あらすじ
廃線跡、捨てられた駅舎。赤い月が昇る夜、何かが起きる――。17歳の不登校の少年が一人旅で訪れた町はずれの廃駅。ライターの男と待合室で一夜を明かすことになるが、深夜、来るはずのない列車が不気味な何かを乗せて到着し……(表題作)。温泉地へ向かう一見普通の列車。だが、梢子は車内で会うはずのない懐かしい人々に再会する。その恐ろしい意味とは(「黒い車掌」)。鉄道が垣間見せる異界の姿。著者新境地の鉄道怪談!
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Posted by ブクログ
鉄道ファンとしても有名な、新本格ミステリの旗手・有栖川有栖氏の手による鉄道怪談短編集。
怪談といえば怪談。ホラーといえばホラー。ですが、綺麗な情景と、残酷な運命が絡み合う幻想小説群、という表現が一番しっくりくるように思います。
全体的にどうしようもなく運命に流されていく不安感が感じられました。鉄道の、敷いてあるレールの上しか進めないという特質が、その不安感を煽るのかもしれません。
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推理小説家の著者の鉄道怪談集。怪談ということで構えていたが、怖かったのは表題作だけで、あとは怖いのが苦手な人でも読めるとおもう。恐怖要素の若干強いファンタジーとか、そういう感じ。「貴婦人にハンカチを」と「シグナルの宵」が好みの雰囲気。有栖川有栖らしいやわらかで美しい筆。
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岩手に住んでいた学生時代、終電の終わった人気のない小さな駅舎でストーブに当たりながら、大学の先輩と話こんでいたことがあった。結局現れたのは、家出を疑った近所の人の通報でやって来たお巡りさんだけだったけど、何故だろう、誰もいないホーム、田舎の小さな駅舎、自分以外姿が見えない車両、どこまでも続くトンネル、カンカンと響く踏切‥、鉄道に関するものは死者の世界に繋がっている気がするんだろう。
もしあのまま真夜中までいたら、私も作中の高校生のように、別の世界の何かが電車に乗ってやって来るのが見えただろうか。死者の世界を少しでも覗き見られただろうか。
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あまり短編は好んで読まないが、あとになって気付いた。だが、みるみるうちに吸い込まれていった。「最果ての鉄道」、「赤い月、廃駅の上に」、もいいが、とくに、「シグナルの宵」は次の展開がどうなるのかわからず怪談というテーマの中でわくわくさせてくれた。雨の中、現れた人物ーーいったい誰だ? そんなことを思いながら最後まで導いてくれた。他の作品も読んでみたくなった。
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日常とすぐ隣り合わせにある少し怖い幻想世界を垣間見る事の出来るような鉄道にまつわるホラー集。ムードたっぷりでどの話も楽しめるが、特にお気に入りは「密林の奥へ」「海原にて」「最果ての鉄橋」「赤い月、廃駅の上に」。電車で読むとあれっいつもと変わらない列車の中?と首を捻りたくなった(笑)。あっさりと読み易く気軽に楽しめました。またこういうシリーズを読みたい。
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有栖川有栖といえば本格ミステリというイメージですが、本作は違います。なにかしら鉄道に絡めた怪談集です。ただし、怪談集とはうたわれてますが、ちょっとだけ日常から足を踏み外してしまった怪奇譚という風情の短編が多く収録されています。1本1本のお話がよく出来ていて、ただ怖がらせるだけじゃなく、思わずじーんとしてしまうような泣かせる話やコメディタッチの話など作者の懐の深さを堪能できました。ぜひ、電車の中で読むことをオススメします。出来れば、都会を走っている鉄道ではなく、田舎を走っているローカル線の中で…。
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再読。鉄道が絡む物語ばかりの鉄道怪談短編集。思えば鉄道とは出会いと別れを想起させる。それを象徴するような話もあればしんみりとした話もあり、逆にわかりやすくホラーな話もあったりと鉄道怪談の中でもバラエティ豊かな一冊。
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鉄道をモチーフに綴られた怪談集。
王道の幽霊ものからホラー要素の強いもの、ファンタジックなものなどバリエーションに富んでいる。
それらに「鉄道」という共通項があるからか、不思議とまとまった印象の残る一冊だ。
中には大海原、船上が舞台に船の怪談話が語られる話もある。どこで鉄道とつながるのかと思ったら、ラストに登場したファンタジックでSFっぽくもあった。
思えば、幽霊という過去にとらわれたままの存在に時を超えて遭遇するのだから、怪奇現象も幽霊もSFの要素があるのかもしれない。
個人的に「最果ての鉄橋」の三途の川を渡るのに舟からフェリーになり、輸送力をあげるために鉄道になったという設定が好き。鉄道好きならではの発想だと思う。
建物が少なく、車窓からの景色もよくわからない夜に人気の少なくなった列車に乗っていると異世界に行ってしまうのではないかという気分になる時がある。
あの世や物の怪の世界など、鉄道というのは異世界とこちら側をつなぐツールとしてとても魅力的なのだな、と改めて感じられた作品だった。
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フツーに買ってしまったのですけど、まさかの怪談ヽ(〃Д〃)ノ
そう!ホラーじゃないのです(* ´ェ` *)怪談なのですよ
こうなんとゆーか、押しつけがましくない、そこはかとなく薄気味悪くなるような、怪談。ただ単に、死体や血ばっかりの幽霊や切断された体とか、そういうのを出せばいい!みたいなホラーとは大違いヽ(〃Д〃)ノ
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鉄道怪談集。
元々有栖川作品は、幻想小説っぽいのもあったり、
怖い話は上手かった気がする。
トンネルとか、扉とか、異界に通じるものがたくさんあるけど
鉄道もその一つっていう発想はなかった。
紹介文も「テツ怪談集」だし。
しかし夜に読むものじゃなかった。
怖い。
Posted by ブクログ
著者初の怪談集。全話共通して鉄道がテーマとなっています。
ふと思い立って旅に出たり、気の赴くままにどこかへ立ち寄ったり、期待と不安の狭間を行き来する鉄道というのは怪談にぴったりなのかもしれません。
怪談というよりは怪奇小説、幻想小説といった趣で、夜寝る前にふと思い出してしまうような物語でした。
単行本も文庫も装丁が寂しさと不気味さが滲み出ていて綺麗です。
ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【夢の国行き列車】何が怖いってこんな風に空しい人生を歩むのが恐ろしい。日本に活気があった時代、その象徴でもあったような万博の楽しく美しい思い出にしがみつき、現実から逃げて夢の国へ行ってしまった中年男の哀しさ。
【密林の奥へ】熱帯の木々がメキメキと育っていく描写は息苦しさを感じます。暑さと生命力に窒息しそうです。そんな中をひた走る列車。どこまでも続く線路。旅と冒険のワクワク感が不安に支配されていく感覚が、覚えがあるだけに怖いです。
【テツの百物語】鉄道オタク達が集まって鉄道に関する怪談百物語をする物語。それぞれの話オチのセリフもオタクらしくて、気味悪い雰囲気の中でクスリとしてしまいました。最後のサンダルの話が、怪談ではないのに怖かったです。
【貴婦人にハンカチを】これはちょっとしたいい話でした。乗り合わせた美人と何とかお近づきになりたいとソワソワしている青年が、最後にここぞとばかりにハンカチをだすのがかわいい。
【黒い車掌】どこかへふらり、という旅は未知への期待に溢れています。何か予期せぬことが起こるかもしれないという冒険心ですが、それが一歩間違うとこんな悲劇にでくわすこともあるでしょう。やっぱり家が一番だな、と言いたくなった話でした。
【海原にて】これはとても抒情的で美しい物語でした。どうやら近未来の世界。船の上で怪談が始まり、どこが鉄道と関係あるのだろうかと思いきや最後に登場しました。暗い海原で光り疾走する新幹線の描写はとても美しい。鉄道というのはなぜか郷愁を誘います。
【シグナルの宵】BARでの不思議で不気味な出来事。顔馴染みだがそこまで親しいわけではない、というBARでの常連客同士だからこそのお話です。
【最果ての鉄道】死後の世界が舞台ですがこれはちょっと楽しいお話でした。死した後のはずなのに、それでも死や未知の出来事を恐れるのが人の心情でしょう。
【赤い月、廃駅の上に】これが一番ホラーでした。そういうえば、列車というものは自分をどこかへ運ぶだけでなく、何かを運んでくるというものでもあるのですね。鉄道忌避というのもおもしろいです。不登校の少年の旅は爽やかな青春だったのにその末路は哀しい。
【途中下車】気の向くままに途中下車したり、車窓から思わぬものを見つけたりというのは楽しいです。しかしこれは話は不思議で寂しいお話でした。
「残りの人生早送りでいいよ」という男の生活が哀しいです。死に近づいてしまう彼を押し止めたのは自暴自棄の原因となった元妻で、彼女は見守っているんだなぁと思いましたが、結局彼女の迎えを心待ちに彼は生きていくことになるのでしょうか。