あらすじ
解剖学者・養老孟司氏と作家・冒険家のC・Wニコル氏が、都市生活によって衰えた日本人の身体をテーマに、子どもたちのこと、食べるということ、極地での気づきなどさまざまな問題に切り込んだ対談集。
アレルギーになる子ども、災害時に火をおこすことが出来ない大人たち。便利になりすぎた都市生活によって、あまりに身体を使わない世の中になっていないだろうか。そして自然と触れる機会もなくなった現代人は、嗅覚、免疫といった身体機能も衰えている―。そんな問題意識から、話は広がっていきます。
【1章 森と川と海のこと】
荒れた森を再生する/日本の杉は苦しがっている/馬に木を運ばせる/木の力、森の力/森と川、そして海のつながり/川は「流域」で考えよう
【2章 食べること、住まうこと】
田舎の力/都会の罠/虫は貴重なタンパク源だった/何でも食べられるのは「貴族」/木を生かす適材適所/原発事故のあとに残された難問/人間関係を保険で補償する時代/経済成長とはエネルギーを使うこと
【3章 子どもたちと教育のこと】
「ほったらかし」が一番/二人の子ども時代/母親の世界から飛び出せ/ゲームより実体験/自然が足りないと世界は半分になる/新しいエリートをつくる/体験を通すと生きた知識が身に付く/森で授業を/小さいときに触れるべきもの
【4章 虫のこと、動物のこと】
生き物の分類は分ける人によって変わる/ゾウムシは中央構造線を知っている?/オスは時々いればいい/ハチに刺されて死ぬのはなぜか/クモに名前をつける/いなくなった赤とんぼ/生き物は複雑なシステム/キリンの首はなぜ長い/熊との付き合い方
【5章 五感と意識のこと】
ハエも用心するクサヤのにおい/顔色をうかがうための進化/意識はコントロールできない/人が失った絶対音感/山の声が聞こえる/銃を撃つ前に逃げるカモ/夢と意識/時間と空間/「意識の時代」と「身体の時代」
【6章 聞くこと、話すこと】
英語を強制されたトラウマ/気持ちと結びつく日本語/訓読みは難しい/主語の有無は文化の違い/自我の目覚めが遅い日本人/日本語と感覚/片言の中国語/「暗いところ」がなくなった/言葉がなくなると存在もなくなる
【7章 これからの日本のこと】
子供も、大人も外で遊べ/若者に責任を持たせよ/日本人に覚悟はあるか/言い訳の多い日本人/もう一つ先を考える/人間は「状況の産物」である/日本人よ、自分を取り戻せ
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
良書!
自分は都会暮らしを一時した経験していないので書いている内容のことはよくわかる。
しかし現在都会に住んでいる人や経験が長い人にとってはあまりピンと来ないのだろうと思う。
そうした所で見方や感じ方が変わるのも含めて面白いと感じる。
Posted by ブクログ
昆虫を追って暮らす解剖学者と、黒姫の自然と共に生きる作家。現代の日本人が失ってしまった「身体感覚」の大切さを語る。
そもそも人間は体内にだって無数の細菌を飼っていて共存しているように、常に自然環境や他の生物と密接に生きているはずであるのに、そのつながりを否定してしまう「都会」という生活環境が、さまざまな問題を生んでいる。もちろんそのくらしは快適で、人間は危険や苦しみを避けてここに至ったのも事実なんだけれど、行き過ぎた都市化はやはり問題を生じている。
養老先生が提唱しているように「参勤交代」〜都市と田舎を強制的に行き来させるような施策も、意外に面白いのかも知れない。私自身、田舎暮らしにはおおいに興味を持っているのだけれども…。
Posted by ブクログ
沿岸漁業を生かすためには、川から直さなければなりません 海は7つもありません。一つです 私は愛とか、友情とか、勇気とか、目に見えないものが一番力があると分かっている 昔の先生は子ども中心だったけれど、今は教育制度を維持するために働いている 「誰かがだめになっても、俺は残る」という戦略 経済成長っていうのは、基本的にエネルギーの消費を増やすことなんだ 天下無敵というのは、天下に敵がいないということ 「シャンタラム」新潮文庫 何故我々は存在するのか? 人間が地球上すべての生き物とDNAを共有している
Posted by ブクログ
C・W・ニコルさんと養老孟子さんの対談の本だった。自然、森、第一次産業の重要性。自然の中で体を動かすことで、自分の体の動かし方を知ること。自然の中で須吾事によって、本当の生きる知恵をつけること。体を動かして、実際に経験すること。実体験の方が大切。
建築を立てるのも、木そのものの特質に沿って切断したり、その木の特質に沿って、家を建てる。
それにしても、C・W・ニコルさんは、とても興味深い人だ。ケルト系神道のクリスチャン?アラスカや北極やエチオピアでのフィールドワーク、面白い経験をしている人だ。
養老さんによると、若い人は、田舎の田舎に行くと、年長者や年上がいないから、自分たちの好きなことができる。
・感覚は違いを識別するもの。
・ウェールズ語。
・日本語は感覚的。感情に近い。
・人間は状況の産物。
・いざという時に命をかける。養老さん曰く、戦後の日本の教育で一番抜けてしまったこと。
・同じ自分にこだわらない。
Posted by ブクログ
【情報偏重社会と自然】
先日『風を見た少年』を読み、もう少し読んでみたくなりました。今回は養老先生との対談。
黒姫でアファンの森を運営していたニコルさん。
今の日本の状況を否定するのではなく、可能性を信じているからこその愛のある言葉と行動の数々。
2015年に出版された本。当時はSDGsの前のMDGs時代。
今では主流メディアでも話される持続可能な発展、この対話は本質をついているように思った。#海の豊かさ #SDG14 #陸の豊かさ #SDG15 も、全てつながっていることが強調されていると思いました。
例えば、
システムに組み込むこと。
竹を伐採するという行為について、その切った木をどうするかという考え
を明確にせずに行っても持続的ではない、と。
流域で考える。ー「海は7つもありません。1つです。」エチオピアに27歳で行って国立公園の設立に取り組んだニコルさん。ナイル川の水資源の取り合いに触れる。
子どもと教育についても。
公園にはコンセントがないから遊べない、という子ども。
「子どもから自然を取り上げると世界が半分になる」と。
感覚と意識。秩序と変化。
感覚は違いを識別するもの。意識は同じにする能力。
視覚・聴覚を共に理解するため、目と耳が折り合う、ために、意識が作り出した時間と空間という概念。
意識は変化しないものしか扱わない。今の時代の人は、変化していくものを扱うことが下手、という。身体感覚がおろそかにされている生き方なのだろうと思う。
人間は状況の産物。
成功体験が邪魔になる。
同じ自分にこだわらない。
対談を読んでいると抽象的なこともとても自然に入ってきて、とても興味深く勉強になりました。
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自然の中で、子どもたちが、五感を使って遊ぶことの大切さを説いていた。ゲームばかりで遊ぶのでは脳の発達によくない。大人も子どもも、身体の感覚を呼び覚ます自然ともっと触れ合おうと呼びかけていた。私も、公園の散歩やガーデニングなどに励んで、自然と触れ合う機会を増やそうと思った。
Posted by ブクログ
極地での経験と自然に向き合ってきたニコルさんと、
戦争前後の日本人とその環境の変化を肌で感じるの養老さんが、
戦後日本の自然環境を経験ととも懐古しつつ、現代人への提言を述べる本。
1+1=2が納得できない人へ。
身体を回復するというのは、違いを感じ取る感覚を取り戻すところから。
ヒト同士、都会の中のルール。存在と言葉を同じものと捉え、概念的に組み合わせ処理していく。
身体的、あるいは精神的にも本来の動物として感覚は、ずっと変わらない脳と身体に依然残っている。
養老孟司さんの、人の特徴的な力の一つは、同じにする力を持っているというのは非常に頷ける。
在るものは、全ては違うのに、同じだと考えてしまう。これが行き過ぎると、周囲がすべて数値化できたり、同じもののように感じてくる。
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ぶっとんだおじさん2人の対談なので、話半分で受け取った方がよいですが、地震で避難しているときに火の起こし方を知らなくて凍死した話や、安全にうるさい人が増えてる(から子どもに刃物を持たせないとか公園から遊具が撤去されるとかいうことが起こっている)けど、実は一番危ないのは自分自身という自覚を持った方がいいという話などにはうなずけた。
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20151213 ほんの50年前の日本に戻る事。簡単なようで難しい。便利なとこと必要な不便を正しく判断できる感覚が必要。この先の自分にできることが何かあると考えさせられた。
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タイトルから内容を想像して手に取り、果たして期待した通りの話。でも、2人の年配の男性が、自分たちが子供の頃はこうだった、あの頃はよかったが今は駄目だ、を延々と繰り返しているようにも思えて、本筋では共感しつつも、引いた目でバランスが良くないように思った。
一つ印象に残ったこと。今でこそ、森を守ろう、自然と共生しよう、といってもある程度共感される流れもできてきている。が、高度経済成長まっしぐらの日本で、森を守ろうと1人で国などを相手に闘ってきたニコルさんの日々の壮絶さは、ちょっと想像を超えていると思った。「鬼」と言われた、というのも肯ける。
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対談本です。日本の森や文明、五感教育の話まで、ポンポン話しが展開して、さらりも読めます。お二人の幼少期の話もあったりして、古き良き時代の話をご近所のご年配の方から聞いてるように思えました。悪く言えば、ご本人達の自己満足本のようにとらえることもできます。わたしは年齢的に共感できることが多くて好きです。
Posted by ブクログ
養老孟司さんとC・Wニコルさんの対談本。
自然の中で生活し、身体感覚を保つ。思考は身体活動を通してなされる。
感じるのは、現代風潮が過剰に意識だけを大きくし、万能感を充足させているということ。
表に出よう、土の道を踏みしめよう、風に吹かれよう・・・。時には自転車に乗り、自分の無力さを思い知れば良い
昭和に育った僕らには、多くの部分で共感できる内容だ。
Posted by ブクログ
東日本大震災でせっかく津波から助かったのに、そのあと低体温症で亡くなった子どもとお年寄りが多かったという。それは火をおこせなかったから。燃やすものはたくさんあったはずなのに、海水に濡れたから燃やせないって思い込んでいたから
(CWニコル P76-77)
危機にあって必要なのは知識よりも知恵。ときに単なる知識は思い込みを生み、非常時には役に立たないばかりか、かえって命を危険に晒すことにもなる。知識は体験(=身体的経験)を重ねて知恵となる。人間は火の使用をもって他の動物と区別されるというが、火おこしの知恵を失った現代人は原始の祖先より進化したといえるのか?。。。俺も含めて、なんかヤバイな。。。そんなことを思った。