畠中恵のレビュー一覧
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まんまことシリーズ第十弾。
町名主の、町名主見習いの多忙さはあれど、
更に圧し掛かるのが避けられない相談事の多さ。
揉め事、縁談、盗難事件など、今日も麻之助は知恵を絞る。
ふじのはな・・・高利貸しの丸三もついにお虎と祝言を
あげることに。だが幸いに便乗する者の影が。
そして相馬家でも困りごとを抱えていた。
おとうと・・・舅の金吾が大怪我をし、湯治へ。17歳の義弟の
金一がまずはひと月、町名主代理になることに。
更に吉五郎を悩ませる猫探しもあり、麻之助は大忙し。
ああうれしい・・・“思いがけない相談”は“ああ嬉しい”と
思ってみたいという願いをかなえること、その難問に
悩む麻之助は靖五郎と共に火事の始末の場へ赴くことに。
縁談色々・・・縁談を望む者。縁談を拒む者。どちらも叶えたい
麻之助だが、自立したい女性の願いは艱難辛苦。だが、
偶然と時の運が縁をもたらし、縁と縁が結びついてゆく。
むねのうち・・・台所にあった簪は誰の物?そして無くなったのは?
戸惑う一葉。折しも武家屋敷での盗難が頻発していた。
盗人の正体は?麻之助と吉五郎が動く。
だいじなこと・・・流行の風邪で寝込んだ麻之助。
大事なことを忘れている。大事なものが無くなっている?
ある噂が広まり高橋家の玄関は騒然とするが・・・。
皆、少しずつ年を重ねてゆく。
若くて無茶な時は過ぎ、一人前の男になってゆく。
清十郎も名主としてきっちりしているし、
貞だって貫禄が付いてきた。仲良しこよしの時代は過去。
でも、多くの縁が麻之助の支えとなっている。
お気楽者でも、皆から頼りにされ始めているんだ。
「ふじのはな」での、そんな父子の会話は心に沁みました。
その父の宗右衛門が仕事をほっぽいて湯治に行きたいとか、
濃い薬を振る舞うお茶目さがあるところとか、
この息子にこの父にありと、笑ってしまいました。 -
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ネタバレ今回の若だんな・一太郎をとりまく妖怪やら事件譚やらにも、するすると江戸のまちなかに誘い込まれてしまった。
兄・松之助の奇妙な縁談が発端となった『茶巾たまご』、下手人がこのシリーズで初めてかもしれないサイコパスみのあるオチでぞっとする。長崎屋の周辺にはいそうにもない、人間の闇が見つめてくる感じが差し込まれてぎょっとしたというか。そこから一転、『花かんざし』の結末は悲しかった。精神病的なもの、江戸の時代ではより偏見も強いから「狐憑き」の目線はシビアだったはず。
『ねこのばば』で再登場した広徳寺の寛朝さん、やはりすごく良いキャラである。自信に満ち溢れた人柄であるが、今事案の背景があかされるに伴い徐々に苦い顔も覗く。なんだか、その人間らしい感じがより魅力に感じてしまった。それにしても「ねこ」繋がりで二重にも三重にも意味が転がるの、気持ちが良い。下手人の未熟さにはもやもやさせられたけれども。
珍しく佐助の語りとなる『産土』、すっかりだまされてしまった。内面が語られたことでシリーズへの奥行きが増した感じがする。大事なエピソードだなあ。仁吉の過去回想と並べて記憶しておきたいところ(自分の記憶力が残念なんだけども……)。
実質的な意味でもっとも若だんなが危機に瀕する『たまやたまや』、謎解きのくだりもさることながら、幼馴染のお春ちゃんの婚姻にまつわる若だんなの気持ちの自省も目をひいた。大店の一人息子、所帯を持つ……ようなエピソードまでいったりするのかなあ。この先の道を気にさせてくるの、ずるい物語だなあ。
おりんちゃんに掴まれたり、一人行動の果てに監禁された若だんなの袖に入り込んでいたりと、今回は鳴家たちが大活躍で可愛くてよかった。次巻以降も妖たちの活躍が楽しみである。 -
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今回も町名主のもとにはやっかいごとが次々と持ち込まれる。それらを丸く収め、鮮やかに解決策を見出していく麻之助の活躍にほっこりさせられる連作短篇です。
麻之助、お気楽に見えて相当に悩みながら頑張っているのに、それでも叱られてばっかりなのが少々不憫かも。でもその気安さが町の人にとっての魅力でもあるのでしょうけどね。今回はどれもこれもやっかいな困りごとではあるものの、顛末はどれも平和ですっきりします。
お気に入りは「縁談色々」。女性の生き方にほぼ選択肢などなかったであろう時代ですが、もちろんこういう考え方の女性もいたはず。女性は嫁いで当たり前、親や夫の支えがなければただ生きるだけのことに並々ならぬ努力が必要だという苦しさを感じましたが、一人でも生きていきたいという彼女の気持ちを否定しない麻之助が素敵。そしてうまく落ち着く解決も見事。 -
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ネタバレ短編集。6話入ってました。各話の最初に一太郎がどういう人物なのか背景が書いてあるので、1巻読んでなくても大丈夫なつくりになってました。
「空のビードロ」が義兄、松之助が長崎屋に来るまでのエピソード、1巻しゃばけの裏側、松之助サイドの話が書いてありました。
魔が差して井戸に毒を入れようとしてましたが、拾ったビロードを見て我に返るところが好きでした。
お店が家事になっても、働き口がなくても不貞腐れないで生きようとするところはこちらが励まされました。
仁吉の思い人は想像通りの人でした。
虹を見し事は、一太郎が妖怪が見えなくなって寂しそうでした。昔から一緒にいたものがいないのは寂しいでしょうね…。
私たちは一般人はそんな感じです。妖怪といっしょにお風呂入ったりしません。羨ましい…。 -
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ネタバレしゃばけシリーズ第21弾。近年はマンネリの中でも一ひねりを加えていた感があるが、本作は通常運転というか、敢えてマンネリに徹したのか?
「おくりもの」。薬種問屋・長崎屋の取引先が、贈り物をしたいと藤兵衛に相談してきた。悩んだ末に、贈り先の意向を確認しようというだが、話がどんどん贈り物から逸れていき…。そもそもの背景には、現代に通じる時事的なテーマを感じる。
表題作「こいごころ」。読み始めてすぐには、なぜこのタイトルなのかわからないだろう。妖狐の老々丸と笹丸の願いの裏にある事情とは。こういう切ないパターンは、何回かあった気がする。狸を巡るドタバタは必要だったのか?
「せいぞろい」。一太郎の誕生日を盛大に祝おうとしたら、招待する妖がどんどん増えてオールスターの様相に。会場に選ばれたのは…。「こいごころ」から一転、単純に楽しめる1編だろうか。ある意味、盗賊どもは災難であった。
「遠方より来たる」。長崎屋と一太郎、そして通町界隈にとって一大事。長年地域を支えた源信医師が、隠居することになった。当然、長崎屋の意向が跡目を決めることになるが…適任と言うべきか、またかよと言うべきか。
本作の一押し「妖百物語」。百物語という怪談方式には触れないが、当時江戸で流行していたそうで、一太郎たちも招待されてしまう。当然ただで済むわけがなく…。百物語の流行は、一気に下火になりましたとさ。チャンチャン。
極端に重い話も、一太郎が酷い目に遭う話もなく(十分に大騒動だが)、読みやすいけど、熱心なファンに響いたのかどうか。シリーズ第21弾にしてまだまだ通過点という感がある。一太郎のかかりつけ医が変わったことが、今後を左右するか?
京極夏彦さんのあのシリーズと、どちらが先に完結するだろう。