藤岡陽子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ローズ産婦人科病院で助産師として働く美歩は、キャリア6年目。
産婦人科の過酷な現状の中で、生まれてくる命だけではなく、失われる命も目の当たりにしている。
同僚の理央が、堕胎処置のきつさ、辛さを語る生々しい話。
看護師たちは命の芽を摘む残酷さを、妊婦本人よりも感じているのかもしれないと思った。
胎児に染色体異常の疑いがあり、産むか産まないか悩む妊婦、産む前に知ることができることが良いことなのか考えさせられる。
美歩の3歳違いの姉美生は、生まれながらにして脳性麻痺で障害があり亡くなってしまった。
美歩は大人になるにつれ、家族にとって姉美生の存在は尊いものであり、障害を持って生まれること全てが不幸ではないことを感じている。
姉は見え方が違うだけだと言っていた。
母も、生まれ変わっても美生と会いたいと言っていた。
全ての人に生まれてきた意味があると作者は言いたいのだろう。
藤岡陽子さんの描く医療小説は、リアルで切々と訴えてくるものがある。
看護師として現場で働き、生と死を目の当たりにしてきた藤岡さんだからこそ、暗くて悲しい世界も、深くて温かい世界も描けるんだろうと思う。
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Posted by ブクログ
「満天のゴール」という題名の意味するところが分からないまま読み始めました。読んでいる途中から「ゴール」の意味がわかり、満天になるまでの「星」一つ一つの積み重ねを経て「満天」になるという人生の歩みそのものだと徐々にわかってくる。
最後の方は「満天のゴール」を迎える圧倒的な、しかし、静かな感動で心が揺さぶられ、同時にジワリと涙腺が緩みそうになりました。(帰宅途中の通勤電車の中だったので、あわてて途中で読むのを止め、駅を出てからマックでアイスコーヒーを買い、マックの中のカウンタ一席で(マスクをして)続きを読み終えました。)
少子高齢化、地域医療、特に過疎化が進んでいる地域の医療現場の実態。これらが作品の背景です。
人はみなゴールに向かって生きていく。ゴールが近くなるとどのようにしてゴールを迎えるのか?自分の意思が叶うことがあるのか?こればかりは予測し得ません。
最近の医療小説の中では、「最先端の技術を身につけた医師による手術等を受けながら最後まで病気と闘う」というストーリーもありますが、「痛みだけは取り除き最後までできるだけ普通の生活をする」という選択をするストーリーの方が多いように思われる。私の母も「延命治療は不要である」旨の紙は保険証と一緒に必ず持ち歩いています。昨年亡くなった義父も自筆で同様の宣誓書のようなものを用意していました。
人間はだれしも最後のゴールを迎えますが、なかなか本人の思い通りにはならないものでしょう。(というか、既に思考能力を失っている場合も多いですが)
過疎化した地域の医療現場を舞台にだれにでも必ず訪れるゴールを間もなく迎える人たち。そしてその人にかかわる(かかわった)人たちの人間模様を看護師の目線を交えながら静かに、しんみりと、そして時々ハッとするような感動的な伏線を潜ませながらストーリーを展開させていく。藤岡さんの作品はいつも心に沁みます。
星5つにしたかったのですが、主人公がシングルマザーになってしまった原因でるところの夫がとても嫌な野郎に描かれていて、(小説なのに)腹が立ってしまって、、、、家族を顧みず浮気相手に子供を産ませて、もともとの奥さんと子供を放り出してしまう男があまりにも最低でハラワタが煮えくり返ってしまったので、、、怒りの感情が最後まで抜けなかったので、その分星1つ減らしてしまいました。(小説としてはそれでいいのですが) -
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藤岡陽子作品、二作目
この人の小説は何がどうなのか分からないけど、最初の数ページで掴まれる
特に個性的な文体でもなく、比較的平易な言葉を紡いでいる
でも、はじめから言葉が私に染み込んできて、あっという間にページを繰ってしまう
不本意ながら看護学校へ通うことになった瑠美が主人公
看護師は病院に勤務するし、人の命についての描写もある
でも、私にはいわゆる「人が死ねば悲しいよね、泣くよね」という最近ありがちなストーリーには思えず、とても良かった
私も家庭の事情で望む進路に進めなかったので、当初の瑠美の投げやりな感じはすごく分かったため、特に感情移入しやすかったのかも
でも瑠美が時折吐く毒(正論)は気持ち良い
思っても言えなかったり、そもそも頭の回転のトロい私にはその場で思いつかなかったり
瑠美の若さであんなふうに波風立ててでも正論を言うって、なかなか難しいとは思うけど、でも瑠美みたいな気の強い人(そして正義感の強い人)が看護師になってくれるのは心強い
ラストがちょっと駆け足で、千夏のことも遠野のことも、サラッと過ぎてしまったのが残念
とは言え、読んで良かった
藤岡陽子作品、買い集めました -
Posted by ブクログ
ネタバレ45歳独身の水樹が大好きな服飾の仕事を失いそうになり、その道に進むきっかけになる高校時代の恩師を訪ね、過去を振り返る。
水樹の子ども時代は懐かしく尊い思い出でもあるが、苦しんだ記憶でもある。貧しさといじめは幼い彼女ではどうすることもできないことだった。ただそこにはいつも信也がいた。体育祭のリレーの場面、カメムシの場面、自転車にイタズラされる場面など、どの過去を見ても優しい信也がいるから、それを思い出している水樹と同じ目線で熱い想いを持ちながら読める。
現在と過去を行き来しながら物語は進むが、過去にはいつも信也がいて、現在にはいない。この構造は読者に時の残酷さを刻む。どんな人の中にも同じように過去の大切な人が多かれ少なかれいるはずで、読みながらその人達のことを懐かしく思い出すことになる。あの頃の甘い思い出も、苦い思い出も共に共有できたこと、そのこと自体が自分とその人だけの宝物である。覚えていてくれているといいな、なんて考えてしまうこと誰にでもあるだろう。
高校時代の恩師である遠子先生のように、多少強引でもその人の将来のことを考えて全力でサポートできるような人になりたい。嫌われてもいいという覚悟で。 -
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助産師の物語なので妊娠や出産の話は男性だと分かりづらいかと思ったけど、余計な心配だった。著者の丁寧であたたかく優しい筆致に、むしろ読みはじめてすぐに没入してしまう始末。
飛び込みの緊迫した出産風景や、出生前診断、新生児連れ去り、小さくか弱い命を必死に守る助産師達の奮闘する姿と命をめぐる様々な話にページを捲る手が止まらない。
特に印象的だったのが主人公・美歩の姉の美生の脳性小児麻痺の話だ。
不自由な身体を使って必死に美歩を慰めようとする姉。もう姉の姿はない。
母は「美生なら生まれてきてほしいな。病気だと分かっていたとしても美生と家族になれるなら産むと思う。ずっと四人家族のまま」もうじーんときてしまって涙が頬伝う。
命の選択についても考えさせられた。羊水検査で13トリソミーの診断を受けた妊婦さんの話は本当に切なかった。
不妊治療のうえ、やっとできた子供のまさかの病気。ネットを検索しても「予後不良」この言葉が刃のように心に突き刺さる。でも夫婦のとったのは「悲しむ覚悟」、息を引き取るまで三人で過ごした。もう涙がとまらない。
命の選別についても選択する側も処置する側も心に傷が残る。
理央の言った「自分が死神の手下のように思える」助産師の仕事の大変さと何が正解なのか?答えのでない問いに胸が痛む。
「もし、あなただったらどうする?」と問いかけられているようにも感じた。
本書を読みながら妻が娘達を出産したときの事を思い出した。
小さくてか弱く見えるけど純粋な瞳がキラキラ輝いていた。
無意味な命などない、小さな命の誕生に医師やむかえびと(助産師)、看護師の苦労があってこその奇跡なんだなと、感謝の気持ちでいっぱいだ。 -
Posted by ブクログ
お笑い芸人になる夢が破れ特別養護老人ホーム『森あかり』で働く新人介護士の星矢を主に、施設の医師葉山彩子、施設長の福見節子の立場の違う3人の視点から介護とは、生きることの意味とはと、問われている気がする。
私も周囲に要介護や認知症の家族がいるので、とても興味深いことである。
人に迷惑をかけずに生きていくとか、自分も周りも幸せだったと思える最期を迎えたいとか、誰でも思うことではないか。
老いても人間の尊厳は失わずにいたいと思ってしまう。
寝たきりになって、自分の意思を伝えくことができなくなったら、命を絶ってほしいと頼む浜本さん、胃ろう(お腹に穴を開け栄養を流し込むこと)をしたくない、静かに逝かせてほしいと願う倉木さん、回復する見込みのない人たちの意思を尊重することが一番大事なことなのか、延命することだけが大事なことなのか、考えさせられる。
『延命至上主義、それが今の日本の介護現場を逼迫させ、そして将来的に崩壊させる原因になることをなぜ真剣に、切実に、問題視しないのだろう…』
もともと看護師である作者の言いたいことが伝わって来る。
介護現場では介護士の給料も安く重労働、人手不足も深刻な問題である。
だが、未来に希望がないわけではない。
作品の中に、介護用の人間型ロボットや介護のデジタル化を研究しているという話も出て来る。
将来実用化して、若い人たちのパワーも集まってくれば、介護の現場も変わっていくかもしれない。
誰もが安心して老後を送れるように、一人一人の気持ちに寄り添った社会になってほしいと願う。
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Posted by ブクログ
すごくおもしろかった。
新しい命の「むかえびと」である助産師さんたちの物語。出産の大変さ、新しい命の尊さ、ミステリー要素まで組み込まれている。
『金の角持つ子どもたち』以来の藤岡さん作品。
現役看護師さんなの知らなかった。
専門用語がたくさん出てくるけど、難しさをなるべく感じさせないようにするところが藤岡さんの力なんだと思う。
院長と院長息子はほんとうに許せないけど、イメージ的にはこういう院長っていそうだよな、、。ここまで師長共々ひどいのは不安すぎる。
ひどい話があるから、妊婦さんにはあまりおすすめできないけど、老若男女問わず読んでほしい作品。 -
Posted by ブクログ
出だしから介護の現場の大変さが描かれており、
3Kどころか、倍の6Kくらいの過酷さに
ちょっとしんどい展開になるのかな、と
重たい気分になったけど、
読むうちにこの世界に引き込まれて、
介護する側、される側、両方に感情移入し、
胸を詰まらせながらの読書となった。
フィクションとはいえ、
ここに描かれる内容はほぼ日常で起こっていること。
年老いて、自分で自分の面倒が見れなくなった時の身の振り方は、ちゃんと考えておかないと。
意思表示ができるうちに紙に書いておくぞ、と決意。
介護の未来はどうなっていくんだろう?
わたしはロボットにお世話してもらうの、いやじゃないかも。
負担の大きい部分は
この物語に出てくる意欲的な人たちのように
どんどん改善していき、
介護というフィールドがもっとポジティブなものに変わっていったらいいなと思った。
みんなが自身の問題と捉え、考えていかなければ。