斜線堂有紀のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ失踪した霊能詐欺師・子規冴昼を追ってたどり着いた先は、本物の霊能力者たちが暮らす街だった。
異世界で繰り広げられる特殊設定ミステリ。
系統的には異世界転生の流行の一端になるのかもしれない(転生はしないけれども)。
登場人物の多いミステリが苦手なので、大掛かりすぎず且つパンチの効いた設定は読んでて楽しかった。
要は何故あんなにも冴昼に執着するのか。勿論冴昼の持ち前のカリスマ性だとかは一因だけれど、全てを理屈で説明しろというと難しい。なにしろ要があのスペードの17に感じたのは「天命」とかいうもので、明確な根拠なんて必要ないのだろう。理詰めのトリックと話術を駆使するメンタリストが「天命」だなんて、案外ロマンチストだ。
一方で、そういうものを簡単に信じたりしないのは、むしろ冴昼の方だ。彼はあの日引いたスペードの17を「偶然」としか思っていなかったし、だからこそ要の執着を信じ切れずにいた。1話で「頑張って無実を証明しないと、大事な俺が死んじゃうよ」なんて笑ってみせておいて、要にとっての自分が「大事な存在」でなくなることを恐れていたのだから、ほんとに魔性だ。ずるい。
それがエピローグで語られるのもずるい。
基本的に要視点なので、1話と2話は要から冴昼に対する執着の方が大きいとばかり思っていたのに、全くそんなことはなかった。冴昼も要のことを、少なくとも殺そうとするくらいには大好きじゃないか。それを知っていて冴昼にバイクの運転を任せた要に更にクラクラした。
序盤の電話の謎も残されていることだし、恐らく続きが想定されているのだと思う。栄光と空白と異世界への転移を経て、「特別」を確信した2人のその後を楽しみにしたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前作から束ちゃんの意味深な発言が気になっていたので、(ないことはないだろうと思っていたけど)掘り下げがあってよかった。
前作の感想でも少し書いたけれど、嗄井戸と束ちゃんだけだったなら、お互いの弱さを身の内に隠しつつ、過度に踏み込まず、親愛の情を伝えることもなく、「引きこもりと雇われのフリーエージェント」のままで停滞していたのだと思う。彼らは現実がそう上手くいかないことを誰よりも知っているし、未来の希望を掴むよりも今ある僅かな幸福を壊したくなかっただろうから、何も変えないことが最適解だ。
だからこそ、二人が大切にしてきた「停滞」を奈緒崎がぶち壊しにきてくれてよかった。お人好しで楽観的な彼が現れないと、その役割は誰も担えない。
そんなヒーローの現れた理由が「留年の危機」という間抜けなものだったのもよかった。欠点のあるヒーローの方が、かえって愛おしくなってしまうものだと思う。
ところで、奈緒崎はもともと素直に口に出すタイプではあったと思うけど、今回やけに価値観の言語化が上手かった気がする。小宮先輩も言っていたけど、こんなに格好いいことをスラスラ語れるキャラクターだったろうか。3巻もあれば成長するのかも。
誠実さに欠ける警官が私の倫理観に合わなかったのと、悪人とはいえ人が目の前で死んでいるのに、奈緒崎なんてその死に結構関わっているのにいい感じの雰囲気になることに少し困惑したけれど、お姉さんのお墓参りに行けたのは素直によかった。今度は3人で舞台なんかを観に行って、帰りに喫茶店で感想を話し合ったりしてほしい。 -
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うまくまとめましたね、と思いました。
それにしても、登場人物がずいぶんと信頼でつながっているものだなあ、と思います。美しい信頼ではあるのですが、ここまで育ったのはどの時点かな?まあ、過去2冊でいろいろなことがあったから、といえばそうなのでしょうね。
映画が中心の話だけあって、登場人物が交わす会話がしゃれているように思います。このセリフ、いつか使ってみたいという気にさせます。文章内で使われている漢字も普段は見ないようなものもあって、これもまた良い雰囲気を出していると思います。
いらないお世話の部類ですが、言葉に思い入れがある文章だと思いながらP.190の「掻き入れ時」は書き入れ時の誤りかな、とか、274の「右利きなだ。」も脱字かな、とか、変なところで引っかかってしまいました。ストーリーに起伏とスピード感があり、どんどん読み進めていたところで変なことで立ち止まらせられたのがちょっと残念でした。 -
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「僕の恋人は、自ら手を下さず150人以上を自殺へ導いた殺人犯でした――」
表向きは誰からも愛される心優しい美少女・寄河景。しかしその正体は、150人以上の被害者を出した自殺教唆ゲーム『青い蝶』の主催者だった。
彼女の異質さに気づきながらも「世界が君を赦さなくても、僕だけは君の味方だから」と愛することをやめられなかった幼なじみ・宮嶺の視点で、連鎖する悲劇と狂気の愛が描かれていく。
美しくて残酷な少女・景の存在感には、抗いがたい魔力があり彼女に釘付けにされ、甘美な毒のように破滅へと突き進んでいく宮嶺の姿からは目が離せない。
ただ、正直なところ途中の心理描写や展開にはまどろっこしさを感じる場面が多く、何度、途中で読むのをやめようかと思ったかわからない。警察側の動きがもう少しスピーディーであれば……というもどかしさも拭えない。
だが、最後まで読み終えてみると「このラストを導き出すには、警察の存在はある意味邪魔だったのだろう」と納得がいった。
警察の捜査を前面に出さず、あえて二人の閉じた領域に絞って描いたからこそ、あの結末と歪んだ絆の濃密さが生まれたのだと思う。
途中の冗長さを乗り越えた先にある締めくくりとしてはよく出来ており、納得のいく着地だった。手放しで爽快と言える作品ではないが、人間の業や共依存の恐ろしさを強く刻み込まれる一冊だった。 -
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ネタバレ「脱出」をテーマにした小説集。読んだことのない作家さんに出会いたいのと、斜線堂先生を読みたくて。
「屋上からの脱出」意中の人を射止めるために危機的状況を作るのは、健気でかわいいまである。中学生らしいちょっと拙いトリックも、もはや微笑ましく感じてしまいました(笑)お幸せに〜。
「なとりの森」神隠しみたいだなと思いました。無事に戻ってこられてよかった…。
「鳥の密室」魔女狩りモチーフ。戯曲「るつぼ」を思い出しました。魔女なんてほんとうはいないんだろうな。私欲のために他人を平気で犠牲にする人への報いとして最高なんじゃないのと思いましたね。恐ろしいだろうな。
「罪喰の巫女」戦後日本が舞台。日本語なのにちょっと読みにくくて大変だけどおもしろかった。そして叙述トリックにまんまと引っかかりました。救いがなくてすごい。
「サマリア人の血潮」特別な血を持った少年が脱出を試みる話。記憶喪失になっていて、というところから始まりいくつも疑問点や不審がありそれを解いていくのが楽しかったですね。
同じテーマで書いても全然違う話になるから作家さんってすごいな〜って思います(当たり前) -
Posted by ブクログ
【あらすじ】
「宮嶺は私のヒーローになってくれる?」
百件を越える犠牲者を生んだ自殺教唆ゲーム「青い蝶(ブルーモルフォ)」のゲームマスターは、宮嶺望(みやみねのぞむ)が幼い頃から想いを寄せている大切な人・寄河景(よすがけい)だった。嘗ての誓いを胸に、犯罪行為を知りつつも景に寄り添い続ける宮嶺。彼がどうしようもなく抱かずにはいられないこの「愛」は何処から来て、何処へ行くのだろうか。
【短評】
書店のポップか何かを見て、予てより気になっていた一作である。
悪くはないのだが、全体的に軽すぎた。ライトノベルレーベルを捕まえて軽さを憂うのは自分でもどうかと思うが、本作が取り扱うテーマを鑑みると、軽さがプラスに働いているとは言い難いと思う。
本書が最後に投げ掛けてくる「問い」は、なかなかに面白い。この「問い」をどちらと解釈するかによって、本作は色合い意味合いを大きく分かつことになる。興味深い試みだ。しかしながら、前述の通り本作は軽くそして薄い。さらりと読み下した上で、最終的な色が可変と来ると、全体的な印象として薄味に過ぎる。
私は答えを明示すべきだったと思う。結びの文はかなり好みだったので、妙な余韻を企図せずに、純愛方面に舵を切ったほうが良かったと感じた。私は甘いのが好きなのだ。
(アップロード後に追記)
…というのは案外無視できない側面で、私の個人的な嗜好ゆえに、とある「方向性」を拒絶しているのだろう。そのような含みを持たせることを許容出来ないのだろうと思い至った。自分というものに関する新しい発見であった。
さて。「自殺云々の説得力が薄弱かつやや奇矯」とか「タイトルが謎」とか他にも言いたいことは山と浮かぶなか、声を大にして言いたいのは恋愛描写の既視感である。この物語は寄河景をいかに魅力的に見せるかに全てが掛かっていると言っても良いのだが、どうにも類型的な美女という印象が先行した。どこかで見たことがある。
彼女の二面性と抗いがたい程の魔敵な魅力が、見たこともない形で描写されていたのならば、この物語はかなり良い着地を決めたのではないかと思う。
色々と述べたが、最終的な評価はティーン向けかしらといった評価に落着した。
ただ、この物語をどのように解釈したかを誰かと語り合いたい程には興味を唆られる一作であった。