• ペルシャ猫の謎
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    有栖川作品の1作目には向かない

    『赤い帽子』は最後までいつもの探偵コンビは出てこない。人海戦術、刑事の勘が如何に重要なのか思い知る。
    最後のページでこれで全てが繋がる、といったシーンでは達成感のあまり読んでるこちらが泣けてきた。これも小説なんだけれども、事件は小説とは違うんだよ、と言われた気分だった。

    どの作品にも言えることだが、今回はいつもの様にトリックが巧妙で…といった趣ではない。
    キャラクターの個性を表したような、舞台裏を見たような、とても愛おしい作品だった。
    よって、有栖川作品を最初に読む人にはお勧めできない。

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    2016年06月13日
  • 英国庭園の謎
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    有栖川有栖がもっと好きになる

    短編集の中でもかなりライトに感じた。
    通勤の細切れで読んでいたがあっという間に読み終えてしまった。
    しかし物足りないのではなく、間食が誘い水になるような「もっと食べたい!」感が出てしまう。
    有栖川有栖って本当に面白い。

    『完璧な遺書』の出だしに少し驚いた。
    解決の方法がちょっとずるくてそりゃないよと思ったけど、それはそれ。
    この話の面白いところはトリックより犯人の心情描写だと思う。
    自分に酔いながらニヤついてる姿が目に浮かぶ。
    そして高い鼻がポキっと折れた瞬間も。

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    2016年06月06日
  • ブラジル蝶の謎
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    有栖川有栖のイイとこ取り

    どの作品もトリックが意表をついてて面白い。
    そして人物もまた個性豊かで楽しめる。
    蘭ちゃんなんてどこで会えるのか知りたいくらい。

    最後の『蝶々がはばたく』が特にすごく好き。
    まず、人が死なない。
    初老の男性から投げかけられたひとつの謎に推理小説家脳を遺憾なく発揮するアリス。
    冒頭出てくるバタフライ効果と解決がうまく絡み合っている。
    阪神淡路大震災直後に書かれたことに作者の愛情を感じる。

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    2016年05月31日
  • スウェーデン館の謎
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    磐梯山の美しい情景が浮かぶ

    磐梯山に訪れたことはない。
    五色沼も見たことがない。
    全く知らない場所なのに今や見てきた様な気になっている。
    それくらい情景の描写が美しかった。
    登場人物の描写も、もはや「登場人物」ではなく、有栖川有栖の知り合いではないかと思うくらい豊かに生きている。
    だから、火村が謎を解き始めた時はすごく辛かった。
    解決はしたいけど悲しい結末が待っているのはわかっている、だから知りたくない、と思ってしまった。

    トリックは極めてシンプルなのに全く気が付かなかった。
    ヒントは全部出ていたというのに。
    等々力の出題したパズルと一緒で、シンプルな事こそ見え難い、と言ったところか。

    読了後、磐梯山を眺める火村やア

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    2016年05月19日
  • ロシア紅茶の謎
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    トリックが秀逸

    殺人に至るまでの心理描写を緻密に…というヘビーなものではなく、トリックを見せるためのライトな短編小説。
    「赤い稲妻」だけは被害者のアレの有無を確認してないと解けなかったけど、それ以外は読者に挑戦状を叩きつけるかのような(実際「八角形…」では挑戦状が出るが)火村同様、作者のニヤッとした顔が思い浮かぶ。
    おいおいここまでヒント出してんのにわかんねぇのかよ?と言われそう。
    むしろ言われたい。

    どのトリックもどこかで使えそう(?)なのでメモ必須。

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    2016年05月04日
  • みんな邪魔
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    ぞっとするけど誰しも当てはまる

    綺麗なドレスを着て、高級ランチをして、取り繕ってはいるが、生活、人間関係、性格など見えないところではどす黒い何かを抱えている。
    それはどこか自分のことを書かれているような、見透かされた恥ずかしさがある。

    一人心の中で毒付く言葉も文字にするとこんな感じかもしてない。

    張り巡らされた伏線がちゃんと回収されていき、背筋にツーっと冷たいものが落ちる感覚になる。

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    2016年03月16日
  • 深く深く、砂に埋めて
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    面白い。しかし恐ろしい。

    世の中には騙そうとか陥れようとか、悪意による嘘がたくさんあるが、最も恐ろしいのは悪意のない嘘。
    本能と欲望にのみ忠実であることは心に自由に生きたと言える。
    しかし法と理性の世界では罪以外の何者でもない女。

    なぜこんなことを?どうして?
    理由なんてない。
    そうしたいから。
    作中の彼女に私も随分惑わされた。
    ラストには同情してしまう程。

    「女ともだち」の続編との事だが、あまり本編とは関係はないような気がする。
    こちらから読んでも問題ない。

    出来ることなら私も彼女の様に生きたい。

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    2016年02月27日
  • 再会
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    予想がつくオチ

    横関大の作品はルパンの娘と本作しか読んだことないが、読み口はどちらもライト。
    タイムカプセルの謎のところは不気味さが出ていたが、読み終わるとなんだそんな事かと呆気なかった。
    あれだけ息子の進学を気にしてた母親があんな軽率な行動をとるとは考えにくい。

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    2016年02月20日
  • ユリゴコロ
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    愛のかたち

    歪んで、割れて、裂けて、それでもなお愛おしい。
    そんな夫婦の話。

    序盤の手記の不気味さは主人公同様、待つことができないくらい続きを読みたくなりました。

    強烈に惹かれ合う罪、自ら乞う罰、巡り合ってしまったものは仕方がない。
    読み終わったあとにもう一度読みたくなります。

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    2016年01月11日
  • 隻眼の少女
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    麻耶作品で一番素直なミステリー

    ちょっと無理あるストーリーだけど一番衝撃は少なかった。
    なるほど、と思える素直なミステリー。
    ただ、これだけの狂気を見たあとだと、最後の微笑ましい顔ですら疑いたくなる。

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    2015年12月26日
  • 螢
    購入済み

    後味悪いファンタジーミステリー

    麻耶さんらしい後味の悪さ。
    よくあるミステリーの様な理論立てて推理していく類のものではなく、救いもない。

    空間も理由もリアリティとはかけ離れていて、ふと現実に戻った時、こんなもの壊してしまえばいいのにと思っていたが、最後に本当に壊れてしまった。

    リアリティがないからこそ人間くさい。
    本当の殺人なんて至極ファンタジーなのかもしれない。

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    2015年12月19日