【感想・ネタバレ】楽園とは探偵の不在なりのレビュー

あらすじ

二人以上殺した者は文字どおり地獄に堕とされる世界。探偵の青島を常世島で待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

文庫化したので速攻で手に入れて読んでみた。
斜線堂有紀さんを読むのはこれで2作目。
2人殺すと“天使”により地獄に堕とされる世界線。
そんな中、孤島で起きるはずのない連続殺人が起きてしまい…
あらすじから既に面白いのは確定だなと思っていましたが、やはり面白かった。
2人以上殺せないから良いように感じるが、この仕組みを悪用する奴はいるし、それに巻き込まれる”善人”にやるせなくなってしまいました。
主人公の青岸も、天使により様変わりした世界の黒い部分の犠牲を受けた1人。
バックボーンがしっかり描かれていて、感情移入してしまいました。
ハッピーエンドとは言えないのかもしれないけど、結末がとても好きです。
いろんな意見があるのかも知れませんが、作中で宇和島が言っていたように、青岸の推理はある人を”絶望”から救ったと思います。
絶対に覆せない不条理にも、探偵としての使命を全うする青岸に胸を打たれました。
本格ミステリでありながら、ここまで切なくエモーショナルな気持ちになるのは初めてかもしれません。

0
2024年05月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2人以上殺すと地獄に連れていく天使が降臨した世界という設定が面白かった。どんな世の中でもルールを逆手に取ったり利用したりする人間はいるもんだなぁと救われない気持ちになり、登場人物たちと同じく救いを求める気持ちになった。
探偵事務所の和気藹々とした回想が合間に何度か出てくるのも、だんだんと主人公の気持ちに近づいていく感じでよかった。

0
2025年02月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

天使と言う存在が出てくる特殊設定の本格ミステリの中でまっすぐに正義を追い求めるキャラクターの葛藤と刹那さがなんとも良い…

0
2023年11月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

始終寂しさとか虚しさが漂う中でうっすらと希望の光が見えてきたような結末が好きでした。

ところで青岸探偵事務所のスピンオフが読みたいんですが、どこにありますか?
存在しない前作感からしかとれない栄養素がある。

0
2023年07月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

天使が存在する世界で起きる孤島の連続殺人を描いたミステリー。
天使というファンタジーさ前回のストーリーなのでにもかかわらず、キチンとロジックがしっかりしていてとても面白かった。
二人殺せば即地獄行きというルールが連続殺人の謎を解く上でのスパイスになっているのがとても面白かったです。天使という存在を利用し闇で私腹を肥やし続けなおかつ裁かれない事へのやるせなさ、愛するものを失った悲しさがひしひしと伝わってきてとても面白かったです。そこからの探偵・青島がめげずに再び立ち上がっていくところや最後の島を離れる場面での2体の天使の描写が切なく、でも光が差し込んだようなラストがとても大好きです。

この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
青島焦:宮野真守
常木王凱:中田譲治
政崎來久:子安武人
天澤斉:置鮎龍太郎
報島司:梶裕貴
争場雪杉:安元洋貴
宇和島彼方:神谷浩史
伏見弐子:日笠陽子
倉早千寿紗:雨宮天
大槻徹:小林千晃
小間井稔:山路和弘

0
2023年07月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

神や天使の存在意義や天国の有無がどうとか探偵の使命がどうとか、そのへんがあまり乗り切れませんでしたが、2人が死ぬと地獄に落ちる世界でいかにして連続殺人が起こるかという魅力的な特殊設定ミステリで、犯人がここまでするに至った動機などに説得力があり、トリック等も細部までよく練られています。


【以下かなり詳細なネタバレがあるので注意】



私が根本的なところを勘違いしているのかもしれないが、前半の三つの殺人で黒幕が実行犯に自殺を唆した理由がわからない。そのまま放置しておけば、実行犯が焼死して良い感じじゃないか?実行犯がアッチではなく、アッチと判明することで何か不都合があったのか…?

0
2025年10月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とても読みやすく天使という特殊な存在も面白い。解決までの糸口がもう少し詳細があると良かったかな。井戸での天使の使い方が秀逸。
追い詰められたからといってそんなに簡単に自分の喉刺せるかな。物語とはいえ気になってしまう。

0
2025年08月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

様々なところで惜しいというか、もう一声というか、かゆいところに手の届かない作品だった。
評価の☆の付け方にも迷った。読んでいる途中も読み終わった後でも面白くなかったとは感じないのだが、同じテイストの作品を読みたいかと自問すれば明瞭にNoであるし、「著者の過去の作品はもちろんのこと今後の作品も成熟するであろう5年10年後までは読まなくて良いな」とも感じた。

人間描写の薄さとミステリーの詰めの甘さが、作品に中途半端で粗い印象を与えている。

登場人物の人間味の無さというか人間的な薄っぺらさというかは導入部から終盤まで常に感じる部分だった。
主人公 青岸の背景からしてもハードボイルドな内容になる素養は十分にあるのだが、どこをとっても生煮えのままだった。シリアスな部分を高精細に描き、捜査時のコミカルな部分で緩急を付けられればグッと人間味も出てくるのになと思った。『ミステリープロパーではない』と自認する著者ならば人間性を精度高く描くことで独自性を示し、また生々しいキャラクター達は『マジックリアリズム』のリアリスティックな部分を引き立てるのにもつながるのになぁと残念に思った。現実部分がしっかりしていないとフワフワした世界観となり物語自体が締まらない。
探偵仲間はヒーローであり社会正義の狂信者という、ある意味イカレた存在なので、人間味の薄い描写が逆に一般人との乖離を感じられて良いと思ったのだが、物語中盤の宇和島の言動は擁護できず「中学生かよ・・・」と違和感を強く持った。目の前で仲間5人を亡くし、手にも障害が残ると宣告された怪我人に対する態度がバカみたいで、とても医師とは思えない。普通に考えれば失意も大きくすぐに立ち上がれるはずがなく、逆にすぐに動きたがる場合は行動の動機が歪んでしまっている可能性もある。精神面のフォローがいることは『人の為に尽くす』医者ならわかりそうなもんである。もし自身の喪失感で事前に気づけなかったとしても会話の最中に異常に気づけそうなものだ。「会話を通じて青岸の心が深く傷ついているに気づき、青岸を事件から遠ざけ、事件を追う自分と関係を絶つために敢えてきついことをいったのではないか」という期待も持っていたのだが、最後までそのような様子は無かったので拍子抜けしてしまった。
作中で被害者となる”悪人”達も巨悪の割には描写が薄く小物で、敵役としては物足りない。「なんだかよく知らないいけすかない悪い人がどんどん殺されている」という感じで終始他人事のようで思い入れが湧かなかった。
最終盤の犯人の動機の部分でも、過ごした時間も短く縁も薄そうな父親の死に対して執着する理由が見いだせず、こんな失敗しうる手の込んだことをせずとも「会合時に全員をフェンネルで焼けば終わりだったんじゃ?」や「特別なシャンパンに毒を入れて争場に渡し、(個々が好みの飲み物に移る前に)最初の乾杯として注がせれば終わりじゃないか?」などもっと簡単で確実な方法で良かったのではないかと思ってしまう。いくら常木が天使に傾倒していたとはいえ「(暗殺した記者の直接の血縁を)ろくに身辺調査もせずに身近に雇うか?」という疑問もある。
『解説』では『(天使降臨によって倫理のありようが一変した社会の)思考回路を前提としなければ解けない』とフォローしているが、倫理と感情は別物で、降臨前から十分な時間を生きている人間の感情面は変化しようがない(= 感情面は我々の世界と同じ)のでホワイダニットにおいては失敗していると言える。


ミステリーの部分では特殊設定は面白いのに生かし切れていないと感じた。
作中で天使関連のルールが開示されないのがアンフェアだと感じる。殺害可能な”1人”の範囲はすでにかなり詳細に分かっているはずで、特殊条件に関して登場人物たちと読者の知識の乖離が酷すぎる。
毒入り聖水を配った牧師の件から、実際に手を下した人物にカウントが乗ることがわかるが、複数人で同時に1人を殺した場合(ex. 皆でナイフを持った場合)はどうなるのだろうか?全員がプラス1なのか、プラス1/nなのか。後者の条件なら、4人が共犯ならそれぞれが別の思惑でさらに1人ずつ、計7人までは無傷で殺せることになる。また、”手を下した”の範囲はどこまでかも不明瞭だ。施工不良で時間差での事故や自動運転のプログラムのバグでの事故はどうなるのか?毒入りの料理を取り分けたらどうなる?と、読み終わっても分からないことが多い。作中で言われているように料理すら危険なので、逆説的だが、世の中が以前と同じように回っているということは天使の目は甘い(;ちょっとしたことで殺人者になり得る世界なら相当殺伐としているはず)とも思えるのだが、それだと警察がやる気をなくすのは話が合わなくなってしまうので設定が煮詰まっていない感じがする。
世界観はともかく、天使の裁きの性質に関しては本編のトリックに直結するのでウヤムヤではなくもう少しカチッと枠組みを決めて欲しかった。


また、設定や展開でも、もう一歩考えを深められたらなぁと思う点は多い。
中盤に入る頃に被害者(候補)の背景を全てバラしてしまったせいで殺される人物に意外性が感じられない。序盤で無駄に引っ張った青岸のコンプレックスについても何の脈略も意味もなく前半に開示してしまったので中盤以降は物語が単調な一本道になってしまった。
事件の進展と合わせて背景の謎も明らかになっていき、「明らかになった新事実が事件と絡み合うことで解釈が変わったり、それまでは意味不明だった事件や(主人公を含む)キャラクターたちの行動に整合性が出てくる」という展開にした方が退屈しなかったのではないかと思った。

読者や探偵役が見ている部分しか物語が存在しないように見えることも作りの甘さ、浅さにつながっているように思う。探偵が捜査する裏ではそれぞれがそれぞれの思惑を持って行動しているハズなのだが、それが一向に見えない。後半の被害者達は部屋でただ待っていたのだろうか。宇和島は何をしていたのか。
視点の外での行動が絡み合うことでアリバイが複雑化することも、行動が裏目に出ることもなく、そこも退屈な感じがした。

そもそも常世島がクローズドサークルではないという点も問題である。作中で外部に連絡を取っている描写があるし、完全に隔絶しているわけではない。『詳しい場所を知っているひとが少ない』といっても地図に載っていないわけではあるまいし、場所を知らなくてもGPSが導いてくれる。屋敷の使用人達なら地図上で位置を示すことぐらいできるだろう。なんとしても脱出したい生き残りが外部から迎えをよこさない理由がないのだ。陸にいる部下を使ってヘリをチャーターできるし、しっかり金を払えば最寄りの港で漁船を雇うこともできる。これを潰しておかねば、究極的には「金持ちを狙った部外者の自爆テロ」というオチもあり得てしまう。
この問題の簡単な解決法は古典的な「嵐が来ている」だが、それでは面白くないなら、ヘリは「天使の密度が濃すぎてバードストライクが起きるから着陸はおろかホバリングもできないし周辺海域にも近づけない」とか、船に関しては「近くでタンカーの座礁が起きていて漁船は総出でオイルフェンスを張っている」「遭難者がでていて漁船も皆協力して捜索に当たっている」などの理由で捕まえられないでも良さそうだ。常木が天使を狂信的に集めていることから常世島に船やヘリを寄せ付けない(+侵入者対策)ための防衛設備があって、常木亡き後はコードが分からず予定の船が到着する時刻まで解除できないとかでも良い。

本書のオリジナリティが生かされる井戸のトリックも「天使の体重と強度は大丈夫か?」と思ってしまった。天使の身長を2メートルとしても5層は積み重ねる必要がある。最下層の天使には積み重ねた分(5〜6倍)の体重がかかることになる。天使の体重と強度の関係がかなりアンバランスでないとこのトリックは成立しない。他にもぎゅうぎゅうに詰めた場合、砂糖が無くなったとしても飛び去ることができるのかだろうかという疑問もある。詰まっていれば羽は広げられないし、鉛直方向に這い出る能力も無いのではないか。事が終わった後に井戸の中の天使を焼いても相応の量の砂が残ってしまうのでもう少し考えないといけない。このトリックが明かされるまで私は単純に動滑車でも使って井戸の底に下ろしただけだと思っていた。滑車一つで下ろすのが無理ならば二つ三つ使えば良いし、人を吊り上げるほどの張力がかかっても抜けないほど強くペグを刺せるなら、滑車を設置することも可能なはずだ。設置場所には困りそうにないので長いロープだけがあれば良い。
作中で天使が虫(;ある意味でプログラミングされているように振る舞う生き物)に何度も例えられているから、「砂糖の量と天使の個体数(;井戸の中なのでこれは常に一定値になる)とそこにとどまる時間に強い再現性がある」のなら良い伏線だが、そこまで考えられてはいないだろうか。

途中、自称助手達が入れ替わり立ち替わり出てくる場面では、急に探偵小説の登場人物や手法が引き合いに出されるが、彼らのキャラクター的に少し違和感があった。「赤城がすぐに名探偵や名場面を持ち出し、青岸がツッコミを入れる」というやりとりを思い出の中にいくつか入れておき、「青岸が探偵に戻った事でその習慣も戻ってきてしまい、3人のちょっとした台詞や仕草に反応してしまって内心で苦笑」というくらいにした方がエモーショナルだったのではないか。
倉早が言うヴァン・ダインの二十則の該当部分も「(使用人が犯人というのは)推理小説的に面白くねーからやめろ」というくらいの意味で、この場面には合っていないし、この規則を覆して面白い作品をいくつも知っているのでメタフィクション的にもズレている感じがした。青岸が発言のずれを指摘(そもそもアレはヴァンダインのよく言えば指南、悪く言えば趣味の押し付けの側面がある)して、ついでに破って成功している作品でも挙げてやって、「犯人から除外できないぞ」というやりとりでもすればメタ的に完成する。

『解説』には『探偵の存在意義をめぐる物語でもある』とあり、その通りであるとは思うのだが、作品中の”探偵“というものの概念がブレているように感じて素直に集中できない。
現実の探偵と推理小説の中の探偵が悪い意味で入り混じっている。青岸が再三述べているように「靴底をすり減らし地道に証拠を探す現実に近い探偵像」と言うには粘り強く捜査しているように読めないし、「あちこちから集まる情報の欠片を華麗に組み上げるフィクション側」かと言われれば論理の鮮やかさや華がない。どちらかに振り切らないと、中途半端な感じがする。

0
2025年06月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

設定や世界観が面白い、というか魅力的でした。キャラクターも素敵。青岸が主人公のギャルゲーかよ、と思ったけど笑。
なんというか分かりやすく死にそうな、悪くて、同じような人たちが死ぬ。特に気になることや思い入れがないまま死んでいき、トリックも特殊設定から分かりやすかったのでハラハラやショックな展開、ひっくり返される展開はなかったけれど、最後まで通して読むとテーマ的にはそれで合っているかもしれない。
例えば大槻君が死んで、血塗れのコックコートだけが出てきてそこも含めて推理するとかだったらまた彼の思いや行動の真摯さも感じ方が変わってきたかも知れないけれど…それだと伝えたいテーマの意味がブレるから。天使のルールから外れて好き勝手する奴らが裁きを受けないのは何なんだよ、この世界は何がしたいんだよって打ちのめされた人達が抗う話な訳だから、これで良いんだと思う。

0
2024年11月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

傷心の探偵・青岸目線の断片的に回想の入り交じる感傷的な語り口は好きだった。それ以外はそんなに…。文章が硬くていまいち読んでいても楽しくない。人物描写も表面的な印象。

回想のわいわい楽しげな青岸探偵事務所には惹かれた。過去編が読んでみたい。(確定バッドエンドだけど…)

著者のミステリ以外の作品が読んでみたくなった。

0
2023年06月22日

「小説」ランキング