あらすじ
二人以上殺した者は文字どおり地獄に堕とされる世界。探偵の青島を常世島で待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった
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Posted by ブクログ
とても楽しく読めた。ミステリもぶっ飛んだ設定であるのに本格的で面白かった。この物語で言う天使は異形で不気味な存在で、私たちみたいな人間はそれもたまらなく好きなのです。
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タイトル買い。特殊設定と事件の背後にあるストーリーがとても良くて序盤から一気に引き込まれた。クローズドサークルミステリーは定番だけど、特殊設定がよく効いていて面白い。探偵役としては珍しく(?)主人公が善良で健気。ヴィクターのくだりが好き。
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特殊設定だけど、クローズド・サークルかつ本格ミステリーでとても面白かった!
2人以上殺した者は「天使」によって即座に地獄に引き摺り込まれるようになった世界、という設定。この設定がとてもお上手。
死刑執行ができなくなる。罰せられないから1人なら殺してもいいだろう。2人殺すならせっかくなら大人数巻き込んだ方がお得だ。
こんな思考も人間の真理をついているようで、なるほどなぁという感じ。この設定ならでは。
青岸がこの事件をきっかけに立ち直ってくれて良かった。
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特殊な環境下、自分たちが知るのとは大きく変わってしまった世界における本格ミステリ。
最後まで楽しめた。
楽しめたと同時に、切ない気持ちにもなった。
正義は必ず勝つのだろうか。
そうあってほしいと願うのは、きっと自分だけではないはずだ。
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文庫化したので速攻で手に入れて読んでみた。
斜線堂有紀さんを読むのはこれで2作目。
2人殺すと“天使”により地獄に堕とされる世界線。
そんな中、孤島で起きるはずのない連続殺人が起きてしまい…
あらすじから既に面白いのは確定だなと思っていましたが、やはり面白かった。
2人以上殺せないから良いように感じるが、この仕組みを悪用する奴はいるし、それに巻き込まれる”善人”にやるせなくなってしまいました。
主人公の青岸も、天使により様変わりした世界の黒い部分の犠牲を受けた1人。
バックボーンがしっかり描かれていて、感情移入してしまいました。
ハッピーエンドとは言えないのかもしれないけど、結末がとても好きです。
いろんな意見があるのかも知れませんが、作中で宇和島が言っていたように、青岸の推理はある人を”絶望”から救ったと思います。
絶対に覆せない不条理にも、探偵としての使命を全うする青岸に胸を打たれました。
本格ミステリでありながら、ここまで切なくエモーショナルな気持ちになるのは初めてかもしれません。
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新しい本格ミステリーだった。
犯人はおおかた察しがついてしまったが、メッセージ性や世界観に引き込まれる作品。
斜線堂先生の作品は文体が読みやすくて好みだ。
Posted by ブクログ
【注意!】
本感想には、類似構造だと私が感じた作品を挙げています!
読後メモのコピーと読後の+a
◆序盤
「それは探偵がやることじゃない警察に依頼することだ」って自覚あるくせに、結局は何故か警察が依頼するようなことも、探偵がやる方向へと特に整合性もなく無理やり持っていくのが「そこの感覚を守る気があるのかないのかわからなくてノイズ」ではある
◆終盤
自分がもうすぐ地獄行き確定ならそのままor自殺するかという話で、「当然自殺を選ぶよな」と話を運んだのが「ちょい強引かな」と思った。
読者側としては、天使の地獄引きずりがいくら恐ろしいことだと描写されてても、親族が殺されるとかじゃないから「いやどっちでも大差ないように思える、人による程度じゃないかなぁ」と感じる。ここは「おそらくだが彼は…」で心情を断定ではなく類推する形で良かったのではと思う
◆読後感想
ずっとダンロン2(5章)みたいなことをやっている話。
Posted by ブクログ
ミステリーは好きだが、現実味のない設定があまり得意ではなく、自分から手に取らなかったが友達からのオススメで読んでみた。
天使の存在や、生態系などがしっかり書かれていたので、スッと入ってきて読みやすかった。
2人以上殺すなら多いほうがいいという、心情心理になってしまう事も、この世界ならしょうがないのかな?と思ったり悲しくなったり、、
連続殺人のトリックが暴かれていくところがすごく読んでて楽しかった。
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天使が降臨した世界で、起こるはずのない連続殺人が起きる、という特殊設定ミステリ。
2人以上殺したら地獄に落ちるという設定が面白かった。特殊設定も活かしたトリックもよかったけど、登場人物たちが尖りすぎてて、好みは分かれそう。キャラクターもの好きな人は好き。
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ペロッと読めちゃった!ちゃんと面白かった!!
特殊設定ミステリ。斜線堂有紀はこういうの書くのね。ちゃんと本格派らしく、館内間取り図あり連続殺人あり。ハウダニットが主で、ホワイダニット交じり。
①直接手を下さずに地獄行きを逃れる②天使が死んだら灰になるのを利用して、井戸の底をかさ増し
ちゃんとミステリだったけど、世界観や書き口もおもろかった。浅学にて元の本(『地獄とは神の不在なり』)を知らず…今から読みます!
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2人以上殺した者は天使に地獄へと引き摺り込まれる世界でのクローズド・サークルもの。
どうやって連続殺人を起こしたのか誰が犯人なのかと最後まで楽しめたけど、基本的には2人以上は殺せない世界設定なので、次は自分では・・の恐怖に怯えたりするところがないのが少々物足りなかった。
自分はクローズド・サークルものの恐怖に慄く人たちが見たいらしい。
Posted by ブクログ
天使が降臨した世界という特殊な舞台かつ、二人以上殺せば地獄に落ちるというルールの中で行われる殺人
トリックの巧妙さも面白かったけど、過去の傷と葛藤する主人公や主人公に期待して協力していく登場人物が印象的だった
必ずしも善人が救われない世界での殺人と探偵の存在意義が問われる
天使の姿が不気味なところも考えさせられる部分だと思った
ただ、前を向いて生きるには主人公の傷が深すぎるよなぁと思った
そこを含めてすごく良かったとは思う
Posted by ブクログ
いわゆる特殊設定ミステリ。
天使が降臨し、二人殺害したら文字通り裁かれる世界の孤島の館の連続殺人。
めっちゃ良かったし、ロジックも含めてなかなか好き
3148冊
今年47冊目
Posted by ブクログ
2人殺すことはできないのになぜ連続殺人が起こるのか、という舞台設定は面白かった。
事件の手がかりを集めるパートがすんなり進みすぎていて、もうすこし謎解きをする楽しさを味わいたかったなと感じた。
Posted by ブクログ
この世に新たなルールが1つ追加された。
「2人以上殺したら天使により、地獄に引き摺り込まれる。」
だったら1人なら殺してもいい?
だったら2人以上なら何人殺しても一緒じゃない?
理屈とはなんて恐ろしいものなだろう。
いや、これは理屈ではなく、これが人間そのものなのだろう。
Posted by ブクログ
特殊設定ミステリの傑作。二人以上殺したら天使によって地獄行きという、未見性のある設定が素晴らしかった。話運びやトリックも唯一無二だし、リーダビリティーも抜群でGOOD!
キャラクターも個性的で魅力的。アニメっぽいキャラもいるため空気が少し緩和されてて、凄く好みだった。テーマも効いてて良いミステリー。
Posted by ブクログ
常木王凱が所有している常世島に集まった者たちが、次々に殺され犯人を探し出す探偵 青岸焦の活躍を辿る物語だが、「降臨」という状況下で、のっぺらぼうの顔を持つ天使が舞っているという設定がなされている.この状況下で人は2人目の殺人を犯すと地獄へ落とされることになっている.探偵事務所を運営していた青岸は降臨以降仕事がなくなり、島へ招待された.政崎、天澤、争場、報島がおり、料理人の大槻、執事の小間井、メイドの早倉、さらに青岸が乗った船に忍び込んだ伏見、常木の主治医 宇和島が館に居た.まず常木が殺害されストーリーが始まるが、青岸が次第に的を絞り犯人を推定していく過程が楽しめた.探偵事務所時代にいた赤城たちが事故で死んだ事件がベースになっており、伏見の島への潜入もある意味で重要だった.常木の悪行に復讐することをもくろんだ犯人を炙り出す青岸の推理展開が見事だ.面白かった.
Posted by ブクログ
2人以上殺したら天使によって地獄に落とされるという世界観で、連続殺人が発生してしまうという特殊設定ミステリー。
SFのような世界だけど本格ミステリーで面白かった。
途中で挟まれる過去の話もよかったからその頃の事件をもっと知りたい!
Posted by ブクログ
始終寂しさとか虚しさが漂う中でうっすらと希望の光が見えてきたような結末が好きでした。
ところで青岸探偵事務所のスピンオフが読みたいんですが、どこにありますか?
存在しない前作感からしかとれない栄養素がある。
Posted by ブクログ
る日世界に天使が降臨し、2人以上人を殺した瞬間、
地獄に引きずり込まれる世界になった。世界から連続殺人が消えた中、
大富豪からとある島に呼ばれた探偵。そこではありえないはずの
連続殺人が発生する。というSFミステリ。
まず、設定で勝ってるな!って思う。
これ思いついた時小躍りしただろうなって想像できるもん。
それぐらい秀逸な語りだしだよね。
最近読んだのだと「クローズドサスペンスヘブン」とか、
普通のミステリにファンタジー要素を盛り込みつつ、
地に足をつけたトリックを披露する系は目新しくて良い。
今作も天使が降臨した世界の変わりようを書いてくれている。
当たり前だけど、連続殺人にも抜け穴があり、
世界から罪も犯罪もなくならない。
そういう設定にも関わらず、事件は孤島の大富豪の家で
起こる殺人という古典なのがまたよい。
天使という超常の存在がいても、理不尽な世界に厭世する探偵が、
島での事件を通して再起する物語でもある。
惜しむらくは、もう少し天使という舞台装置がいるなら
天使を使ったトリックがほしかったなぁ。
ただ「連続殺人が不可能な世界で連続殺人が起きたら面白くないですか!?」に
対するアンサーが「面白そう!」なので、十分読む価値はあると思う。
面白かったです。
Posted by ブクログ
天使が降臨した世界を舞台とし、主人公の探偵の青岸焦(あおぎしこがれ)が天使たちが集まる常世島(とこよじま)に招待され、そこで連続殺人が起こる話
一人を殺しても地獄に堕ちないが、二人殺せば天使によって地獄の業火へ引きずり込まれるという設定付き
主人公は天使の降臨イコール救済ではない世界で大切な仲間を失い、探偵をする意味を探す⋯
一言でいうとすごく丁寧につくられている
だけど丁寧すぎて話が盛り上がらない感じ
事件が起こるまで100ページほど延々と説明を読むことになる
読んでる途中で何度も眠くなった
あと「探偵が、探偵は、」という描写が多すぎてお腹いっぱいになる
細部までしっかり丹念に書かれているので順を追えばわかる
最後は伏線回収もあるので良いかな
『回樹』や『あなたへの挑戦状』の中の「ありふれた眠り」がかなり良かった
シンプルだし、文章も美しくて
こちらの作品は、キチンと構築されて書かれている印象です
Posted by ブクログ
現代日本のような世界観だけど、ファンタジー的な要素あり。
ギミックにもファンタジー要素が絡むので、ミステリの期待感に対してはちょっと違ったかな、と。
主人公や犯人の心象描写は良かったです。
Posted by ブクログ
神や天使の存在意義や天国の有無がどうとか探偵の使命がどうとか、そのへんがあまり乗り切れませんでしたが、2人が死ぬと地獄に落ちる世界でいかにして連続殺人が起こるかという魅力的な特殊設定ミステリで、犯人がここまでするに至った動機などに説得力があり、トリック等も細部までよく練られています。
【以下かなり詳細なネタバレがあるので注意】
私が根本的なところを勘違いしているのかもしれないが、前半の三つの殺人で黒幕が実行犯に自殺を唆した理由がわからない。そのまま放置しておけば、実行犯が焼死して良い感じじゃないか?実行犯がアッチではなく、アッチと判明することで何か不都合があったのか…?
匿名
クローズドサークルに惹かれて購入しました。
探偵である主人公のキャラクタが好みでした。
一匹狼タイプで、ややぶっきらぼうな口調ですが、変なウケ狙いも無く、
余計なことを言わないところが良かったです。
この主人公で続編を読みたいくらいです。
Posted by ブクログ
とても読みやすく天使という特殊な存在も面白い。解決までの糸口がもう少し詳細があると良かったかな。井戸での天使の使い方が秀逸。
追い詰められたからといってそんなに簡単に自分の喉刺せるかな。物語とはいえ気になってしまう。
Posted by ブクログ
様々なところで惜しいというか、もう一声というか、かゆいところに手の届かない作品だった。
評価の☆の付け方にも迷った。読んでいる途中も読み終わった後でも面白くなかったとは感じないのだが、同じテイストの作品を読みたいかと自問すれば明瞭にNoであるし、「著者の過去の作品はもちろんのこと今後の作品も成熟するであろう5年10年後までは読まなくて良いな」とも感じた。
人間描写の薄さとミステリーの詰めの甘さが、作品に中途半端で粗い印象を与えている。
登場人物の人間味の無さというか人間的な薄っぺらさというかは導入部から終盤まで常に感じる部分だった。
主人公 青岸の背景からしてもハードボイルドな内容になる素養は十分にあるのだが、どこをとっても生煮えのままだった。シリアスな部分を高精細に描き、捜査時のコミカルな部分で緩急を付けられればグッと人間味も出てくるのになと思った。『ミステリープロパーではない』と自認する著者ならば人間性を精度高く描くことで独自性を示し、また生々しいキャラクター達は『マジックリアリズム』のリアリスティックな部分を引き立てるのにもつながるのになぁと残念に思った。現実部分がしっかりしていないとフワフワした世界観となり物語自体が締まらない。
探偵仲間はヒーローであり社会正義の狂信者という、ある意味イカレた存在なので、人間味の薄い描写が逆に一般人との乖離を感じられて良いと思ったのだが、物語中盤の宇和島の言動は擁護できず「中学生かよ・・・」と違和感を強く持った。目の前で仲間5人を亡くし、手にも障害が残ると宣告された怪我人に対する態度がバカみたいで、とても医師とは思えない。普通に考えれば失意も大きくすぐに立ち上がれるはずがなく、逆にすぐに動きたがる場合は行動の動機が歪んでしまっている可能性もある。精神面のフォローがいることは『人の為に尽くす』医者ならわかりそうなもんである。もし自身の喪失感で事前に気づけなかったとしても会話の最中に異常に気づけそうなものだ。「会話を通じて青岸の心が深く傷ついているに気づき、青岸を事件から遠ざけ、事件を追う自分と関係を絶つために敢えてきついことをいったのではないか」という期待も持っていたのだが、最後までそのような様子は無かったので拍子抜けしてしまった。
作中で被害者となる”悪人”達も巨悪の割には描写が薄く小物で、敵役としては物足りない。「なんだかよく知らないいけすかない悪い人がどんどん殺されている」という感じで終始他人事のようで思い入れが湧かなかった。
最終盤の犯人の動機の部分でも、過ごした時間も短く縁も薄そうな父親の死に対して執着する理由が見いだせず、こんな失敗しうる手の込んだことをせずとも「会合時に全員をフェンネルで焼けば終わりだったんじゃ?」や「特別なシャンパンに毒を入れて争場に渡し、(個々が好みの飲み物に移る前に)最初の乾杯として注がせれば終わりじゃないか?」などもっと簡単で確実な方法で良かったのではないかと思ってしまう。いくら常木が天使に傾倒していたとはいえ「(暗殺した記者の直接の血縁を)ろくに身辺調査もせずに身近に雇うか?」という疑問もある。
『解説』では『(天使降臨によって倫理のありようが一変した社会の)思考回路を前提としなければ解けない』とフォローしているが、倫理と感情は別物で、降臨前から十分な時間を生きている人間の感情面は変化しようがない(= 感情面は我々の世界と同じ)のでホワイダニットにおいては失敗していると言える。
ミステリーの部分では特殊設定は面白いのに生かし切れていないと感じた。
作中で天使関連のルールが開示されないのがアンフェアだと感じる。殺害可能な”1人”の範囲はすでにかなり詳細に分かっているはずで、特殊条件に関して登場人物たちと読者の知識の乖離が酷すぎる。
毒入り聖水を配った牧師の件から、実際に手を下した人物にカウントが乗ることがわかるが、複数人で同時に1人を殺した場合(ex. 皆でナイフを持った場合)はどうなるのだろうか?全員がプラス1なのか、プラス1/nなのか。後者の条件なら、4人が共犯ならそれぞれが別の思惑でさらに1人ずつ、計7人までは無傷で殺せることになる。また、”手を下した”の範囲はどこまでかも不明瞭だ。施工不良で時間差での事故や自動運転のプログラムのバグでの事故はどうなるのか?毒入りの料理を取り分けたらどうなる?と、読み終わっても分からないことが多い。作中で言われているように料理すら危険なので、逆説的だが、世の中が以前と同じように回っているということは天使の目は甘い(;ちょっとしたことで殺人者になり得る世界なら相当殺伐としているはず)とも思えるのだが、それだと警察がやる気をなくすのは話が合わなくなってしまうので設定が煮詰まっていない感じがする。
世界観はともかく、天使の裁きの性質に関しては本編のトリックに直結するのでウヤムヤではなくもう少しカチッと枠組みを決めて欲しかった。
また、設定や展開でも、もう一歩考えを深められたらなぁと思う点は多い。
中盤に入る頃に被害者(候補)の背景を全てバラしてしまったせいで殺される人物に意外性が感じられない。序盤で無駄に引っ張った青岸のコンプレックスについても何の脈略も意味もなく前半に開示してしまったので中盤以降は物語が単調な一本道になってしまった。
事件の進展と合わせて背景の謎も明らかになっていき、「明らかになった新事実が事件と絡み合うことで解釈が変わったり、それまでは意味不明だった事件や(主人公を含む)キャラクターたちの行動に整合性が出てくる」という展開にした方が退屈しなかったのではないかと思った。
読者や探偵役が見ている部分しか物語が存在しないように見えることも作りの甘さ、浅さにつながっているように思う。探偵が捜査する裏ではそれぞれがそれぞれの思惑を持って行動しているハズなのだが、それが一向に見えない。後半の被害者達は部屋でただ待っていたのだろうか。宇和島は何をしていたのか。
視点の外での行動が絡み合うことでアリバイが複雑化することも、行動が裏目に出ることもなく、そこも退屈な感じがした。
そもそも常世島がクローズドサークルではないという点も問題である。作中で外部に連絡を取っている描写があるし、完全に隔絶しているわけではない。『詳しい場所を知っているひとが少ない』といっても地図に載っていないわけではあるまいし、場所を知らなくてもGPSが導いてくれる。屋敷の使用人達なら地図上で位置を示すことぐらいできるだろう。なんとしても脱出したい生き残りが外部から迎えをよこさない理由がないのだ。陸にいる部下を使ってヘリをチャーターできるし、しっかり金を払えば最寄りの港で漁船を雇うこともできる。これを潰しておかねば、究極的には「金持ちを狙った部外者の自爆テロ」というオチもあり得てしまう。
この問題の簡単な解決法は古典的な「嵐が来ている」だが、それでは面白くないなら、ヘリは「天使の密度が濃すぎてバードストライクが起きるから着陸はおろかホバリングもできないし周辺海域にも近づけない」とか、船に関しては「近くでタンカーの座礁が起きていて漁船は総出でオイルフェンスを張っている」「遭難者がでていて漁船も皆協力して捜索に当たっている」などの理由で捕まえられないでも良さそうだ。常木が天使を狂信的に集めていることから常世島に船やヘリを寄せ付けない(+侵入者対策)ための防衛設備があって、常木亡き後はコードが分からず予定の船が到着する時刻まで解除できないとかでも良い。
本書のオリジナリティが生かされる井戸のトリックも「天使の体重と強度は大丈夫か?」と思ってしまった。天使の身長を2メートルとしても5層は積み重ねる必要がある。最下層の天使には積み重ねた分(5〜6倍)の体重がかかることになる。天使の体重と強度の関係がかなりアンバランスでないとこのトリックは成立しない。他にもぎゅうぎゅうに詰めた場合、砂糖が無くなったとしても飛び去ることができるのかだろうかという疑問もある。詰まっていれば羽は広げられないし、鉛直方向に這い出る能力も無いのではないか。事が終わった後に井戸の中の天使を焼いても相応の量の砂が残ってしまうのでもう少し考えないといけない。このトリックが明かされるまで私は単純に動滑車でも使って井戸の底に下ろしただけだと思っていた。滑車一つで下ろすのが無理ならば二つ三つ使えば良いし、人を吊り上げるほどの張力がかかっても抜けないほど強くペグを刺せるなら、滑車を設置することも可能なはずだ。設置場所には困りそうにないので長いロープだけがあれば良い。
作中で天使が虫(;ある意味でプログラミングされているように振る舞う生き物)に何度も例えられているから、「砂糖の量と天使の個体数(;井戸の中なのでこれは常に一定値になる)とそこにとどまる時間に強い再現性がある」のなら良い伏線だが、そこまで考えられてはいないだろうか。
途中、自称助手達が入れ替わり立ち替わり出てくる場面では、急に探偵小説の登場人物や手法が引き合いに出されるが、彼らのキャラクター的に少し違和感があった。「赤城がすぐに名探偵や名場面を持ち出し、青岸がツッコミを入れる」というやりとりを思い出の中にいくつか入れておき、「青岸が探偵に戻った事でその習慣も戻ってきてしまい、3人のちょっとした台詞や仕草に反応してしまって内心で苦笑」というくらいにした方がエモーショナルだったのではないか。
倉早が言うヴァン・ダインの二十則の該当部分も「(使用人が犯人というのは)推理小説的に面白くねーからやめろ」というくらいの意味で、この場面には合っていないし、この規則を覆して面白い作品をいくつも知っているのでメタフィクション的にもズレている感じがした。青岸が発言のずれを指摘(そもそもアレはヴァンダインのよく言えば指南、悪く言えば趣味の押し付けの側面がある)して、ついでに破って成功している作品でも挙げてやって、「犯人から除外できないぞ」というやりとりでもすればメタ的に完成する。
『解説』には『探偵の存在意義をめぐる物語でもある』とあり、その通りであるとは思うのだが、作品中の”探偵“というものの概念がブレているように感じて素直に集中できない。
現実の探偵と推理小説の中の探偵が悪い意味で入り混じっている。青岸が再三述べているように「靴底をすり減らし地道に証拠を探す現実に近い探偵像」と言うには粘り強く捜査しているように読めないし、「あちこちから集まる情報の欠片を華麗に組み上げるフィクション側」かと言われれば論理の鮮やかさや華がない。どちらかに振り切らないと、中途半端な感じがする。
Posted by ブクログ
天使が降臨した世界で、探偵の青岸焦が起こるはずのない連続殺人に遭遇する、という特殊設定ミステリ
事件の解決が容易になった世界において探偵の存在意義は何処にあるのかに囚われながらも推理をする青岸がかっこよかった
犯人の動機から事件の終わり方まで、コナンのあの事件を思い出したよね
Posted by ブクログ
設定や世界観が面白い、というか魅力的でした。キャラクターも素敵。青岸が主人公のギャルゲーかよ、と思ったけど笑。
なんというか分かりやすく死にそうな、悪くて、同じような人たちが死ぬ。特に気になることや思い入れがないまま死んでいき、トリックも特殊設定から分かりやすかったのでハラハラやショックな展開、ひっくり返される展開はなかったけれど、最後まで通して読むとテーマ的にはそれで合っているかもしれない。
例えば大槻君が死んで、血塗れのコックコートだけが出てきてそこも含めて推理するとかだったらまた彼の思いや行動の真摯さも感じ方が変わってきたかも知れないけれど…それだと伝えたいテーマの意味がブレるから。天使のルールから外れて好き勝手する奴らが裁きを受けないのは何なんだよ、この世界は何がしたいんだよって打ちのめされた人達が抗う話な訳だから、これで良いんだと思う。
Posted by ブクログ
2人以上を殺した人間の前に即座に天使が現れ、地獄に引きずり込まれてしまう…という設定の世界で、連続殺人事件に探偵が挑むミステリ。
登場人物が所々不自然な台詞回しをする点と、「2人以上殺すことはできないのに、どうやって⁈」という謎の解決策に驚きがあまり無い点と、「探偵の不在」が楽園である理由が解らない点が気になった。
登場人物の姓が覚えやすいのは好印象です。
Posted by ブクログ
人を2人殺した人間は天使によって地獄に落ちるという特殊設定の元で、天国の存在を確かめに孤島を訪れた探偵が遭遇した「起こるはずのない連続殺人」の謎を解くという趣向のお話。単行本出版当時の各種年間ミステリランキングの上位に入ったようで、確かにこのタイプの作品を好きな人は一定数いそうな気はする。
だけど個人的にはいろいろ詰めが甘い印象のほうが残った。例えば悪天候でもないのにすぐ現場に来ようとしない警察の設定ってどうなのだろうか。地獄に落ちたことになった後で現世に戻ってきた人はいないんだから、地獄の存在なんて現世の人間が勝手に想像しているにすぎないのでは?天国の存在確認を主人公の行動指針に据えていることに違和感を覚える。
人が人を殺すとはどういうことなのかという定義付けも曖昧で、あのパターンではどうなるの?っていうようなケースがすぐ思い浮かぶんだけど、さすがにそこは気にしちゃいけないのかな。色々例をあげてたらそれだけで倍ぐらいの長さになりそうだし。
トリックに関しては本格のレベル的にどうなのかよく分からないけど、比較的オーソドックスな部類だろうか。そこまでの驚きは無かった。
たぶん探偵の存在意義を主人公が自問自答するシーンが本作の一番の読みどころで、過去の回想と絡めたエモい感じが出ていてそこは良かったと思う。