【感想・ネタバレ】こう考えると、うまくいく。~脳化社会の歩き方~のレビュー

あらすじ

“現代社会を快適に生きる答え”は、20年以上年前に出ていた!
「脳の世紀」といわれる21世紀社会の正しい生き方とは?
20年以上に行われた養老孟司氏の講演録だが、
それは現代を予見している内容であった!

本書は、20年以上も前に行われた養老孟司氏の講演録をまとめたもの。
「意識は、なぜあるのか?」「 人間は死んだら『モノ』なのか?『ヒト』なのか?」「人間は『人工身体』と『自然身体』の二つのからだを持っている」「 人工(脳)と自然(身体)との釣り合いこそ重要である」「 人間は、意識だけでできているわけではない」「『男』と『女』という言葉ができたとき、性の連続が断ち切られた」「人間は、自分ができることの説明ができない」「 子どもを育てるとは『手入れ』をすること」「『ああすれば、こうなる』だけになった現代社会」という9講演を収録している。

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Posted by ブクログ

いいお話だった。人間が頭の中で作り出した世界を人工の脳化社会と呼んで、自然の身体とはわけて考えていた。わかりやすい。田舎の自然が残っている不便なところに住んで、コンピューターの中の世界で生きるというのが、これからの情報化社会での在り方なのではないかというところは、自分の子どもにも伝えたいと思って、妙に納得した。

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2024年07月25日

Posted by ブクログ

人間は『人工身体』と『自然身体』の2つのからだを持っている。
『ああすれば、こうなる』だけになった現代社会。

上記2つの講演録を読み、我が身を考えると、なるほど!と感じる点がある。

産まれて間もない子供は自然に近い存在で、ああすれば、こうなるの法則は成り立たない。
現代の子育ては、核家族でワンオペである場合もある。本の中で、都市化された世の中では、(自然は排除される。)という話がある。子育ての煩わしさの根底にはその現実があるのではないかと感じた。勿論、全ての人が煩わしく思っているとは思わないが、人工(脳)であればあるほど、それが如実に現れているように思う。


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2024年09月13日

Posted by ブクログ

本書は養老孟司の各講演会の内容をまとめたものであり、一般向けに分かりやすく書かれている。そのため、今まで出版された著書の総集編的な性質を持ちながらも、新たな視点や整理が加えられている。唯脳論から脳化社会に至るまで、養老氏の思考が繰り返し、異なる言葉で解説されることで、読者により深く浸透していく構成になっている。

都市は脳化の産物であり、人類は環境をコントロールすることで文明を発展させてきた。その過程で、労働もまた人工的なものとなる。しかし、自然との対立という問題が生じる。異常気象や地震といった天災だけでなく、女性の懐胎や子供の振る舞いも自然なものであり、完全に管理することはできない。性的な行動もまた、人間の動物的側面として脳化社会の統制からはみ出す要素を持つ。

脳化の極致として都市が形成される。我々は人間が設計したシステムの中で生活しているが、逆に、人間が設計しなかったものを「自然」と定義する傾向がある。つまり、都市を作る際には自然を想定しているものの、完全に再現することはできない。例えば、アーケードは雨を避ける目的で設計されているが、雨そのものを無くすわけではない。

本書の一部で、都市化が「女・子ども」にとって不利であるとされる。これは、女性が妊娠や出産といった生物的条件を持つため、どれほど都市環境に適応しようとも、身体的な変化を避けることはできないという視点からの指摘である。しかし、現実には都市は医療やインフラの整備により、むしろ女性にとって安全な環境を提供している側面もある。したがって、「都市=女性にとって不利」と単純に結論づけるのではなく、社会制度や労働環境のあり方と絡めて議論すべき問題である。

社会は脳化されており、その脳化の中には、可能な範囲で自然が組み込まれている。しかし、我々の動物的本能のすべてが馴染むわけではなく、脳化社会の枠組みの中で制御される部分もある。資本主義はその一例であり、労働力を最大限に活用するためのシステムとして、動物的欲求を統制し、合理的な枠組みに組み込もうとする。しかし、支配や従属といった関係性自体もまた動物的な本能に根ざしており、「脳化」という現象には新皮質による合理的な制御と、辺縁系や古皮質が持つ感情や本能が併存している。この複雑な構造が、都市や社会の中でさまざまな形で現象として表れているのだ。

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2025年02月24日

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