有栖川有栖のレビュー一覧
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本格ミステリの大家、有栖川有栖氏による鉄道エッセイ。
鉄道アンソロジー集も読んだ事がありましたが、ここまでの重度の乗り鉄患者だとは露知らずびっくりしました。冒頭では氏がいかにしてこの道に染まったかが克明に記されていますが、遅咲きではまりだす、というパターンは男性では珍しいように思います。
よく眠る奥さまや敬愛する鮎川哲也先生にまつわる思い出が随所にちりばめられていて、ああこの人の鉄道趣味は人生と深く連関しているのだなとじんわり感心させられました。逆に言うと、氏のミステリを1作も読まず(おいっ!)。人となりが分からないまま本作に接してしまったのはなんとも勿体なく、順番を間違えてしまったようで -
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宿縛りの短編集。
『暗い宿』
廃線になった(正確には違う)線路を散策するうち引き始めていた風邪を悪化させたアリスは引き払う寸前の宿に助けを求める。一夜、横になれればいいと懇願する病人を放っておけず、一夜の宿を貸してくれた元女将。風邪薬も手伝って夢現の夜中、アリスは階下で不審な音を聞く。その音の正体は?--後日壊された宿の床下から男の死体が掘り起こされた。
『ホテル・ラフレシア』
ホテルのミステリーゲームのモニターとして片桐に連れられてやってきた石垣島の高級ホテル。火村も同行していたそのホテルで、ミステリーのイベントが盛大に行われている同じ夜、火村は浜辺で一組の夫婦と出会う。奥さんのほうが倒れて -
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【内容情報】(出版社より)
ミステリ小説という「国」には作家が造形した様々な「人々」が住んでいる。誰もが知る名探偵、事件の鍵を握る意外な人物、憎めない脇役、不可解だけれど目が離せない人……そんな人たちを通して、ミステリを読むおもしろさが何倍にも膨らむ「ツボ」を刺激してくれる、ミステリファン垂涎、読まず嫌いの小説ファンには目からウロコのエッセイ集。
ホームズ、ルパン、エラリー、金田一耕助という直球もあれば、明智小五郎の妻・文代といった変化球も織り交ぜつつ、本格ミステリの古典とされる『グリーン家殺人事件』やジョン・ディクスン・カーの密室モノ、ハードボイルドではロス・マクドナルド、ミステリの日本三 -
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短編集。「作家アリス」シリーズ21作目。
▼「高原のフーダニット」
以前、殺人事件の容疑者にされたときに、火村英生が真犯人を突き止めたために冤罪を免れた兄弟がいた。
大朔栄輔と光輔である。
ある日、栄輔から連絡を欲しがっているという伝言をアリスから聞いた火村は、さっそう栄輔に電話をかける。
栄輔は弟の光輔を殺してしまったと告白し、明日自首すると火村に言うために連絡してきたのだ。
誰かに犯行を告白することによって、自首する以外の道を潰そうとしたのだ。
言いたいことだけを一方的に話し、唐突に電話を切ってしまった栄輔。
だが、彼は自首をすることはなかった。
何故なら、殺されてしまったから。
いわゆる -
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余吾湖畔の別荘で所有者の妻が殺された。
警察は被害者と関わる人たちに聞き込み捜査を始める。
推理作家である空知雅也は、被害者が学生時代につきあっていた元恋人だったため、警察からの事情聴取を受ける。
被害者・恵に多額の保険金がかけられたいたため、恵の夫・柚木新一が疑われるが確かなアリバイがあった。
納得できない恵の妹・ユカリは、空知に一緒に事件を調べてくれるように頼みこむ。
新一と双子の弟・健一の完璧すぎるアリバイ。
多くの乗客が利用するなかのたったひとりの乗客のアリバイなど、本来ならばあやふやなものであるのが自然だ。
なぜか、新一も健一も、周囲の人たちにあえて強い印象が残るような行動をとってい -
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ネタバレ短編集。作家アリスシリーズ12作目。
「絶叫城殺人事件」
女性ばかりが襲われ殺害される事件が続いた。
被害者は口の中に何かが記された紙片を押し込まれていた。
書かれていた文字は「NIGHT PROWLER」…夜、うろつく者。
ゲーム・ソフト「絶叫城」に登場する怪物の名称である。
「絶叫城」とは、昼間は絶叫城の秘密を探るために手がかりを求めて城内を調べ回る。
夜になると、ナイト・プローラーからただひたすら逃げ回るゲーム。
すべての手がかりを手に入れ絶叫城の謎を解くと、ナイト・プローラーは消滅する。
次の瞬間、謎を解きナイト・プローラーを倒したプレーヤー自身が妄想と狂気の城を引き継ぎ、自らがナイト -
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ネタバレ短編集。
▼ショーウィンドウを砕く
物語の語り手を犯人自らが行っている。
会社の経営が上手く行かず、資金繰りも行き詰まりつつあった夕狩は恋人を殺害してしまう。
恋人から自宅の鍵を失くしたと連絡を受けた夕狩は、そのことを利用しようと思いつく。
翌日、強盗の仕業に見せかけて夕狩は凶行に及ぶ。
物語の中に出てくるショーウィンドウは、子供だった夕狩にとって憧れの象徴だった。
ショーウィンドウの向こう側にあるものは、いつも眺めるだけの存在。
どんなに欲しくても自分が手に入れることはない。
町中のショーウィンドウを片っ端から叩き割っていく夢は、夕狩の潜在意識が見せたものなのだろうか。
手に入らないものなら -
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盛りだくさん!
こういうのを盛りだくさんと言うのだろう。
統一性が無いのが逆に良い。
あとがきでもう一度たどったが、初出、依頼された経由などもさまざまで、面白話やパロディなどが多い理由もうなずけた。
最近は、真面目というか、平坦な感じのアンソロジーや短編集が多い気がする。
叩き気質のネット社会のせいか…そういう時代になってしまったのだから仕方がないが。
『屈辱のかたち』…言われてみれば。当人にしか分からない。
『ざっくらばん』は、すっかり「ざっくばらん」だと思いこんで読んでいたため、「え?これ、別の意味があるの?オチは何?」と混乱したが、そういうことでした。
『怪物画趣味』ちょっと乙一っぽい -
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ネタバレ大阪の七坂を舞台にした怪談集。ミステリィ以外、初めて読みました。二編目までは(後に、最後の九編までとわかる)誰かしら亡くなり、そのひとを想い、応え、化ける!?叙情豊かな筆致で不思議な読後感が漂う。三編目は結構悲惨な感じで亡くなった少年がキーだが、そう感じさせないのはさすがでした。四編目はネコがキー。ちょっと官能的でまた良い。五編目は憧れの人。六編目は妻子ある人を愛し、棄てられ自殺した人。探偵に誘われ、料亭へ。最後には店主の正体が分かり–––。ホラーなんだけどどこか優しく、ほっとするような感じ。七編目は小さいときから生きていないものが視える青年。八編目は松尾芭蕉の旅の日常からドッペルゲンガーを見
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ネタバレ『オノコロ島ラプソディ』『ミステリ夢十夜』『高原のフーダニット』の三篇からなる火村とアリスのバディものの短編集。
『オノコロ島ラプソディ』
淡路島に骨休めに来ていた火村准教授に届いた事件の報せに、仕事が行き詰っていたアリスが強引に息抜き兼助手業に押し掛ける、作者いわくドタバタミステリになる予定だったミステリ。
ちょうど家族で淡路島に遊びに行ったあと読み始め、おお知ってる場所だ!とひっそり楽しかったお話(笑)
『ミステリ夢十夜』
"こんな夢を見た。"の一文から始まるかの有名な夢十夜のアリス版。どの夢もきな臭い事件に巻き込まれるアリスは今日もたぶん変な夢を見て、友人の犯罪学