有栖川有栖のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『あなたたちも大人になったら、きっとあとの世代に託す問題を抱えるわ。だから、おあいこ。世界中どこでも、いつの時代でも、大人は子供にこっそりあやまっている。
『こんなことが解決できなかった。ごめんよ。あとはたのんだ』って。でも、同時にこうも思っている。『怒らないでほしい。君たちが子供のうちに解決させた問題もあるんだよ』それが永久にくり返されるのよ。人間がこの星に生きているかぎり。』
有栖川有栖初のジュブナイル・ミステリ。すごく良い!
ミステリ好きのための作品でもあるし、これからミステリを好きになるであろう人のために書いた作品でもある。
ミステリの面白さが詰まった作品! -
Posted by ブクログ
江神さんが、宗教都市神倉に消えた。正確には「ちょっと遠くにいってくるかもしれん」と残して消える。彼のアパートで見つけた事実をつなげて神倉へとレンタカーを走らせるアリス、マリア、そして二人の先輩。先輩二人は就活を休んでの参戦だった。宇宙人に救いを求める宗教に江神さんがはまったわけではないかと心配していた彼らは、紆余曲折の末江神さんと再会を果たすが、人類協会の総本部“城”の中で殺人事件が起こる。すぐに警察を呼ぶように説得するミステリ研の面々だったが、協会の人間たちは城を封鎖して自分たちの手で犯人を探し出すと言い出す。軟禁状態に陥ったアリスたちは犯人を突き止めることができるのか、、、
-
Posted by ブクログ
ネタバレ下宿のばあちゃんからの勧めで三重の小島に骨休めに来た火村とアリス。
ところが船頭さんの勘違いで違う島へ連れてこられた。
その名も黒根島:通称「烏島」
そこに集うのは孤高の詩人:海老沢俊と彼の崇拝者たち。その一人であるドクター藤井はクローン研究の権威であり、彼の技術を求めて時の人:初芝真路=ミダス・ジャパン社長がヘリコプターで島へ乱入。
烏が乱れ飛ぶ孤島、遺体、秘密の集いと本格ミステリーの材料をふんだんに散りばめて、火村とアリスの推理は進行する。
じっくり読もうとしていたのに、おもしろくてすいすい読んでしまった・・・!
2時間ドラマで映えそうな感じですね。いかがですか! -
Posted by ブクログ
大阪の街の中央を背骨のように南北に貫く上町台地。この界隈は四天王寺をはじめとする寺町であり、大阪が「宗教都市」であったことを色濃く物語る。大阪は起伏の乏しい街というイメージがあるが、そもそも大阪は大坂と表記されていたぐらい、ちゃんとした「坂」があることを本書で知る。
本書の舞台は上町台地の上に位置する生玉寺町と西麓に広がる下寺町、この2つの町を結ぶ「七坂」ー 真言坂・源聖寺坂・口縄坂・愛染坂・清水坂・天神坂・逢坂。
著者は取材を通じて知り得た七坂の秘められた物語や歴史的因縁を巧みに取り入れ虚実入り交じる幻想譚に仕立て上げる。上京を拒む新進作家・ミステリアスな猫・いわく有り気な探偵…等、趣 -
Posted by ブクログ
星5つにしない理由。所収短編「4分間では短すぎる」の中で、名作「点と線」のトリックの一部と犯人を明かされてしまったから。
あれあれ? 有栖川有栖ともあろう人が、こんなルール違反をしでかすだろうか。
真相:ページがくっついていて、肝心の注意書き〈『点と線』のトリックの一部と犯人を明かされたくない方は、次の節まで飛ばしてお読みください〉を見落としてしまった。また、195頁の望月先輩の台詞と198頁のアリスの心の声が自然に繋がっているのもいけなかった。
まあ、この齢まで「点と線」を読まなかった自分にも責任あり。
昭和から平成に移り変る時代の空気がスケッチされていて、ミステリ部分以外にも味