに達したのではないかと私は思う。画家として目指した「美しさ」。武士の散り際の美しさと変わらず美しいもの。そこから生み出された狩野派にも負けぬ数々の作品。静かに、しかし熱く、想いがこみあがってくるようだった。
また、冒頭と最後にある春日局と忠左衛門の会話で「父にとって、昔のことは夢幻のごときものだった」と語られるが、読者からもすぐ前に読んだ話なのに遠い昔の出来事に感じられるようで、内容もさることながらそう思わせる構成も流石の一言に尽きる。

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2021年09月25日

Posted by ブクログ

絵師海北友松が主人公の小説だから美術小説かとの予測は、いい意味であっけなく覆った。
兄により仏門に入れさせられた友松が、武門に還俗することを願いながら絵の道を選択する。
その過程で出会う狩野永徳や安国寺恵瓊それに斎藤内蔵助との交流により、時代に深くかかわって行く。
世間から嘲られようと、人として美しくならねばとの思いで生きる友松の生き様を辿る歴史長編。
本能寺の変の黒幕等については古来諸説あるが、本書では、道三が信長に与えたという「美濃譲り状」をひとつの拠り所としている。
その偽書であることを証した、道三の娘で信長の正妻である帰蝶が”黒幕”との説。彼女が、信長を狩ることを、美濃衆の斎藤内蔵助に明かしたと。
あの宮本武蔵が、友松の弟子であったとの記述もあるが事実らしい。こういうことを知ることも歴史小説を読むことの楽しみのひとつと言えよう。

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2021年04月29日

Posted by ブクログ

この本が上梓されてから10ヶ月後に亡くなられた葉室さん。
端正な語り口が好きです。
本作では明智光秀が好人物として描かれています。
2020年の大河ドラマがコロナウイルス対策の為中断しているなかで複数の視点から明智光秀と主人公、海北友松を考えるのも良いかも知れません。

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2020年07月04日

Posted by ブクログ

2022.3.30完了
武将でない人の視点はおもしろい。
きっとこんな人もいたろうなと考えさせられる。
葉室氏らしい読み易さもあって’良い’。

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2022年03月30日

Posted by ブクログ

安土桃山時代の物語
実在の人物で建仁寺の「雲龍図」を描いた海北友松の生涯の物語。
その「雲龍図」は知っていましたが、作者のひととなりは知りませんでした。
これまた、どこまでが史実なのか分かりませんが、特に後半部分はワクワク楽しめました。

ストーリとしては、
武士の家に生まれながら仏門に入ることになった友松。しかし、実家・海北家は滅亡し。武士に戻りたくとも戻れず、葛藤を抱きつつ絵師として生きていくことに。
そこで、狩野永徳、安国寺恵瓊、斎藤利三、明智光秀達と出会い、この時代に大きくかかわっていくことになります。
とくに、後半、本能寺の変の裏側について描かれており、その内容は面白かったです。さらに、秀吉によって斬首された利三の首を奪取して葬ったところは、その友情の深さがわかります。

建仁寺の「雲龍図」に光秀と利三の二人の魂を留め置いたとしています。
実物見てみたい!

お勧めです

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2022年01月22日

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