畠中恵のレビュー一覧
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ネタバレ「神は人に、時に、置き去りにされる」
若だんながふとしたきっかけで目の光を失う巻。
仁吉が困る姿は珍しいような気がするのと、もしかしたら馴染みの妖たちもおぎんみたいに誰かと添い遂げる可能性があるのかもと少しだけ思った。
妖たちが若だんなやおたえを守って大事にしている図が大好きなので、守狐に文句を言われる手代二人の図もかわいいし、生目神を壺で生け捕りにする発想は兄やたちの堪忍袋の緒が切れただけのことはあるなと面白かった。
シリーズ全体の根底に妖と人間は同じときを永遠に生きてはいけないという無常があるから、河童が小ざさの人形を持って行ったのも切ない。
ころころろと転がる銭を追いかける小ざさのように、生目神も愛しい娘が眠る場所に辿り着けることを祈ってしまう。 -
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越前大野藩は明治になった折に、借財がとても少なかったという。たった4万石、実高2万8千石にしては異例。その要因を取材して構成された作品になる。
身をもっての戦いなどの場面はないものの、借金を返すための事業やら、そのせいでの軋轢、成功させるための大きな博打!など。
生きる上で現在でも行われる経済的な戦い。
武士は金に頓着せぬ物といい、金勘定に長けた人を下に見る風潮があった。そんな中、藩の歳入の10倍にもなる借財を返して事業をおこしてお金を稼いでいく。刀での戦いよりよほどしんどい努力が必要だと思った。
無理難題のような新企画を打ち出す殿だが、種痘や洋式軍備の必要性など、未来への嗅覚はとても鋭い。それに家臣を信頼してケツ持ちをする度量がある。ついていきたくなる、わが殿。
そして主役の内山七郎右衛門、今まで知らなくてすまなかった。
あなたは偉人だ。
4歳ちがいの主従の、武器を使わない精一杯の戦い。
お互いへの信頼が、読んでいてたまらなく心地よかった。 -
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まんまことシリーズ第十弾。
町名主の、町名主見習いの多忙さはあれど、
更に圧し掛かるのが避けられない相談事の多さ。
揉め事、縁談、盗難事件など、今日も麻之助は知恵を絞る。
ふじのはな・・・高利貸しの丸三もついにお虎と祝言を
あげることに。だが幸いに便乗する者の影が。
そして相馬家でも困りごとを抱えていた。
おとうと・・・舅の金吾が大怪我をし、湯治へ。17歳の義弟の
金一がまずはひと月、町名主代理になることに。
更に吉五郎を悩ませる猫探しもあり、麻之助は大忙し。
ああうれしい・・・“思いがけない相談”は“ああ嬉しい”と
思ってみたいという願いをかなえること、その難問に
悩む麻之助は靖五郎と共に火事の始末の場へ赴くことに。
縁談色々・・・縁談を望む者。縁談を拒む者。どちらも叶えたい
麻之助だが、自立したい女性の願いは艱難辛苦。だが、
偶然と時の運が縁をもたらし、縁と縁が結びついてゆく。
むねのうち・・・台所にあった簪は誰の物?そして無くなったのは?
戸惑う一葉。折しも武家屋敷での盗難が頻発していた。
盗人の正体は?麻之助と吉五郎が動く。
だいじなこと・・・流行の風邪で寝込んだ麻之助。
大事なことを忘れている。大事なものが無くなっている?
ある噂が広まり高橋家の玄関は騒然とするが・・・。
皆、少しずつ年を重ねてゆく。
若くて無茶な時は過ぎ、一人前の男になってゆく。
清十郎も名主としてきっちりしているし、
貞だって貫禄が付いてきた。仲良しこよしの時代は過去。
でも、多くの縁が麻之助の支えとなっている。
お気楽者でも、皆から頼りにされ始めているんだ。
「ふじのはな」での、そんな父子の会話は心に沁みました。
その父の宗右衛門が仕事をほっぽいて湯治に行きたいとか、
濃い薬を振る舞うお茶目さがあるところとか、
この息子にこの父にありと、笑ってしまいました。 -
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ネタバレ今回の若だんな・一太郎をとりまく妖怪やら事件譚やらにも、するすると江戸のまちなかに誘い込まれてしまった。
兄・松之助の奇妙な縁談が発端となった『茶巾たまご』、下手人がこのシリーズで初めてかもしれないサイコパスみのあるオチでぞっとする。長崎屋の周辺にはいそうにもない、人間の闇が見つめてくる感じが差し込まれてぎょっとしたというか。そこから一転、『花かんざし』の結末は悲しかった。精神病的なもの、江戸の時代ではより偏見も強いから「狐憑き」の目線はシビアだったはず。
『ねこのばば』で再登場した広徳寺の寛朝さん、やはりすごく良いキャラである。自信に満ち溢れた人柄であるが、今事案の背景があかされるに伴い徐々に苦い顔も覗く。なんだか、その人間らしい感じがより魅力に感じてしまった。それにしても「ねこ」繋がりで二重にも三重にも意味が転がるの、気持ちが良い。下手人の未熟さにはもやもやさせられたけれども。
珍しく佐助の語りとなる『産土』、すっかりだまされてしまった。内面が語られたことでシリーズへの奥行きが増した感じがする。大事なエピソードだなあ。仁吉の過去回想と並べて記憶しておきたいところ(自分の記憶力が残念なんだけども……)。
実質的な意味でもっとも若だんなが危機に瀕する『たまやたまや』、謎解きのくだりもさることながら、幼馴染のお春ちゃんの婚姻にまつわる若だんなの気持ちの自省も目をひいた。大店の一人息子、所帯を持つ……ようなエピソードまでいったりするのかなあ。この先の道を気にさせてくるの、ずるい物語だなあ。
おりんちゃんに掴まれたり、一人行動の果てに監禁された若だんなの袖に入り込んでいたりと、今回は鳴家たちが大活躍で可愛くてよかった。次巻以降も妖たちの活躍が楽しみである。