角田光代のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
もう、何度も何度も考えたことのある「もしもあの時こうしていたら」、「もしもあの時もう一方を選んでいたら」をテーマにした短編集。登場人物達は当たり前だけど全然違う性格で、人生も、選択も違うけど全員がふとした瞬間にもしもを考えて、自分の選択を振り返りながら何かに気づき、後悔し、諦め、悩み、受け入れて生きていた。
私も読みながら、ひとつでも欠けていたら今がない。ああ、本当にそうだな、辛くて二度と経験したくない、出来ればしたくなかったあの出来事があったから今がある。と思ったかと思えば、いや、あれがなくても結局こうなってたんじゃないのか。と、思ったり。
読みながら自分も振り返っていたので勝手に忙しかったです。
もうそもそも選ばなかった方の人生なんてこの自分には経験しようがないんだから考えたって仕方ない事なのに、きっとこれからも私は何度も考えてしまうのだろうなあ…。と、一人一人の主人公のストーリーを覗きながらぼんやり考えた。
もう1人の自分よりもいい人生を送っていると思われたいと思っている自分に気づく、というシーンがあった。確かに、そうなのかもしれない。それと同時に選ばなかった自分にもちゃんと平凡な日々を送っていてほしいと、この小説を読みながら祈った。
平凡に生きていて欲しいとかつての恋人に呪いをかけていたが、それは何年も経つと呪いから祈りへと変わる。平凡を恐れていたあの頃の私は、今の平凡に生きている私を見てどう思うのだろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレお風呂に何日もはいらない女性、盗み癖がある女性、異常なほど物を買い込む男性、あらゆる迷信を信じて実行を強要する女性、スナック菓子を主食とする女性、半端なくお酒を飲む女性、言っていいことか否か判断できずなんでも(噂話し的な)言ってしまう女性、
いろんな性癖を持った男女の短編小説。
これが、めっぽう面白かった。
そんな奴、おるんかいな(特にお風呂に入らないレベルがまるでホームレス並み)と思うけど、著者の手にかかればいかにもいそうなのよ。
それぞれの性癖を相方の彼、彼女らは付き合い始めは美点にさえ見えているのよ、それ意外の相性は一緒に暮らすほどいいんだもの。
でも、それがだんだんもやもやしてきて、許容できなくなる日が訪れる、そのこちら側の哀しみが読んでいてぐっとくる。
角田光代はやっぱりすごいな。 -
Posted by ブクログ
ゴールマチ
大好きなドラマ、「大豆田とわこと3人の元夫」の、大好きなキャラクターかごめちゃん。この話のキクヨとチエちゃんは、とわことかごめちゃんみたいだなって思った。
かごめちゃんが昔から横断歩道のない道路を渡れなくて、とわこが喧嘩した時も一緒に手を繋いで渡ってあげてたのがとても印象的で、喧嘩ができて自分の恥ずかしいところをさらけ出して叱りあえる同性の幼馴染に憧れができたのだけれど、ゴールマチのふたりもそうだった。恋にゴールを見出せなくたって、何年経っても居心地の良い場所だとお互いに思っていられるような、そんな友人がいたら、まさにそこがゴールじゃないかって。
ドラママチ
これまでの話で一番自分の将来に近そうな感情で、実感を伴ってぐんぐん頭に入ってきた。主人公がバーに入って「若い子」を見て、「世界の中心が自分たちで、実際の姿と、思い浮かべる自画像とのギャップに気がつかない年齢。」と形容するシーンでがんときた。急に彼氏に冷めるとき、私でいえば、トルコアイスのお兄さんに弄ばれて鼻にアイスをつけた彼をかわいいではなく恥ずかしいと思ったとき、みたいな、そんな、育んできたドラマチックな愛が実はつまらないものだと気付いてしまう瞬間の恐ろしさには心当たりがあって、だからこそすごく怖くなった。自分が主人公でもなんでもなく世界のOne of themであることをリアルに実感してしまう時が怖いな。
そんな絶望に近い感情を感じさせておいて、後半大家の老婆が登場してから一気に光がさす。「デートは買い出しになり、ディナーは夕ごはんになり、王子さまは蛙になり、それがきっと私のドラマなんだろう。起承転結の、承をずっとリフレインするような、そんなドラマなんだろう。」この言葉が刺さった。承のリフレインを、歩いて5分くらいのところから始まる喫茶店巡りを、楽しめるような心を失ってしまっちゃダメだね。プロポーズはしてほしいけど。
ショウカマチ
流産の話が出てくると突然、ふたりのレスの話の重みが変わってくるからすごい。最初はあっけらかんとした性格にみえた主人公にどんどん厚みが出てくる感じ。夫婦の親密さの意味もちがった印象を与える。誰かの存在がきっかけだったとしても、結局立ち直るのは自分だよね、自分を助けられるのは自分だけ。はっちゃんはえらいなと思った。
「夫と私はかなしみに対する対処法がまったく異なるのだと、風呂場から聞こえてくるシャワーの音を聞きながら私は深く理解する。私は浮上しようとし、彼は底に足をつけるため潜る。私は手放そうとし、彼は自分のにおいをつけるように抱えこむ。私たちはたぶん、いくら相手を愛したって信頼したって、おたがいがそうされたいように助けてやることはできない。そうだ、私だって夫を助け、救うことはできない。」 -
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贈り物がテーマの短編集
贈り物は物品だけでなく、名前、体験、経験、記憶などの場合も
両親がつけた自分の名前、ランドセルの象徴するもの、引っ越しのときに母親が買ってくれた鍋セット、友人たちの手作りヴェール、子供の書いた絵、家族の作ってくれた料理 等々
贈り物の他にも、親子や夫婦など家族も共通点なのか?と思ったけど、「女性が一生の中で贈られるもの」がテーマらしい
言われてみればさもありなん
短編の構成として、生まれてはじめての両親からのプレゼントとしての名前で始まり、人生の最後にも残るものとしての名前で終わる構成は好き
全体の大きな流れとして、人生のステージの順になっているようにも思える
個人的に共感したのは、鍋セットと娘の結婚を機に離婚を決意した夫婦かな
一人暮らしをし始めてからずっと使っているもの
僕の場合は鍋セットではなく包丁
他にずっと学生のときから同じものはないかな
ヘンケルスの普通の包丁なんだけど、20年以上使っているものなので、自分の手に馴染んでるんですよね
離婚を決めた夫婦に関しては、娘の言葉と母親の両方に思い当たる節がある
僕自身、結婚式で両親に育ててくれた感謝と自分もそんな家庭を作りたいという挨拶をしたので、娘の方の気持ちがよくわかる
それと同時に、僕は離婚してしまった方なので、自分の娘に対しての申し訳無さもあるんだよね
読者の経験によって、どの話に共感するかは結構違ってそうですねぇ
あと、ちょっとしたツッコミを入れるとするなら
小学校で、家族をテーマに靴の絵を描いたからって親を呼び出すか?という疑問がある
もしそんな事で毎回呼び出されるんだとしたら、僕の場合は担任に対して塩対応の親になってるな -
Posted by ブクログ
京都の玉子サンド!角田光代さんが書くとなんと美味しそうなことよ!
京都には何度か行ったことがあるのに、そんな美味しそうなものがあるとは全然知らなかった。
次に行く機会があればぜひ食べてみたいなぁ。
そんなふうに思わせる、さらっとしているのに人を動かせる文章が書ける著者の力がすごい。
それから、ひとつひとつのタイトルも面白い。
「万能という恐怖」「ティッシュの善意」「ヌレギニストたち」「ホラーさん」など、内容を読んでから改めてタイトルを読むとなるほどー!と膝を打つものしみじみするもの、色とりどりだ。
あと、猫かわいい!
随所に潜むねこの影笑 -
Posted by ブクログ
ネタバレすっごく変な小説だけど面白かった。主人公の「わたし」は友人(?)のために部屋探しをして、「これぞ吉元がすむべき部屋!」という変なアパートを見つけて、そこの住人に近付いて、同棲までしちゃって、そのアパートに吉元を住まわせるために、色々変なことをしてだれかを追いだそうとする。かなりクレイジー。
そこに居座るために大学生のふりをして大学の講義に出たりもするけど、学生じゃないのに全然ばれなくて、クラスの飲み会にいつの間にかいても誰も疑問に思わなくて。笑える。でも大学生ってそんなもの。教授は授業で一回も顔をあげず、学生の顔を見もしないし。
イマドキの大学はそんなことないと思うけど(?)私が学生のときも、講義にやってきて、手にした原稿を90分棒読みして、挨拶して退場していく先生いたなー。今考えたらヒドイな。
こんな講義をうけても意味がないと思ってさっさと受講をやめた人と、棒読み原稿を必死にメモって暗記し、A評価もらった私、どっちがエライのか、いまだに悩む(笑)。全然小説と関係ないけど。
常軌を逸した「わたし」と「吉元」の行動はエスカレートしてゆく。「わたし」を疑いもせずに部屋にいれちゃう男も、まわりの学生も、アパートの住民もみんなちょっとずつ変で、だけど現実にありそうで怖いし、それが面白かった。