【感想・ネタバレ】手のひらの音符のレビュー

あらすじ

デザイナーの水樹は、自社が服飾業から撤退することを知らされる。45歳独身、何より愛してきた仕事なのに……。途方に暮れる水樹のもとに中高の同級生・憲吾から、恩師の入院を知らせる電話が。お見舞いへと帰省する最中、懐かしい記憶が甦る。幼馴染の三兄弟、とりわけ、思い合っていた信也のこと。〈あの頃〉が、水樹に新たな力を与えてくれる――。人生に迷うすべての人に贈る物語!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

改めて時間が経ってからもう一度読むと尚、この作品の良さに気づけそうな一冊。

というのも今の私には懐かしいあの人、が今も一緒に駆け抜けている友達ばかりのため、
水樹と同じ45歳になったとき振り返って読むと、そうそうあの時ね…と過去を回想しながら未来を歩けるような気がしている。

水樹の周りの人達がとても優しくてそれぞれの境遇を持ちながらも力強く生き抜いている人らしさに感銘を受けながら、こんな働き方もあるよな、こんな生き方も、修羅場となるような思い出もあるな、とまだ他人事のように読み進めてしまった気もしている。

というのがおそらくまだ20数年しか生きていないから、逆にこの一冊から教えてくれたような気もする。
相手を思いやった行動はその人にしかできなくて、水樹だけではなく周囲の登場人物の行動一つ一つのエピソードが誰かを想った行動指針であることに、人の優しさや柔らかさを感じられた。

印象的なのは水樹の父親のお葬式に参加した際の行動と、水樹の母親が水樹の進路について関わる場面。特に自分も家族のために稼がないと、と義務を感じていた水樹に対しての母親の喜んで送り出せる行動は、涙腺にきた、こんな自分の子供のために心配を見せない、いとわない様な母親?女性像になりたいと思った。

信也の不器用なだけど相手のために言動を行う真っ直ぐな姿勢もカッコよかった。こんな人が周りに一人でもいたら私も自分についてクヨクヨせずに堂々といれるだろうなとも思うし、今からでも私なりの闘い方で自分の人生を歩めるだろ!と思う。

現在と過去の時間軸を行き来しながら物語が進むため、その都度のエピソードが印象的で、きっと読み返す事に好きなエピソードが変わるような人生の一冊となると断言できる。

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2026年10月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まず、新潮文庫100選を読んで抽選に当たった本です。ありがとうございます。前向きで暖かい、幸せな気持ちになれるこの本から新しい年を始めます。


服飾業界のデザイナーの夢を持ち続けて実現させてきた。実績もある35歳の水樹。突然会社が方向転換して業界から撤退することになった。中途採用で難関を切り抜けてきたがまだまだ愛着がある。仕事は好きだ。

落ち着かない将来の方向に、迷いに迷っていた時、京都の母校から連絡が来る。水樹の困難な夢の実現を後押ししてくれた恩師が入院している、治癒の難しい病気で、命が残り少ないかもしれない。クラスで集まってお見舞いに行こう。

30代半ばでまた将来の道に迷っている、才能を見つけてくれた。上京し好きな道に進むきっかけを与えてくれた美術の先生に、間に合ううちに会わなくてはならない。

そうして水樹の記憶の底から懐かしい時間が蘇ってくる。
集合住宅の真上、二階の家族とは特に親しかった。年が近い三人兄弟との思い出。中でもいつも気にかけてくれて、前向きで元気をくれた同級生の信也はどうしているだろう。
お見舞いの連絡が彼一人だけが取れないらしい。どこでどう暮らしているのか、心を寄せ音符を刺繍したシュース入れを渡した、淡い思い出恋しい心が蘇る。

多感な頃、経済的にも苦しかった。それでも頑張って服飾の道に進んだが。あのころ信也の家庭はより苦しかった、頼りになる秀才の兄が弟をかばって事故で死んだ。母親は入院していた。あの苦境からどうして暮らしているのか。

思い出の地で先生は重い病にやはり衰えも見えたが、秀才で将来を嘱望されていた同級生が地元に残って公務員になり先生に付き添っていた。二人の親密な様子に先生との絆が見えた。

水樹はそれぞれの苦悩と希望が織り込まれたあの時代、将来の進路に悩んだ時代を思い出し、信也を探すことにする。

節目を過ぎるとき同じ悩みを持つ、青春時代をどう生きたか、懐かしさと戻りたくない思いがある。その中からもう一度やり直せたらと思うことがある。あの時代をどう生きたか、埋もれていた時間に帰ってもう一度歩みだすことができるとしたら。今からでもまだ間に合う。

状況は違っても時間の流れは様々顔を変えながら過ぎていく。初心という言葉がある。
そういうこと。
そんな話だった。
迷いながら生きていくこと、埋もれてしまっていた時に還り、新たに希望を見つけた水樹の、過ぎてしまったと思っていたあの時代の思い出が、厳しく優しく、暖かく胸に迫る。

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2026年03月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった!
回想小説。そういう言葉があるのかは知らないけど、ほとんどが過去の回想で進んでいく小説だった。その構成が面白かった。このあとしんどいことがあるのかな…と思ってサクサク読み進められないところもあった。
ここ最近読んでる本の中では、一番言葉にするのが難しいけど、すごくいい本だった。

水樹、信也、悠人、正浩ちゃん、遠子先生、憲吾。

最後、信也に再会できて本当によかった。生きててよかった。人生何があるかわからないけど、こういう巡り合わせがあったり、運命があったりするから、ちゃんと生きて活動していたいなと思った。

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2026年10月29日

Posted by ブクログ

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45歳独身の水樹が大好きな服飾の仕事を失いそうになり、その道に進むきっかけになる高校時代の恩師を訪ね、過去を振り返る。
水樹の子ども時代は懐かしく尊い思い出でもあるが、苦しんだ記憶でもある。貧しさといじめは幼い彼女ではどうすることもできないことだった。ただそこにはいつも信也がいた。体育祭のリレーの場面、カメムシの場面、自転車にイタズラされる場面など、どの過去を見ても優しい信也がいるから、それを思い出している水樹と同じ目線で熱い想いを持ちながら読める。

現在と過去を行き来しながら物語は進むが、過去にはいつも信也がいて、現在にはいない。この構造は読者に時の残酷さを刻む。どんな人の中にも同じように過去の大切な人が多かれ少なかれいるはずで、読みながらその人達のことを懐かしく思い出すことになる。あの頃の甘い思い出も、苦い思い出も共に共有できたこと、そのこと自体が自分とその人だけの宝物である。覚えていてくれているといいな、なんて考えてしまうこと誰にでもあるだろう。

高校時代の恩師である遠子先生のように、多少強引でもその人の将来のことを考えて全力でサポートできるような人になりたい。嫌われてもいいという覚悟で。

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2026年02月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現在と回想を行ったり来たりしながら、登場人物たちの関係性がだんだんと見えてくるのがおもしろかった。水樹と信也のお互いを思いやる純粋な愛情が良かった。周りの大切な人たちが亡くなっても、その人たちが水樹たちの中でずっと生き続けていることが伝わる描写がたくさんあったのも素敵だった。個人的に悠人が立派に大人になっていたことに感動。

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2026年09月24日

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