有栖川有栖のレビュー一覧
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今回はある理由で火村先生が忙しく、アリスが一人で地道な聞き込みや調査を行うという珍しい展開。
そのため物語の進み方はのんびり。
アリスは相手に寄り添い、丁寧に話を聞く。
人柄の温かさがそのまま作品の空気になっているように感じた。
物語が長いので、他の本で疲れたらこの本に戻ってきて、2ヶ月間くらいかけてのんびりと楽しんだ。
個人的に疲れた時でも有栖川作品を開くとホッとする。
火村が戻ってきてからは一気に物語が動き出す。でも今回は何よりアリスがよく頑張った。
読んでも読んでもなぜか終わらないと思ったら、まさかの火村シリーズ最長の736ページだった。
電子書籍で読んでいたので、こんなに大作だとは途中まで全然気付かなかった。 紙の本なら厚さに身構えていたかもしれない。
軽くて読みやすい電子書籍の便利さに最近すっかりはまってしまった。 -
Posted by ブクログ
この島に集まっている人達はどんな目的で集まっているのか。その中でクローンを専門に研究している医者がいて、クローン研究と何か関係がありそうな集まりに見える。
クローン人間をつくりたい人はどんな人なのか。失った身近な大切な人をクローンとして生み出しても、同じDNAを持っ赤ん坊が生まれるだけで、同じ人間ではない。自分をもう一人つくろうとしても同じこと。それでもつくりたい人はいる。
クローンをテーマにしているのは興味深いけど、島に集まっている人達についても、殺人事件についても情報量が少ないのがやや不満。でも結構な長編となっている。何でスペースをとられている?
思ったのは、火村先生やアリスが疑問を投げかけたときに返ってくる反応が、言いたくないとかはぐらかすとか、そういうものが多すぎるのではないか。彼らなりの考えを喋りすぎで、それで事件の方が薄くなってしまった気がする。
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Posted by ブクログ
ネタバレ<感想>
■全体としては面白い
ストーリーが面白いし、クローズドサークルという舞台設定や、主人公らが大学生だけに雰囲気も暗くならず、情報も複雑すぎない、という点で、全体としては好みな作風。(ただ、人物が多すぎて識別が難しかった)
しかし解法の細部については一部ツッコミ所があるのでは、と思ってしまった。
■エラリー・クイーン
タイトルからしてそうだが、著者はエラリー・クイーンが大好きなのかな?と思った。そうなると、まず先に保留していたエラリー・クイーン作品、特に国名シリーズを読んでから読んだ方がより楽しめたかも、とも思った。
エラリー・クイーンは自分が大好きな作家で、それ故に「とっておこう」と読むのをわざと保留していたが、それが裏目に出た感。
なお、本家「Yの悲劇」になぞらえた作品、というわけでは全くないように感じる。
本書で例えばアガサ・クリスティについて言及される、「Aがこういう行動をしたから犯人だ、とされるが、BやCだってできただろ、という点には触れられない」について、本書はそれに挑戦している感が伺える。
探偵役以外に推理をする者が3人もいる、というのがそれを表しているように思い、その点は好感触。
<考察>
真相について、ツッコミ所があるように思える。
①返り血
勉殺しについては返り血が超重要ポイントとなるのに、文雄や尚三については全く血の付着が問題にならない点は違和感を覚えた。
指切り取ったら血くらい付くんじゃね?とも思うし、「背後から刺したら全く返り血は付かないが前から刺したら付きます」なら勉も普通に背後から殺せば良かったんじゃね?とも思う。
②指と指輪
「指を切り取ったのは小百合が大切にしていた指輪のため」とあるが、だったらもっと細かく切って(というか指輪のすぐ隣部分を切って)指輪だけ回収して指は捨てればいいのでは。わざわざ指輪をはめた指ごと持って帰り、苦心して隠す、というその行為自体が不自然に思えた。
③動機
描写的に動機がゆるいと感じる。
「林の中でクリスチャンである小百合とヤっちゃってるのを見られ、吹聴されそうになった」レベルならまだわからなくもないが、そういう直接的な表現はなく、ただ何か冷たい言葉を言われただけ、というのは弱い。
「月の林で、結ばれるところだった」という表現があり、これが「ヤってる途中だった」という意味ならまあわかる。
④クローズドサークル
「なぜわざわざ犯人が絞られるクローズドサークル内で殺人を犯す必要があったのか」について、きっちり理由に言及してほしかった。
まあこれは「突発的な事態で殺人を犯す動機が生まれたから」で一応納得できなくもない。
これもやはり、動機が弱いから納得できない部分であり、「いや、別に何言われても構わんやん。殺したいなら帰ってから殺せば?」というのは現代感覚なのだろうか。
⑤懐中電灯
懐中電灯のくだりについて、何で壊れた懐中電灯をわざわざ持って帰ったのか。川で落として壊れたなら、そのまま捨てりゃええやん、っていう。
わざわざ「第一発見者となり、驚いて懐中電灯を落として壊してしまった、というフリをする」という必要がないように思う。
<次作>
自分は細部よりも全体として面白かったか、で捉える派なので、全体としては面白かった本作は、是非次作も読んでみたい、と思えた。 -
Posted by ブクログ
自分の読書歴では初のアンソロジー。
トリック満載のミステリとコロナ禍で起きた世の中の異変に触れた作品もあり。
六者六様のお話が展開されているので、合う合わないは結構大きく分かれたかも。
やはりトップで読み応えあったのは、
辻村深月『2020年のロマンス詐欺』だった。
"闇バイト"に関する話は年月の経った今でも、
というか更に横行しているからこの作品は教科書に載せて恐ろしさを知ってもらいたいくらい。
孤立無援の環境で追い込まれていく緊張感がとにかく怖い。しんどい時期でも不逞な輩を近付けないように日頃から対策していけますように。
芦沢央『投了図』もコロナ禍が招いた事件。あの頃はみんな辛い我慢が多かったなと思い出させる作品。こんな悲しいことがまた起きてしまわないように。将棋の知識は皆無だけど読みやすかった。
のちの新作『おまえレベルの話はしてない』でも
将棋を通した人間模様が描かれているようなので
文庫化の暁にはそちらも読んでみようかなと思った。
個人的に新しく見つけた「好き」だったのは
大山誠一郎『孤独な容疑者』だった。
死角から現れたトリック!シンプルに読み物として面白かった。ネタバレは避けて読んで欲しい。