角田光代のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
人生にもらう贈りものにまつわる短編集。
贈りものとエピソードという形で
簡潔にまとめられているんだけど、
ほとんどの話で忘れられない景色が語られるのが
印象的だった。
満開の桜、商店街を歩く母のうしろ姿、
夕方の海、靴の並んだ玄関…。
贈りものって、品物そのものより、
それをくれた人、その人との関係を思い出すと
あとがきで角田光代さんが書いていらっしゃるけど
確かに、その品物はなくしてしまっても
心に残り続けるものがある。
強い感慨を持ったこと、
その時目で見たもの、肌で感じたこと、
そんな形のないものたちを象徴するのが
贈りものなのかもしれない。
贈りものをあげるのももらうのも、
自分は結構好きで、特にあげるのが好きで、
なぜかというと、
品物を選んでいる時相手はその場にいないわけで、
なのに贈る相手のことを思い出したり、
たくさん考えないと品物が選べないわけで、
物理的には共有されない、
精神的に強く結びついたその時間が
なんだかすごく尊いもののように感じて、
だから好きなのです。
この作品はもらう側の視点だから
贈りものを選ぶところは描かれないんだけど、
贈りもの以前の関係性が
強くクローズアップされてるのは一緒だなって、
やっぱり贈りものは、その人との時間など
形のないものの結晶だなと思うわけです。
各編の主人公の女性たちは
ままならないこともありながら
ひたむきに考えて、たくましく選んで、
贈りものをくれる人に支えられながら
強く生きていく。
僕ら孤独じゃない、人生捨てたもんじゃない、
この先茨の道でも、切り立った崖でも、
何とか歩き続けていけそうな気に
させてくれる作品でした。 -
Posted by ブクログ
結婚して家庭に入りたくはないけど、仕事をバリバリしたいわけでもない、ずっと今のままでいたい37歳ハナのまわりの変化と、変化を求めてくる社会への苛立ち
ずっとこのままでいたいと思ってるわたしにとってハナの心情行動すべてが身につまされた
あまりにも心情が一致していたので、後半からはハナの身の振り方に
なにも決めたくないわたしの人生の救いを見出し始めしまったので、
『まだ始まっていない希望にむかって恐れず頑張っていきましょう』と終わらせたのが、足バタで地団駄踏むくらいいやだったな
ずっとこのままでいたい誰にも迷惑かけてるわけでもないしちゃんと毎日働いてるのになんで結婚とか仕事とか決断をもとめられなきゃいけないんだろ
なにも考えたくないから逃げつづけてたことすべてに対峙させられて読み進めるのが怖いくらいに、心が乱れた内容でした。
PS
ストーリーとしてどうこうとかいえないくらい、
27歳のわたしの心情と一致しているので文庫本を買ってマーカーで羽毛立つくらいに線をひいておきましょう。
『何かが決定されることをわたし自身が拒んでいる』
結婚に思うところがあるわけではない、仕事に思うところがあるわけではない、私はただ、かわってしまう、ということがこわかっただけなのだ。金太郎飴の、外気に触れない真ん中に居続けたかった。
わ
『わたしはどこへも行きたくなかったんだな。そればかりでない、だれにもどこにもいってほしくなかったんだな』
-
Posted by ブクログ
主人公のハナは無意識の内に他人を見下しているのだなと思った。
友人・家族・恋人など自分の周りにいるあらゆる人を俯瞰で見て、くだらない人生だと冷めた目でみていたのではないか。
ただ、決して他人と自分と比較して自分の方が優れていると思っているわけではなく、あんな風になるくらいなら今のままでいる方がマシ!と思い込むことで自尊心を保っているようにみえた。
だからハナの周りには「仕事はきちんとしてるがいい歳した独身の女性」ばかり集まるのだと思った。まさしく類は友を呼ぶとはこのことだと痛感した。
自分もそうならないように常に他人へのリスペクトと感謝の気持ちを忘れないようにしたい。 -
Posted by ブクログ
つまんない。
なんか急にしらける。
そんな時は、とにかくやる理由がないし、しらける理由はたくさんあるし、それに何も困ってないし、居心地いいし。
なのに何故かとても切なくなる。
やりたいことをやる。
大人につれて、それは非現実的で、つらいこと、そしてこうあるべきという型にはめられた世界に飲み込まれていく。
ハナの価値観は、やることの意味ではなく、やりたい気持ちに対してまっすぐであること。眩しい!
でも本人は猪突猛進ではなく、居心地の良かった過去や見えすぎている未来に囚われて、進めない。
同じことをはじめても、そこで求める価値観によって、人それぞれ違う形になっていく。古着ではチサト、布絵本ではキリエ。知らない間に向かうべき方向性が異なって、息苦しくなる。なんか昔のロックバンドの解散理由みたい笑
新鮮で楽しかった日々が、いつから金太郎飴の毎日になったんだろうと、考えさせられる。
知らない間に、自分のコップの水がいっぱいになって、こぼれないようにそろそろ歩く毎日。そして巡らない水はどろどろに。
しかし、そこから不意に水がこぼれたら。
ハナは、母の死で不意に水がこぼれる。ずっとそこに在ると思い続けていた人を失い、喪失感からたくさんのことに気付く。そしてやりたい気持ちが湧き出てくる。
ハナとの対比として、キリエが面白い。キリエは、いっぱいの蛇口のついたバケツにどんどん湧き出る水が注がれているイメージ。ハナのコップから注がれた水は、あっという間に違う水と混ぜ合わされて、アイデアとして蛇口から放出される。
ハナは、母との別れ、キリエとの出会いの中で、挫折する。でもこれが、自分を見つめ直すきっかけになる。傷つきながらも、踏み出したことによる、新しい手触りに心が動いてる様子は、とても応援したくなる。
タケダくん、結婚してやる、なんて言い方はないよー。力んでると、変な言葉になってしまうのはとてもわかるけど。ゆるんだタイミングに出る本音の言葉のほうが飾らなくて良かったりするんだよなぁ。
その人は、その人になるしかない、か。
つまんないことを、切り捨てることはすぐできる。でも、はじめることで、わかっていたつもりでも沢山の不確実なことがあって、それに打ちのめされたり、うまく乗り越えたり、はたまたリセットされることもある。
変わることの怖さ、変われないことの切なさ、変わったことによる希望(とちょっと挫折)。
ちょっと頑張ってみようかな、と思える本でした。 -
上手くいったり、いかなかったり、幸せだったり、そうじゃなかったり、過去だったり、現在だったり、甘かったり、辛かったりの恋愛小説。ジュエリーショップで個々の話が交差するのが面白い。