有栖川有栖のレビュー一覧
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短編集。「作家アリス」シリーズ21作目。
▼「高原のフーダニット」
以前、殺人事件の容疑者にされたときに、火村英生が真犯人を突き止めたために冤罪を免れた兄弟がいた。
大朔栄輔と光輔である。
ある日、栄輔から連絡を欲しがっているという伝言をアリスから聞いた火村は、さっそう栄輔に電話をかける。
栄輔は弟の光輔を殺してしまったと告白し、明日自首すると火村に言うために連絡してきたのだ。
誰かに犯行を告白することによって、自首する以外の道を潰そうとしたのだ。
言いたいことだけを一方的に話し、唐突に電話を切ってしまった栄輔。
だが、彼は自首をすることはなかった。
何故なら、殺されてしまったから。
いわゆるクローズド・サークルもの。
限られた人たちの中から犯人を探り出していく。
犯人特定の根拠が少し弱い気もするけれど、残された数少ない証拠から犯人をあぶりだしていく論理は相変わらず見事だ。
「ミステリ夢十夜」は短編ながらも読みごたえがある。
短いからこそキュッと締まった作品が多かった。 -
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余吾湖畔の別荘で所有者の妻が殺された。
警察は被害者と関わる人たちに聞き込み捜査を始める。
推理作家である空知雅也は、被害者が学生時代につきあっていた元恋人だったため、警察からの事情聴取を受ける。
被害者・恵に多額の保険金がかけられたいたため、恵の夫・柚木新一が疑われるが確かなアリバイがあった。
納得できない恵の妹・ユカリは、空知に一緒に事件を調べてくれるように頼みこむ。
新一と双子の弟・健一の完璧すぎるアリバイ。
多くの乗客が利用するなかのたったひとりの乗客のアリバイなど、本来ならばあやふやなものであるのが自然だ。
なぜか、新一も健一も、周囲の人たちにあえて強い印象が残るような行動をとっている。
そのため、複数の人間がふたりのアリバイを証言する。
推理小説において完璧すぎるアリバイは、すなわち犯人では?と疑われても仕方がない。
読みながら、事件はこの双子の兄弟の共同作業なのだろうなと簡単に予想ができた。
だが、この物語はそこからが面白い。
真犯人では?と予想していた兄弟のうち一人は殺害され、一人は行方不明となる。
いったい誰が、何のために、兄弟のうちの一人を殺したのか。
そもそも殺されたのはふたりのうちのどちらなのか?
結末は切なく哀しい。
そして「マジックミラー」というタイトルが、この物語にふさわしいものだったと納得する。
意外なトリックも含め、楽しめた物語だった。 -
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盛りだくさん!
こういうのを盛りだくさんと言うのだろう。
統一性が無いのが逆に良い。
あとがきでもう一度たどったが、初出、依頼された経由などもさまざまで、面白話やパロディなどが多い理由もうなずけた。
最近は、真面目というか、平坦な感じのアンソロジーや短編集が多い気がする。
叩き気質のネット社会のせいか…そういう時代になってしまったのだから仕方がないが。
『屈辱のかたち』…言われてみれば。当人にしか分からない。
『ざっくらばん』は、すっかり「ざっくばらん」だと思いこんで読んでいたため、「え?これ、別の意味があるの?オチは何?」と混乱したが、そういうことでした。
『怪物画趣味』ちょっと乙一っぽい。
『ジージーとの日々』ご本人は苦手とする分野のようなことを書いていたが、私は好きな話。
『恋人』有栖川さんは、山の中や湖の風景の描写が美しい。「スウェーデン館の謎」の冒頭も美しかった。
ガラスの檻の殺人/壁抜け男の謎/下り「あさかぜ」/キンダイチ先生の推理/彼方にて/ミタテサツジン/天国と地獄/ざっくらばん/屈辱のかたち/猛虎館の惨劇/Cの妄想/迷宮書房/怪物画趣味/ジージーとの日々/震度四の秘密/恋人 -
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ネタバレ大阪の七坂を舞台にした怪談集。ミステリィ以外、初めて読みました。二編目までは(後に、最後の九編までとわかる)誰かしら亡くなり、そのひとを想い、応え、化ける!?叙情豊かな筆致で不思議な読後感が漂う。三編目は結構悲惨な感じで亡くなった少年がキーだが、そう感じさせないのはさすがでした。四編目はネコがキー。ちょっと官能的でまた良い。五編目は憧れの人。六編目は妻子ある人を愛し、棄てられ自殺した人。探偵に誘われ、料亭へ。最後には店主の正体が分かり–––。ホラーなんだけどどこか優しく、ほっとするような感じ。七編目は小さいときから生きていないものが視える青年。八編目は松尾芭蕉の旅の日常からドッペルゲンガーを見、死に至るまでを描く。死を目前にして逆に胸が高鳴るとはどのような心境なのか。九編目は歌を嗜んだ、ある男。妻に先立たれ、偶然師と仰ぐ者の往生の地近くを訪れた。そこで見聞きしたものとは。各編の扉絵ならぬ、扉写真がこの作品を一層味わい深いものにしていると思う。
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ネタバレ『オノコロ島ラプソディ』『ミステリ夢十夜』『高原のフーダニット』の三篇からなる火村とアリスのバディものの短編集。
『オノコロ島ラプソディ』
淡路島に骨休めに来ていた火村准教授に届いた事件の報せに、仕事が行き詰っていたアリスが強引に息抜き兼助手業に押し掛ける、作者いわくドタバタミステリになる予定だったミステリ。
ちょうど家族で淡路島に遊びに行ったあと読み始め、おお知ってる場所だ!とひっそり楽しかったお話(笑)
『ミステリ夢十夜』
"こんな夢を見た。"の一文から始まるかの有名な夢十夜のアリス版。どの夢もきな臭い事件に巻き込まれるアリスは今日もたぶん変な夢を見て、友人の犯罪学者と解決しているのだろうか。ちょっとうらやましくもあり、職業病だよね、とも思い(笑)2,3,4,9夜がとくに好き。これが読みたくてこの本を読み始めたんだった。
『高原のフーダニット』
二年前に関わった事件で容疑を晴らした縁のある双子の兄のほうから火村に電話がかかる。自分は弟を殺してしまった、自首するつもりだが一日待ってほしいという彼の言葉を受けた火村。その翌日、しかし事件は思わぬ展開を見せる。兄も誰かに殺されていたのだった。
いつもと違う火村の犯人への怒りを感じて、読み応えのある一篇だった。
それにしても、アリスのやわらかででも矜持のある語り方がものすごく好きだ。火村と言う人が弱いとは思わないけれど、たしかにアリスの存在が安定の底辺にしっかり組み込まれていることが微笑ましい。それがアリスに伝わっていることが、微笑ましい。 -
購入済み
トリックが秀逸
殺人に至るまでの心理描写を緻密に…というヘビーなものではなく、トリックを見せるためのライトな短編小説。
「赤い稲妻」だけは被害者のアレの有無を確認してないと解けなかったけど、それ以外は読者に挑戦状を叩きつけるかのような(実際「八角形…」では挑戦状が出るが)火村同様、作者のニヤッとした顔が思い浮かぶ。
おいおいここまでヒント出してんのにわかんねぇのかよ?と言われそう。
むしろ言われたい。
どのトリックもどこかで使えそう(?)なのでメモ必須。 -
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今更ながら有栖川さん新シリーズ! 冒頭からの架空の日本史が新鮮で興味深いです。絶望的に歴史に疎い自分は、どこまで史実でどこから筆者の空想に突入したのか自信がありません(笑) しかし、北海道民の読者さんからは、この設定は反感を持たれかねないだろうなぁ……。
高校生たちの少し甘酸っぱいような会話はいまいちピンとこなくて、「やっぱり火村&アリスのコンビが良いなぁ」と思っておりましたが、お父さんと純による会話になると俄然テンポが良くなって、「これこれ、これだよ!」と胸中ガッツポーズです。
世界観を巡るストーリーとヒューマンドラマの割合が大きいので、本格推理の要素が少なめなのがちょっと物足りなかったかも。シリーズとしては、推理小説というより冒険小説になっていくのかな?