養老孟司のレビュー一覧
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ネタバレ【一言まとめ(キャッチフレーズ風)】
この本は、「効率化された社会の中で、人間らしさや関係性の本質を見つめ直す」ことを教えてくれる一冊でした。
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③【要約(内容の流れ・ポイント)】
本書は、大きく分けて以下の3つのポイントで構成されています。
1. **効率化社会への警鐘**
→ 著者は過去の失敗から気づいたこととして、効率化された社会において、人の話をじっくり聞く場は非効率と断じてしまう危険性を警告しています。現代社会では「役に立つ」「儲かるかどうか」が重視される傾向がありますが、その中で「ただいるだけの存在」に癒しを求める人が多い理由についても深く考察されています。
2. **他者との距離感の難しさ**
→ 著者は過去において、他者との距離感を間違えることが多かったと振り返ります。二人称関係(あなた、君)で聞くことで信頼関係を得ることができるが、相手に取り憑かれやすくなるという指摘は、人間関係の複雑さを端的に表現しています。小児科医の母親が決して我が息子を診断しなかったエピソードも、3人称で判断できず診断結果にぶれが出ることを理解していたからだと解説されています。
3. **日中文化の認識の違い**
→ 日中友好が困難な原因について、自然の中に人間があると感じる日本人と、人間を中心に考える中国人の認識の違いにあるとする解説は、これまで気づかなかった視点です。この文化的な違いが、両国の関係性に大きな影響を与えていることが語られています。
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④【読んで感じたこと・自分の意見】
特に心に残ったのは、「なるべくしてなった」という著者の言葉です。
私たちはつい「あぁすればこうなる」と社会を構築しがちですが、実際には多くのことが必然的にそうなったのだと気づかされました。この指摘は、理屈に囚われている自分の頭の固さに気づかせてくれました。
また、効率化された社会の中で「ただいるだけの存在」に癒しを求める人が多いという観察も印象的でした。役に立つかどうかが重視される時代だからこそ、何も求めずにただそこにいる存在の価値が改めて見直されているのだと感じます。
二人称関係の話も非常に興味深く、信頼関係を築くことと相手に取り憑かれることの境界線の難しさを実感しました。小児科医の母親のエピソードは、客観性と親密性のバランスを考える上でとても参考になります。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ★感想
バランス、リズム、円、生きる力とは。
それぞれのキーワードは点だが、
人との関わり(自分の捉え方、互いが楽、楽しい生活など)、
授業づくり等において、つながる感覚。
ちょっと長いけれど、やっぱり読書はいい。
★好き 引用 一部変更
・作曲の胆も閃きにあらず
P80 久石氏 いい音楽と悪い音楽はどこでわかれるんですか。
養老氏 いいといわれるものには「持続的である」という要素が入ってくることでしょう。その場限りのものはやっぱりよくない。どのくらい尾を引くか、というところが大事なんじゃないかな。(聴く側にとって、脳みその中で、ピンボールがあっちこっちに跳ね返る感じ)
久石氏 (作曲の仕事)そういう意味では、結構地道な作業なんです。
P104
文章の基本はリズムですよ。読みにくい文章と言うのは、根本はリズムが合わないんです。ラジオ体操でも音がついてリズムがあるからできる。音がなくてただ目で見て真似しろといっても同じようにできませんよ。(生物の基本は螺旋活動)視覚に現れるリズムって「螺旋」なんですよ。横からみると戻ってないけど、絡んだり下がったり・・・時計と同じ。解剖学者の三木茂夫先生はよく「形の真髄はリズムである」と。生物の基本にはすべてリズムがあるという。卵が親になる、その親が卵を・・・ただ同じところをぐるぐる回転しているわけではなくて、それが時間の経過とともに少しずつズレていく(例 進化)。ズレていく過程に関与するのが「時間」指揮者が指揮棒で円を描くように、リズムの基本は円。
P133 現代は、花鳥風月なく、すべて人間の世界。
自然は人間社会のちまちましたことなんか関係ない世界です。だからそこにふれることでバランスが取れる。
・人間は本来敏感な反応ができたはずで、それだけそうした感覚を持って生きているかが肝心(レヴィ=ストロース 野生の思考 みすず書房)人が持っているものに回帰するような日々の過ごし方というものを考え直さないといけない。文科省は「生きる力」といいました。言葉ではぴんと来ないでしょう?今の人は生きているという感じが見えない。自然に入っていくことが感覚のバランスを取り戻すことになる。
もののあわれとAI
P238人間は歓声と情緒がないと生きていけない
音楽を聴いて、なぜ人は感動するのか。音楽を感じるというのは、古い方の脳、前頭葉ではなく、もっと原始的な脳(大脳辺緑系)の部分に音は直接届いているから、人は感情を揺さぶられている
感動や美しいといった気持ち、数学や情緒的なものも。純粋理性みたいな部分だからピントこないかもだけど、数式を見て綺麗っていう人がいるのは論理だけじゃない、数学の中に情緒的なものがある。人間ってやっぱり完成とか情緒がないと生きていけないんだろうな。
★自分の引用メモを生成AIに要約してもらった
1. 感性と身体感覚の「土壌」を取り戻す
・構造物に囲まれて「触れる」ことが失われると、身体が置き去りになる
・「木の文化」のように、人の触感に合った素材との触れ合いが、身体と感性をつなぎ直す鍵
・感性を育てるには、五感に直接触れる日常が必要
2. 音楽・文章・生命の本質は「持続とリズム」
・良い音楽には「尾を引く余韻」がある
・生物も文章も「リズム=螺旋の動き」を持つ。形の真髄もリズムに宿る
指揮棒が描く円のように、時間の中で少しずつズレながら螺旋状に進化していくのが命の営み
3. 意識が暴走する現代、人は自然とつながる必要がある
・現代は人間関係中心になり、言葉や意識が肥大化して呪いのように深刻化(例:いじめ)
・自然の中には「人間の都合が及ばない中立世界」がある → そこに触れることで感覚のバランスが整う
・時々“人間の社会”を離れ、自然に身を預けることが必要
4. 自由と尊厳を守る「統合的な共生社会」のあり方
・パラリンピックの選手たちは「自力でできることはやる。助けは最小限に」
・健康な人ほど、手を出したがる=「何もしない不安」からの善意の押し付け
・「人生は作品」なら、その人の描き方に任せる自由を大切にすべき
5. 人間の根源には感性・情緒がある:AIとの対話
・音楽の感動は理性ではなく、原始的な脳(大脳辺縁系)に届く
・数学にも情緒がある:「美しい数式」に感動する人がいる理由
・感性なくして人間は生きていけない → AGI(汎用人工知能)に何が宿るのか -
Posted by ブクログ
特に心に残ったのは、「同じという機能を持った意識も、違うものがなければ具合が悪いと、暗黙のうちに知っているに違いない」という一節です。
私たちはつい「みんなと同じ」であることに安心しがちですが、実は「違い」があるからこそ社会も自分自身も成り立っているのだと気づかされました。
また、アートが「同じ」を中心とする文明世界の“解毒剤”であるという視点は新鮮でした。
理論や正しさだけでなく、感覚や曖昧さ、違和感を大切にしていい――そう思えることで、どこか安心した自分がいました。
養老先生の語り口は、時に数式や哲学、社会問題まで広がりますが、どこかユーモラスで肩の力が抜けるような読後感があります。
「正しさ」や「同調圧力」に息苦しさを感じている人にこそ、ぜひ手に取ってほしい一冊です。 -
Posted by ブクログ
現場からは以上です、みたいな内容でした(^.^)
養老孟司さんは東大病院に30年間も勤めていたのに、当時の権威主義に嫌気がさしていて、行かなかったのだが、2020年に心筋梗塞を発症させて入院した。その時のことは『養老先生、病院へ行く』に、その後の様子を『養老先生、再び病院に行く』として著されている。そして、今回は娘さんのマッサージにより肺がんが見つかった。
この本はがんになった本人だけでなく娘さんや担当医の先生たちによるエッセイ?報告?も入っていて、あっさりと読めた。養老さんの老いやがんに対する考え方もさらりと織り込まれていて、死に直結する病ではあるが、淡々と過ごしているように見える。また、リモート流行りではあるが、死を悼む事は、リモートでやる事ではないと断言している。直接の対話や体験の大切さを問うていると思った。
また、現在の病院は昔とは様変わりしていて、東大病院も権威主義ではないと若い医師は主張する。共著の中川医師は、「東大病院も変わった」と養老先生に言われて素直に嬉しかったと語る。患者の幸せを願って診療することが医師のつとめだろうとも。
この本は現在の医療現場の報告でもあるし、どのような診療を受けたいのか患者が選ぶことの大切さを訴えているように思う。 -
Posted by ブクログ
本書は2009年に刊行された『耳で考える——脳は名曲を欲する』を底本に、新装版として新たに2024年の対談を加えたものである。久石譲氏が自身のクリエイティブにおける認識や不思議に思うことなどを、養老孟司氏が読み解いていく。専門性が高い内容でありながら、養老氏の柔和な語り口と、久石氏の誠実な言葉によって読みやすく、和やかな対談となっている。
養老氏は著書も多くyoutubeでも講演などを観ることができるが、久石譲氏は世界的に有名だがメディアの露出は少なく、その人となりにも興味があった。音楽に対する姿勢や、ちょっとした裏話も多く語られていて、まだまだ読み足りないくらい楽しめた。作品制作についての話が中心ではあるが、アートの役割や社会の問題など今の時代について考えさせられた。特に養老氏の感覚器官は二重構造になっているという話は、面白すぎてひっくり返りそうになった。是非読んでいただきたい。
以下、読んだ人向けの感想。
養老氏の話は難しい言葉は使わないのに刺激的で面白く、賢くなったように錯覚してしまうが、いざ人に説明しようとすると途端に分からなくなる作家の代表ではないだろうか。物事の基礎がしっかりとできている人でないと、表面的な理解で終わってしまう。対談の中にも「クオリア」が出てくるが、言葉だけの説明では抜け落ちてしまう部分をガチガチに積み重ねてある。巻末の久石氏のあとがきにも、「もしかして養老さんの若いときはガチガチの理論派だったのではないか?」と書かれているが、音楽の理論を大切にしているからこそ、そこは気になったのだと思う。
作品を作るのは感覚や才能と思われがちだが、それは脳というブラックボックスの中身が見えない故の大きな誤解だ。感覚や才能で良いものが作れたとしても、それを続けることができなければ一発屋の偶然と言われてしまう。なぜその作品は素晴らしいのかを常に意識していなければ、途端に方向を見失うだろう。世界的な音楽家である久石氏が「良い音楽とは何か?」と養老氏に問うその姿勢が何よりも感動した。
両氏の言葉からは、基礎や論理が如何に大事かが伝わってくる。新たに収録された対談では、今話題のAIについて話している。久石氏はAIのクリエイティビティには疑問を持ちながらも、制作のツールとしては前向きに捉えられていて、人間が作品をつくることの意味をしっかりと持たれているように感じた。
久石氏は音楽の聴き方についても、「便利」が先行して「手間」を惜しむ風潮に警鐘を鳴らしている。これは自論で恐縮だが、最近レコードが流行っているのも、若者の流行とテレビでは報じられているが違うと思っている。レコードはほとんどの場合、家で聴くものだ。ちょっと良いオーディオを揃えるようになり、作業のBGMではなく正面に座って音楽を聴くようになる。メディアが変わることで、音楽との関係性が変わる。レコードの盤を買う時もそうだ。ストリーミングは指一本で聴きたい曲が出てくるが、レコードはまず店に行って、大量のレコードの中から自分の気に入ったものを探さなくてはならない。どれを買ってどれを諦めるかというのが、全てそのレコードの思い出になる。アタリもあればハズレもあるから、買うだけでも大きな体験になる。音楽を聴くだけが音楽の楽しみではない。養老氏の虫捕りも全く同じだろう。言葉の知識だけでは分からない。そこで沢山の経験を得るから、結果として音楽にも虫にも詳しくなる。もちろん別の理由として、生まれた時からインターネットがある世代はもう飽きていて、更にリメイクばかりで新しいものが出ないので、新しい感覚を求めて古いメディアに行き着いていることもあると思う。
養老氏曰く、ボタンを押せば出るは『脳化社会』の特徴らしい。ボタンを押せば最適な気温になり、料理ができたり知りたい情報が出るのも、社会が脳の都合でできているというのだ。AIによってボタンひとつで欲しい絵や聴きたい音楽を流せるようになったのは、脳化社会が進んでいるのだろう。お二人の話を読んでいると、海外まで行って虫を捕ることも音楽理論を学んで作曲することも、人生を楽しむために必要なことだと背中を押される気がした。