中山七里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
テミスの剣を読み終えた今、ギリシャ神話の法の女神テミスが手にする「剣」の意味が、これまでとはまったく違って見えている。天秤が平等を象徴するものであるならば、その剣は単なる執行の道具ではない。一度振り下ろされれば、取り返しのつかない結果をもたらす、不可逆の力そのものだ。本作は、その「取り返しのつかなさ」を、容赦なく突きつけてくる物語である。
物語は、昭和末期に起きた殺人事件から始まる。若き刑事・渡瀬は、執念の捜査と厳しい取り調べの末に容疑者を自白へと追い込み、事件は解決したかに見えた。しかし数年後、新たな事件を契機に、その判決が冤罪であった可能性が浮かび上がる。ここからの展開こそが本作の核心だ。渡瀬は、自らが関わった「正義」が一人の人生を奪ったかもしれないという事実と向き合うことになる。
私が強く心を揺さぶられたのは、「正義」がいかにして歪むのか、その過程である。法と秩序を守るはずの警察や司法が、組織の体面や信頼を守るために、誤りを認めることを拒む。その構造はあまりにも現実的で、恐ろしい。正しさを掲げる組織が、いつの間にか「正しさを守ること」よりも「正しく見せること」を優先してしまう。そのとき、最も弱い立場の人間が犠牲になる。
しかし、渡瀬もまたその構造の中にいた一人である。だからこそ、彼の後悔は単なる同情では済まされない重みを持つ。彼が二十年以上の歳月をかけて真実を追い続ける姿は、事件の解決というよりも、自らの過去に対する終わりのない問いかけのように感じられた。それは贖罪であると同時に、「それでもなお正義を信じられるのか」という葛藤の軌跡でもある。
終盤、散りばめられていた事実が結びつき、真相が明らかになる瞬間には強いカタルシスがある。しかし同時に、その真実がもたらすのは救いだけではない。失われた時間も、傷つけられた人生も、元には戻らない。真実が明らかになることと、救われることは必ずしも同義ではないのだという現実が、静かに突きつけられる。
中山七里は本作を通して、「正義とは何か」という問いを単純な形では提示しない。むしろ、正義が持つ危うさや暴力性を描くことで、その言葉の重みを浮かび上がらせている。間違いを認めることは、時に組織や信念そのものを揺るがす行為だ。それでもなお、それを選び取ることができるのか。
読み終えたあとに残るのは、明確な答えではなく、消えない問いである。自分が信じている正義は、本当に誰かを傷つけていないと言い切れるのか——その問いを前にしたとき、この物語は単なるミステリーを超え、自分自身の在り方を静かに試してくる一冊だと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ相続鑑定士である三津木六兵の右肩には、ジンさんという人面瘡がある。ある日、三津木は、長崎にある隠れキリシタンの島『人面島』に派遣される。
島の村長、鴇川行平が亡くなり、財産の鑑定を行うためにやってきたが、相続人たち、またそれぞれのバックにつく島の権力者たちのいがみ合いがはじまる。宮司の継承式の日、オラショを読んでいた長男・匠太郎が殺される。そして妻、次男、、、と次々にいなくなる。
三津木とジンさんのやりとりは漫才みたいでテンポよくとても読みやすかったけど、もう少しひねりは欲しかったかなぁ。アリバイや犯人がそのまますぎて、少し拍子抜けしたかも。
最後の最後の文章には『え?え?え?』となった。このどんでん返しは好きでした。 -
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中山七里さんの本ならハズレはない、という信頼感がある。あらすじ読んで面白そうと思い購入。読んでみた。
牽引力があり一気に読めました。ただミステリー要素は薄め。犯人は誰だ?を楽しむ感じじゃない。
復讐がテーマだと思うが、いざそのシーンになるとあっさりしているなと感じてしまった。
並行して起こっている事件も終盤に絡んでくるのかな?とワクワクしたけど、別々の事件だったのにちょっと拍子抜けしちゃった。中山七里さんの本はどうしてもハードルを上げて読んでしまう傾向あり。
主人公がえらく直情的であまり好きになれなかったが、終盤の倫理観や正義感が揺らいで悩む描写が良かった。むしろその後の姿が見たいので続編出たら読みたいです。
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能面検事シリーズ第3弾。多くの事柄が、不破検事の事務官である惣領美晴の視点で語られるのだが、この美晴さんは大変感情的なうえに怯えに簡単に判断が支配されてしまうので、読んでいてイライラする。
不破検事はこの人になぜイライラしないのか。能面検事だからか。
岸和田駅西口で白いワゴン車が次々と歩行者を轢き殺した。ワゴン車から降りて来た男は迷彩服を着て刃渡り30センチほどのサバイバルナイフを持っている。次々と切り付けて殺したあと、抵抗せずに手錠にかかった。
次に大阪地検事務所に送られて来た郵便物に爆弾が入っていて、前田と仁科がぶっ飛んだ。ポストルサンチマンなるものから犯行声明が出て、先の通り魔殺人の犯人を釈放しろという。
現在、郵便物はすべてx線観察装置でチェックされている。畿内の地検全てに設置され、チェックする手間が増えた。たまに本物のポストルサンチマンによる犯行もあるが、全国の地検などで後追い偽事件が頻発する。
不破検事は美晴を送っていったついでに爆発に巻き込まれて吹っ飛ばされる。