藤岡陽子のレビュー一覧
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中学受験に挑戦する俊介が、塾に行きたいと親に相談し、夏休みの合宿などを経て、受験を迎えるまでの日々を綴るお話。一章は母親視点ですが、俊介の受験を応援する気持ちが自身の高校中退の悔しい経験からだと気づき、義母の心無い意見と闘うところは、とても嬉しくなりました。
二章は俊介視点で夏休みの講習と合宿がメインですが、受験勉強に夏休みを費やすことに否定的な学校の先生や、友だちの言葉に揺れる俊介の気持ちが痛いほど伝わってきます。
そしてその相談に乗ってくれた、塾の加地先生の視点での三章では、中学受験の塾講師をなぜ彼が続けているのか、その背景と想いが明かされて、熱い想いの根っこに胸があつくなりました。
俊介だけでなく、他の子どもたちにもきちんと目をかけていること、中学受験は合否じゃなく、良い受験だったかどうかだという言葉、人は挑むことで自分を変えることが出来るという言葉がすごく刺さりました。
中学受験を頑張っている、頑張ろうと思っている人たちに、ぜひ読んで欲しいです。
そしてそれは中学受験だけじゃなく、これからの人生への力強いエールをもらった気がしました。加地先生みたいな先生に出会いたかったですね。 -
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服飾デザイナーの水樹が勤めるアパレルメーカーが、経営難からアパレル部門を閉めることになる。
デザイナーの物語かと思いきや、話は幼少期に遡り、現在と過去を行ったり来たりする。
水樹と信也たち兄弟の過去の話は、心がギュウっと締め付けられるような切ない気持ちになる。
藤岡さんは『青のナースシューズ』でもそうだが、弟を守る兄が強くて優しくて泣けてくる。
信也と水樹が小学6年生のとき、3年生の弟の悠人が、同級生にカメ虫を口に放り込んでいじめられ、信也が駆けつけていじめっ子を1人ずつ殴ったことがあった。
いじめっ子の親たちが家に押しかけて信也と母を責めるが、信也は怯むことなく、自分の口にカメ虫を放り込んで咀嚼し、驚いた親たちは退散してしまった。
殴ったほうが悪くなりそうなものだが、カメ虫を口に入れられることがどんなに酷いことか、殴られることより辛いことだと、身をもって訴えた信也のまっすぐな強さと、その信也を庇った水樹の堂々とした姿に胸を打たれた。
過去に遡ったり回想したりする小説は多いが、私は『汝、星の如く』や『光のとこにいて』などのように、時系列の通りに進んでいく物語の方が、自分の気持ちが膨らんでいくのを感じられて好きだなと思う。
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緩やかに登場人物がつながっている物語
『不思議なことに、歳を重ねれば重ねるほど、頭に留まる記憶は少なくなってくるもんでな。』
記憶の中で強く残っている記憶が、その人の人生の中で重大なエピソードなどだろう。
私のジイはどんな記憶が残っていたのだろうか。
ジイともっと会話をすれば良かった。
ジイが生きた世界の話が聞きたい。
もう、祖父とは会話ができないけれど、父とは会話ができる。
父と話がしたくなった。
胸がギュッと締め付けられたり、温かくなったりしました。
海は色々な顔をみせてくれる。
そして、多くの人からの声を受け止めたりもしているのだろう。
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ネタバレリアルな介護現場の話だなと思う。
「もし、今の会社をクビになったら。。」という不安を払拭するために、介護福祉士実務者研修を受講したのだが、結局、自分はまだ介護業界ではないところにいる。
研修で出会った方々とは今も繋がっており、研修から3年、すでに何人かが職場を離れている現実がある。
つい最近、緩和ケア病棟や、在宅医療が舞台の本を読んだ。
その中でも言われていたのが、「最期まで自分として生きる」こと。
延命治療は、治療をして元気になるならば必要だろうが、最期を迎える線上にいるものには、苦痛ではないだろうか。
まあ、その方の家族として考えると、やはり、親はいつまでも元気でいてほしいよね。 -
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同じ中学受験を描いている「翼の翼」のレビューで、こちらの本を薦めている方がおり手に取りました。
「翼の翼」では大号泣しましたがこちらは割とさらっとした描写で、ほろり、という感じでした。
倫太郎や俊介が6年生春というおそすぎる入塾にも関わらずA組に駆け上がっていった時、その裏では4年生から頑張り続けて途中で息切れしてクラス落ちして泣いている子がいるのだろうと、ついつい考えてしまいました…。
また、この1年の母親の体力精神力金銭的な負担はものすごいものだったろうに(専業主婦から仕事受験生の母1年生の壁の何重苦… 普通に考えて勉強する時間ないでしょう)、さらっと乗り切っているように見えてなんだか納得いかず。
父親も物分かり良すぎな気もする。(先生の話であんなすぐに切り替えられるわけない)
先生の弟の話も蛇足感あり。(放置したから勉強ができずに引きこもったという単純な決めつけもどうなの)
こちらの本で中学受験入門後に、「翼の翼」を読んで圧倒されるのが、順番的には良いと思います。 -
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何方かの感想を見て気になっていたお話。
望んで入ったわけではない看護学校での学びと出会い。
瑠美は賢くて卒ないけど、人に対して決して器用ではない。むしろ相当不器用。特に恋愛。私は親友にはなるのは難しいかも。斜に構えていそうで実は真っすぐすぎて、それを受け止める正しさを芯に持っている人じゃなきゃ常に向き合うのは怖くなりそう。
ただ、絶対的にブレることのないという信頼感。遠野さんや出会った患者さん達、千夏はそこに安心出来ていたのかなと思う。千夏をはじめ、周りの人達や患者さんとの関わりで彼女も変化していく。
答辞も良かったし、変わりつつも、最後までらしい終わり方もよかったです。 -
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なかなかに辛い介護の現場を、それでもあかりを灯そう、希望を見つけようとする物語。
看護師経験のある作者だけに、リアルな介護の現場が伝えられているように思う。
『ここまで介護職員を責め立てるのなら、もう二度と、自分の家族やあなた自身が施設に入ることはないですよね』
プロローグから重い。
本編で登場する特養スタッフたちは、元お笑い芸人の星矢、二児の母の古瀬、何か信念を感じさせる医師葉山や施設長福見など皆レジリエンスが高そうなのだが、徐々に疲弊し、肉体的、精神的に追い詰められていく。
それでも介護職に就く意味を考え、希望を探る。
介護の問題を少しだけ自分事として考えることができました。
藤岡陽子さんの作品は「満天のゴール」に続いて2作目。「満天」も過疎地の訪問医療や在宅看護など終末医療に関わる作品でしたが違う系列の作品もあるみたい。今度読んでみようと思います。 -
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単行本『闇から届く命』で既読。助産師の有田美歩には小児麻痺で亡くなった姉がいる。勤務先のローズ助産院のゴタゴタがリアル。看護師で助産師だと中絶のときの処置もある、仕事と割り切るには辛いだろうな。その一方、出生前診断する時代ならではの助産師のカウンセリングをしたり。産まれて幸せになれるかどうかを決めるのは親じゃなく子ども本人。親が自分のために子どもを産む訳ではない、そうだけど赤ちゃんは何年も育てないと本人で幸不幸を感じるところまでいかない。幸せのツールではないけど、産む以上子どもに幸せになってほしいと願う人しか出産してはいけないだろうな。出生前診断がパーフェクトではないしそれ以降元気にいられる保証もない、という言葉がしっくりくる。そのとおり!そして子育ては終わっても親は終わらない。美歩の親はいつまでもふたりの子どもの親だ。自分自身と重ね合わせ考えるいい作品。