あらすじ
デザイナーの水樹は、自社が服飾業から撤退することを知らされる。45歳独身、何より愛してきた仕事なのに……。途方に暮れる水樹のもとに中高の同級生・憲吾から、恩師の入院を知らせる電話が。お見舞いへと帰省する最中、懐かしい記憶が甦る。幼馴染の三兄弟、とりわけ、思い合っていた信也のこと。〈あの頃〉が、水樹に新たな力を与えてくれる――。人生に迷うすべての人に贈る物語!
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Posted by ブクログ
45歳。自分の来し方と行く先を
見つめる。
長年続けてきた服飾デザインの仕事が、突然事業閉鎖に。
女子トークから始まり、軽い内容かと思いきや、主人公水樹の人生は幼少期から甘いものではなかった。
幼い頃、貧しい団地生活の中、同じ団地に住む正浩、信也、悠人の3兄弟とは、家族同然に過ごしてきた。
同級生の憲吾、恩師の遠子との再会をきっかけに、27年間の空白を経て、水樹は信也と再会する。信也のことが好きだという気持ちをしっかりと自覚して。
その再会の場面は描かれず、読者にラストは委ねられる。
結果がどうであれ、
自分の過去、周りの人達の過去、
今の自分、将来の自分、これだけしっかり
深く理解できていたら、それだけで十分だと思った。
藤岡陽子さんの経歴が、生きてきた年月が、小説を作り上げているんだな。
45歳。人生の折り返し地点。自分の人生の終わりも見えてくる。水樹の気持ち、手に取るようにわかる。その歳になって初めて自分の親の気持ちや状況が理解できたりする。
心に強く響いたフレーズ
(記憶を頼りにしてるので正確ではない)
1、人は3つの層からできている。
生まれついた性格、環境で形成される性格、努力して身につけた人格。
2.リレーのバトンは気持ちをつなぐんだ。
3.人にはそれぞれの戦い方があるんだ。
小説として、現在から過去に遡り、また現在に戻る構成が良かった。
登場人物、ひとりひとりの輪郭が際立っていて、ドラマのように情景が浮かんだ。
文学部出身、記者、司法事務、タンザニア留学、看護師、と様々な経験に裏打ちられた。無駄のないリアルな筆致が良い。
今、藤岡陽子さんブームであと4冊積んである。楽しみ。大好きな作家さんだ。
Posted by ブクログ
子どもの頃の友達の家族のことって、どのくらい知っていただろう。ほとんど全く知らないのが普通じゃないだろうか。中学生になってから知り合った異性の同級生なら、なおさら。
登場人物のそれぞれは、一見おしゃれな女子だったりイケメンだったりスポーツマンだったりするのだけど、それぞれが家族に何か背負っていて。
正浩くん、ええ子すぎる…
そして、小学生が自分たちと違う子を見つけた時のえげつなさ…
高校生の恩師のありがたさ…
いつも藤岡陽子さんの本の中に勇気付けられる言葉を拾うのだけど、
ドッジボールでボールを受けられずに怯えるせいでいじめられる弟の悠人に正浩が言う台詞。ボールを受けなくていいから、相手を見ながら走って逃げろ。
『これが悠人の闘い方や。人によって闘い方はそれぞれ違うんや。だから、自分の闘い方を探して実行したらええねん』
その言葉が、弟たちと水樹の人生を後年切り開いていく。
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それぞれが苦しくても必死に前を向き進んでいくまたたまに立ち止まりそうになっても友達が助けてくれるそんな青春時代や大人になってからの苦悩などを丁寧に描いていて私もじんわり心があったかくなるような作品でした
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昭和の時代、京都の団地で育った幼なじみたちの人生。
貧しくても淡々とそれを受け止めて生きている。
夢なんて考えたこともない。生きるのに精いっぱいだから…
でも、誰かが気づいてくれたら。背中を押してくれたら。話を聞いてくれたら。そこからの人生は全然違うものになる可能性がある。そんな誰かに出会えるかどうかが運命の分かれ道なのだろう。
登場人物がみな、苦しい現実の中でも前を向いて進もうとする姿に感動した。良い本に出会えてよかった。
Posted by ブクログ
樹木に比べれば人の人生なんて短い。
「いまこの瞬間にある本当の心を大切にしなければ、なんのために生きているのかわからなくなってしまう」
本当の心を大切にして、それが叶わなくても後悔はしない。
水樹と信也はやむを得ない事情で遠回りしたが、いつまでも自分の中の真実を大切にしていた。そして家族を護り続けた。それだけにクライマックスが嬉しい。水樹が旧友との再会で、自分のやりたいことを投げ出さなかったことも嬉しい。
人はこれが最後の別れになると気付かずに出会いと別れを繰り返す。
ずっとこの時間が続くという錯覚を取り払って生活しなくては。そんな思いが強まった。
Posted by ブクログ
最初から最後まで、しみじみと泣けます。大人になっても、昔好きだった人を思い続ける物語。家族を愛し、他人を受け入れる大切さを説く。藤岡さんが描く、受容性のある京都もまた魅力。素晴らしい小説です。
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藤岡陽子さんの作品はじわじわと読み手の心を揺さぶっていく力があると思う。何気ない登場人物のことばだったり置かれている状況に共感を覚えて所々懐かしさを感じる。
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藤岡陽子さん、最近ちょこちょこと読んでいましたが、とても好きです。
服飾系産業の未来だったり、団地の付き合いだったり、発達障害とその兄弟についてだったり、色んな要素が入っているけどスッキリしていて、なんとなくずっと色の濃い青春の香りがするようなお話。
親がそこまで子どもに時間をかけられない家庭の方が兄弟仲は良い気がする。
"ミは水樹のミ"なんて、誰かの支えになれるような人生、憧れる。
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大好きな藤岡陽子さんの大好きな作品。時々、読み返したくなる。
決して明るいストーリーではないのに、いつもとても心に響き、励まされ、温かい気持ちになる。そして、自分の生き方と未来を考えさせられる。
Posted by ブクログ
藤岡陽子さんの作品を読んだのは、本書『手のひらの音符』が初めてですが、大好きな作家さんとなりました。
これからも、藤岡さんの作品を読み進めることは間違いありません。
そう思わせるほど、本書はただ面白いだけではなく(読み始めてから、ほぼノンストップで読み終えました)、共感できることや深く感銘を受けること、更に、考えさせられることが丁寧に描かれており、とても心に残る作品でした。
物語としては、主人公の水樹と信也(同じ団地に住む幼馴染で、保育園から高校まで同じ)の関係が主ですが、それぞれの家族や同級生、高校の恩師も含めた様々な出来事が、仕事上の悩みを抱えている45歳になった現在の水樹の視点から、過去に遡って展開されていきます。
とりわけ、「粋」という表現がピッタリな信也(の生き方)と、そんな信也を、(高校卒業から27年間音信不通であったにも関わらず)ずっと想っていた水樹には心打たれ、二人に幸あれと願わない読者はいないでしょう。
*ドは努力のド、レは練習のレ、ミは水樹のミ
という信也が作った歌詞がまたいいですね!
信也の水樹への想いが溢れていますし、
『手のひらの音符』というタイトルが響きます。
最後に、本書の解説が、残念ながら昨年鬼籍に入られた「北上次郎」さんであったことは予期せぬ喜びでした。
また、その中で、本書が藤岡さんのベスト(2016年7月時点)であると書かれていたことは、我が意を得たりでした。
Posted by ブクログ
図書室で見つけ何気なく手に取った本。回想シーンで共感できるところもあれば、物語自体が最終的などう行き着くのか楽しみな気持ちもあり、最後まで一気に読み進められた。家族、恋愛、仕事、進路に悩み奮闘する人たちに読んでほしい作品です。
Posted by ブクログ
登場人物それぞれの生き様に、心が震わされた。
一つ一つのエピソードを、じっくりと読み返して噛み締めてみたくなる作品だった。
出会えて嬉しい。
学生の頃、弟がいじめられている現場に遭遇し、兄として弟を守った信也。
年下に手を上げたら犯罪だと自分勝手な大人たちが詰め寄ったとき、自分の為に側で一緒に戦ってくれた水樹を、どんなに心強く感じただろう。
その時の気持ちのまま、信也が変わらず水樹を思っていてくれたらと、願わずにはいられない。
Posted by ブクログ
なぜ今まで自分のアンテナに藤岡陽子は引っかかってこなかったのか?そのことを真剣に反省したくなるほどの筆力だった。圧倒的だ。
真実は常に更新され、本当の善も悪も単純ではない。
娘の進路変更に伴う母の思いは涙腺が決壊した。そして、登場人物が一筋縄では括れず、唸らせられる。
服飾業界を巡って、理想と現実、諦めと情熱の葛藤の描き方も見事だ。
Posted by ブクログ
「金の角持つ子供たち」ですっかりファンになってしまった藤岡さん!
次はどれを読もうかとかと迷いながら手にした一冊!
すごい!すごく良かった!
瀬尾水樹、45歳独身、大切に愛してきたデザイナーという仕事を手離さなければならないのか…そんな中自分の恩師の入院の知らせが…お見舞いの為帰省する水樹に幼少期からの懐かしく温かい記憶が蘇る。
小さい頃から見えない絆でずっとお互いを思い合ってきた水樹と信也がなんとも切なく素敵で温かい!
離れていてもずっとお互いの気持ちの中で大切にしてきた記憶、想い…繋がっていた事に心が鷲掴みされた。
会えなくても離れていてもずっと大切に思える人…素敵だなぁ。
ますます藤岡陽子さんのファンになってしまった!
他の小説も、もっと読もう!
Posted by ブクログ
「金の角持つ子供たち」でこの作家に興味を持ち、私と同世代の働く女性が主人公なので選んだこちら。
現在進行形の物語と、幼少期から高校卒業までの回想が繰り返されて、2つの物語が同時進行している感覚で、どうなるのかが気になり、一気に読み終えてしまった。
辛いことの多かった幼少期だけれど、温かさも懐かしさもあり惹き込まれる語り口で、ますます藤岡陽子さんの他の本も読みたくなった。
Posted by ブクログ
出会いは鮮明に覚えているのに、別れはいつの間にかで後から気付く。
人と会ってその時が最後なんて考えもしない。
世の中はそんな別れが多くて、むしろお互い最後だとわかる別れはほんのひと握りだと感じた。
最後がいつ来るかわからないからこそ、人との出会いや家族、友人を大切にしたいと思った。
Posted by ブクログ
まだバブル前の昭和の時代。貧乏やその他の問題や、色々と生きづらい中で子供達は多くを望むことを諦めて行く。
でもそんな中、手を差し伸べてくれる大人や友人、大切な人。人間は如何に人に助けられて生きているかを思い出させてくれる。
遠く離れてしまっていても、本当に大切な人は何処かで繋がってるんやなぁ。
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初読みの作家さん。
アパレル業に勤める水樹の会社が、突然服飾関係の撤退に。
水樹がアパレル界へ進むきっかけとなった高校時代の回想シーンと共に物語が展開していく。
家庭の問題で思うようにいかない時に支えてくれた遠子先生。
友人やその兄弟との温かくも切ない関係。
今や日本の製品は海外工場での格安な製品に取って代わられ、コストのかかる国産の商品が消えつつあるご時世。
でも私たちが「日本は負け」の意識を持ってしまうと、後世にもそのバトンを引き継いでしまう事になる。
遠子先生の遺した「自分の本当の気持ちを大切にすること」を、私も忘れずにいなくてはと感じた。
Posted by ブクログ
家族と夢中になれるものがテーマの一冊。なんか朝ドラみたいだった。
過去を丁寧に振り返りながら、ヒロインが奮闘していく、幼なじみや家族も一緒に頑張る部分が共通しているのかも。
私も水樹みたいに人生をかけて夢中になれるものがほしい。そう強く思った。
Posted by ブクログ
人生って色々
水樹、信也、憲吾 それぞれが生きてきた人生を知るにつれて、その人が抱えているものはわからないのもだなと気づかせてくれた
著者の作品は、物語りに引き込まれて一気に読んでいた
Posted by ブクログ
やさしくて、つよいひとが出てくる小説。
要領よくいきたくなる毎日やけど、そうじゃなくて心の清潔さというか人の本質に目を向けて生きていきたいなと思える話だった。
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以前読んだのを読み直した。人の人生って色々あるよね。色々あるけど、めげずに頑張ろうと思える作品。これ読むと私は子供の時のほほんと暮らしてたなぁと思う。
Posted by ブクログ
最近、藤岡陽子さんにはまりつつある笑
今回は『手のひらの音符』
現在進行形の今を時間軸の主軸として、過去を回想する物語は多いが、本作は過去の回想が主軸になっている。
デザイナーとして働き方の転機に立たされている水樹が、恩師の入院見舞いに帰省したのをキッカケに、過去の記憶が甦る。
裕福とは言えないながらも団地で支え合って
生きてきた幼少期
とりわけ幼馴染の森嶋三兄弟のこと。
連絡が途絶えてしまった過去への回想から、
恩師に背中を押してもらった進路の選択。
複雑な家庭環境を抱えながら懸命に生きてきた
さなかの大切な人との死別。
物語の背景には苛めや発達障害、貧富の差といった問題が見え隠れする。
自立して大人になった今から過去を回想することは、否応なく社会が小さくなっていくため家族との深かった濃度を想起させる。そして、水樹の中で確かにそこにあったものが、再び意思を持って動き出す。
派手さはないけれど、ただそこにあるありふれた日常だからこそ、共感ポイントが多い作品だった。
タイトル『手のひらの音符』の意味が読後しっとりと胸に広がる。
ただ、何度か目頭が熱くなったが、肝心なシーンの描写が省略されて場面切替されることが多く、欲しがりな私には少し物足りなさを感じた。
これは読者の豊かな感受性で想像して下さいってことなのか?いっそのこと涙腺崩壊する位に心を揺さぶって欲しいんですが・・・
というわけで消化不良のため星4だったが、とても心温かく勇気付けられる作品だった。
Posted by ブクログ
初めての藤岡陽子さんの本。
どんな話か知らずに読み始めました。回想シーンはちょっと重くて辛くなる内容だったが、とても読みやすい文章で続きが気になり、久しぶりに夜更かしして一気読みしました。
最後はハッピーエンドでよかった!ハッピーエンドの小説は、ご都合主義的な展開も多いが、このお話はご都合主義感はなく、それも良かったです。
Posted by ブクログ
団地に住む兄弟たち、水樹と徹、正浩と信也と悠人。その描き方が昭和の懐かしい感じだなぁと思いながら読み進む。それぞれの人生は決して楽では無く、辛く厳しく悩みも多かったのだろう、それでも頑張って生き抜いてきた主人公たちの成長に心を打たれ感動した。
こんなに純粋な気持ちで人と接することが無かったなあとか、いろいろなことに対して一途な気持ちが大事だとか。自分の人生も振り返って考えたくなるような気持ちになった。